超昂大戦SS 極限バトル! ルビーVS最強の超昂戦士たち   作:環 藍河

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第8章 飽くなき挑戦! 明日に輝く戦士たちの勲章

医務室では、エンドレス・バトルを戦い抜いた戦士たちがそれぞれのベッドで思いを馳せていた。

 

「こもりさん。」

「…くさりちゃん…!」

観衆の誰もが戦慄した不可視の暴忍は…小さな体をくさりの胸に預け、双腕に包まれる。

 

「…バカだよね、私。

長官に『君ならルビーに勝てる。』っておだてられて、真に受けて、あんな衆人環視で戦って…。こもりのキャラじゃ無いコトしたから、無様に負けたんだ。…ううっ…。」

 

くさりは顔を二度横に振る。

うつむくこもりにも、その否定は胸のぬくもり越しに伝わる。

「いいえ、こもりさんの戦い、観ていた皆さんは誰もが感嘆していましたよ。あのルビーさんを、あんなに苦しめて、あと一歩まで追い詰めて…!」

自己卑下を吐くこもりへ、慰めではなく心からの賛辞を贈るくさり。

「…嘘でしょ。誰もいないし…会いたくもないけど。」

「もしかしたら、こもりさんが会いたくないかもしれないって思って、今は私が人払いをしているだけですよ。」

「あ…っ。」

負けた自分を見られたくないかもしれない。そんなくさりの思いやりに、こもりの心のガードが剥がれていく。

 

(こんな茶番のバトル、負けたってどうでもいい…)

そんな虚勢で突っぱねるはずだったのに。

でも…くさりには嘘をつきたくない。

 

「私…勝てなかった…。ルビーに…勝てなかったよおっ…!」

勝ちたかった。エスカルビーを倒したかった。

斗羽や姫路に言ったら笑われるに決まってる…でも、それが偽らざるこもりの本音だった。

 

「いいえ…例え勝てなくても、こもりさんのファイトは凄いです。」

 ふるふるっ。

「…ホントは…ルビーの背後を獲ったとき…首を掻き切ることもできたの。いつも滅忍を潰すみたいに、ルビーにもとどめを刺せたのに…できなかったの…!」

「…!」

「倒せたのに…ルビーに、勝てたのに…。

一瞬ためらって…冷徹に、なりきれなかったんだよお…!!」

 

くさりの胸裏に湧き上がる、半分ずつの驚嘆と戦慄。

「でも…ホントに悔しいのは…!

ルビーに負けたのに…こもり、嬉しかったの…。

絶対見つからないこもりを、ルビーはこもりだって見破って…見つけて、全力の拳で撃ち抜いてくれたのが…嬉しかったの。」

「あっ…!」

「おかしいよお…負けて、嬉しいなんて…。何なんだよお、私…!」

 

……

「うらやましいです…!」

「えっ…?」

「ルビーさんは、こもりさんを本当に強いって認めたんですね。

こんなに強い敵は、ダイビートにも上弦衆にもいない。久世七暴の奉輪こもり、その人をおいていない、って。

だから、見えない敵がこもりさんだって解ったし…こもりさんこそは、ルビーさんが全力を出さないとやられてしまう、恐るべきライバルなんだって認めたんですよ。」

「…っ!! ううっ…うっ…!」

 

 

……

「どうだった? 憎っくき偽善者、エスカ・ルビーに、一発ブチかましてやったんでしょ?」

「しっ…師匠っ…観てたんですか!」

「ううん、みーんなあたしに極秘でさ、りるかの試合が終わってから知らされた。見せられたビデオだって、激闘だった部分はぜーんぶカットの切り抜き版でさ、ヒドくない!?」

昂奮すると魔力が暴走するため、一時は特撮禁止令が出される有様だったうらら。

激闘のりるかVSルビー戦、たとえダイジェスト版でも、見せて貰えただけまだマシなのだが。

 

「…瑠璃にはまだ、話してなかったね。あたしとルビーとの出会い…。」

「えっ…はい。」

「最初はあたしもルビーと敵対したんだ。たまたま拾った魔力で変身して、さすらいのヒーロー・ウラジミール見参! あんたたちみたいなニセヒーロー、絶対に認めないいーーーっ! …ってね。」

「…!! 師匠が…?!」

「…でも…結局は自分の魔力を制御しきれなくて暴走。ルビーとサファイアに止められた。ADDDを付けられて、『イメージしてっ! うららちゃんがなりたかったヒーローの姿を!』…ってさ。情けないけど、それがあたし…エスカ・トパーズのエピソード・ゼロなんだ。」

 

(…そのフレーズは…!!)

