五条兄妹   作:鈴夢

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順接
おかえり、


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―――2017年 12月28日 午前8時

呪術高専東京校 学長室―――

 

 

 

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「……ひとつ。お前は僕の言うことを絶対に聞くこと。破ったら即死刑。」

 

 

朝日が差し込む学長室。

目の前には分厚い書類を片手に記された文言をそのまま読み上げる悟。そしてその傍らでは椅子に腰掛け、じっと洸を見つめる夜蛾の姿があった。

 

 

「ふたつ。呪術を用いて呪いを祓う"呪術師"として働くこと。尚、呪術連からの給与の支払いは一切無し。代わりに呪術高専東京校の管理下の元、衣食住は基本的に提供される。逃げ出したりしたら即死刑。」

 

 

次々と読み上げられる制約らしきもの。内容はまだまだ続くようで分厚い書類の1枚目すらまだ捲られていなかった。

 

「みーっつ……」

「ちょっと待って。この長そうな文全部読んでいくの?ていうか何項目あるの?」

「全部で170項目くらいかなー?僕と学長とおじいちゃん達で夜な夜な決めた約束事だよ?」

「……後で自分で全部見るから大丈夫です。」

 

多分この調子で進めば何時間も掛かるだろう。しかも内容もそこそこ面倒だ。明らかに細すぎる制約。ふたつの項目を聞いただけでだいたい全体の内容は把握出来る。"自由は無い"、たったそれだけの事だろう。常に監視の目に晒され、何か問題を起こせば即処刑。ひとつひとつ言われずとも静かに指示されたものを快く引き受けていれば問題は無いはずだ。

 

 

「お兄ちゃんとの"お、や、く、そ、く"。守れるかな〜?」

「もう今更だよ。争うつもりもないし守ります。」

「うん!素直で宜しい!!」

 

 

悟は洸の言葉に深々と何度もわざとらしく頷くと嬉しそうに頬を緩ませた。未だに目隠し姿は見慣れないがじっと全てを見られているようで何となく恐ろしい。

 

……と、そんなことをぼんやりと考えていた時。悟はポケットから何かを取り出すと洸にそれを手渡した。

 

 

「って訳で!はいコレ〜!"家族カード"渡しとくね〜。上限無しのブラックだし!好きに使いなよ。」

 

 

俗に言う"世界最高峰のブラックカード"……というものだろうか。離反後の10年、洸は一般社会の非術師と同じ生活をしていたこともあり、昔に比べ"このカードがどれだけヤバい"ものなのか理解はできていた。

 

しかし、これを簡単に手渡す悟も悟なのだが……

 

 

 

「悟。お前な…」

「だって可哀想でしょ〜?働くだけ働かせて給料なしとか。オマケに福利厚生はクソだし?どこのブラック企業だっての。」

 

 

夜蛾は呆れたように頭を抱えると深いため息を漏らす。別に悟の管理下であるならばある程度好きにすればいいものの"事の話"はそんな単純な話では無い。

 

特級呪詛師、夏油傑と共にとんでもない事件を起こし(そこまで大きな被害を被ることは無かったが。)即処刑だと総監部から通達が出された人物でもある。五条洸が完全に潔白だと言い切れるわけもないのだ。

 

だが、夜蛾にとって洸は大事な教え子でもある。彼女の学生時代を知る彼からしてみれば許したいという気持ちも少なからず心の隅に有る。しかし厳しい目を向けなければいけないのも事実なのだ。

 

 

「あのね〜、女子はスキンケアとか服とか化粧品とか?色んなもんに金が掛かるんだよ。僕の可愛い妹に我慢させる訳ないっしょ?」

「……はぁ……まあいい。勝手にしろ。」

 

相変わらずの溺愛っぷり。よくよく考えてみれば洸も悟も30手前の兄妹。世間一般的に見ると"いい加減兄妹離れしろ"と言いたくもなる。だが2人の容姿が不思議とそれを感じさせない。年相応に見えない2人は学生時代と大して変化がない。思考に関しては大きな変化がある―――あって欲しいと夜蛾は密かに思うのだった。

 

 

「ちなみに!海外に逃亡しようたって僕が死ぬまで追いかけ回すからね?」

「だからそんな事しないって。」

「OK!じゃあ約束事は置いといて……今後の洸のお仕事についてお話させてね?」

「呪術師として日々呪霊討伐の任に着く、でしょ?建人みたいに。」

「まっさか〜。そんなのつまんないでしょ。」

「……はい?」

 

