ディオの母親に転生したからディオを英国紳士に育てる 作:黄金と漆黒の波紋失踪
1888年11月某日 夜。
酒場『ザ・ワールド』
奇妙な来訪者、ツェペリ男爵の目的はディオの母、ソフィアだった。
母を訪ねてやって来たこの怪しい男をディオは警戒するもジョナサンは奇妙な親しみを覚えるのだった…。
「ツェペリ男爵とやら…こんな夜更けにそんな怪しい格好で酒場を訪れるなんてアンタ、母を狙ってやってきた吸血鬼じゃあないだろうな?」
「ディオッ」
挑発じみた問いかけにジョナサンが肩に触れ宥めるもディオの警戒心は留まる事を知らない。
『こいつが何者であろうと母(俺)の敵ならばぶちのめす』とディオの瞳の奥の輝きが物語っていた。
「私が、吸血鬼?」
ツェペリ男爵はそんなディオの母を思う健気な殺意に笑顔と『特殊な呼吸法』で答えてみせた。
「ホォホォホホホ――――――君のその過激な警戒心を解く事は非常ォに容易い…ヘイ、ベイビー、これを見ても私が吸血鬼だと思うかね」
クゥウウオオオとツェペリ男爵は奇妙な呼吸を始めた。
「コォオオオ……!!!!!」
その奇妙な呼吸をディオとジョナサンは知っている。
肉体、精神、そして骨の髄から魂の隅々まで叩き込まれた地獄のような日々が嫌でも思い出される。
そう、それはソフィアから学んだ波紋の呼吸と同じモノだった。
「こっ、これは…!」
「やはり知っているのだな、この波紋法を、ならばこの波紋法が吸血鬼の天敵である太陽光の波と同じ波長の生命エネルギーを生み出す事も知っておるな?ありえん話ではあるがもしも!もしも奴らがそんな波紋法を使えてしまったとしたらどうなるか…太陽の光を浴びた瞬間灰となる吸血鬼がだよォ?ただじゃあすまんだろうねェ…んゥ~~~~?」
おどけた様子で二人、特にディオに向けてそう語り掛けるツェペリ男爵。
「「………」」
ディオもジョナサンもソフィアの手ほどきにより波紋の呼吸法のコツをつかみ、呼吸は習得済みである。
「「あ、アレをたった一人で乗り越えたというのか…!!!!!」」
波紋法の修行は恐ろしいものだった。
いつも優しい母(師)が波紋法の修行の時に限り微笑みの悪魔へと変貌するのだ。
母(師)曰く。
『立派な英国紳士目指して!頑張るぞー!ウォー!』。
波紋法を利用した修行はディオとジョナサンを地獄へ叩き落した。
様々な枷(目隠し、手枷、足枷、重り…)を付けられた二人は様々な罠(落とし穴、毒針、乱れナイフ、油風呂…)が仕掛けられた様々な場所(山、川、森、砂地、ロープ上…)で様々な修行(鬼ごっこ、かくれんぼ、かげふみ、のぼりっこ、組手…)を行う…ソフィアはこれらの修行を肉体と精神を極限まで追い詰めどんな状況の中でもどんな絶望を前にしても生きる事を諦めず、それに立ち向かう勇気を身に着ける為の、立派な英国紳士になる為の嗜みだと言っていたが…。
『こんな嗜みがあるかあ!!』と二人が心の中で思っていた事はここだけの秘密だ。
この修行の全ては母(師)の自分たちに対する大きな期待と信頼の現れだと二人は理解していた、超弩級の期待と信頼に身も心も粉微塵に擦り潰されても、それでもジョナサン(ディオ)より先に倒れたくはないというプライド(根性)が二人に死の恐怖へ立ち向かう勇気とエネルギーを与えたのだった。
「ジョナサン・ジョースターです、ツェペリさん、波紋使いの先輩にお会い出来て光栄です!」
「ディオ・ブランドーだ…俺が悪かったツェペリさん、この通り頭も下げよう、どうか貴方が母を訪ねた理由を聞かせてもらえないだろうか…!!」
ジョナサンとディオからツェペリ男爵に対する強烈な敬意が迸る。
当然だ、ツェペリ男爵はあの修行を乗り越え波紋を身に着けた同士なのだから。
むしろ自分たちとは違いたった一人であの修行を乗り越えた事に尊敬の念を抱かずにはあいられない。
…と、二人はツェペリ男爵が『たった一人で自分達と同じ修行』を乗り越え波紋法をマスターした超人だと勘違いするのだった。
「ふむ…」
若き二人の波紋使いを見てツェペリ男爵は何かを思い出す様な遠い目をしたが今は思い出に浸っている場合ではないとここへやってきた理由を話をし始めた。
「私がソフィア殿を訪ねた理由は一つ!この街が吸血鬼に狙われている事を報せる為だ!」
「「!!」」
ツェペリ男爵の口から明らかとなった吸血鬼の存在。
やはり吸血鬼は実在するのだとディオとジョナサンはジワリと汗を流した。
だが、何故その吸血鬼がこの街を狙うのか?
