超昂大戦SS 極限バトル! ルビーVS最強の超昂戦士たち   作:環 藍河

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第6章 限界の先へ! 燃え上がれ、不滅の炎

幾度ものピンチを果敢に超えて辿り着いた、エンドレスバトル第4戦。

しかし、挑戦者エスカ・ルビーは今、リングに沈む。

対戦者エスカ・サファイアの猛攻を浴び尽くし、希望と闘志を封じる断絶の力を刻まれ…ルビーは最強の相棒に身も心も粉砕され、冷たい床に身を委ねる。

 

……

 

(ああ…っ…)

(無理だ…もう…)

(いくらルビーでも…こんな…!)

 

トレーニングルームを一望する観戦ブースでは、試練の行く手を見守る戦士たちが、絶句しながらもルビーの身を案じ、敗北とバトルの決着を疑わなかった…。

 

 「ばかあーーーーっっ!!」

 

 (【《『!!っ?』》】)

 

悲観と絶望の重い空気を裂く、悲鳴にも似た叫びは…。

 

「あんたバカよっ、エスカ・ルビぃーーーっ!

何よおっ! お姉さまに憧れて、こんな特訓まで始めたくせにっ、その最後が…最後があっ…」

 

(……!!)

 

「こんな無様な、敗けだなんて…」

FM77・高円寺ななかの瞳が潤み、絶叫がいつしか上ずる。

 

「あんた、いいの!? こんな最後で、こんな負け方で、許されると思ってるの!?」

 

すっかりこの激闘に触発され、ななかは自らをルビーに重ね、激情を隠しもしない。

エスカレイヤーを真っすぐ慕う同志として。いつか憧れの超昂天使に並び立つ日を共に目指すライバルとして…。

ななかは熱いリスペクトを込め、ルビーに叱咤の叫びを叩きつける。

 

「立ちなさいよっ! 勝ちなさいよおおっ!

負けたら…エスカレイヤーを名乗る資格は無いんだからあっ!

あんたなんか…ただの、無印ルビーなんだからああーーーっっ!!」

 

(……っ!!)

 

少しいびつな、しかし純粋なななかのエールが同僚たちの胸を打つ。

 

 すっ…!

(?!)

 

窓際へ進み出る戦士が、さらに一人。

「ルビー様ああっ!! 貴女に敗北は許されませんことよおおっ!!」

新参らしからぬ唯我独尊の態度で、ビートノーブル・カノンがななかに続く。

 

「この天下一お嬢様が認めた最強戦士の貴女は…こんな、どちゃくそ無様にぶっ潰れやがったままで終わる、そんな惨めなお方のはずがございませんわよねっ!?」

 

ひどい罵詈雑言。

だが…誰にも見せない努力の塊で、聡里と共に天下一お嬢様まで登り詰めた神音にとって…不断の努力と不屈の勇気で人類の救世主まで駆け上がったルビーは、自らが目指すべきマスターピース。

その目標の…憧れの戦士への毒舌は、しかし真心からのルビーへのエール。

 

「ルビー様は…わたくし以外に全殺しにされることなど、あってはならないのですわああっ!!」

 

 がばっ…!

 

「立って…立ち上がってくださああーーーいっ!」

さらに重なるは、異世界の妖艶なる洋館から召喚された、メイドにして閃忍・ユキノ。

「私…間違ってました! 傷つくルビーさんを見たくない…だから、負けてもいい、もう立たないでって…。

でも…そうじゃないっ! あなたには…こんなに傷ついてまでも、引き換えに掴みたいものがあるのでしょう!?

それなら…勝ち取ってくださいっ!

あなたが求めたものを…私も見たいんですっ!」

 

召喚直後、元の世界の宿敵に幻魔の力で襲われた雪乃。そして、エナジー不足を顧みずに彼女をかばい、打ち倒されても踏みつぶされても最後まで守り抜いたルビー。

その姿に勇気を教えられ、閃忍となって戦う道を選んだ雪乃は…その勇気をルビーに返そうと、あらん限りの声で叫ぶ。

 

「お願いですっ! ルビーさああんっ! 

あなたは私の…私たちの希望なんです…!

だから…負けないで……負けないでええーーーっ!!」

 

いつしか、水を打ったように静まっていた観戦ブースは…。

(…頑張れ…!)

(そうだ…終わらない…!)

(ルビーなら…立ち上がる…!!)