悟の呑気な口調と台詞に振り回されっぱなしだ。この人が次に何を発するのか全くもって予測ができない。突拍子もないことを不意に口にするし。それこそあの日の明け方、あんな緊迫した状況下の中で"死刑はないよーーん"みたいな、まるで人を弄ぶかのような性格の悪さは相も変わらず健在なのだ。

 

 

「ただ呪術師として呪いを祓うだけじゃないよ?」

「それってどういう事?」

「年明けから1年の担任持ってね?」

「……担任?」

 

 

洸の脳内が"?"で溢れかえる。

突拍子もないと言うのはこういう事だ……

 

 

「そ!担任!今の1年が2年に上がった時の担任候補が居たんだけど、それがまあやる気なくて?だったらそいつには全学年の副担みたいな感じでそれとなく見てもらうだけでいいかな〜って思ってさ?」

 

 

"やる気のない担任候補"……って、一体何者なんだ。というかそんな都合よくそんな事が発生するものなのか?これももしかすると五条悟の権力を無茶苦茶に悪用しているとしか思えない。

 

 

「しかも僕、年明けから忙しくてさぁ〜。代わりに生徒たちを見てもらいたいんだよね?来年入学の1年は僕が見る予定だし。洸は今の1年をそのまま2年まで持ち越すって形かな?」

 

「……私に生徒を見てもらいたいなんて、よく皆が許したね?」

「まっさか〜許してないよ。僕の独断。」

「私教員免許ないよ。」

「僕も持ってないよ?」

「…………」

 

 

―――どこまで無茶苦茶なんだ、この男。

 

 

 

「心配しなくても、基本的に一般教科は補助監督が教えるし。そもそもお前は生粋の理系で文系も強いし頭良いでしょ?体術訓練に呪具の扱い、そのほか諸々オールマイティじゃん?」

「……まあ多分そうだけど…………無理でしょ……」

 

「否定的な顔すんなよ〜。さっき言った通り、僕の言うこと聞かなかったらお前死刑よ?」

「……くっ……」

「カードも使わせてやるんだし、やらないならクソ福利厚生でタダ働きよ?」

「うっ…」

「どうする……?やるよね?"洸先生"。」

 

笑みを浮かべながらグイグイと迫り来る悟。

洸はその圧に押されるように一歩一歩後退していくと壁に行く手を阻まれてしまった。

 

"自分に逃げ場は無い"

ひんやりとした硬い背の壁の感覚と状況がそれをしっかり物語っていた。

 

ここで"ノー"と言えば……"即死刑"……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ヤリマス。」

「はい!決定!話が早いのは良いねぇ〜!」

「教師……、私が……」

「大丈夫大丈夫!見るって言っても1年生は4人だけだし?イけるって〜〜〜」

 

 

余裕余裕♪なんて口走る悟に頭を抱え込む洸。変わらずニヤニヤと呑気な笑みを零す悟を見上げると"これからずっとこんなペースで全ての事が進んでいくのか……"と半ば絶望するほどだった。

 

だが自分は悟に"生かされた"。

その事実は変わらない。……今は大人しく従っておこう。

 

 

 

 

 

「ちょ、やめて、触んないで、近い、」

「いーでしょ?僕達"兄妹"だし。改めて再会のハグ……」

「だから!兄妹だからこそ嫌なんだってば!」

「えぇ〜。お兄ちゃんショック〜……――」

 

 

昔と同じように戯れる兄妹。……戯れるという表現では無いかもしれないが……。

 

そんな懐かしい光景を目の前に夜蛾は微かに口元に弧を描く。

 

 

 

長らく暗かった心の中に一点の明かりが点じられるように――

 

 

 

 

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学長室を後にした五条兄妹。

年末ということもあり高専内の人は疎らだった。

 

時たま補助監督らしき黒スーツの人物に遭遇するも悟の背後を歩く緋眼の洸の姿に慄く者も居たが2人は気にせず次の目的地へと向かう。

 

 

――懐かしい匂い。木造の学生寮。

霜冷えのする寒い風が容赦なく古い建物を吹き募り、相変わらず建て直しさえしていないのか?なんて洸は胸中で呟く。

 

 

 

 

「……よりによって学生寮。しかもこの部屋。」

「文句言わないの。住むところがあるだけマシでしょ?」

 

 

悟を先頭に案内された部屋はかつて洸が使用していた部屋だった。古びたドアノブを捻ると蝶番が嫌な音を鳴らし、埃っぽい玄関が露になる。

 

 

「洸専用の教員室は別の棟にあるよ。そこも自由に使えるし、勿論私物も持ち込みもOK。」

「私物なんて差し押さえられてるでしょ。」

「大丈夫。僕がしれっと持ってきたから。一部だけだけど。」

「………ねぇ、どれだけヤバい権力者なの?」

「だって〜。僕一応"五条家当主"だし?特級だし?余裕で国家転覆もできちゃうし?この通りGLG(グッドルッキングガイ)だし……」

 

