ディオの母親に転生したからディオを英国紳士に育てる   作:黄金と漆黒の波紋失踪

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時系列的にはオリ主がチベットへ向かった後のお話。

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その頃のディオとジョナサンとツェペリ男爵 その①

1888年11月某日。

酒場『ザ・ワールド』

 

 

 

「どういう事だ…」

 

 

ロンドンより帰郷し久方ぶりの我が家へたどり着いたディオだったが…。

 

そこには灯りのついていない『ザ・ワールド』があった。

 

おかしい、不自然だ。

 

なにより母がこのディオの帰宅に気づかない訳がァない、母ならば帰宅するこのディオの気配を半径20mから感じ取り愛という名の抱擁を仕掛けてくるからだ、それが今までずっと続いていた親子の触れ合いだった。

 

だからこの状況は不自然極まるのだ。

 

「母さん!!!」

 

ディオらしくない焦りの声だった。

ドアを開ける時と閉める時は優しく!と母に言われていたのも忘れ、『ザ・ワールド』の扉をバンっと開け中に入ると、この酒場の中だけがまるで時が止まったかのように静まり返っていた。

 

灯のない酒場。

客のいない酒場。

母のいない我が家。

 

生を感じられない奇妙な空間だった。

 

「何かが、何かが起きている…このディオの人生は母・ソフィアと共にある…このディオの21年という人生は!!母・ソフィアによって作られたと言っても過言ではない!!!そしてその母さんがァ~~~!!!このディオに心配をかけさせまいと何処かに出かける時は些細な事でも懇切丁寧に面倒臭がらず事前にきちんと知らせてくれていた母さんがァ…このディオをォ!世界の何よりも誰よりも愛してくれている母さんがこのディオに何も言わずに突然いなくなるなんて事はァありえないのだァアアアアアーーーーー!!!!!」

 

ピシャンと雷が落ち、ポツポツと雨が降り始めた。

やがて雨はディオの心情を表すかのように激烈な豪雨となった。

 

「母さん…」

 

ディオの脳裏を走馬燈の様にこれまでの母との思い出が浮かんでは消えていく。

まるで母との生活の全てが夢だったように、初めから『ソフィア・ブランドー』という人間が存在していなかったかのように。

 

 

「ディオ!」

 

 

そこに駆け付けたジョナサン。

ディオとジョナサンは奇妙な縁で結ばれている。

親友、戦友、それ以上の奇妙な友情で。

故にジョナサンはディオの激しい感情の変化を感じ取りこの場に駆けつけたのだ。

 

「ジョジョ、母さんは、『いなかった』のか?」

「ディオ、何を言って…ッ!?」

 

一瞬ジョナサンには暗闇の中で立ち尽くすディオの姿が別の何かに見えた、まるで悪魔の様な恐ろしい何かに…。

 

そして親愛なる友の頭部を抱きしめ死にゆく自分自身の姿が見えてしまったのだ。

 

戸惑い、恐れ、怒り、哀しみ…様々な感情に支配されかけるもジョナサンは勇気を出し、自身を奮い立たせディオに駆け寄った。

 

「探そォーッ!ソフィアさんがいないなら探すだァーッ!ディオォーーーーー!!!」

 

ディオを、我が友を手放してたまるものかとジョナサンは今ある運命を掴み取った。

 

「あ…あぁ、そうだよな…まずは母さんの部屋を調べなくちゃな、何かあるかもしれない…おっと、お前は別の場所を探せよジョジョ!母さんの部屋に入れるのはこのディオだけだ!」

「わ、わかってるよディオ」

 

フンと鼻を鳴らし母の部屋へと向かう友の後姿を見送り、いつものディオに戻ったと内心ほっとしたジョナサンはさっそく酒場の中を調べ始めた。

 

「店の中は綺麗に整理されてるのに随分と食材が少ない、まさか店を畳むつもりだったのか?」

 

ジョナサンの知るソフィアならばもしも店を畳むとするならば真っ先に報告してくれるはずだ。

 

それすらなく突然いなくなるのはおかしい、この状況は奇妙だ。

奇妙といえば、ソフィア・ブランドーという人も奇妙な人だった。

 

両親と幼い自分を救ってくれた命の恩人であり、親友ディオの母。

不思議な力、波紋法を教えてくれた戦いの師匠であり、今のジョナサンとディオの戦いの基礎を作り上げてくれたのが彼女だ。

 

そのジョナサンとディオが二人掛かりで挑んでも勝てないというとんでもなく強い女性であるが…。

 

「ソフィアさんはあの強さをどうやって手に入れたのだろう…いや、強さなんてどうでもいいんだ…何か僕はとんでもない事を見逃している様な気がする…そう、僕だけじゃあない…ディオも、父さんも、母さんも…みんな…」

