メジロラモーヌ「面白くない男」   作:お話下手

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サンサーラ

 「なにかしら、これ」

 

 トレーナー室にメンバーが集まると中央ど真ん中に、二メートルはあろうことかという巨大な着ぐるみが鎮座していた。見た目は蹄鉄にデフォルメされた目と口が縫い付けられおり、頭部には耳だろうか。人参を逆さにしたウマ娘の耳を催したものがくっついている。

 

 前回の記憶では見に覚えのない物体に眉を潜めるラモーヌだが、好奇心が勝るのか僅かに目を輝かせていた。

 

 「この子の名前はトレ太郎。トレセン学園のマスコットキャラクターとして採用された、所謂ゆるキャラと呼ばれる者だよ」

 

 説明をしてくれたルドルフ。自信満々に語る口調で彼女も関係者であると窺わせるが、勿論ルドルフが発案したものではない。何故こんなものがトレーナー室にあるのか、気になったメンバー。トレーナーにも確認しようとしたが姿が見えない。カツラギエースはルドルフに尋ねた。

 

 「そういやトレーナーさんはどこ行ったんだ?」

 

 「目の前にいるよ」

 

 「うひゃあ!?」

 

 それまで微動だにしていなかったトレ太郎が喋った。エースにしては珍しい悲鳴をあげたが、他のメンバーはルドルフを除いて「また何か始まった…」と呆れ顔をする。

 

 「え、トレーナーさん? あんた、中にはいってんのか」 

 

 「そうだよ。来週のオープンキャンパスに備えて理事長と俺で作ったんだ」

 

 来週、トレセン学園のオープンキャンパスが開かれる。未来のウマ娘スターに憧れた幼い子供達が、体験、見学が出来る学園内でも非常に重要なイベントであり、当然ながらメディアの取材も入る。

 

 「でもこれクッソ熱いし重い…」

 

 「いや、なんでやろうと思ったんだよ…」

 

 よく見れば小刻みに着ぐるみが震えていた。微かに肩で息をしているような声も聞こえており、エースのみならず誰が見ても既に体力の限界だとわかる。

 

 「たづなさんがデートしてくれるって…」

 

 「あんた多分良いように利用されてるだけだろ!?」

 

 最近は皆、このトレーナーの扱いに慣れた。しかし、今回の仕事はそれだけではない。理事長から直々の依頼でもあり特別ボーナスを支給してくれるとの話しだったのだ。

 

 「今月も厳しいからね。ボーナスは助かるよ」

 

 ラモーヌからの催促は既に済んでいるが、年若い青年。色々と入り用がある。生活費に関しては、トレーナー寮暮らしでそもそも自分の食事には気を遣わない男。そちらに関してはギリギリ問題無かった。たまに外食をしすぎると、金欠になるくらいか。蛇足だが時折、マルゼンスキー、シービーから同棲を勧められるが完全にアウトであるため毎回断っていた。

 

 「前から気になっていたんだけど、なんでトレーナーさんはラモーヌに借金してんだ?」

 

 「そ、それは…」

 

 トレ太郎が逃げるように後退。

 

 「ああ、エースは知らないんだったな」

 

 シリウスはそういえばそうだったと悪そうな笑みを浮かべて頷いた。このメンバーの中で彼がラモーヌに借金をしている理由を知らないのは、マルゼンスキーとカツラギエースだけである。

 

 シリウスはラモーヌに目配せすると彼女は構わないと言わんばかりに肩を竦めた。

 

 「ラモーヌの勝負服を見たことあるよな」

 

 「えぇ、あの凄く綺麗な衣装ね」

 

 マルゼンスキーとエースも写真で一度だけ見せて貰ったことがある。あらゆる高級素材、そして上品なデザインの中に機能性が盛り込まれた勝負服。一着数千万はすると言われたが…。

 

 「それをこの犬は駄目にしちまったんだよ」

 

 「え」

 