自慢げに声を上げる悟を横目に洸は部屋へと足を踏み入れる。長らく使われていなかったとはいえ状態は悪くない。恐らくここ数日の間に悟が整えてくれたのだろう。ベッドシーツにリネン類、古い型の冷蔵庫も問題なく電源が着いているし、よく見ればカーテンも新しい。

 

 

「………………」

「ったく……突っ込めよ。冷たいねぇ。」

 

 

相変わらず冷めた対応に盛大なため息を漏らすも、部屋を静かに見渡す洸の姿に小さな悦びを浮かべていた。この部屋に二度と戻ってくるはずがなかった妹が再び戻ってきた。変わらない背丈、華奢な背中を見つめているとなんとも言えない気分だった。

 

 

「私物ってこのダンボールに入ってるの?」

「そ。」

 

部屋の隅に置かれた2つのダンボール。簡単に中身を確認すると本や衣類が入っていた。そしてその中には"貴重品"らしきものは見当たらなかった。

 

ラルゥに指示を出した通り、無事に諸々は差し押さえられる前に確保出来たようだ。洸は微かに口元に笑みを零す。

 

 

「それと机の上に置いてるのは念の為僕が確認させてもらったものだよ。呪物とかだったら上のおじいちゃん達が怪しんで面倒だし。」

 

テーブルに視線を移すと見慣れたものが置かれていた。やけに古びた書籍や御守り。本は単純に古本屋で見つけたもの、そしてお守りは家族たちと初詣に行った時に購入したもの――そしてその中に一際綺麗な長方形の小箱が置かれていた。

 

中身は夏油から20歳の誕生日に貰ったネックレスだった。

 

「……"ソレ"。お前の?」

「まあ、一応。」

「高そうなネックレス。……明らかにお前が買ったもんじゃないだろうけど……」

「………………」

「まあいいや。とりあえずお前のものなんだから返却ね。」

 

 

洸はテーブルの前に腰を下ろすと箱に手を伸ばし蓋を開けた。キラキラと輝きを放つダイヤの石が先端に着いており、ふと夏油の顔を思い出した。

感傷的になっている訳では無いが誕生日のことを思い出すと不思議と胸がチクチクと痛む。彼の優しい表情が、言葉が、抱擁が――記憶が脳裏に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それと……はい"これ"。」

 

そんな洸の静かな雰囲気を壊すように悟は遮る。コツンっと何かの角を洸の頭にぶつけると地味な鈍痛に顔を歪めた。

 

 

「痛っ……ちょっと何ぶつけて……―――って………」

 

 

 

 

手渡されたそれを受け取る。

それは傷の入った木製の写真立て。埃一つ被ることなく、綺麗に保管されていたであろうそれとは……

 

 

 

 

「……何でこの写真…」

 

 

 

七海と灰原――そして洸。

あの夏の日、沖縄で撮ったお気に入りの写真だった。

 

 

「お前が離反した後。この部屋片付けてた時に見つけたんだ。」

「……捨てなかったの?」

「酷いなー。そこまで薄情じゃないよ?僕。」

「…………ッ……」

 

 

"嬉しかった"

まさかこの写真がきれいな状態で保管されているなんて驚きだったし洸にとっての宝物だった。だけど当時はこの写真を視界に入れることすら辛く"伏せていた"事実。もう二度と見ることも無いと思っていたし、実際記憶の中からも消えかけていた写真だ。

 

無邪気に笑う若い頃の自分。両隣には大好きな親友。2人の腕を引き寄せ天真爛漫に笑顔を咲かせるその姿――それを見ると泣きたいほど遣る瀬無い感情が体を熱くさせる。

 

写真に映る今は亡き青年。

洸は彼の顔を慈しむように親指を滑らせ眉を顰めた。

 

 

――あの日に帰りたい……なんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「洸。」

「……ん?」

 

 

そんな時、座り込む洸の傍らで悟が柔い口調で呟いた。

 

 

 

 

「"過去と他人は変えられない。…だけどね?未来と自分自身はいくらでも変えられるよ"。」

 

 

 

 

「…………うん。」

 

 

 

 

 

兄の大きな手が妹の頭を優しく撫でた。

 

 

 

 

 

「……おかえり。洸。」

 

 

 

洸の緋眼が悟を見上げた。

兄は優しく笑っていた。きっとこの言葉は本心。

 

 

