超次々元ゲイム ネプテューヌRe;TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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第5話 星を見た総司令官(オプティマス)

 夢を見ていた。

 闇の中で。幻の中で。

 空一杯に輝く星の夢。だがその星が照らすのは、泥の海だった。

 

 一歩踏み出すたびに泥の中に足が沈み、泥の正体である血と涙が纏わりついて体が重くなっていく。

 それは自分が打ち倒してきた敵の、死んでいった仲間たちの、護れなかった者たちの、そして自分自身が流した血と涙だった。

 

 だが顔を上げると、空に浮かぶ無数の星々の中で、たった一つの星が目を引いた。

 迷える子供を導くように輝く、紫の星だ。

 星はいつの間にか女性の姿になった。

 

 悲嘆と絶望の夜を照らす、希望の星のような女性。大人の凛々しさと童女の無邪気さを併せ持ち、溜息が出るほどに美しいが、触れれば傷つけてしまいそうな儚さがある……。

 それが分かっていてなお、彼女に向かって手を伸ばさずにはいられなかった。

 

 彼女はこちらに向かって手を差し伸べ、そして……。

 

  *  *  *

 

 紫の女神候補生の中古自動車が突然変形するよりも前。

 緑の女神が自称スターとダンスの約束をするより少し前。

 黒い女神が鋼鉄の助言者と会話するよりも、いくらか前。

 白い女神が襲撃に遭ったのよりも、少しだけ後……。

 

 プラネテューヌ首都の一角にある劇場。

 平時は女優たちによる演劇が行われるここの地下には、プラネテューヌ軍の秘密の施設となっていた。……なんでこんな所にとツッコんではいけない。それがプラネテューヌだ。

 

 そんなここを訪れる者がいた。

 

「いやー、みんなご苦労さーん! この物語の主人公! 究極で完璧な女神ネプテューヌ! 満を持して登場だよー!!」

 

 施設の通路を進むのは、紫のワンピースの上から白いパーカーを羽織った小柄な少女である。

 あちこちに跳ねた短い薄紫の髪にはゲームの十字キーのような飾りが二つ。

 あどけなさの残る顔の表情がコロコロと変わり、濃紫の大きな瞳が輝いている。

 細いながら健康的な手足を大きく動かし、まるで全身から元気を発散しているような少女だ。

 

 少女は道行く警備兵に気軽に声をかける。すると兵士たちは足を止めて敬礼した。

 

「ネプテューヌ様!」

「いいっていいって! そう固くならずに!」

「そういうワケにもいかないでしょう。ネプテューヌさん、いつも言っていますが女神としての自覚をですね……」

 

 ネプテューヌと呼ばれた少女はあっけらかんと笑うが、そのすぐ後ろを飛ぶ本に乗った妖精少女……教祖イストワールは溜息を吐いた。

 そう、この明るいが空気読めてない感じの少女こそ、このプラネテューヌの女神であるパープルハートの人間としての姿なのだ。

 

「えー、いいじゃん。いーすんはお堅いなー。他のみんなはシリアスでも平常運転なのがわたしだしー」

「あなたって人はー! そもそも、どうしてわたしたちがこの基地を訪れたか、わかっていますか!!」

「え~っと……なんでだっけ?」

「ネプテューヌさん!!」

 

 小首を傾げる女神に、教祖は思わず声を張り上げる。

 

「いやだなー、冗談だって。あのロボットのことについてでしょ? わかってるよ」

「ほんとにわかってますか?」

 

 神秘的で美しく、凛々しい女神の姿の時に対し余りに調子が軽い人間の姿のネプテューヌに、イストワールは頭痛を堪えるようにこめかみを抑えた。

 

「あのロボットが式典に落ちてきたおかげで、せっかくの友好条約が台無しになりかけているんです! なんとしても、正体を突き止めなければ……」

 

 しばらく通路を進んでいくと、大きな部屋に出た。

 普段は倉庫に使われているのだろう、その部屋では調印式に落ちてきたロボットが身を横たえていた。周囲では防護服姿の研究員たちが、何かの数値を測ったり、ロボットの装甲に器具を当てたりしている。