一転して誰もがルビーの逆転を信じ、熱い願いが広いブースを包んでいた。

 

……

 

 ざっ、ざっ、ざっ…。

 

(…悪く、思うなよ。)

2連勝を上げたエスカ・サファイアは、ルビーににじり寄る。

 

想破に伝わる、歴代の選ばれた閃忍だけが挑んできた荒行・巴懸りの行。

それは一人の挑戦者に、心技体とも劣らぬ3人の閃忍が代わる代わる立ちはだかり、時には百戦を超えてなお終わらぬという、血を血で洗う仕合。

打ちのめされても叩き起こされ、手脚を砕かれても引き起こされ、精根尽き果てるまで…いや、更にその先まで止まない試練は、地獄の鬼すら嗚咽して許しを請うとも語られる。

 

(このバトルを巴懸りの行に重ねたとしても…、ルビー、お前は十分に試練に立ち向かった。

ここで敗れたとして、お前をなじる者はいないだろう…。)

 

続行の可否は、倒れ伏してから三度引き起こし、再起叶わぬことを確かめる。それで巴懸りの行は幕引き。

 

(これが相棒として…せめてもの介錯だ。)

 

壁際にうつ伏せのルビーに背中から覆い被さり、再び両肩を戦闘服のカラーごと掴み、容赦なく引き上げるサファイア。

壁向きの全身を、右手を引いて反転させ、ルビーを自身に正対させると、間合いを取る。

 

ルビーは少しだけ、やじろべえのように釣り合って直立するも…ぐらりと前に傾くと、もう体幹を戻せない。

 

 …どしゃっ。…ふぁさっ。

 

地べたに付いた両膝を支点に、ルビーは両腿から全身前のめりに崩れ、再び床に沈む。

なびいた背中のカラーがひらりと、戦士の撃沈に一拍遅れて力なく重なる。まるで…セコンドがボクサーに投じたタオルのように。

 

サファイアは今度は正面からにじり寄り、ルビーの頭と右肩の間に自身の右肩を腕ごと差し込み、ラグビーのスクラムのようにルビーを重力から引き剥がす。

つい先ほど頭から叩きつけられた壁に、今度は背中から押しつけられるルビー。

起ち上がったとは到底呼べない、ただもたれかかるだけの超昂戦士は…

 

 ずるっ…ぺたんっ。

 

そのまま背中を重力に預け、壁に頭を擦りながら全身を落とし…尻もちをつく。

純白のブーツとタイツをまとうルビーの両脚は、力無く床に沿ってハの字に伸び、シューズで踏みとどまる力さえ残っていない。

アヒル座りで開いた太ももはプリーツスカートをまくり上げ、下からクロッチを顕わにする。

まくれ上がる背中のカラーに保護された頭は、壁をずり落ちて止まるも首は据わらず、左にかくりと崩れ、うなだれる。

燃えるようなルビーのツーサイドアップも、右は傷だらけの頬に、左は完膚なきまでに壊された左肩に、それぞれ力なく垂れるだけであった。

 

 …がしっ。

 

サファイアは今一度、試練の幕引きとばかりにルビーの胸元を掴み上げる。

真紅のカラーと黒のインナー、パールホワイトのレオタードが一度に絞り上げられ、天に向かって深い皺を形づくる。

胸元のルビージュエルを引きちぎるほどの力で、サファイアはルビーを吊り上げた。

 

 ぎゅううう…っっ…!!

 

そのままルビーの首をねじ切るかのような牽引力が…消える。サファイアの右腕が遂に離れ、ルビーは三度目の審判を受ける。

 

(あっ…。ああっ…。)

(…やっぱり、ダメ…なのか…?)

 

もつれ、ふらつく両脚。上体の揺らぎは収束の気配を微塵も見せず…。

 

 …ぐらり。

 

翼をもがれ、墜落するように左から沈む、紅蓮の超昂戦士。

 

(…御免。)

その瞬間に掴む、勝利の確信。

エスカ・サファイアの長い戦いの中でも、最も苦い勲章…

 

 

 

  どしゅっ。

 

風が、吹いた。

その風を追い越す一閃が…青嵐を吹き飛ばす。

 

 

 どがっ……ずがあっ!!!

 「ぐはあああーーーあっ!!」

 

  (【《『!!?』》】)

 

観戦ブースでは、沈痛の表情から一転、戦士達が驚愕する。

リングの真逆、壁に全身を叩きつけられたのは…ルビーではなく、エスカ・サファイア。

 

 「か…かはあっ…!?」

 

(何が…起きた…!?)

 

壁から背を離し、起きた事態を飲み込もうと前に出るサファイア。

自分は…確かに、吹き飛ばされた。

 

その起点に立ち、前屈みから起き上がるのは…。

間違いない。

 

 「【《『ルビー(さんっ)〔様あっ〕!!?』》】」

 

ファイティングポーズには至らずも、両脚の震えは消え、肩の疼きをかばいもせず。

凜然と、芯の据わった姿で…戦士は再起する。

 

 たたたっ。「くっ…!」

 

今度はルビーが獲物目がけて駆け上がる。

(次は…防ぐっ!)

ルビーの戦型すべてに備えようと、守りの構えを取るサファイア。

 

 ふっ。(!?)