裏切った自分に"おかえり"だなんて。

私は"ただいま"と言っていいものなのか――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ンだよ。朝っぱらから物音うるせーし、この部屋誰もいねぇ……」

 

 

 

 

刹那、凛とした太い女性の声と足音が室内に響き渡った。

 

洸と悟は直ぐに玄関へと視線を向けるとそこに現れたのはスポーツジャージ姿にポニーテール、リムレスの丸眼鏡を掛けた少女。パッと見さっぱりとした雰囲気を放つ美人。

 

 

あの洸もよく知る人物だった。

 

 

「おはよう!真希。」

「んだよ悟かよ。朝っぱらから無人の部屋で―――ん?」

 

真希はもう1人の気配に気づくとヒョイッと顔をのぞかせた。悟の傍らで座る人物に真希自身も見覚えがあった。

 

 

「まだ病み上がりなのに朝から鍛錬!ナイスポテンシャル!イイねぇ〜!五条先生嬉しいよ♪」

「……ん、……ん?……ん!?」

 

真希は乱雑に靴を脱ぎ捨て慌てた様子で室内へと入り込む。そして悟と瓜二つの女性の姿をしっかりと視界に収めたその時、真希はこれでもかと大きく目を見開いた。

 

 

「ちょっ!おま…っ…まさか!?」

「五条洸です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁあ!?!?!?」

 

 

 

学生寮に真希の大声が轟いたのだった。

 

 

 

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「ッざけんな!!頭おかしいだろ!!意味わかんねーよ!!」

「まっ、真希さん!落ち着いて!怪我も完治して……」

「うるせぇ!離せよ憂太!私の部屋の隣に"離反者"が住むなんてイカれてるっての!」

 

 

真希の叫びを聞いた1年が続々と洸の部屋の前に集まっていた。

 

乙骨、パンダ、狗巻。怒りなどが混ざったやきもきする気持ちを胸いっぱいに広がせ、混乱する真希を鎮めようと必死に3人は宥める。

 

 

 

「"元"離反者ね?……あ!それと報告が!年明けから洸が担任だよ?」

「…………は?」

「だーかーら。臨時で!僕の妹が真希達の担任―――」

 

 

ついに悟の勝手すぎる発言に痺れを切らした真希。容赦なく悟の服の襟元を掴むと鬼の形相で睨みつけた。

 

 

「……オイ馬鹿目隠し。マジでぶっ飛ばすぞ。」

「なんでよー?ていうか真希、洸の事知ってるでしょ?禪院家でお世話になったことあるし。仲良くしてよ〜。」

「今関係ねぇだろ!」

 

 

 

「……真希。落ち着けって。まだ完全復活してないだろー?あんまりバタバタ動かない方がいいぞ〜」

「しゃけしゃけ!」

「そうだよ!パンダ君と狗巻君の言うとォッ!?ガハッ!!」

 

 

殴り掛かる手前の真希の腕を必死に掴み続けていた乙骨のみぞおちに容赦なく落ちる真希の拳。力なくその場に座り込む乙骨を横目に洸は小さく息を漏らした。

 

 

「ていうか!そもそもコイツ"処刑対象"だったんだろ!?なんでここに居るんだよ!」

「真希。一応"先生"ね?」

「誰がこンの離反者!」

「………まーき。」

 

 

平然を装っているであろう悟の声色と口元の表情。恐らくこれ以上喚き散らせばどうなるか予想が着いてしまった。多分めちゃくちゃ論理的な事を言われ論破されるに違いない。それはそれで嫌だ、面倒だ……

 

 

 

 

「……はぁ……うっぜぇ……」

 

 

 

何となくその場に居るのが苦しくなった真希は5人に背を向け踵を返した。

 

そんな態度をとるのは誰もが理解出来ることだ。すくなくとも1年の3人は彼女に同情していたのだった。

 

 

 

 

「……悪いな〜?……えーっと、悟の妹の……ヒカル?真希はいつもあんなだから許してやってくれ。」

「……明太子…」

「えっ!狗巻君もどこ行くの!?」

「放っとけ憂太。あとで俺が追い掛ける。」

「でも……」

「大丈夫だ。」

 

真希を追い掛けるように今度は狗巻が走り去っていく。乙骨は動揺を見せるもののパンダは至って平然だった。

 

 

 

「……あの。五条……先生の妹さん。」

「はい。」

 

 

少し間を開けたあと、次は乙骨が口を開く。しかも洸の目の前へと真っ直ぐと立ち、凛とした険しい目つきだった。

 

 