 

「これは……イストワール様に、ネプテューヌ様まで」

「どうですか。解析は進んでいますか?」

「正直に申し上げて、このゲイムギョウ界の常識を超えた科学の産物としか。体を構成するのは、極めて奇妙な合金です。レアメタルを主成分とし、分子構造が不安定でありながら、一定の状態を保っています。まるで生きた金属の細胞だ……こんな物はまるで見たこともない!!」

「つまり……全く正体が分からないと?」

「そうなります!」

 

 玩具を前にした子供のような顔の研究員に、イストワールは嘆息するのを堪えなければならなかった。『未来に生きている』とも称されるプラネテューヌの科学陣は、同時に己の興味や趣味を優先する困った人々だった。

 

「オプティマス・プライム」

 

 ボソリと呟いたのは、窓からロボットを見下ろす女神だった。

 

「はい? ネプテューヌさん、今なんと?」

「だから、名前はオプティマス・プライム! 本人がそう名乗ってたんだよ。わたしが思うにねー、きっと宇宙警察とか宇宙警備隊とか、そういう奴だと思うな!」

 

 明るく言い放つ女神に、イストワールと研究員は顔を見合わせる。

 

「そ、それで何とかもう少し解析する方法はないんですか?」

「もちろん! ちょうどこれから、解体調査を始めようと思っていたところです!!」

 

 研究員が指をパチリと鳴らすと、階下の部屋に巨大なロボットアームが現れた。

 アームの先にはこれまた巨大なドリルや丸鋸が取り付けられている。

 

「科学の発展のために犠牲は付き物デース!!」

「全ては実験材料なのだよ! 人間も、ロボットも、私自身も!!」

「愛です、愛ですよ!!」

「なぜそこで愛!?」

 

 ドリルや丸鋸がけたたましい音と共に回転を始めると、どこからか湧いてきた科学者たちが群がる。大丈夫か、この国。

 

「ちょーっと待ったー!!」

 

 だがその時、高い声が響き、科学者たちも機械もピタリと止まる。

 

 誰あろうネプテューヌだった。

 

 小柄な体で一杯に背伸びし、両腕を振り上げている。

 

「ね、ネプテューヌさん?」

「そういうのさ、良くないと思うよ! 眠ってるヒトへの悪戯は、顔に落書きが限度だよ!」

「い、いや落書きもアウトかと……いえ、それ以前に眠っている()?」

 

 まるでロボットを生きているかのように言うネプテューヌに、イストワールは小首を傾げた。

 

「え? だって喋ったし。マシン系のモンスターとかいるし、今更っしょ」

 

 確かにマシン系のモンスターなどは生き物と言えなくもないが……。

 研究員たちも、そう言われて少し戸惑っているようだ。

 

「た、確かにこのロボットは……それこそマシン系モンスターの遥か上をいく、いわば機械生命体なのかもしれません」

「ほらー! だからさ、本人が目を覚ますのを待とうよ。あ、無理矢理起こすのも無しね。わたしもさー、ぐっすり眠ってるトコ起こされると、思わず二度寝しちゃうし!」

「ネプテューヌさんは、無理矢理起こさなくても二度寝するでしょうに……」

 

 よく分からないことを言い出す女神に、イストワールは思わず嘆息する。

 

「ああ、友好条約を結ぶべく努力していたネプテューヌさんはいったいドコに……」

「ほら、わたし未来に生きているしー。若さって振り向かないことさって、偉い人も言ってたしー」

「はあ……」

 

 あまりにノリの軽い女神にイストワールが頭痛を感じていると、不意に通信をキャッチした。古の女神が作り出した人工生命体である彼女には、こういうこともできるのだ。

 

「はい、もしもしこちらイストワール……え? な、なんですって!?」

「ねぷ! どうしたの、いーすん? プリンが大安売りだったとか?」

「大変です、ネプテューヌさん! ハイラノレ高原にあるルウィーの基地が……襲撃され壊滅したと!」

「えー」

 

 いまいち深刻そうでもない顔で、ネプテューヌは首を傾げた。

 

