戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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一〇五話

「では会議を始めます」

 

古城の大広間。そこに置かれた長机に綺麗に並ぶ抵抗軍の幹部。いずれも将官クラスの人材であり、各部署のトップが集まっていた。

 

帝国や共和国などからはテロ組織認定されているが、軍隊を自称しているあたりしっかりとした階級などもある。

認識票を持たない抵抗軍兵は俗に雑兵と言う扱いとなり、抵抗軍ではないと言うことになる。記録課も生産を進めて入るものの、間に合っていないのが現状だ。

 

そして抵抗軍は秘密裏に技術供与の代わりに資金や武器の輸入を諸外国や、なんなら共和国や帝国の一部部隊から行っていた。

やはりどこの指揮官も我らの指揮官が持つ魔法技術に興味があるらしい。まさに愚かと言う他ないが、それで我々が潤うのであればどうでもいいか……。

 

「まず今月の損害比並びにDNSなどの動きに関してですが……」

 

今月は大小合わせて三件、事を起こした。

襲撃したのは共和国市内の新政府を強く推す記者と弁護士、それと抵抗軍を裏切って帝国に逃亡した資産家。裁かれて当然だと豪語する下級兵をよそに今月の作戦目標や損害比、資産など様々な報告をしている中。最も上のくらいの人間が座る上座に一人、特徴的な白い軍服を着る一人の青年がいた。

 

 

 

その男の名はヘイルダム・ルメイ。抵抗軍司令長官ジュール・ファブール少将の部下にして副司令を拝借した共和国正統政府軍きっての砲兵。

その能力はマーチバル攻勢の際の魔導砲撃において発揮されており、一発の攻撃で四個歩兵師団を葬った恐るべき能力を持ち合わせている。

しかし、それも彼が()()()()()()の話。砲兵でなければ彼はただの一般兵と変わらないかそれ以下の能力だと聞いている。

 

戦時中、彼の提案した『魔法兵強化改革案』の最高傑作として生まれた彼はその優れた魔導適性を生かして戦時中はいくつも帝国軍陣地を破壊していった。

 

そして戦後、抵抗軍に合流した彼は今までその力を一度も使うことはなかった。無理もない、一発で四個師団を破壊できる威力は街を破壊することは最も簡単であり、そう易々と撃たれては敵わないのだ。

 

だが、彼が砲弾を撃たずとも彼の持つ能力自体が抑止力として働いていた。事実、彼が抵抗軍にいるとわかった瞬間、帝国も共和国も積極的な攻撃を控えるようになったのだから……。

近々はどこにいるのかすら不明であったが、今日の定例会議に参加すると聞いた時は仰天するかと思った。

 

モリス・ポテ大佐は上座に座るヘイルダムを視界の端で見ながら出されたワインを一杯飲む。

会議は順調に進んでおり、ポテとしてはヘイルダムに聞きたいことがあった。

 

「准将閣下」

「何かね?」

 

会議の議題が進む中、私用で問いかけてきたポテにヘイルダムは耳を傾けた。

 

「司令官の居場所は我々も知らぬのですが、副司令は何かお聞きでしょうか?」

 

その問いに部屋にいた全員の視線が集まった。そりゃそうだ、最高指揮官がいない事実は指揮にも関わる重大な事態だ。

全員の注目が集まる中、ヘイルダムは口を開いた。

 

「そう心配なさらなくとも、司令官はご存命です。私が此処に来たのも、その事で皆様にご報告があるからです」

「「「っ!?」」」

 

その瞬間、その声を聞いていた全員に驚きと緊張が走った。そして彼は懐からテープを取り出すとそのまま足元に置いていたテープレコーダーを取り出すとそのままカセットからテープを流した。

 

「さあどうぞ」

 

ヘイルダムはそう言うと、テープからその声は流れた。

 

『……あぁ、諸君。聞いているだろうか?』

 

聞こえてくる鮮明な声は今までのレコードと違い、とても鮮明なものだった。

 

 

 

 

 

そしてその声は古城の脱出ポイントに居た大湊も聞いていた。

 

「まじか、あのおっさんまで来てたのかよ」

「え?どう言うこと?!」

 

同じく脱出ポイントで待機していた松島も驚いた様子で大湊に聞く。

 

「今、あのおっさんが中に居るんだよ。そりゃ人も多かったわけだ」

 

会議室の装飾品に仕掛けた盗聴器越しで聞いていると少々音質が悪いことから軽く大湊が愚痴る。

 

「こっからだと聞き辛ぇな。もう少し近寄ろう」

「大丈夫なの?」

 

すると同じく脱出ポイントに集まった百里が言う。

 

「危険だ、人が多い」

 

しかし大湊は古城を見ながら言う。

 

