機動戦士ガンダムUC外伝:ア・ウィングロストペガサス: 作:ゆっくり歩く人
【UC0079 12/25】
私は医療ベッドの上で意識を回復させた。
私は誰なのだろうか…ここは何処なのだろうか…そう幾つかの疑問が頭の中をウロウロとさ迷い、表現できない気分の悪さを誘発している。
頭が痛い…だが体を動かす気力もない。
そんな中、私の頭の痛みを増す様に声が響く。
「こんな小さい子供に…正気ですか!?」
一人は若い男の声…何か焦っている様だ。
「だが既に処置を施してしまった…上からの承諾も得ている…我々には最早これしかないのだよ……」
もう一人は落ち着いている…少々年老いた男の声だ。
二人の話に出てきた小さい子供…というのは私の事だろうか。
処置というのは…この異様な頭痛に関係しているのだとしたらこう言うしかない。
「クソッたれ」
「「!?」」
フッと体が軽くなると同時に思った様に口が動き出し、目が開いた。
ジロリと声がした方向に目を動かすと、目を覚ました私を見て酷く怯えている男と、困惑している中年男性が居た。
「起き…た!?」
「そ、そんな…早すぎる…麻酔の効果は明日まで有効な筈では……」
どうやら、彼らの予定の中の私は明日まで起きなかったらしい。
だがお生憎様…私はどっこい起きている。
「……外の景色が見たいんだ…車イスを用意してくれないか?」
喋ったり眼球を動かす事はできても起き上がる事も況してや歩く事もできなさそうだ…下半身が動きそうにない。
どうやら…
「ど、どうやら下半身にはまだ麻酔の効果が残っている様ですね……」
そうだな。
「車イスか…持ってこよう……」
中年の男はイソイソと病室から出て行ってしまった。
「それで?」
こちらとしては聞きたいことが山ほどある…私は誰なのか、ここはどこなのか、お前、先程の中年は誰だ、私は何故ここにいるのか等々……
だがここは敢えてひとつに絞るとしよう。
処置だのなんだの…小さい子にこれはどうだの……
「お前は私に何を望んでいる」
彼は私を小さい子…と表現した。
確かに私は小さい…この医療用ベッドを酷く大きく感じる程度には。
だが、到底子供の知り得ない情報が私の頭の中にある。
自分で言うのもなんだが…こう、考え方が微妙におっさんくさい。偏見かもしれないが。
ともかく子供の思考じゃないって事だ。
「それは……」
「是非、試作MSのパイロットになってもらいたい」
喋ろうとしない男のどもる声を押し退け、車イスを押した中年が入ってきた。
MSのパイロット…私が?それも試作ときたもんだ。
「その為の処置…というわけか」
そう考えると処置という単語も、この妙な感覚の事も頷ける…しかしコイツらが何の処置をしてくれたのかは知らんが……。
「返事を聞く前に溝を埋めるとは…仕事が早過ぎるのも良くないと思うがねぇ……」
車イスに乗せられ、行きたい場所を言う前にどこぞへと移動する。
言うまでもなく、その乗ってくれどうこうのMSの場所なんだろうがね。
ゴロゴロとあまり乗り心地の良くない車イスと、処置とかなんだかの影響による気持ちの悪さで気分最悪な私に…ただ単にMSのパイロットになれと言う二人組……。
最悪なんてもんじゃない…不快だ。
「それで…これは?」
だがそんな中でも心踊る要員はある。
試作MSという、その存在だ。
さて…どんなMSが登場するのやら……。
「……これか?」
ハンガーと思わしき設備に入ってまず目に入ってきたのは……
灰色…グレーと言うべきか?それとも鉛色か?
そう、ペイントを一切していない様な…鉛色の一角の巨人が立っていた。
「そう…これが君が乗る事になった試作MS……」
「MS-18NT…ケンプファーだ」