「ハイラノレの基地って、あのなんか古い砦みたいなとこ?」

「そうです! しかもどうやらブランさんが視察にきていたらしく……負傷したのではないかと」

「うんうん……よっし、分かった!」

 

 コクコクと頷いていたネプテューヌは、踵を返して何処かに歩いていこうとする。

 

「ちょっと! ネプテューヌさん、いったいどこへ!」

「え? どこって、ルウィーの基地へだけど?」

 

 当たり前のようにネプテューヌは言い切った。

 

「いやさー、ここはわたしが助けに行く流れかなーって! さすがに怪我人が出てるのに『めんどくさーい!』とか言い出すと読者からヘイト買っちゃうしねー!」

 

 ケラケラと笑いながら言うネプテューヌに、イストワールは一瞬呆気に取られ、次いで頭痛を堪えるように頭を押さえ、最後にフッと口元を緩めた。

 このグータラでアンポンタンでド天然の女神は、しかし政治とか損得とは無関係に他人を助けることが出来る気質の持ち主なのだ……滅多に発揮されないのが玉に瑕だが。

 

「分かりました。ルウィー教会にはわたしの方から連絡しておきます。すぐにこちらからも救助隊を送りますので……」

「あーありがとー! おやつのプリンを用意して待っててねー! そいじゃ、行ってきまーす!!」

「いってらっしゃい」

 

 ペコリと頭を下げる教祖に手を振りながらネプテューヌが駆けだした。

 施設の廊下を駆け、そして出入り口から外に飛び出すや、その身体が光に包まれる。

 

「刮目せよ!!」

 

 幼い肢体は、成熟した大人のそれへ。

 髪は色を濃くしながら長く伸び、二本の三つ編みになる。

 身体を包むのは黒いレオタードともベビードールとも付かぬ衣装。

 そして背中には蝶を思わせる光の翼、青い目には円と直線を重ねた紋章。

 表情は凛として口元には自信に満ちた笑みが浮かぶ。

 

 これこそがプラネテューヌの守護女神、パープルハートである。

 

「女神の力、見せてあげるわ!」

 

 光の翼を震わせ、紫の女神は飛び立った。

 

 

 

 

 実のところ、横たわる『彼』はすでに仮死状態(ステイシス)を抜け出し覚醒状態にあった。

 身体こそ動かせないが、その状態でも周囲の人々の声を聴き、あるいは『彼』を解析するために接続されたコンピューターから逆に情報を読み取り学習する。

 この世界の言葉、文化風俗、そして情勢。

 

 どれも酷く奇妙に感じた。

 

 特に不思議なのは、女神という存在だ。

 国の統治者としては、彼女たちは余りに幼く未熟だと感じられ、おそらく宗教的な権威こそが本分……いわゆる『お飾り』なのではと思った。

 

 だが、今しがた訪れた当の女神の声を聞いた時、それは間違いだと分かった。

 

『オプティマス・プライム』

 

『だから、名前はオプティマス・プライム! 本人がそう名乗ってたんだよ。わたしが思うにねー、きっと宇宙警察とか宇宙警備隊とか、そういう奴だと思うな!』

 

『そういうのさ、良くないと思うよ! 眠ってるヒトへの悪戯は、顔に落書きが限度だよ!』

 

『いやさー、ここはわたしが助けに行く流れかなーって! さすがに怪我人が出てるのに『めんどくさーい!』とか言い出すと読者からヘイト買っちゃうしねー!』

 

 その言葉の半分は意味が理解できなかったが、それでも彼女が裏表なく誰かを助けに行こうとしていることは理解できた。周囲の人々も、そして『彼』自身も、そんな彼女を好意的に見ていた

 だが問題はその先にいるのだろう相手だった。得た情報の中にある『敵』の姿は、間違いなく、彼にとっても因縁のある相手だった。

 

 このままでは、彼女が危険だ! すでに体を動かせる段階まで、自己修復は終えている……行かなくては!