「ごめんなさい。いきなりこんな態度をとって。……だけど正直、あなたの事はまだ分かりません。真希さん達を傷つけた夏油傑(あの人)の仲間だったんですから。」

「……憂太」

「パンダ君も傷つけられたんだ。下手をしたらみんな死んでた。」

 

彼の隣で困惑を見せるパンダ。しかし乙骨は引くつもりもなく、ハッキリと言葉を放つ。

 

 

 

「あなたが違う道を選んでいたら……みんな傷つかなかったかもしれない。」

 

 

乙骨の大きな瞳は感情を含んでいた。若者のような涼しさで鋭く澄んだ目の中に、強い何かを感じる。洸でさえも彼に何も言い返せなかった。

 

 

……彼があの夏油を追い込んだ。

それもそのはずだ。この青年は芯がある。強い気迫を感じる。

 

 

 

 

「……では、失礼します。」

「えー、憂太もどっか行くのかよ〜。……悟、俺に任せとけ。」

 

「うん。悪いね?パンダ。」

 

 

 

丁寧に頭を下げ、その場から走り去る乙骨。そして追うパンダ。先程まで騒がしかった廊下はがらんと静まり返り、吹き荒れる冬風が窓枠を揺らす音だけが嫌に鳴っていた。

 

 

 

 

「洸。」

「……何。」

「頼むよ?僕の生徒達。」

「幸先悪いスタート。仕方ないけど。」

 

この状況の後に"生徒を頼む"なんて。どう考えても幸先悪すぎるし、本当に務まるのかも分からない。

 

 

「周りからの信頼はゼロ。というよりマイナスからのスタートだ。」

「…………」

「それでも僕はお前を信じて高専に置く事を決めた。お前の本心なんて全部把握してる訳じゃないし、まだお前がなにか企んでるかもって上は未だに思ってる。」

 

果たしてマイナスからゼロに。ましてやプラスにまで転じることは有るのだろうか。全く受け入れられそうにないし、といっても受け入れられると思いながら仕事をするのは間違いかもしれない。

 

あくまでも"離反者、裏切り者"出会った事実は変えられない過去。それは先程の兄の台詞そのままだ。未来を、自分を変えるしかない。本当に信用されたいのならばの話だが。

 

 

 

「僕の生徒達や仲間。また裏切ったらマジで次は無い。」

「……はい。」

「それとお前を命懸けで守ろうとした七海の気持ち。アイツの覚悟を踏みにじったら次こそマジバトルね?」

「…分かってます。」

「ん。宜しい。」

 

 

洸の中で既に覚悟は決まっていた。また裏切るなんてことはまず無いし、今度こそそんな事を起こせば終わりだろう。

 

そして命懸けで護ろうとしてくれた七海。洸は彼の気持ちをこれ以上踏み躙るつもりなど一切なかった。

 

 

 

 

――ぐるぐると巡る様々な感情。

 

そして洸はついに。このタイミングでずっと気になっていたことを口にした。

 

 

 

 

 

「……ねえ教えて。悟兄。」

「なにかな〜?」

 

 

廊下に通る洸の透き通った声。

悟を見上げる緋眼。

 

 

「"なんで私にそこまでするの?"」

「え〜?言ったでしょ?僕の妹だからって。」

「……"本当に"それだけ?」

「それだけって?」

「………………」

「何だよ、ハッキリ言えって。」

 

 

ずっと引っかかっている事。それは自分の秘匿死刑が無くなったことや異常な程に自分のために立ち回る悟の行動について。

 

性格が昔から悪すぎるのは百も承知。それは誰もがわかっている事だ。溺愛している"妹の為"ならと昔から口癖のように愛されてきたのはわかっている。だがそれさえも洸はずっと引っ掛かっていた。

 

"だって、私の兄は死ぬほど性格がクソ"なのだから。

 

絶対に裏はある。

 

 

「……やっぱりなんでもない。今の言葉は忘れて。」

 

 

いつか分かるだろう。その理由は。

やはり今では無い気がする。今はとにかく生きるため、兄の言うことを素直に聞いておけばいい――

 

 

 

 

「んじゃ!荷物片付けなよ?また昼頃に覗きに来るからさ。」

「いいよ別に来なくて。」

「昼飯どーすんの?今日学食無いよ?」

「…………」

「食べたいもの決めといて?ひと仕事終わったらどこか連れてってやるから。」

 

 

 

"それじゃ僕忙しいから〜"と手を振りながら立ち去る悟。洸はそれを静かに見据え、兄の背中が見えなくなるまで廊下で立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

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「―――ったく。さすが僕の妹。

……"勘が良すぎて困っちゃうねぇ"……。」

 

学生寮を後にし、目元を覆う目隠しを軽く持ち上げると蒼が日光に反射しキラキラと輝きを放つ。

 

