超次々元ゲイム ネプテューヌRe;TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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プロローグ

 ゲイムギョウ界。

 

 そこは、現実とは異なる世界の一つ。

 山野(さんや)にモンスターが息づき、魔法や異能が当たり前のように存在し、そして『女神』と呼ばれる存在が国を司る、そんな世界。

 

「ゲイムギョウ界に遍く生を受けし皆さん」

 

 そのゲイムギョウ界に存在する国の一つ、プラネテューヌ。

 未来的なビル群が立ち並ぶ首都でも一際高く立派な建物、この国の中枢であるプラネタワー前の広場では今、大々的な式典が行われていた。

 

「新しき時代に、その第一歩を記すこの日を、皆さんとともに迎えられることを喜びたいと思います」

 

 扇情的な濃紫のドレスを着て長い紫の髪を二つに分けて三つ編みにした、凛とした妙齢の美女の声が会場に響き渡る。

 

「ご承知の通り、近年、世界から争いの絶えることはありませんでした」

 

 整列した女性たちが旗を掲げると、その間に敷かれたカーペットの上を美女は言葉を続けながら歩きだした。

 おりしも空は青く澄み渡り、風は優しく吹き抜け、この式典を祝福しているかのようだった。

 

「女神ブラックハートの治める、ラステイション」

 

 黒いドレスに純白の髪を長く伸ばした、緑の目の勝気そうな女性が一歩前に進み出る。

 

「女神ホワイトハートの治める、ルウィー」

 

 姫君の如き白いドレスに水色の短い髪の、あどけない面立ちながらも気の強そうな顔立ちの少女が歩き出す。

 

「女神グリーンハートの治める、リーンボックス」

 

 豊かな胸を強調する緑のドレスに薄緑の長髪を頭の後ろで結った、穏やかな雰囲気の背の高い美女が微笑む。

 

「そして私、女神パープルハートの治める、プラネテューヌ」

 

 そして最後に紫の美女、パープルハートが歩みを止める。

 四人の女性たちは、いずれも並はずれた……いっそ人間離れしたと形容してもいい美貌を持っていた。

 彼女たちの足元に光る足場が出現し、それが四人を宙へと持ち上げていく。

 

「四つの国が、国力の源であるシェアエナジーを競い、時には女神同士が戦って奪い合うことさえしてきた歴史は、過去のものとなります」

 

 シェアエナジーとは人々の信頼や信仰心からなる女神の力の源だ。それを自分の治める国の大地に還元することで、女神は土地を豊かにする。

 故に女神たちは自分こそが人々の信仰を集めるに足る存在だとして果て無い争いを続けていた……今日までは。

 

「本日結ばれる友好条約で、武力によるシェアの奪い合いは禁じられます。これからは、国をより良くすることでシェアエナジーを増加させ、世界全体の発展に繋げていくのです」

 

 足場の上昇が止まり、四人の女性……女神たちが空中へと踏み出すと、その足元に新たな足場が出現した。

 四人が歩み寄り、やがて触れ合えるほどの距離に近づくと、それぞれ両隣に立つ女神と手を合わせて輪を作った。

 

 そして声を合わせて宣誓する。

 

『私たちは、過去を乗り越え、希望溢れる世界を創ることをここに誓います』

 

 こうして四つの国による友好条約は締結され、平和が訪れたのである。

 

 女神たちはお互いに微笑みあい、盛大な拍手と歓声がその場を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 しかし。

 

――ああああ

 

 

「……?」

 

 上から何か聞こえた気がして紫の女神パープルハートは空を見上げる。

 

「ちょっと、ネプテューヌ?」

「大事な場面だぞ」

「どうしましたの?」

 

 黒、白、緑の女神たちが口々にそれを咎める。

 しかし紫の女神は空を仰いだまま口をポカンと開けて固まっていた。

 それにつられて他の女神たちも同じように上を見る。

 

――ほああぁぁぁぁぁッ!!

 

『ええッ!?』

 

 何と、はるか上空から巨大な何かが叫び声を上げながら落ちてくるではないか。

 女神たちがドレスをプロセッサユニットと呼ばれるレオタード状の戦闘服に変換し、背中に光の翼を発生させた。

 翼に力を入れて飛び退くと、その物体は女神たちの間を通り過ぎて地上へと落下していった。

 

「ッ! みんな逃げて!」

 

 正気に戻ったパープルハートが声を上げる。

 言われる間でもなく下にいた者たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

 

「ほわあああぁぁぁぁぁッッ!!」

 

 落ちてきた何かが轟音を立てて地面に激突し、土煙が舞い上がる。

 慌ててパープルハートを始めとした女神たちは自分の国民の下へと飛んでいった。

 

「みんな大丈夫!?」

「……はい大丈夫です。どうやら怪我人はいないようです」

 