瑠璃もまた、クチナワにノロイの力を暴走させられ…そしてうららに救われた。

《瑠璃っ! イメージしなさいっ! あんたがなりたかったヒーローの姿をっ!》

忘れ得ない、うららのあの叫び…外法天りるかのエピソード・ゼロもまた…師匠譲りだった。

 

「だから…今日はあんたが…閃忍リルカが、師匠を超えた日。」

「えっ…?」

「だってさ…あたしも口では『ルビー! あんたとはいつか決着をつけるっ! 【夢の対決! エスカ・ルビーVSエスカ・トパーズ】を実現してやるんだからっ!』…なーんてカッコつけてんのに…結局今日まで一度も挑戦しないまんまだもん。

…だから、ちゃんと拳でルビーと語る覚悟で…負けを怖れず、決意してリングに上がったあんたは、あたしの誇れる一番弟子。あっぱれよ!」

「…そんな…!」

「そんなも何も…うらやましい。今日はあたし、りるかを弟子に持ったことが誇らしいんだから。」

 

「…私…私は…あっ…!」

りるかにもわかっていた。

自分の戦うエネルギーは…義憤が2分の1、そして…もう半分が私怨。

醜い後者を…信じる正義のあり方と、自分みたいな底辺に光を当てないダイビートへの公憤にすり替えただけの…リンチの正当化。

それなのに、それも全部ひっくるめて…うららは、ハルヒーナは、りるかを認め、讃えてくれた。

 

「…あたしだって、このままじゃ終わらない。真のヒーローへの道は、たとえいばら道でも、必ずみんなに開けているんだから!

りるかっ! 今日からまた、一緒に目指そうっ!」

「…はい…、はいっ、師匠おおっ!!!」

 

……

「……うう…っ…」

「…ったく、何をガラにもないこと、やってるんスか。」

ベッドで目覚めたエスカ・サファイアに付き添うライカが、氷水でタオルを冷やしながら毒づく。

「遠距離からヒット&アウェイが信条のヒビっさんが、拳にエナジー全振りの白兵戦。

挙げ句の果てにこ~んなフルボッコの無様なダブルノックアウト。ユユエルさんやセラフィールさんが治療する前なんか、ヒビっさんの顔、腫れまくって原型とどめてなかったっスよ?」

「…ああ。」

「いつもみたいに小賢しく、ルビーさんの猪突猛進ヒラヒラかわしながら、ちまちまビームクナイやブリザード・エスカレーションでスタミナ削ってれば、ちゃんと勝てたでしょうに…な~に自滅してんスか。」

どこかとげとげしく、サファイアを挑発するような言葉を選ぶライカ。

 

「…それは違う。」

(?)

「私は逃げられなかった。あの…無の境地のルビーに少しでも逃げ腰を見せたら、ルビーは必ず追いすがり、私を一撃で沈めただろう。だからこっちも正面から行くしかなかったのさ。」

 

「…その割りには、楽しそうでしたけどね。」

「なっ…!」

「ヒビっさんもルビーさんも、隕石落とし合うみたいな破壊力でパンチもキックも打ち合って、これでもかー、これでもかー、ってほどお互い喰らいまくってるのに…何で笑い合えるんですか。

…無いわ~、うん、あれは無い。」

 

「…そうか。ライカには私が、楽しそうに見えたか。」

「…はい。」

 

…くすっ。

「そうだな。私は…あの戦いを、楽しんだ。満喫した。」

腫れのまだ残る頬をほころばせ、サファイアは独りごちた。

「ルビーと一緒に戦うだけじゃない。ルビーを相手に戦うのも…楽しかったんだな。

…ああ、若頭領からお話を戴いた時から、今日を楽しみにしていた。今ならわかる。」

 

 …はあ~っ。

 

「あたしには見えない世界ですね。…うん、入ったら戻れない世界っぽいんで、遠慮します。」

「…ライカ…?」

 

いつもと同じ、ライカの悪態と強がり。

だが、今日はひがみを含んでいたのを、サファイアは聞き逃さなかった。

 

並び立つ強さを持つからこそ、わかりあえるサファイアとルビー。

ライカは…他の閃忍とも、ましてやイノリとも、こんな風にはわかり合えない。

その非力を諦めていたはずのライカが…今は悔しささえ胸に押し込めようとしていた。

 