 

「な! ろ、ロボットが!」

「隔壁閉鎖! 警備班を呼べ! 早くしろ!!」

「おー、ビューティホー……」

 

 『彼』……オプティマス・プライムがカッと目を見開き、機械の身体に力を入れて上体を起こすと、地下施設は混乱に包まれた……。

 

  *  *  *

 

 一路北へと飛ぶネプテューヌことパープルハート。その速さたるや航空機もかくやだ。

 

 やがて国境を越え、件の基地に近づいてきた。

 だが、基地に着くよりも先に、眼下の平原に動く影が見えた。

 数台の旧式車両の周りを、結構な数の人間が歩いている。装備を見るに、どうやらルウィー軍のようだ。

 

 ネプテューヌが近づくと、その姿を見止めたらしい彼らが武器を構えた。

 

「止めろ、撃つな!」

 

 だが、一団のリーダーらしい男性がそれを止めた。

 降り立ったネプテューヌが歩み寄ると、その男性……ルウィー基地の司令官は敬礼した。

 

「プラネテューヌの守護女神、パープルハート様とお見受けします」

「ええ、救援にきたわ。それで状況は?」

「は……」

 

 彼らの話によれば、彼らは壊滅した基地を放棄してプラネテューヌへと向かうことにしたらしい。

 最寄りのルウィーの集落よりも、プラネテューヌの国境基地の方が、距離が近いからだ。

 

「分かったわ。プラネテューヌはあなたたちを歓迎する」

「助かります」

「それで、ブランは?」

「ここに、いるわ……」

 

 声がした方に視線を向けると、装甲車から当のブランが降りてくるところだった。

 だが身体のあちこちの手当の跡が見るからに痛々しく、足取りもおぼつかないようで、司令官は慌てて駆け寄る。

 

「ホワイトハート様、まだ起きられては……!」

「大丈夫よ……それより、どういうつもりなの、ネプテューヌ」

 

 ブランはギロリと紫の女神を睨んだ。

 

「友好条約はまだ結ばれてないんだから、助けに来る義理もないだろうが……!」

「ホワイトハート様、そうおっしゃらずに……兵たちも傷ついていますので……」

「……チッ、分かった。世話になる」

 

 司令官の言葉に、ブランは不承不承と言った風ではあるが頭を下げる。ここで兵よりも自分のプライドを優先するような愚を彼女は犯さなかった。

 

「それにしても無事でよかったわ……」

 

 微笑むネプテューヌだったが、その後ろの地面が盛り上がり、地中から機械でできた蛇のような物が音もなく現れた。それは先端の槍のような突起を女神の背中に突き刺そうとする。

 

「ッ! ネプテューヌ、後ろよ!」

 

 ブランの声に振り返ったネプテューヌが、咄嗟に手の中に召喚した太刀に防がれる。蛇のような物は、攻撃が失敗したと見るや、あっという間に地中に潜ってしまった。

 

「今のは……?」

「敵襲! 敵襲だー!」

 

 見慣れない存在にネプテューヌが訝しむが、声が隊列の後ろの方から戦闘の音と共に聞こえてくる。

 

「後方にモンスター! 数、およそ三十!」

「三十だと……!」

 

 司令官の声が震えていた。

 このゲイムギョウ界にはモンスターが存在する。山野に息づき獣、昆虫、猛禽……様々な姿を持ち、中には人間に敵意を持たず、人間並みの知能を持った者もいるが、それは少数派だ。

 多くは人間を襲い、時に群れを成す……だが三十匹の群れというのは異常だ。

 

 しかしネプテューヌは、勝気に笑むと太刀を握り直した。

 

「さて、早速出番のようね……殿(しんがり)は私が引き受けるから、あなたたちは進んで。プラネテューヌの国境警備隊には話が通っているはずよ」

「あなた一人に任せてはおけないわ……わたしも……!」

 

 ブランも手の中に長柄のハンマーを召喚するが、ふらついて隊長に支えられる。

 

「ホワイトハート様!」

「ブラン、無理はしないで。ここは私が」

「……くそ」

 

 悪態を吐きながらも、ブランは一つ頷いた。

 ネプテューヌも頷き返すと、翼を輝かせて空に飛び上がり、そのまま隊列の後方へと向かった。

 