 人混みの中から宙に浮かぶ本に乗った小さな少女が飛び出してきて、パープルハートに報告する。

 金髪をツインテールにした緑の瞳の幼いながらも人形のように整った容姿の少女だが、体の大きさが大人の膝丈ほどしかなく、背中に半透明の羽根を備えていることも相まって妖精を思わせる。

 

 彼女はイストワール。

 

 実質的に国を統治する機関『教会』の責任者『教祖』であり、パープルハートの補佐だ。

 他の見知った顔も大事はなかったらしく、声をかけ合い、助け起こしあっている。

 ホッと息を吐いたパープルハートが見回せば、他の女神たちもそれぞれの国の教祖と話している。騒ぐ様子がない所を見ると、大した被害は出なかったらしい。

 

 ならばやることは一つ。

 

 パープルハートが手を翳すと、何もない空間に大振りな太刀が現れた。

 それを手に取り、式典会場のちょうど中央に出来た大きなクレーターに近づいていく。

 

 立ち込めていた土煙が晴れると、そこにいたのは……。

 

「ろ、ロボット?」

 

 クレーターの中央には、大きな人型のロボットが仰向けに倒れていた。

 赤と青で鮮烈に色づけされた目算10m以上はある無骨な体躯は、落下の衝撃によるものか、あちこち凹み傷だらけだ。

 いや、よくよく見れば刃物で斬られたような傷や大砲で撃たれた形跡がある。明らかに戦闘の跡だ。

 

「壊れているのかしら?」

 

 パープルハートはその異様な姿にも臆することなく近づき、ロボットの顔に当たる部分を覗き込む。

その顔は精悍な男性を思わせる造形で、目は閉じられていた。

 ゲイムギョウ界にもマシン系と呼ばれる機械の姿をしたモンスターは数多いるが、このロボットはそれらとは根本的に何かが違う感じがした。

 

 パープルハートは慎重にロボットの顔の、人間で言えば右頬に当たる部分に触れた。

 すると突然、ロボットの目がカッと開き瞳……のように見えるカメラレンズがパープルハートの方に向けられた。

 

「#$%&*※!?」

 

 その口から出てきたのはパープルハートのまったく知らない言語だ。

 ダメージが大きすぎるのか、動くことはできず体のあちこちがギシギシと軋み火花が散っている。

 驚いて手を引っ込めたパープルハートは、しかしその目を覗き込んだ。

 青い色の機械的な、しかし確かな意思と知性を感じさせる目だった。

 

 その淡青に光る目には、酷く驚いたような色があった。

 

「落ち着いてちょうだい。私はパープルハート……ネプテューヌとも呼ばれているわ。あなたは誰なの?」

 

 だからだろうか、こんなことをパープルハート、またの名をネプテューヌが言ったのは。

 

 普通に考えればロボットにこんなことを聞くのはおかしなことだが、何故だかそんな自分の行動に微塵も疑問を感じていなかった。

 

「…………」

 

 ロボットはジッと彼女のほうに視線を向けたまま沈黙する。

 ここにきてネプテューヌは自分の言葉が相手に通じているのか不安になった。だがロボットは口を開いた。

 

「私は……」

 

 それはゲイムギョウ界で一般に使われている言語だった。

 深みを帯びた、男性を思わせる低い声だ。

 

「オプティマス・プライム」

 

 それだけ言うとロボット……オプティマス・プライムは眠るように目を閉じた。

 

 こうして異なる世界、異なる種族に生まれた者たちの運命が交わった。。

 人の上に立つために生まれてきた者たち……女神の治める世界に、戦うために生まれたと言われる鋼鉄の戦士たちが来訪したのだ。

 

 ……そう、戦士()()が来訪したのだ。

 

 

  *  *  *

 

 時間はいくらか遡る。

 

 とある場所で、一人の女性が暗い表情でテレビを見ていた。

 長い薄青の髪を長く伸ばして角縁眼鏡をかけ、そして頭の左側にある角のような飾りが特徴的な、そこそこの美人と言っていい容貌の女性だ。だが纏った陰気で地味な雰囲気が、その印象を冴えない物にしていた。

 

 画面に映った四人の女神が平和を誓い合うと、彼女はまるで悍ましい物を見るような目をして息を吐いた。

 平和の到来を喜ぶ、という雰囲気では断じてない。

 

 彼女の名前はキセイジョウ・レイ。女神を必要としない社会を創るべく活動している市民運動家だ。しかし運動と言ってもビラ配りが関の山で成果は芳しくない。

 

「はあ……」

 

 レイは溜息を吐くと席を立つ。誰もいなくなった部屋で、点けっぱなしのテレビには突然空から落ちてきた()()によって式典会場が滅茶苦茶になるのが映し出されていた……。

 

 扉を開けて外に出ると、そこは船の上だった。

 だが周囲の海は完全に凍り付いており、船員たちが何とか氷を砕こうとしている。

 