「…帰っていいんだぞ。」

「…こんなぼろっカスのヒビっさん、滅多に見られないんで。」

「…言ってろ。」

一人に戻ったら、押し込めた感情を塞ぎきれなくなりそうで…だからヒビキに毒づき、今にも漏れそうな嘆きを、無念をこらえていた。

ライカの本心を看破しないのは、サファイアのせめてもの情けだった。

 

……

「どうだった? ルビーが見た世界は。…私のと同じだったかな?」

「エスカレイヤーさん…。」

激戦の主役と、彼女を駆り立てた先輩。ともに極限から生還した戦士同士が、ベッドサイドで語らう。

 

「…自分の中に、獣がいました。」

「…うん。」

「サファイアに心を封じられて、もう勝てない、もう戦えないって絶望して…。

でも…わからないんです。私、おかしいんです。

心が空っぽなのに体が動いて、目の前の敵を…サファイアを倒すんだって、前に進んじゃうんです。」

「うん…私もハルカさんたちと戦ったとき、そうだった。」

意識が飛んでも戦い抜く。それは2年半の激戦で、幾度も死線を超えた超昂戦士エスカ・ルビーに備わった、本能なのだろうか。

 

「あのとき…両手が動かなくても、パルシオンセイバーを噛みしめて立ち向かったエスカレイヤーさんを見ました。そしたら…凄い、私にはあんな闘志は無い、って気持ちと…怖い、あの優しいエスカレイヤーさんがこんな死にものぐるいに暴れるなんて…、って気持ちが、ごちゃ混ぜに襲ってきました。」

「うん…そうだろうね。」

「でも…今日は私がそのケダモノになりました。」

「…うん。」

「バトルが続いていたら、私もきっと、体のどこかが動く限りサファイアに襲い掛かって、離さなかったと思います。両腕両脚が潰れても、オオカミみたいにサファイアの喉笛に喰らいついて、絶対に離すものかっ、咬みちぎって勝つんだっ、て…本気で思っていました。」

「ルビー…。」

 

「自分の中に、こんな残虐な心があったなんて…。

私…やっぱり正義のヒーローにふさわしくないんだな、って…ちょっと自分に絶望しました。」

「それは…それは違うよ。」

哀しげな自嘲まじりのはにかみを浮かべるルビーに、先輩はうろたえ、顔色を失う。

「命がけで…追い詰められたら、誰だって…私だってそうだった!」

 

そう。かつてエスカレイヤーもまた、自らの破壊衝動と剣の愉悦に身を落としかけていた。

巴懸りの行でナリカを、スバルを、そしてハルカを切り刻み、地に伏してもなお、引導を渡そうと獣の殺意を爆発させていた。

潰せ。斬れ。砕け。裂け。

牙を立てろ。折れた骨で胸を穿て。砕けた歯で眼を潰せ。

持てる全てがお前の刃。

立て。進め。動け。

戦いは…終わらないっ…!

 

(倒す…倒す…倒すっ…!!)

漆黒の闇に呑まれ、その身の隅々まで殺戮の渇望を響き渡らせるエスカレイヤーは…彼女を敬愛するルビーの目にすら、悪鬼羅刹の如く映った。

 

「だからルビー…自分にがっかりなんか、しちゃダメっ! ダメだよっ…?」

にこっ。

「大丈夫ですよ。ちゃんと私、ケダモノからヒーローに戻れました。」

食い下がるエスカレイヤーに、一転して微笑みかけるルビー。

「あのとき駆け寄ってくれた、ななかちゃんや神音ちゃん、聡里ちゃん。琴音ちゃんや雪乃ちゃん、マリナちゃんたちやミーナさん、アイさんメイさん…みんなが私の戦う意味を思い出させてくれた。みんなの声が、私を空っぽの戦闘マシーンから、血の通う超昂戦士に戻してくれたんです。」

「あっ…!!」

 

……

巴懸りの行には、一つの掟がある。

 

 《この行に挑む者、慕い、あるいは慕わるる絆と共に臨むべし。》

 

それは極限に自らを投じ、自らの魔性を覚醒させるこの荒行で、最後の一線を越えないための命綱。

即ち、自らが殺戮の快感に溺れぬよう、踏みとどまるための枷である。

 

 ぎゅっ…!

(…あっ…?)

地に伏し、憎悪に支配された超昂天使は…不意に重力を失い、熱い抱擁を受ける。

「エスカ…レイヤー…さん…!」

 (…っ…?!)

