戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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いやぁ、百話行きましたね。正直ここまで続くとは思いませんでした。


一〇〇話

この前の司令部占拠事件を裏で手を引いていたのはやはり教国であった。デニスが捕らえた教国の諜報員はその後、情報部による尋問が行われ、その結果自分達がどこまで転移魔法の追跡をしているかどうかの調査に乗り出したと言う。

 

「教国もそれだけ本気ってわけだ」

「気が抜けませんね」

 

国境近くの街の民宿でディルクとコンラートはそう話す。現在、抵抗軍の拠点攻撃の為に情報収集の為に展開中の第五〇〇部隊。彼らの今回の目的は抵抗軍幹部会の襲撃、並びに情報収集である。

自分達は統合作戦本部などの如何なる帝国軍部隊から独立した部隊であり、指揮官は陸軍参謀総長であった。そのため、この前の司令部占拠事件においてその指揮官であるペッツ参謀総長が動けなかった際。自動的に指揮権はその下のディルクに渡される事となり、知り合いであるロンネル将軍と歩調を合わせて突入を行った。

 

 

 

 

 

事件後、ロンネル閣下と一度だけ会った事がある。

それは司令部復旧作業を終えた記念で行われた小パーティーにおいて、大人気であったロンネル閣下は会場の隅でデニスと話していた所を話しかけられたのだ。

閣下は片手にグラスを持ったまま俺を見て話しかけた。

 

『今回の功績は全て私が受ける事にするよ』

 

あの事件の際、第七機甲師団を呼んだり大方の突入作戦を提案したのは自分だ。ロンネル閣下としてはそれら功績を全て自分に渡したいと思っていたのだろう。しかし自分の悪評は耳に入っているだろうし、何より……

 

『君も()()()()が待っているだろう?こんな時間の使い方は美しくなかろう』

 

時間はダイヤモンドより希少だと常々言っている閣下らしい言い方で全ての功績を掻っ攫っていった。本質的なものは気づいていないだろうが、ある程度察したのだろう。

 

 

 

 

 

「相変わらずな人だ……」

「国民の英雄。そう言われる理由がよくわかりますよ」

「速度を人にしたような人間だからな。ある意味で時間の重要性を最も理解している人だよ」

 

トラックに積み込まれた荷物を確認しながらディルクとコンラートは話す。

今回の作戦に際し、ディルク達は突撃銃の他に手榴弾、拳銃、重火器etc……

 

「しっかしまぁ、よくこんなに集めたもんだ」

「補給係が言うには戦時中の試作品と使用期限寸前の武器を回してくれたようです」

「試作品ねぇ……」

 

あんまりいいイメージが無い。だって嫌な前例(三七式魔導演算機)があるから……これもうトラウマになっているな。うん、そりゃそうだ。

 

「使えるのか?」

「一応最終試験まで行ったものですからね。採用直前に終戦を迎えたものなので……」

「運が悪い系兵器か……」

 

採用直前まで行ったが、終戦によって急遽採用が撤回される事案はよくある。そして大体そう言うのは不運な兵器として後世で語り継がれるものだ。そして大体そう言う兵器は構造とかめちゃくちゃ傑作だったりする。まぁ、時と場合によるが……

 

「試作品なのであまり弾数は多くありません」

「この少人数なら問題ないだろう」

「そうですね」

 

今回の作戦にはもちろんMボートも持ち込んだ。こういう横流し武器が無くなった時に八八ミリ砲の威力はどうしても必要であった。

 

「大尉、攻城戦の経験は?」

「この前の南方司令部強襲が最後ですよ」

「あれって攻城戦なのか?」

「まぁ、中身はほぼ案山子でしたが……」

 

そう言い、コンラートはその時の光景を思い返すとそのまま目を閉じる。

 

「思えば終戦から半年、随分と動きましたな……」

「そうだな……」

 

あの地獄の塹壕戦の戦争は実に七年も続いた。自分の場合は三年だけであったが……。

 

「共和国側の拠点の方は?」

「当局の監視が厳しいですからね。ルテティアから移転させる為の準備を進めるところです」

「第三中隊の方は?」

「予定通り、他部隊の訓練中です。悲鳴をあげていると連絡が来ています」

「そうか……散々扱かれているんだろうなぁ」

 

どこか愉快げに二人は話す。

 

「任務に充てる人員を減らされたんだ。精々くたびれて欲しいね」

「まったくですな」

 

そういうと二人は少し笑っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

事の発端は数日前、司令部からの命令で空軍と海軍の両方から特殊部隊の創設の為のアドバイスと訓練の為に駆り出されていた。

場所は我々の最初の訓練の為に使ったアルプン山脈。……そう、あの地獄の雪中行軍だ。いずれは蓮子達に経験させるべき行事であると彼は考えていた。

 

前の司令部占拠事件の際に突撃銃の連射かつ正確な射撃能力に加え、制圧力や室内戦に特化した部隊を見た空軍と海軍はその必要性を急務とし、ペッツ参謀総長にその突入作戦を取り仕切った部隊から教育を頼まれてた。

元々魔導演算機を保有しているのは帝国でも陸軍と陸軍から分裂した空軍のみであり、それらを開発した魔導研究局も陸軍の管轄下の組織であった。

 

現在、突撃銃の生産は急ピッチで進んでおり、陸軍以外でも採用が決まった。

そしてそれらと並行して始まったのが、様々な任務に対応可能な独立した部隊の創設。現在はその全てが空軍に移管されたと思われていた魔導演算機を所有する降下猟兵部隊は、その一部がまだ陸軍に残されたままであった。