 しゅっ。

 

 …ばきいいっ! 「がはあっ!!」

 

ガードできない。

迫るルビーが、視界の右下に沈んで消えた。

その次にはもう、左から衝撃が突き刺さった。

 

 どすっ…ごろっ、どかっ、ごろごろっ…

 

転げながらリングをバウンドする中、サファイアは…。

右脚を振り抜いたルビーの姿勢を見て初めて、その衝撃の正体を…ルビーの蹴撃を喰らったことを認識した。

 

 …どしゃっ。「ぐうっ…!!」

 

今度はサファイアが、うつ伏せにリングに沈む。

何故だ。

そのキックの軌道、そして衝撃。

相棒の一挙手一投足が…見えなかった。防げなかった。

 

……

 

「断絶の力…かえってルビー殿を解き放ったやもしれぬ。」

「ル…ルビーさんは…絶望さえも力にしちゃった、っていうんですか…?」

「おお…崖っぷちサバイバー…!」

 

勝たなきゃダメだ。負けちゃダメだ。

ルビーの超人的なまでの強き意志は、幾度倒れても立ち上がる不屈の魂は…人類滅亡さえも阻止した、戦士の原動力。

だからこそ、サファイアの封印は致命的だと誰もが痛感した。

 

それが、どうだ。

勝利への希望が消えても。敗北への恐怖と絶望に支配されても。

すくむ脚も、震えわななく拳も、今は余計な気負いを捨て…ただ目の前のサファイアに、その瞬間に動く最高の蹴りを、最善の拳を撃ち込むことだけを考えている。

 

意識の飛んだルビー。

その無意識が、空っぽの思考が、満身創痍で絶体絶命のボディを、ありのままに受け容れていた。

 

先刻までのルビーは、くたびれ果て、左腕をやられた体でも、ベストコンディションの技を求め、理想とは程遠いオフェンスばかりを繰り返し…当然、倒された。

 

今は違う。

まるで初めから、左腕を使わない形がエスカ・ルビーの完成形であったかのように。

左肩が崩れ落ちるなら、そのまま右からのキックを弾ませる遠心力にして。

反動で左を引き起こすベクトルは、半回転重ねて後ろ回し蹴りに乗せても、スウェーバックから飛び込む右ストレートの予備動作にもできる。いっそ、そのまま左ハイキックで撃ち抜くシンプルな選択すら。

 

自由闊達、天衣無縫。

自然体のルビーが目醒め、今やサファイアを凌駕する。

 

 

「た…ただの単細胞、単純バカのアドリブ成り行きファイトじゃ、ないんですか?」

「否定はできぬが、それもルビー殿の卓越した素養と、死線を幾度も越えてきた経験に裏打ちされれば、かくの如く洗練された、道を極めた豪の者となる…!」

ライカの精一杯の皮肉も、ムツカはいつもの余裕を微塵も見せず、真正面から返す。

(蛇足だが…「こやつとは違うでござるよ。」と悪態をつくだろうとムツカを待ち構えたイノリは、肩透かしを食らっていた。)

それほどまでに、ルビーの戦いには非の打ち所がなかった。

 

……

 

(…初めてだ…!)

サファイアは心の内で独りごちる。

ルビーの攻撃が読めない。

ずっと背中を預かってきた相棒に翻弄されている。

いや、ルビーのデビュー戦から、その成長も進化も心に刻んできたサファイアだからこそ…その間隙を衝かれ、予想外の攻撃を躱せずにいるのか…。

 

「…くっ…くくっ…。」

 

立ち上がり、改めて復活の戦士に対峙するサファイアは…

強者の凱旋に、戦士の本能に打ち震える。

 

「ははっ…そうか…。

これは無の境地に立ったルビーの…初陣…!」

 

サファイアの胸を打ち鳴らすのは、至福の法悦。

重ねた修行で勝ち取った体術と、断絶の力の奥義で。

さらなる強さを目指すルビーに、望み通り自分がその力を引き出した。

 

「いいな…いいぞ、ルビー!!」

 

ならばルビー。ご褒美を一つ貰うぞ。

お前も私の力を引き出してくれ。

ここからの戦は、目覚めたルビーへの栄誉の一番槍。

 

 すくっ。

 

「青嵐の超昂戦士、エスカ・サファイア!

 これよりその全力をもって、お前の全力に応えよう!」

 

 だっ…たたたたたたたっ…!

 

力なく、静かにたたずむ紅蓮の戦士は、一見、隙だらけ。

だがその実、どこに飛び込んでもすべて即座に打ち返す流れを秘めた、泰然自若の構え。

最強を超えた自然体のエスカ・ルビーに…それでもエスカ・サファイアは勇猛果敢に飛び込む。

サファイアもまた、瞳をこらし、気を練り上げ…ルビーの一手を必ずや返そうと、全てを賭けていた。

 

【続く】

 




筆者の環藍河です。第6章(閑話を挟んでいますので通算7話)をお届けしました。
前話から間隔めちゃくちゃ空く中、毎度お立ち寄りいただける読者さまに大感謝です。
あと2話でまとめる計画ですが…見切り発車もいいところで書いております今回のSS、決着の形は筆者にもわかりません!
それでも、ご期待を賜ればこれ幸い。決着までどうかお付き合いくださいませ!
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