 エースとマルゼンスキーの顔色が蒼白に変わる。先程も言ったように凄まじい金額をかけて作り上げられた勝負服だ。それをただ、一部破損するならばまだ良い。修復のしようがあるが、なんと派手に破いたうえにあまり大きい口では言えないが……彼の吐瀉物がかかってしまったのだ。

 

 「ま、まさかトレーナーさん、酔っぱらってゲロったんじゃ…」

 

 「本当にすいませんでしたあああああ!!!」

 

 トレ太郎はラモーヌに土下座する。彼女は別に気にしてないといった様子の顔。

 

 「全く。それ何度目かしら。いい加減うんざりするのだけど」

 

 ラモーヌとしては謝罪が欲しいわけではない。勝負服は台無しになったが彼女にしてみれば所詮、金でどうにかなるモノである。また作れば良いだけの話だ。既に再生産は始まっており、レース前には問題なく用意出来るだろう。

 流石にトレーナーには弁償を要求したが、これにより彼を逃げられなくすることに繋がったため彼女としては結果的には良かった。

 

 「でもトレーナー君がそんなことするなんて不思議ねー」

 

 マルゼンスキーの言う通り、ウマ娘が大好きな彼がそのようなことを仕出かすことにメンバーの誰もが疑問だった。シリウスやルドルフも勝負服の弁償が借金の理由だとは知っていたが、そもそも何故そんなことになってしまったのか未だに聞いていない。

 

 「いや、それが俺もよくわからなくて…」

 

 「なに?」

 

 記憶がスッポリと抜けていると言うのだ。シリウスはまたしても便利な記憶喪失だなぁ!オイ!と突っ込んだが、彼としては弁明のしようがない。何度かラモーヌに何があったのか尋ねたが、彼女は頑なにそれを語ることはなかった。

 

 「別に大したことはないわ」

 

 無表情で言うラモーヌ。メンバーは絶対なんかあったな…と確信めいたが、余計なことは喋らない彼女からそれ以上聞き出すことは不可能である。

 

 「彼女が言いたくないならそれなりの理由がある。此方も詮索はやめておくよ」

 

 幼い頃からラモーヌと付き合いがあるルドルフが助け船を出した。トレーナーに関することは興味あるが、何か嫌な予感がする。このままではいけないと思い、話題を変えることにした。

 

 「今回のイベント。私は主に見回りだが、皆は係が決まっているかい?」

 

 「あ? 参加するわけねぇだろ」

 

 シリウスは嫌そうな顔で切り捨てる。ルドルフは苦笑いしたが、面倒見が良い彼女のことである。大方、ルドルフと同じように見回りでサポートに徹するのが目に見えていた。最も、それを口にしてしまえば烈火の如く怒り、その矛先が向けられるのは勘弁してほしいので黙っていることにする。

 

 「あたしは後輩ちゃん達のお手伝いかな」

 

 マルゼンスキーは中等部からお誘いがあるようだ。人当たりが良い彼女のことである。頼られることは珍しいことではない。

 エース、そしてシービーは共にイベントを見て回る予定らしいが、気紛れなシービーに付き合うのもそれはそれで大変だろう。最後まで彼女が学園に残っているかも怪しい。

 

 「私はそうね…。パンフレットの撮影も兼ねてアルダンのところにお邪魔しようかしら」

 

 「君、妹さんと走りたいだけじゃ…」

 

 来年度に使用されるトレセン学園のパンフレット撮影。そのモデルとしてラモーヌが選ばれた。今しがた思い付いたように語るが、メジロアルダンは確かドーベルと共に子供達に学園案内、最後には並走を見せてあげると聞いていた。そこにお邪魔しようというなら。

 

 「あれ、子供達の質問コーナーもあったはずだよ。感覚派の君は答えられないでしょ」

 

 速く走るにはどうすれば良いですかと聞かれて、速く走れば速く走れると答えるのがラモーヌである。他者と感覚の次元が違う彼女が果たして上手く立ち回れるのか、トレーナーは鼻で笑った。

 

 「あらまぁ」

 

 「え、ちょっ…何。ぎゃあああ!」

 