 

 

 

「相変わらず最低最悪な兄貴ってまだ思ってるんだろうな〜アイツ。……ま、仕方ないか。

 

 

 

 

――"事実だし"。」

 

 

 

それは冬雨の後の日射しを思わせる、いきいきとした顔色だった。だが"事実だし"と言い放った時の声色は随分暗く、低いトーンで放たれたのであった。

 

 

 

 

 

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――午前11時45分

 

 

 

 

 

 

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「――とりあえず、こんなもんかな。」

 

 

 

空になったダンボールを潰し、折り畳みながら部屋を見渡した。

 

小さな棚に収められたほんの数々、簡易的なクローゼットには服が数枚のみ。驚くことにダンボールの中には学生時代に使っていたものが少しだけ残されていた。きっと離反時に部屋を片付けたという兄が密かに隠し持っていてくれていたのだろう。

 

"そういうところ"は何だかんだ嫌いになれない。

 

 

 

「((……写真、飾ろうかな。))」

 

 

先程受けとった写真立て。洸はそれを再び手に取ると口元に笑顔を見せた。

 

変えられない過去、囚われた過去。だがこの時の自分はまだ生きている。七海も灰原も――

 

 

「…………はぁ……」

 

 

何となく擽ったい気持ちを潜ませつつ、昔と同じ場所に写真立てを飾ってみる。窓から差し込む陽の光が3人を照らし、何だが嬉しくなってしまった。

 

 

そして洸は隠し持っていたある物をポケットから取り出す。忍ばせていたのは"エーデルワイスが収められた栞"。結局1度も栞として使ったことはなく御守りのように肌身離さず持ち歩いていたそれは灰原からの贈り物だった。

 

唯一、これだけは置いていくことが出来なかった。棄てることも――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"あれ〜、元離反者じゃん"。」

 

「ヒイッ!」

 

 

 

 

刹那、部屋の玄関口から女性の声が響く。あまりにも気を抜いていたせいもあるのか全く気配に気づくことも無く、突然の音に洸は間抜けな声と共に大きく肩を揺らしたのだった。

 

 

「……硝子先輩。」

「ビックリしすぎ。邪魔するよー。」

 

 

白衣を纏った女性。それはかつて同性で一番慕っていた人物――家入硝子。

 

最後に会ったのは10年も前のことだ。新宿の喫茶店で再会したあれっきり。よく顔を見るとかなり疲れているのか目の下にははっきりとクマが確認できた。

 

 

「……まさかまたこの部屋に戻ってくるなんて。五条(アイツ)も性格悪いね。」

「生かされただけでも感謝してます。」

 

家入は懐かしむように部屋を見る反面、またこの部屋に洸を戻すなんて……と悟の性格の悪さをしっかりと理解していた。

 

 

 

「にしても、マジでやってくれたね洸。」

「……謝っても謝りきれないです。」

「こちとら三日三晩不眠不休。ある程度落ち着いたけど。まぁ幸いにも死傷者は最小限だった。一応、洸のお陰でね。」

「……いえ……」

「今更そんな顔するなよ。実際、洸ら夏油と組んでたんだ。その過去は消せないよ。」

「…はい。分かってます。」

 

 

家入の言葉には昔から刺さるものがあった。悟とは違い正論をはっきりと嫌味なく発してくるこの感じ。兄でさえ見透かすことが出来ない"奥底"を家入は容赦なく見透かしてくる。

 

だからこそ洸は曇りなく受け取ることができるし、家入を心の底から信頼していた。

 

 

「…………」

 

 

気まずそうに俯く洸。

家入はそんな彼女に視線を向けたとき、彼女の手元にふと視線を落とした。

 

陽の光に反射する"それ"。

家入がよく知るものだった。

 

 

「へぇ〜。やっぱり"それ"はちゃんと持って行ってたんだ。」

「…え?もしかして覚えてるんです?」

「そりゃ勿論。お前が嬉しそうにはしゃぎながら"灰原に貰った"って夜な夜な部屋に押しかけてきただろーが。」

「…その節は大変ご迷惑を。夜中に押し掛けたやつ。」

「別に嫌なんて思ってなかったよ。……あの時の洸の顔、一生忘れらんないよ。本当に。」

 

 

夜遅くに部屋をノックする洸。扉を開けると嬉しそうに栞を両手で手に取り満面の笑みで報告してくれた当時のことを脳裏に浮かばせた。

 

子供のようにはしゃぎ、初めての贈り物に興奮冷めやらないという感じ。そのまま深夜まで家入の部屋で恋バナが繰り広げられた時のこと――

 