 

ソフィアは太陽の様なあたたかさを持つ心の強い人だ…恋人のエリナとの事でアドバイスをくれたり、愛犬のダニーを可愛がってくれる心の優しい人だ…女手一つ夜の酒場を切り盛りしながらディオを育て上げた愛情深い人だ…若過ぎる友の母に思春期のジョナサンはドキッとした事が多々ある…そう、あれはジョナサンがまだ物心つく前の事だ。

 

命の恩人としてソフィアを両親から紹介された時の事だ。

初対面のソフィアを見た時ジョナサンは素直にこう思った。

 

『わぁーとてもきれいなおねえさんだー』と。

そう、当時のソフィアは『今と変わらぬ美しさだった』。

 

「おかしい…あの時の僕は5歳くらいだぞ…あれから15年…どうしてソフィアさんはあの頃のまま姿が変わっていないんだ…」

 

何故今まで疑問に思わなかったのか。

だが、だとするなら、ソフィア・ブランドーという人はいったい何なのか?

 

このジョナサンは新進気鋭の探検家であり考古学者でもある。

神話や民話、伝説など空想の生物などにも造詣が深く、一つの考えが浮かんだ。

 

 

 

「だめだ、母さんの部屋には何もなかった…ん? どうしたジョジョ、何か分かったのか?」

 

部屋に戻ったディオはジョナサンの様子がおかしい事に気づいた。

ジョナサンの顔はディオに考古学の事で新しい仮説を思いつきそれを知らせる時の表情に似ているが…何かおかしい。

 

「ディオ、今から僕は荒唐無稽で突拍子もない考えを話すが聞いてくれるかい」

「それが母さんの行方を捜す手掛かりとなるならな」

「それが君を怒らせるような考えでも?」

「くどいぞジョジョ、さっさと話せよ」

 

二人は店のテーブル席に座り、ジョナサンはディオに殴られる覚悟で考えを話した。

 

「結論から言うよディオ…ソフィアさんは古の時代から吸血鬼と戦い続ける運命を背負った太陽の一族の末裔だったんだよ!!!おそらく波紋法はその太陽の一族の秘伝の技でそして今!!!太陽の一族の宿敵である吸血鬼がこの国にやって来たんだ!それを感じとったソフィアさんは独りで吸血鬼との戦いへと向かった…波紋法を学んだけれど未熟な僕らじゃあ足手纏いになる…だから、たった一人で…!!!!」

 

ジョナサンの仮説を聞いたディオは一瞬唖然として、ため息を吐いた。

 

「おいジョジョ、何を言って………」

 

ジョナサンを咎めようとした矢先、ディオは何かを思い出していた。

 

「……む、ムゥ…いや、まさか…だが…あ、あり得るかもしれん、その話…」

「え、ええ!?ほ、本当かいディオ!!」

 

怒られるかなと思いながら話したジョナサンもディオの返答に驚いた。

ディオは深刻な顔で深くうなずき、その話を信じる所以を話してくれた。

 

「あ、あぁ…母さんから初めて波紋を教えられた日の事だ。波紋はまるで魔法みたいな力だろう?だから当時の幼い俺は思って当然な疑問を口にしたんだ」

 

『はもんほーってなに?』

 

「ってな…母さんはこう答えてくれた」

 

『はもんほう、波紋法はね、特殊な呼吸法で血液に波紋を起こして太陽と同じ生命エネルギーを発生させる凄い技だよ、母さんの若さの秘密もこの波紋にあるの、使い方次第では波紋疾走で人間なんてじゅっ!て溶かしちゃうくらい危ない技だからね、使う時は注意が必要、もちろん小っちゃなディオには危なくてまだまだそんな波紋疾走なんて教えられないけどねェ、まずは呼吸から始めてみようか』

 

「若さの秘密…人間を溶かす程の…危険な技…波紋疾走!!!」

 

ジョナサンは驚いた。

ジョナサンとディオが教えられた波紋法は痛みを和らげたり、相手の怪我を早めに治したり、身体機能を強化するサポート的な技術であり、ディオの語る話の中でのソフィアの言う若さを保つ秘密の技とか人間を溶かす様な恐ろしい技、おそらくは戦闘用の波紋法、波紋疾走の話等は初耳だった。

 

「母さんはこうも言っていた」

 

『だけど、その危険な技を使って良いのは吸血鬼とゾンビ、あとは柱の男…は、まだ早いか…とにかく、普通の人に向けて波紋疾走したらダメだからね、母さんとの約束だよ、いいねディオ』

 