 ニッコリと微笑む、しかし目は笑っていなかった。トレ太郎に近づいてコブラツイストを決めるラモーヌ。絶叫をあげ暴れるが、ウマ娘のパワーから逃れることは出来ない。暫くした後解放され、小刻みに痙攣したまま打ち捨てられるが、メンバーは特に気にしないまま会話を進めていく。

 

 残るはクリスエスだが。

 

 「―――私は、ギムレットとhandcrafts―――を売る」

 

 ハンドクラフト。工芸品だろうか。彼女にしては珍しい担当だと思ったが内容をよく聞けば、クリスエスとよく一緒にいるタニノギムレット。彼女は柵を破壊するという悪癖があるのだが、それを修理するにも費用が掛かる。たづなさんのアイディアでギムレットが破壊した柵を利用して工芸品を作り、オープンキャンパスに訪れる親子連れにはファンもいる。そんな人達に販売することにしたらしい。ギムレットの趣味が日曜大工と聞いており、その出来映えもかなりのモノで商品価値としては充分。

 

 「売り子か。でも君達二人だけだよね? 大丈夫?」

 

 ラモーヌの関節技から復活したトレーナー。変わらず律儀にトレ太郎のまま。脱ぐ気はないらしい。

 彼の心配事はクリスエスがあまり喋りが得意ではないこともあるが、タニノギムレットは少々特徴的な表現を使った喋りであるため果たして意志疎通が出来るかどうか心配になる。

 クリスエスは目を閉じて顎に手を添える。その様子を想像しているのだろう。難しい顔をしていた。

 

 「―――正直に言う。お前が加勢してもらえると助かる」

 

 「全然良いよ。此方の用事が片付いたらすぐに向かうから」

 

 普段から我慢強いクリスエス。トレーナーとしてはもっと我が儘を言ってほしいところなので、こうして彼女から頼ってもらえるととても嬉しい。

 

 「あ、トレーナーさん」

 

 皆の予定を確認したその時、トレーナー室をノックし、入室するのが一人。理事長の秘書を勤める駿川たづなである。

 

 「イベントに関してミーティングがありますので、事務室まで来て貰えます?」

 

 「はーい!すぐ行きまーす!」

 

 語尾にハートが付きそうなくらいデレデレとした声。それまで体力の限界だと思っていたトレーナーは軽快なステップでトレーナー室を出ていく。あの切り替えの良さと無限に思える回復力は見習いたいものである。

 

 「しかし、着ぐるみか」

 

 ルドルフはふと思案する。常日頃から威圧感があると言われる彼女。自身もあれを身につければ他のウマ娘達との距離を縮められるのではないかと。

 

 「やめろ」

 

 シリウスはわりと本気の顔で止めた。

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 オープンキャンパス当日。校門前に列を成していた親子組や引率の先生達に連れられた子供達が次々と学園内へと足を進める。中では何故か屋台を営むウマ娘や握手会、OG達による講演会が行われるなか、トレーナーはルドルフと共に中庭でトレ太郎の御披露目会の準備を進めていた。

 

 「トレーナー君、調子はどうだい」

 

 「トレ太郎でお願いしますなのだ」

 

 甲高い裏声と語尾を付け、キャラに演じるトレーナー。ルドルフはそうだったと嬉しそうな笑顔を浮かべると、引率のためにトレ太郎の腕を取った。

 

 「それじゃ、トレ太郎。行こうか」

 

 「はいなのだ」

 

 親子連れが疎らに散策していたが、トレ太郎の姿を見ると子供達が歓声を上げて近づいてくる。上下左右、前後にもみくちゃにされる着ぐるみ。中にはウマ娘のチビッ子もいるため、下手な大人よりもパワーがある。重量がある着ぐるみだが、その分頑丈に作られており、多少のことでは破損しなかった。

 

 しかし、中身は別である。あらゆる方向からシェイクされ、トレーナーは開始一分もしないうちに体力の限界がきた。

 

 「や、やめるのだ!ゆ、揺らさないでくれなのだ!」

 