「うう……さ、寒い……!」

 

 頬を撫でる北風の冷たさに、レイは自分の肩を抱いて震える。

 この船は、ルウィーとプラネテューヌを海路で結ぶ定期船だ。だがどういうワケか本来の航路を外れて凍った海で立ち往生していた。方向音痴でしょっちゅう道に迷うレイであるが、何も船まで迷子にならなくてもいいだろうに。

 彼女はプラネテューヌに住んでいるのだが、今日は知人の……友人、とは言えない……幼年幼女の味方を自称する脱女神運動家と会う用事があってこの船に乗り込んでいた。

 

「す、すいませ~ん! まだかりそうですかー!」

「見りゃわかんだろー!!」

「ヒッ! すいません、すいません!!」

 

 舳先から顔を出して船員に声をかければ怒鳴られて慌てて謝りながら首を引っ込める。どうにもレイは人の癇に障りやすいらしい。

 怒鳴った船員が他の船員に「お客になんて口利いてんだ!」と叩かれているのに気づかず、手を揉みながら船尾側に移動する。

 ぼんやりと空を眺めていると、雲の向こうに影が見えた。

 何機ものヘリコプターが編隊を組んでこちらに向かってくるではないか。

 

「た、助けが来たんだわ! おーい、こっちでーす!! おーい!!」

 

 船尾の手すりから身を乗り出して手を振る。

 

「おーい、早く助けてえええッ!?」

 

 だが乗り出し過ぎた。手すりが凍っていたこともあって滑って、船から落ちてしまう。

 さらに運の悪いことに落下の衝撃で氷が割れて、その下の割れ目に滑り落ちた。

 

「うえええええッ!!」

 

 氷でできた天然の滑り台を長い事滑り落ち、おそらく一番下でやっと止まった。

 幸いなことに氷の底は空洞になっていて、寒中水泳はせずに済んだ。

 

「い、痛ぁ……!」

 

 痛む体で何とか上体を起こすと、自分が落ちた割れ目がずっと上に見えた。自力で昇ることはできそうにない。

 

「もしもーし! 聞こえませんかー! 助けてくださーい!」

 

 か細い声で助けを呼ぶも、返事はない。そもそもレイが落ちたことに気付いていないのかもしれない。

 

「ううう……どうして私ばっかりこんな目に……」

 

 グズグズと泣きべそをかいていると何処からかカサカサと虫の這うような音が聞こえた。だがこんな所に虫などいるはずもない。何だろうと立ち上がって改めて周りを見渡すと、奇妙な物が目についた。

 

 何本かの氷の柱が立っていて、それに囲まれて青く光る球体のような物がある。

 

「なに、これ……?」

 

 フラフラと、レイは柱の間を抜けて球体に近づく。その後ろで虫のような影が柱の後ろに隠れたのには気付かなかった。

 球体の表面はガラスのような物でできているだが、不思議と弾力があり仄かに暖かかった。内部は薄く発光する青い液体で満たされており、何かがモゾモゾと動いているのが見える。

 光は一定間隔で明滅を繰り返していて、まるで鼓動しているかのようだった。

 

 この物体をレイの知っている言葉で表現するなら……。

 

「卵? ……きゃあ!」

 

 不意に卵から一条の光が放たれレイの身体を包むが、その光はレイの身体に何ら影響を与えなかった。

 そしてもう一条、光が真上に向かって放たれている。

 

「…………」

 

 自然と光を追って視線を上げれば、銀灰色の何かが氷の中からこちらを見下ろしていた。

 いやそれは、恐ろしい姿をしたロボットだ。氷漬けになっている状態でも、刺々しく攻撃的な意趣に包まれた巨躯は見る者を畏怖させるには十分で、特に顔の部分はまるで悪魔か鬼のようだ。

 氷の柱と見えた物も、実際にはそのロボットの指だった。つまりレイはロボットの手の平の上にいるのだ。

 

「……ッ!」

 

 恐怖のあまりレイの意識が遠のいていく。

 

 意識を失う寸勢に見たロボットの目は、凍り付いてなお血のように赤くギラギラと輝いていた。




はじめましての方ははじめまして。
そうでない方はお久しぶりです。

表題にもある通り、本作は拙作『超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION』のリメイク版となります……リメイク前とは登場人物以外ほぼ別物です。

前々からコソコソ書いてて、公開するタイミングを逃していたんですが……。
『トランスフォーマー/ビースト覚醒』日本公開!!
『超次元ゲイム ネプテューヌ GameMaker R:Evolution』発売!!

今……今、公開せずにいつ公開するってんだ!!と思い至った次第です。
何話かは書き溜めてあるんで、とりあえず区切りのいい所までは更新したいと思います。

※ 感想欄などでの『ビースト覚醒』及び『ネプテューヌ GameMaker R:Evolution』のネタバレは当面ご遠慮ください。
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