「その吸血鬼はあるモノを探している、それは人を吸血鬼へと変える石仮面!その石仮面がこの街にあると嗅ぎ付けた奴を追って私はこの街にやってきたのだ…そして奴を探すうちにソフィア殿の存在を知り彼女の助力を得ようとしたんだが…」
ソフィアは不在だった。
だがディオとジョナサンという若き波紋使いと出会えたのは幸いだった。
戦いに絶対の勝利というものは存在しない、しかしこの二人の若き波紋使いの助力があればその絶対の勝利を掴めるかもしれない。
(末恐ろしい若者たちだ…)
ディオとジョナサンの波紋は未知数だが…。
彼らの肉体は極まっていた。
特にジョナサンの肉体は人間としての限界を超えた神懸かり的なモノがある。
この二人ならばこの世界にある石仮面をすべて破壊し、世界に平和を取り戻してくれるという希望すら感じさせた。
「フ、なるほど…石仮面を狙う吸血鬼…か…」
「ホ?」
ツェペリ男爵の話を聞いたディオはひとり、何度も何度も何かに頷いて笑みを浮かべていた。
(母さんが何も言わずに何処かへ出かけたというのはこのディオへの絶対的な信頼の表れだとも言える!子はいずれ親元を離れ自分自身のファミリーを築くモノ!母さんの突然の失踪は母さんが用意したこのディオの巣立ちの儀式であり試練!そう考えれば母さんの突然の失踪という精神的な負担を抱えながら伝説上の生物とされた吸血鬼と一戦交えるかもしれないというこの状況は!母さんが!このディオの為に!用意した巣立ちの為の最終試練であるとも考えられる!そう考えれば!母さんがこのディオに何も言わずにいなくなったという事にも納得出来る!なんて事だ…!母さんにとっては吸血鬼すらこのディオの成長の為の道具に過ぎないというのか…!!!)
「フフフ…」
「大丈夫かねディオ君…む?」
最高にハイになっているディオの隣でジョナサンはじっと黙り込んでいた。
もちろんそれには理由がある。
「もしや…」
そう、ジョナサンはその石仮面に心当たりがあった。
ジョナサンの生家、ジョースター邸にはそれらしき石で出来た仮面が飾ってあるのだ。
かつてジョナサンの父と母が旅行先の骨董品屋で買ってきたというその石仮面、何処かの遺跡から発掘された遺物だと聞いたジョナサンは石仮面に大きな好奇心を持ちあれこれ調べていたのだが…。
嫌な予感がする。
ポケットからメモ帳と鉛筆を取り出しさらさらと実家に飾ってあった石仮面を書いていくジョナサン。
書き終わるとべりっとそのページを裂き、ツェペリ男爵へと見せた…。
「ツェペリさん、その石仮面とはこんな形をしていませんでしたか」
「こ、これは!」
そのページに書かれたモノを見たツェペリ男爵は目を見開いた。
ジョナサンの書いた石仮面、それこそはツェペリ男爵の奇妙な人生の始まりともいえる因縁深き事件を起こした石仮面と同じものだったのだ。
「まさしく石仮面だ…!」
「この石仮面が僕の実家にあるんです!」
吸血鬼は石仮面を狙っている。
吸血鬼が石仮面の在処を知ればその近くにいる人間の命が危ない。
「案内してくれジョジョ君、急ぎ君のご家族の安全を守らねば!」
「ええ!」
ジョナサンの隣でハイになっていたディオがいなくなっている事に気づいたツェペリ男爵。
何処へ行ったのかと思えば酒場の外で二人を待っていた。
「この『ザ・ワールド』の戸締りにはちょっとしたコツがありましてね、母か俺にしか出来ないのでジョジョと先に行っててください、俺は後で向かいます」
「うむ」
ジョナサンとツェペリ男爵は一足先にジョースター邸へと向かった。
「巣立ちの時か」
戸締りを済ませたディオは『ザ・ワールド』の前で佇んでいた。
「『ザ・ワールド』」
このディオの人生は母・ソフィアと共にある。
その人生の多くはこの『ザ・ワールド』という場所にこそあった。
多くの客が母の振舞う酒と料理に舌鼓を打ち好き勝手に騒ぐ店内。
母一人でも手は足りるが社会勉強だと言われこのディオも色々と手伝いをした。
酒臭い客にも笑顔で接し客の吐いた汚いゲロを処理する事もあった。