 「はは」

 

 ルドルフは微笑ましいと見ているが本人にとっては戦場。

 

 「痛い!? 蹴るのはやめるのだ!殴るのもやめるのだ!―――おい、誰だ今ふなっしーのパクりとか言ったヤツ!」

 

 それは聞き捨てならないとキャラ設定が早くも崩壊してしまう。ボロ雑巾みたいな扱いをされてルドルフは流石に心配するが、そこに一人のドSが現れる。

 

 「あら、愉快なことになっているわね」

 

 メジロアルダン、ドーベルと共に子供達を引き連れたメジロラモーヌが艶やかな嘲笑でやってきた。普段から飄々とした男が必死なのを見せられると、なかなか愉悦らしい。

 

 アルダンとドーベルは丁寧にトレーナーとルドルフに頭を下げるが、当然メジロの至高はそんなことしない。トレーナーには絶対にしないであろう慈愛に満ちた微笑みを子供達に向けると穏やかに優しく語りかける。

 

 「さぁ、皆さん。トレ太郎が何でも遊んでくれますよ」

 

 「ラモーヌさん、本当に?」

 

 「えぇ、トレ太郎は私とお友達なんです。ここだけの秘密ですからね?」

 

 「やったぁ!」

 

 改めて本当に子供好きだなと思うトレーナー。自身にもその慈愛を一欠片ほど残してほしいが、残念ながらそれはない。

 

 「ねー!ねー!トレ太郎!好きな食べ物なにー?」

 

 「ボクは人参が大好きなのだ!みんなも人参好きかな?」

 

 ミーティング通り、設定の自己紹介を始める、が。

 

 「トレ太郎、好きな遊びなにー?」

 

 「え。好きな遊び…? なんだったけ、うーんと…えっと―――好きな遊びは綺麗なお姉さんとデートすることなのだ!」

 

 しかし、まだ設定が決まっていないところを質問されてしまい、困ってしまうトレーナー。思わず自分が好きなことを口にしてしまうが。

 

 「あらあら、皆さん。ちょっとの間、良い子にしているんですよ」

 

 ラモーヌがトレ太郎の胸ぐらを掴み、慈愛の微笑みのまま、トレーナーと共に遮蔽物に隠れる。何やら騒々しい音がして、ルドルフやアルダン達は頭を抱えた。

 音が止み、優しい笑みのままのラモーヌと、何故かベコベコに色んなところが凹んでしまっているトレ太郎が現れる。

 

 「皆さん。良い子に待ってましたね」

 

 「トレ太郎。どうしてボコボコなの?」

 

 「さ、さっき狂暴なライオンに襲われたのだ…。でも無事に帰ったから安心してほしいのだ…」

 

 満身創痍のトレーナーだったが、ここで更なる追い討ちが掛かる。

 

 「ねー!ねー!トレ太郎!トレセン音頭踊ってー!」

 

 「と、トレセン音頭!?」

 

 突拍子の無い注文が子供らしいというべきか。トレセン音頭は高い体力を持つウマ娘でも、かなりの体力を使うハイテンポな踊り。あの踊りをただの人間。それも着ぐるみを着た状態で行うのは不可能に近いだろう。

 

 「トレ太郎は踊りも得意なんですよ。ねぇ?」

 

 とっっっても愉しそうなラモーヌ。悪魔のような所業にトレーナーは無理です!と目線を送るが、彼女はそんなこと気にしない。男の新鮮な悲鳴を聞けると、肌の艶が増しているように見え、返事を返すように同じく目線で「や り な さ い」と指示される。

 下を見れば期待に満ち溢れた目で見てくる子供達。逃げ場は既に無かった。

 

 「うぐっ………さぁ!みんな!はっじまるよー!」

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 「やぁ、クリスエス。調子はどうだい」

 

 「―――ルドルフ。来たか」

 

 トレ太郎の件が片付いたルドルフとトレーナー。約束通りクリスエスの加勢に来たが、彼女が二人を見ると何故かトレーナーはルドルフにお姫様抱っこの形で抱えられている。

 彼の表情は全てを出し切ったと言わんばかりに真っ白に燃え尽きており、最早仏のごとき。

 