その時の洸を見た時、単純で子供っぽいところは彼女らしいと。兄の悟とはまた違う様子に洸の本当の姿を見た気がした。同時にこの子はきっと……

 

 

 

 

 

「……だから私はあんたはきっと堕ちないって信じてた。」

「硝子先輩。」

「私は最初からね。」

「…………っ……」

 

 

家入の艶気を含んだ低い声。

そして僅かに緩む口元――

 

 

 

 

「"おかえり。洸。"」

「…………」

「帰ってきてくれて、私は嬉しいよ。」

「……ありがとうございます。硝子先輩。」

 

 

"やっと言えた"と。家入は満足気だった。嘘偽りない本音だった。可愛い可愛い後輩が漸く戻ってきてくれたのだから。

 

 

「これで私の仕事も半分に減るな。」

「それが本音ですよね?」

「他者を治す反転術式を扱えるのは私とお前……あとは乙骨。」

「あの子も?」

「そう。だけど乙骨は完全に前線向きだからね。それを言えば洸も同じだけど。」

「出来ることはなんでもお手伝いしますよ、先輩。」

「ははっ……頼りになるね"相変わらず"。」

 

 

他者を直せる反転術式は貴重だ、稀だ。しかも洸は乙骨と同じく前線に立つことができる能力を併せ持っている。兄の悟でさえ他者を治すことは出来ない。彼女が見方となれば怖いものなどどこにも無いと言えるほどに心強く、頼りになる存在だ。

 

 

「……これからも、よろしく頼むよ。洸。」

 

 

家入は真剣な眼差しで彼女の緋眼を見つめたのだった。

 

 

 

 

 

 

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――午後21時過ぎ

高専内 校庭――

 

 

 

 

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長い注射針のように遠慮なく突き通ってくる寒風。辺りは一面の雪景色。学生時代の定位置。朝昼晩問わず、校庭の端の段差にいつも暇さえあれば座っていた気がする。

 

もちろん外には人っ子一人居らず、酷く寒い事以外は彼女にとって好都合だった。

 

 

 

 

「((高専内は肩身が狭いし、悟兄の許可がないと外にも出られないし…ていうか寒い……もっと服借りればよかった……))」

 

 

悟に借りた明らかに高級そうなダウン。そして黒のカシミヤのマフラーを顔を覆うように巻き、体を小さく折りたたむように座り込んでいた。

手持ちの黒のスウェットパンツは地味に薄くて寒い。履き潰した白いスニーカーはボロボロになっていたがこれは菜々子と美々子から数年前に誕生日で貰った大切なものだった。

 

 

 

「((あまりウロウロしてるとみんな怖がるし。幸いにも呪力察知はされないからこっちが気を使って行動すれば鉢合わせはしないけど……))」

 

 

 

まるで高専に入学した初日の時のように疲れていた。多分布団に潜ればすぐに眠れるかもしれないが昼間の真希の様子を見るとそれなりに気を使ってしまう。

 

 

「……はぁ……疲れ――」

「"こんばんは"。」

 

 

 

 

 

 

 

刹那、背後から男の声がした。

洸は体を縮こませたまま顔だけ背後へと向けるとその人物の名を呼ぶ。

 

 

「…"建人"」

 

 

いつものスーツ姿にコート、チェック柄のマフラー。そして革製の手袋を纏った七海の姿。特徴的な眼鏡は外されており、優しい彼の目元が確認できる。

 

恐らく任務帰りだろうか。手元には鞄と紙袋が握られており、退勤したサラリーマンの姿そのものだった。

 

 

 

「隣、良いです?」

「勿論……ドウゾ……」

 

 

隣に腰かける七海。

実は会うのはあの時ぶりだ……死刑執行される自分を救い出そうと駆け抜けてくれたあの時。

 

普通に気まずい……

 

 

 

「……よく私がここに居るって分かったね。」

「分かりますよ。」

「…………」

「貴女がいる場所はだいたい決まってますから。"部屋にいるのが気まずくて"外にいるだろうと思っていましたし。」

「……誰から聞いたの。」

「五条さんです。」

「((……あの人…相変わらずベラベラベラベラと……))」

 

今朝の真希との一端やら何でもかんでも話しすぎだ。まあ昔からそうなのだから今更だが……これからこんな事がまた続くのかと思うと本当に嫌になりそうだ。

 

 

 

「あと、よかったらこれを。」

 

紙袋を手渡す七海。

洸はそっと手を伸ばし、袋から飛び出している中身の物を目にした瞬間、目をキラキラと輝かせた。

 

「……えッ、いいの?」

「受け取ってください。貴女以外誰も食べませんし。」

 