超昂天使の闇を払ったのは、紅く暖かな光。

震え、恐怖にわななくルビーの腕は、天使の中の獣の冷酷を無言で伝え…そして氷解させてくれた。

 

この苦行に挑んだ、初めの志を忘れていた。

…私に憧れ、慕ってくれるルビーたちに…超昂戦士たちに希望を与えたい。

そうだ。ただ強くなるだけじゃ、ダメだった。

私の力は、みんなを護るための力。

 

…触れるもの全てを切り裂く殺意をたたえていた、先ほどまでのエスカレイヤーは、もういない。

泣きじゃくるルビーの腕の中では、いつもの心強き超昂天使が柔和に微笑んでいた。

 

……

 

「エスカレイヤーさん…私…」

「ルビー…?」

「やっぱり私、まだまだです。

もし一人だったら…あのまま暴走して、きっとひどい結果になってました。」

「…当たり前だよ。私たちの戦いは、いつも一人じゃないでしょ? だから、大丈夫!」

苦笑するエスカレイヤーは…

 

 「自力で立ち直ったエスカレイヤーさんは、やっぱり凄いんですね。

  今日は私、そのことに気づくことができました!」

 

  ……。

  ええ…っ?

 

「エスカレイヤーさんみたいに、一人でも最後は正しい心を忘れない…そんな正義のヒーローになるには、私はまだまだでした。…遠いなあ…。」

 

「ル…ルビー…?」

私に…エスカレイヤーに優しさを思い出させたのは、あなたなんだけど…?

ここまで私と同じ体験したのに…どうして…気づかないのかなあ…?!

 

すっ…。

「…そうだね。ルビーはまだまだかな。…帰るね。」

「…あ、あれ? エスカレイヤーさん?」

やおら立ち上がり、脱力したまま…どこか苦笑いも含んだ仕草で去るエスカレイヤー。

その原因を…鈍感なルビーはまだ知らない。

 

……

 

がっ! びしっ、しゅっ! だだだだだっ…!

「びしょうじょおーーーっ! 潰すっ! ぶっ叩くっ!」

「くっ…それではまだまだルビー殿には及ばぬでござるよっ!」

「黙れえっ!」

 

その晩のトレーニングルームは予約が数珠つなぎとなり、あぶれたミーナは外で素振り1万回を敢行、天地コンビは基地上空から成層圏まで何度もシャトルアタックを敢行。ビートアイドルは徹夜で新曲のブレインストーミングから、筋トレ・ボイスレッスン・演奏レッスンに没頭した。

対ノロイの死闘の昂奮も冷めやらぬ超昂戦士たちだったが…誰も彼もがルビーのガッツに心を揺さぶられ、自分の限界を破るんだと、今夜も額に汗し、特訓に挑む。

 

エスカレイヤーが破った限界の壁を、再び打ち砕いたルビー。

そして今日、超昂戦士たちは2人の勇気を受け継ぎ、その背中を追いかけ始めた。

彼女たちならば、未だ見えない真の敵にも臆することはないだろう。

強く、心優しき戦士達の明日は、希望の光に満ちている。

 

【超昂大戦SS 極限バトル! ルビーVS最強の超昂戦士たち 完】

 




筆者の環藍河です。このたびは、完結まで2ヶ月がかりという超難産・超遅筆のバトルSSに読者諸兄を振り回してしまい…誠に申し訳ありませんでしたああああっっ!!
…いや、見切り発車もいいところです。
筆者の本業も8月下旬から毎週末が潰れ、35連勤を含む超ブラック労働だった事情もありますが、読者さまには「知るかボケえ!」な事情であり…途中で読むのを止めてしまわれた方には伏してお詫び申し上げます。
バトル描写は経験が浅く、オノマトペ(擬音)だけだと間が抜けるし、描写が詳しすぎるとテンポが落ちるし…もっと他の商業作品を読んで勉強せねば、と恥じ入る部分もございます。
でも、血湧き肉躍るルビーと超昂戦士たちのドリームマッチを描く、という環の欲望はだいぶ満たされました。次は読者さまにも共有されるよう、表現力を磨いて参ります。

ストック中のネタは3本。原作の2023年夏イベントにインスパイアされたネタが2本、レイドでもBユニバースでも、ましてやデイリーでもない第4の特設バトルネタが1本です。
ただし、今回の反省を踏まえ、ちゃんとストックを書いてから練り込んでお届けできるよう、少々お時間をいただきます。
超昂大戦を楽しむ皆さまの心に、少しでも響いたならば幸いです。よろしければ次回もお立ち寄りを賜りますよう。
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