  *  *  *

 

 教祖イストワールを何とか説得し……実際には彼女たちが混乱している間に……施設を出たオプティマスは身を隠しながらもネプテューヌを追っていた。

 

「こちらはオプティマス・プライム、オートボット応答せよ。繰り返すオートボット応答せよ!」

 

 丘の上に立ち、通信を飛ばすと、複数の応答があった。

 相手との合流を約束する短い会話の後で、丘の下を走る道路……そこを走る一台のトラックに視線を合わせる。

 すると、金属の身体が変化を始めた……。

 

  *  *  *

 

 隊の後方には、すでにモンスターたちが追い付こうとしていた。マシン系と呼ばれる、機械の姿をした者たちだ。

 ビット型、浮遊マシン型、ガーダー型、ソルジャー型、それに四本足の車体に二門のレーザー砲を備えた砲塔が乗ったタンク型もいる。

 

「32式エクスブレイド!!」

 

 まずは小手調べとばかりにエネルギーを集めて頭上に剣を作り出し、敵の群れに向かって放つ。

 群れのちょうど中央のタンク型に突き刺さった剣は、そのまま爆発を起こして周囲のモンスターを巻き込んだ。

 それでこちらに気付いたらしいモンスターたちは、一斉に攻撃を開始した。ビット型のモノアイやタンク型の砲から放たれる光線がネプテューヌに殺到する。

 

「そうよ、私が相手をしてあげるわ! クロスコンビネーション!!」

 

 光線を躱して敵陣に突っ込みビット型を二、三体まとめて斬り捨て、次いで十字に刀を振るって浮遊マシンを撃破する。

 獅子奮迅の活躍を見せるネプテューヌだが、その背後の地面が盛り上がり、地中から何かが姿を現した。

 

 それは全体像としては機械仕掛けの巨大なサソリを思わせるが、両の鋏の代わりに三本の爪があり、それがドリルのように回転している。長い尾の先には先ほどネプテューヌを刺そうとした鋭い針を備えていて、四つある丸い目が彼女の背中を捕えていた。

 

「ッ!!」

 

 だが不意打ちはまたしても失敗した。

 尾の刺突をヒラリと躱したネプテューヌは、振り向きざまに刀を振るう。

 

「ヴァリアブルエッジ!!」

 

 鋭い一閃が金属の装甲を打ち、機械サソリが悲鳴染みた鳴き声を上げるが、大した傷をつけることはできなかった。どうやら見た目以上に硬いらしい。

 

 ……この機械サソリ、名をスコルポノックに、本来女神の斬撃を防ぐほどの耐久力は、ない。だがこの世界の大気に満ちたエネルギー……シェアエナジーと呼ばれるそれが金属の細胞と反応し、防御力を底上げしていた。

 

 単純な頭脳しか持たないスコルポノックがそれに気付くはずもなく、お返しとばかりに両腕の爪の内側にある三連装のブラスターから光弾を発射する。

 

「ッ!! 見た目よりも激しい攻撃をしてくれるわね!!」

 

 躱した光弾が地面に着弾して爆発を起こし、モンスターを何体か巻き込んだ。直撃すれば女神と言えどただでは済まないだろう威力だ。

 だが、ネプテューヌは敢えて敵の攻撃の中を突っ切り懐に飛び込む。

 機械サソリがシャーっと鳴き声を上げながら振るう爪を掻い潜り、尻尾を避け、刀を振るう。

 

「クリティカルエッジ!!」

 

 居合切りにも似た一閃が、機械サソリの胴体に叩き込まれる。

 悲鳴を上げながらもんどりうつその身体には、大きな傷が刻まれていた。

 

「これでとどめ! クロス、コンビ……ッ!!」

 

 さらに追撃をしようとするネプテューヌだが、横からの斧の一撃に阻まれる。攻撃してきたのは、大きなモンスターだ。

 

 蛇の下半身を持つドラゴン型のロボットといった風情のそいつは、右手にメイス、左手に大斧を持っている。 マシン系の中でも危険とされる種だ。

 