中身は洸の好物だった。

所謂"ぶっ飛んだ激辛食品"。七海の言う通り、洸以外口にすることはないだろう。

 

「ありがとう。……あ…お金。私手持ち無くて。」

「要りません。」

「でも……」

「素直に受けとってください。色々探し回ったんですから。」

「……ありがとう…ございます……」

 

 

この忙しい時に探し回ってくれたのだろうか。確か七海は任務続きで明日も任務が入っていると聞いていた。"こんなこと"をしている場合ではないだろうに。……だけど彼はこの為に、洸の為に動いてくれた。

 

思わず照れてしまい、挙句には顔を背けてしまった。再びマフラーに顔を埋め、紙袋を優しく抱きしめる。

 

 

 

「……あの……けん――」

 

 

再び礼を言おうと口を開いたその時、左隣から七海の腕が伸びてきた。洸の体はあっという間に彼の体に覆われ、咄嗟の出来事に声を失う。

 

 

 

 

「―――ッ!!」

「会いたかった。」

「ぇ……っと……建…人……」

 

 

――七海の身体はこんなに大きかっただろうか?洸自身も170程身長はあるし、そこまで華奢では無い。学生時代に1度だけ抱きしめられたことはあるがここまで重厚な感じは無かった……

 

 

大きくなった彼の熱い抱擁に洸は戸惑うばかり。

 

 

 

 

「……貴女の気配を感じた時、私はまた呪術師に戻ろうと決めたんです。」

「………私の?」

「はい。貴女が生きていると。どこかで生きていると。そう思ったらいても立っても居られなくなった。」

 

 

左耳で呟かれる、彼の台詞。

 

 

 

「……"霊媒師"、"パン屋の女性の蠅頭"」

 

洸の表情が少しずつ変化していく。

 

 

 

「"レモンクリームチーズのカスクート"」

 

あのパン屋での出来事……

 

 

 

 

「"甘いものが苦手な美しい銀髪の女性"――」

 

それは確信へ。

 

 

 

 

「……っ」

「どう考えても貴女以外思い当たらなかった。」

「……それはたまたま……」

「いえ。意図しての事だと私は考えています。この件に関しては誰にも話したことはありませんが……」

 

 

七海が高専を辞め、呪術師を離れ、一般企業に勤めていたあの時のこと。

 

通っていたパン屋での出来事。

 

あれは全て、洸が意図的に行ったことだと。

 

なぜなら洸は七海の呪力を感じ取っていたのだから。そう考えるのが自然だった。

 

 

 

 

「貴女は最初からこの結果を望んでいた。夏油さんを止めるつもりだったのでしょう。」

「………それは…」

「誰にも言いません。あくまでも私の予測に過ぎない。それに、もうこの過去は終わったことです。わざわざ再び毟り返すつもりはありません。」

 

洸はあの時以来、漸く七海の目元へと視線を向けた。赤い瞳は真っ直ぐと彼を見つめた。そして応えるように七海も洸を優しい眼差しで見つめる。

 

 

 

 

「"私は貴女が戻ってきたという事実。……それだけで十分ですから"。」

 

 

 

久しぶりに七海の愛に触れ、触るだけで飛び上がりそうなほど孤独と悲しみで敏感になった皮膚が温かい膜で包まれた。寒さが吹き飛ぶほどに、とにかく暖かかった。

 

 

 

 

 

「…………ッ……はぁ……っ……」

 

 

無意識に涙が溢れ出す。

止まらない。止めようとしても止まらない。

 

 

 

「……ッ……うぅ………けん、と……っ」

「大丈夫です。気が済むまで泣いてください。」

「……ごめん、なさいっ……本当に…ッ…ごめん……」

「何度謝れば気が済むんですか、全く……」

 

 

まるで身体中の水分を絞り出すようにして泣く洸。七海は困惑交じりの笑みを微かに浮かばせるとコートのポケットからハンカチを取り出し、それを優しく拭うのだった。

 

赤い瞳から溢れる美しい雫たち。

時たまそれを指ですくい上げ、七海は彼女の頬を優しく撫でた。

 

 

「苦しみも悲しみも貴女の全てを私は愛してます。」

 

優しい声だった。

 

 

「何年経っても変わらない。貴女は……私の"光"です。――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……お帰りなさい、洸さん。」

 

 

 

「ッ……うん……"ただいま"。建人。」

 

 

 

やっと言えた、漸く口にできたその言葉。

 

 

おかえりと出迎えてくれるその声に、洸は漸く心の底から"ただいま"と応えることが出来たのだった。

 

 

 

 

 

┈┈┈┈┈

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