「吸血鬼とゾンビ…柱の男?」

「柱の男が何なのかはまだわからんが、母さんが吸血鬼と戦う戦士というお前の考えは当たらずとも遠からずだろう、母さんは吸血鬼と戦う為に波紋法を習得していた、そして俺を、俺たちを次代の波紋の戦士として鍛えていたのだろう…だが…ッ!!」

 

グっと拳を握り締めるディオ。

 

ソフィアは二人を置いてたった一人で行ってしまった。

それどころか、ディオとジョナサンは波紋の一族が戦うべき吸血鬼の話や波紋疾走の事を聞かせてもらえていなかった。

 

「クソがァ…!!!!」

 

もしもディオが今よりも強ければ母から波紋の起源や吸血鬼との戦いを聞かせてもらっていただろうか。

そして今この時、吸血鬼との戦いに連れて行ってもらえたのではなかろうか。

もしも、今の自分がもっと強ければ…。

 

 

否、もしもの話は止めだ。

 

 

連れて行ってもらえなかった今のこの現実を受け止めるのだ。

そしてその吸血鬼とかいう奴をぶちのめす事を考えるべきだ。

 

「今日ほど自分が憎たらしいと思った事はないぜ!おいジョジョ!その吸血鬼とかいうクズをぶちのめしに行くぞ、今すぐにだァ!!!」

「ディオ…」

 

今のディオは怒りのあまりに冷静ではなくなっている。

柱の男という謎の言葉が何なのか分かっていない上に何の対策もなしに旅立てば吸血鬼との戦いで返ってソフィアを窮地に追い込む事になるかもしれない。

 

あってはならない事だが自分たちが敵の人質となりソフィアを失うような事があればディオは二度と立ち直れないだろう。

 

いつものディオならそれくらい考え付き…はしないか…。

彼は母・ソフィアの事になると頭のネジが何本か外れてしまうタイプだから…。

だからジョナサンはディオを落ち着かせる為、『優しく』語りかけた。

 

「なぁディオ、僕もその意見には賛成だけどソフィアさんから教えてもらっただろう、『急いては事を仕損ずる』ってさ」

「ジョジョォ…それをお前が言うのかァ!いつも感情的でとんでもない爆発力を発揮する重機関車の異名を持つお前がァ!!!」

「ソフィアさんの事を考えればこんな会話を続けるよりも吸血鬼に対する策を考えた方がいい。僕と君が言い争うこの時間は一体何なんだ?そう、時間の無駄だ、無駄無駄無駄…無駄な事を嫌う君らしくないぞ、いつも冷静な君は何処へ行ったんだい?『ジョジョ、こういう時こそ冷静に、だ』…感情的な僕にいつも君が言う言葉だけど…その言葉を君に送るよ。ディオ、こういう時こそ冷静に、ね」

「…………」

 

ジョナサンの言葉にディオは目元をぴくぴくしながらも…。

自分を落ち着かせるようにコォオオオオ…と長い息を吐き、カッとジョナサンを睨んだ。

 

「言うようになったじゃあないかジョジョ、俺と共に過ごして少しは成長したようだな」

「君のお陰だよ、ありがとうディオ」

「フン、俺は『君のお陰』で随分と感情的になっちまったがなァ、こんな有様じゃあ紳士失格だぜ…冷静にならなくては…コォオオオオ…ふぅ…」

 

やれやれだぜと首を振るディオに苦笑するジョナサン。

ともあれディオはいつもの冷静なディオに戻った。

謎の言葉、柱の男の事は置いといて…あとは吸血鬼の弱点を調べ上げたりソフィアがいったい何処へ向かったのかを探すのみだった、が。

 

不意に酒場の扉が開かれた。

 

「「ッ!!」」

 

ディオとジョナサンに気配を悟られる事なく店の中に入ってきた人間だ、只者ではない。

 

「あー、失礼、ここは『ザ・ワールド』という酒場で間違いないかね?」

 

そこに立っていたのは礼服と蝶ネクタイ、シルクハットを身にまとい口ひげを蓄えた男だった。

 

「それを訊ねるアンタは何者だ、いつから店の前にいて俺たちの話を盗み聞きしていた」

「この人は…?」

 

先ほどとは打って変わって冷静に、だが警戒心剝き出しで男に聞くディオだったが…。

ジョナサンは奇妙な事にその男に対して警戒心を抱く事が出来なかった。

 

 

「私はツェペリ男爵、この酒場の店主、ソフィア・ブランドー殿に会いに来たのだが…店の中で君たちが興味深い話をしていたものだからついつい聞き耳を立ててしまったよ、すまないねェ――――」

 

 

男の名はウィル・A・ツェペリ。

今、運命が世界を元に戻そうと動き始めた。

 

 

 

 




ツェペリ男爵、早めに出てきてもらいました。
そして私は鏡の中の世界へ引きこもりマン・イン・ザ・ミラー!
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