嫌そうな顔一つも見せれば母に拳骨を落とされたものだ…。
「母さん」
ディオの脳裏に母との思い出が蘇る。
この街の至る所にも母との思い出が溢れている。
母・ソフィアとこのディオの二人だけで世界は完成している。
残りの者たちは皆、灯に惹かれ寄って来る虫けらだと思っていた。
「ジョジョ」
母さんが初めて『ザ・ワールド』に幼いジョジョを連れて来た時程怒り狂った事はなかった。
母さんにはこのディオだけでいい、幼いディオはそう叫びジョジョに殴りかかる直前で母さんから波紋を流され自分の拳で自分を殴って泣き喚いていた…そしてこいつとは一生仲良くなってやるもんかと誓ったのだが。
それがどうしてこうなったのか。
まぁ、いい。
これから始まるはこのディオの物語だ。
試練を乗り越え、世界に名を残す英国紳士となるこのディオのだ。
「それにはまず石仮面と吸血鬼を叩きのめさなければな」
相手は太陽光を浴びれば灰になる虫けらだ。
母さんから学んだこの波紋法で徹底的にたたきのめして地獄へ落としてやろう。
…母さんからしてみれば吸血鬼退治も紳士としての嗜みの一つなのかもしれないな…。
「行ってきます、母さん」
『ザ・ワールド』の戸締りを済ませたディオは二人の後を追いかけた。
同時刻、ジョースター邸。
ディオより先に辿り着いた二人は自分たちの目の前に映るモノを信じられずにいた。
「これは!」
「家が…僕の家が燃えている!!!!!」
ジョナサンとツェペリ男爵が見たのは炎に包まれたジョースター邸だった。
すぐ屋敷の中にいる家族を救う為にジョナサンは燃え盛る屋敷の中へと飛び込もうと駆け出したが。
「「ジョナサン!!」」
屋敷の前にジョナサンの大切な家族の姿があった。
「父さん!母さん!無事だったんだね、よかった!」
久しぶりに会う両親の無事な姿に安堵するジョナサン。
煤があちこちについているが、どうやら二人とも怪我はなさそうだ。
「ジョナサン、いつロンドンから帰って…いやそれよりも彼だ!」
「彼?」
「あの人、私たちの言葉を聞いてくれなくて…ジョナサンがまだ中にいると思って探してくれて」
「なんだって!この屋敷の中にまだ人がいるのかい!?」
父と母の無事な姿を見たのも束の間、燃え盛る屋敷の中にはまだ人が残っているという。
父と母を助けてくれた恩人が、この炎の中でいるはずのないジョナサンを探しているというのだ。
「ツェペリさん、父と母を頼みます」
「うむ」
ツェペリ男爵は理解していた。
まだ出会って少しの時間しか経っていないがこのジョジョという青年が自分の命惜しさに他人を見捨てる様なマネをするわけがないと。
「コォオオオオ!!!!」
ジョナサンは波紋の呼吸を使い、全身に水を浴びた。
不思議な事にその水はジョナサンの身体から流れ落ちることなくその身を守るようにまとわりついていた。
(ホォ!ここまで見事に波紋エネルギーをコントロールするとは!やはり只者ではないな…!!!)
(これで炎は大丈夫だ、僕が行くまで無事でいてくれ!)
燃え盛る屋敷の中へと飛び込んだジョナサン。
(僕の部屋から誰かの鼓動を感じる)
轟々と燃え盛る屋敷の中を素早く駆けるジョナサン。
燃えて脆くなった床や階段を難なく飛び越えていく姿は超人そのものだった。
『どこだァー!返事をしてくれジョースターさァーーーーーん!!!』
(むっ!)
聞き覚えのある声がした。
炎はあたりを包み込み、崩れ堕ちる天井の破片も多くなってきた。
急がなくては屋敷は崩れ落ちてしまう。
急ぎ自分の部屋へと飛び込むとそこには見覚えのある男がいた。
「お、おぉ…ジョースターさん、よかった…無事だったんだな!!」
命懸けで自分の両親を救い。
あちこち火傷を作ってそれでもなおジョナサンを助けようと燃え盛る屋敷に残った男がそこにはいた。
左頬に大きな傷のあるその男の名は…。
「スピードワゴン!?食屍鬼街にいた君がどうしてここに!!」
続々と奇妙な物語のキャラクターが登場してきますが。
オリ主は当分出てきません。
しばらくは改変された第一部が続きます。
D・D・D・D・C…。