 それもそうだろう。あの後、トレセン音頭を無駄にキレが良い動きで踊りきることに成功したが、それが逆に子供達の熱を盛り上げることになり、更にうまぴょい伝説まで踊ってくれとねだられるのでさぁ大変。普段から死にそうな顔をしている彼だが、今は振り切って昇天を果たしている。

 

 「トレーナー君に休んだらどうかと提案したのだが、クリスエスの手伝いをしたいと聞かなくてね。少しでも休んでほしいとこうして抱えたのだが…」

 

 「―――寝ているな」

 

 限界だったのだろう。静かな寝息を立てている。

 

 クリスエスは微かに笑みを浮かべると彼の頬に軽く触れた。

 

 「ハァーハッハッハァ~ッ!来たか、愛されし者(サンサーラ)よ!」

 

 一瞬の静寂を破壊する高笑い。赤みがかった癖のある鹿毛に前髪の流星を持ち、右目の眼帯がトレードマークのタニノギムレットが現れた。彼女はファンの女の子達に囲まれながらルドルフ達のもとへと近づいてくる。

 

 「サンサーラ?」

 

 聞き覚えの無い単語にルドルフは困惑する。どうやらトレーナーに対しての呼び名らしい。

 

 「ほう。皇帝の寵愛に抱かれるとはな。お前の美しさも相まってまさしく現世に産まれし茨の姫(ブルーンヒルト)。俺としては久方ぶりに語りたかったが、鼓動を沈めるのも時には必要だろう」

 

 ギムレット達のところには芝生にマットを敷いて、フリーマーケット形式で工芸品が売られていた筈だが、商品は一つも残っている様子はない。

 

 「―――折角のところ、すまない。既にmissionは達成した」

 

 意外にも上手くいったようだ。彼女達のファンにとって意志疎通など朝飯前であり、たどたどしいクリスエスの言葉にも意味深なギムレットの言葉にもしっかりと耳を傾け、金銭のやり取りも向こう側が先導してくれたところもある。

 

 「それならば良かった。トレーナー君をゆっくり休ませて上げられるよ」

 

 安堵したルドルフ。このままトレーナー室へ向かおうと思ったがギムレットがジッとこちらを見つめていることに気づく。

 

 「どうしたんだい。ギムレット」

 

 「…成る程」

 

 「え?」

 

 「ハァーハッハッハ!ここまで混沌(カオス)に染まるとは!アダムとイヴの溷濁、世界(ユグドラシル)という坩堝(グラス)に注がれる愛という名の泥。だが汚濁の中にこそ生命が宿る!」

 

 「き、君が楽しそうで何よりだよ」

 

 苦笑いをするしかないルドルフ。クリスエスも無表情だが、僅かに眉をひそめている。ギムレットの言葉の真意を理解することは出来ないが、どうやら喜んでいることだけは伝わってきた。彼女のトレーナーがいれば翻訳してくれるが、今はその姿が見えない。

 

 「愛されし者(サンサーラ)にこれを」

 

 タニノギムレットはポケットから一枚の紙切れを差し出す。彼女がアルバイトしている、とあるバーの名が書かれたショップカードだった。

 

 「我が同胞(トレーナー)も行きつけの休息地(エデン)だ。そこでお前の助言(メーティス)を貸してほしいと伝えてくれ」

 

 同胞。つまりタニノギムレットの担当トレーナーだろう。彼女がバーにいる為、たまにはそこに顔を出して手を借りたいらしい。

 歳は彼の一つ下だった筈、面倒見の良いルドルフのトレーナーだ。後輩にあたる相手に彼も無下にはしないだろう。

 

 「わかった。必ず伝えるよ」

 

 タニノギムレットは満足そうに頷くとファンの女の子達に囲まれたまま高笑いをし、優雅にその場を後にした。

 

 

 




次回の更新は10月7日を予定しています
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