「キラーマシン! こんな奴まで……!」

 

 キラーマシンは両手の武器を振るい、ネプテューヌを打ち据えようとする。

 それだけなら問題ない。いかに危険な種と言えど、本来なら女神の敵ではない。

 

 だが恐ろしい機械サソリと戦っている時は、その限りではなかった。

 

 斧の一撃を太刀で受けて、動きが止まった瞬間にスコルポノックが突っ込んできた。

 

「きゃああああッ!」

 

 怒りに燃える金属の身体の体当たりに弾き飛ばされて、ネプテューヌの身体が地面に落ちた。

 体勢を立て直すよりも早く、スコルポノックが咆哮と共に放った光弾がネプテューヌに降り注ぐ。

 

「ッ……!!」

 

 咄嗟に障壁を張って光弾を防ぐも、気付いた時には周囲をモンスターに囲まれていた。

 ビット型や浮遊マシン型のモノアイが、ソルジャー型の機銃が、タンク型の砲塔が、キラーマシンの斧とメイスが、そして機械サソリのブラスターがこちらを向けられている。

 機械サソリの咆哮と共に、それらが一斉に発射されようとして。

 

 ……そのときである。

 

 重々しいクラクションの音が聞こえてきたかと思うと、一台のトラックがモンスターの群れの合間に飛び込んできた。

 フロントが前に突き出たボンネットタイプで、二本の煙突マフラーと六輪のタイヤが、見るからにパワフルだ。何より目を引くのは、赤と青のファイヤーパターンだった。

 

 そのトラックが現れた瞬間、機械サソリがパニックに陥ったかのように声を上げた。

 

 トラックは次々とモンスターを突き飛ばし、そのままギゴガゴと音を立てながら人型に変形していく。

 大きさは大凡11mほど。大腿に四つ、踵に二つのタイヤを備えた強靭な足が大地を踏む。

 屈強な胴体には胸にヘッドライトやフロントガラス、背中に燃料タンクが配置され、トラックから変形したことを物語っていた。

 よくよく見れば、胸の真ん中に柔和そうなロボットの顔を象ったエンブレムが光っている。

 

 変形を終えたロボットは、背中から銃を抜くと大きくジャンプしながら眼下のモンスターたちに光弾をお見舞いする。

 降り注いだ光弾が炸裂し、ロボットが着地すると同時にモンスターたちが爆散していく。

 

 続いてロボットは長い腕の先から赤熱した大きな刃を飛び出させ、それを振るってモンスターたちを片付けていく。

 浮遊マシン型を真っ二つにし、タンク型の砲塔と車体の接続部を斬り捨て、ガーダー型のモノアイを串刺しにする。

 見る見るうちにモンスターは数を減らし、最後に残ったキラーマシンがロボットに向かっていくが、顔面から胸にかけて熱したナイフでバターを切るかのように両断されアッサリと消滅した。

 

「凄い……」

 

 まさに獅子奮迅の戦いぶりに、思わずネプテューヌは感嘆の声を漏らした。

 一方の機械サソリは悲鳴染みた鳴き声を上げ、あっと言う間に地面の下へと消えていった。

 

 僅かな間に敵を片付けたロボットは、敵の気配が完全に消えるのを確認してから刃をしまう。

 そして、ネプテューヌに向き直り、片膝を突いて視線を下げた。

 銀色の顔の青く光る眼に、自分の顔が映っているのをネプテューヌは見た。視線が交錯し、彼が何者なのか理解する。

 

「あなたは……!」

 

 姿は変わっているが、あの目の光は間違いようがなかった。

 

「オプティマス……! オプティマス・プライム!」

「ネプテューヌ……無事なようだな」

 

 ロボット……姿を変えたオプティマス・プライムの口から漏れたのは、式典の場で聞いた声と同じ、深く力強い男性の声だった。




満を持して登場のネプテューヌ&オプティマス。
さすがと言うべきか、やっぱり出ると空気が明るい方へ変わります。

なお、この作品の司令官がやたらとポエミーなのは仕様です。
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