その事実に空軍や海軍も驚いた様子であったが、それよりもテロ事件の制圧能力の高さに人質にされていた各軍部の参謀長達はある意味で陸軍の能力に恐怖していたのかもしれない。

 

そして、彼らは自分たちにも対テロなどの特別な任務に特化した……言ってしまうとまた同じことがあった際に自分達の身を守ってくれるような部隊が欲しいという理由でペッツ総長に頭を下げたようだ。まぁ、ああ言う事件の時に陸軍に全て業績を持っていかれるのを嫌ってのことだろうが。

 

そして陸軍としても部隊の増員や任務の分散を目的とし、訓練内容は全て陸軍に任せるという条件で腕のいい魔法兵を要求していた。

陸海空、全ての軍の腕利魔法兵が今はアルプン山脈にてほぼ身ぐるみを剥がされた状態で歩かされている事だろう。

魔法兵の適性を持つ者は積極的に軍部に入れられる。きっと地獄を見ている事だろう。

 

「作戦は?」

「はっ、先ほど連絡がありました。抵抗軍幹部会への襲撃の作戦内容の変更を望んでいると」

「作戦変更?」

 

どう言うことだ?この時期になっての作戦変更なんて、おかしな話だ。

 

「電話できるか?」

「既に準備は」

「ありがとう」

 

そう言い、渡された野戦電話で直接司令部に連絡する。この電話も司令部と特定の中継局を結べば極秘で連絡が取れる便利品だ。

軍用の電話は暗号で話す事が多いが、暗号化するとまともに聞き取れない(暗号化した文を書くのは面倒)ので、ここでは一般的な会話を記す。

 

「電話をかわりました。ディルクです」

『少佐か、連絡を聞いたな?』

「はい、作戦内容の変更をすると……」

 

すると電話の奥でペッツはやや申し訳なさそうに言う。

 

『済まない。入手した情報の精査が取れない。その為、先に内部に潜入して状況把握をして貰いたい』

「…それはつまり……」

『全ては現場の判断に任せる。情報部の仕入れた話がガセの場合、厄介な事になる』

「分かりました」

『この前の司令部占拠事件で、国内の情勢は一時期であるがごたついた。その間に抵抗軍が大きな動きをした可能性がある。……何せ、抵抗軍と教国は裏で手を繋いでおるからな』

「はい」

 

教国と言えば……二ヶ月ほど前の地下の禁術書保管室の爆破事件の後、どうなったのだろうか?あの事件は大陸中に広がり、いまだに何故あそこに魔導鍵無しで侵入出来たのかも不明だ。

教国が何故禁術を定めたのかはよく分かる。だが、何故教国は全ての禁術を保有していると言う嘘を付いていたのか……それがよく分からない。

国の面子を持つ為、と言われれば納得できてそれでおしまいだ。だが、もしかすると別の目的があるかもしれない。

 

教国ははっきり言って弱小国だ。かつて、宗教が神聖不可侵であると信じられてき過去の時代。現在の教国にあった聖地は戦争の火種でもあった。

 

 

 

聖地征する者大陸を征す。

 

 

 

過去の時代、この世界に於いてよく言われた言葉だそうだ。聖地と呼ばれる所以はこの大陸で最も高い山がここにあり、神話の話によるとこの場所は神が天界からこの地上に降りてくる為に作った階段だと言う。

山岳を信仰する文化はどこにでもある。日本にだって富士山を信仰する文化があるように……。

 

そして、その聖地である山を登り切ると神に会えると言う話から太古よりその山は誰しもが登る事をやめなかった。そしてその強欲と命を落とす光景から神は怒り、その山を切り取ってしまったと言う。そしてその後、その切り取られた山の頂上部分に教皇庁が建てられた。

そして幾多の時代になっても聖地を巡る戦争は止まず、この戦乱は止まる事を知らなかった。そこで聖地を直接管理する為に教会が聖地や、その周辺の土地を平定する事を各国に約束させた。

 

当時はまだ教会の権力の色が強かった時代、その教会が戦争の火種となる聖地を直接管理する事に各国は文句も言えなかった。文句を言えば、教会の平和を求める声を蹴る事となり、諸外国も良い顔をしない。……と言うより、長年と続く戦乱で国内情勢が極めて不安定になってしまったのだ。そんな状態で戦争なんてできるはずも無く。結果として聖地は教会の管理する統括領地となり、聖地の安全を保証する聖地条約を大陸全土に広めていた。

 

教会側としても聖地の領土は教会の威厳を保つ為に是非とも欲しい場所であり、戦争を止める為に教会の統括領とした。周辺国としても戦争の火種の厄介払いができると言う事でこの提案には賛成していた。

そして当時の教会や各国家の元首を集めた会議にて戦争の元となる聖地を教会の直轄領と定め、ついでに教会の権力を大きくさせない為に軍事力の押さえ込みを目的とした聖地条約が制定された。

 

俺が帝国に入った際、まず初めに学んだのが歴史だ。歴史は話の種であり一般常識。俺が転移者であるとバレるのは避けたかった為に、必死になって歴史を覚えた。元々好きな分野であったが故にそれほど苦でもなかった。

 

少なくとも言えるのは、母国の歴史を語れない国民はそれだけ自意識……すなわち民度が低い象徴であると言う事だ。

 

 

 




第七章『クーデター未遂』完

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