「大丈夫さ、いい場所を見つけるだけだから」

 

そう言うと、録音機をつけたまま彼はゆっくりと古城に近づいていた。

その間も会議におけるジュール・ファブールの話は続いていた。

 

 

 

 

 

『諸君の働きはこちらでもよく確認している。皆よくやってくれている』

 

会議室に響く、この時代では高音質な声は会議中の将官らの背筋を伸ばすには十分な働きであった。

 

『君たちの働きのおかげで我が軍は間も無く共和国の実権を取り戻し、帝国に奪われた領土を取り戻すことができるだろう』

 

録音された音声から聞こえてくる抵抗軍トップの肉声、それは紛れもなく本人の声だ。

 

『そこで、今現在我々は非常に苦しい立場にあることは皆も知っての通りだ。

帝国に寝返った現政府と帝国からテロ組織と認定され、日々追われる毎日。生き残るために苦渋を舐め続けた』

 

その声はどこか演説みを帯びており、不思議とその声を聞いていた将官らは誰もが付き従うかのように話を聞いていた。

 

『諸君らの働きのおかげで我々の計画は順調に進みつつある。

そこでだ。今現在、我々の部隊の抜根的改革を図りたい。それには諸君らの協力が必要不可欠だ』

「「「「……」」」」

 

もはやこの部屋にいる全員が静粛に彼の話に夢中になっていた。

 

『具体的な計画はヘイルダム准将から聞いてくれ』

 

そう言い、彼らの視線がヘイルダムに向く事はなく最後にジュール・ファブールはこう述べた。

 

『我らに勝利を。抵抗軍万歳!(Vive la Resistance!)

 

それに呼応するかの如く、将官らも答える。

 

「「「「「抵抗軍万歳!(Vive la Resistance!)」」」」」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「こいつか……」

 

古城の保管庫に入ったディルクはそこで中の書類や帳簿を漁っていた。帳簿で金の出し入れを見ているとやや渋い顔をしていた。

 

「やはりな、共和国軍が裏で協力しているのは予測していたが、まさか帝国軍までもとは……」

 

どうやら抵抗軍は自分たちが思っているよりも巨大な組織に変貌したのだろう。帳簿には小国から支援を受けている様子もあった。

 

「厄介な事を……」

 

おそらくこれらの国が支援をしている理由は国内を大きく引っ掻き回して貰うためなのだろう。そうでなければ理由がつかない。

 

「逆恨みもいいところだよ」

 

そう呟くと足元に転がっていた抵抗軍の兵士を足で退けるとそのままディルクは帳簿を手に持ったまま部屋を後にする。彼らの制服は血で滲んでいた。

部屋の外は至って静かで、此処で会議が行われているなんて思わないくらいだ。

 

「すまんね。邪魔したよ」

 

甲冑やら置いてあるこの場所でディルクはそこで倒れている抵抗軍兵を見る。床に空薬莢が転がり、ディルクは短機関銃を下げたまま古城を歩く。

今回の目的にある盗聴の他に帳簿の収集もディルクは任されていた。

ここは抵抗軍の拠点で、尚且つ記録課も存在するような比較的大きな場所だ。だからこう言った帳簿を使って炙り出しを行う算段であった。

彼らは皆死体であり、例のゾンビとなったが一瞬でその命を刈り取っていた。

 

「(いくらテロリストを殺しても戦時条約には違反しない)」

 

戦時条約にテロリストの扱い方は規定されていない。だから本来であればテロリストに対してどのような仕打ちを行なってもそれが処罰される事はない。戦闘時は短機関銃の銃口に消音魔法を展開し、相手方に武器を使わせぬ間に制圧した。

 

「(取り敢えず仕事はこれで終わりか)」

 

これでようやく休めるかと思った矢先、無線で松島が叫んだ。

 

『少佐!あのバカ、通信聞くために城に行っちゃった!』

「あいつが?」

 

取り敢えず引き戻しに行った方が良さそうだ。そう思い彼は城を後にする。

 

「すぐに向かう。お前達はそこで待機」

『了解』

 

余計な事をしなければ良いが……。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

道端で待機しているコンラート率いる待機組は侵入していた工作員の対応で大忙しであった。

 

「コンラート大尉、尋問が終わりました」

「ご苦労」

 

簡単にまとめた報告書をで渡されながらコンラートは片手にコーヒーカップを受け取って煙草を口に咥えていた。

元々嫌煙家である自分達の隊長はそれ故に駐屯地では幾つか喫煙禁止場所が設けられていた。隊長が嫌煙家で部下には喫煙者ばかりだから部隊内で何かしら問題が発生した時の罰が煙草禁止令なのはきつい。一週間の罰を喰らった時なんて発狂ものだ。

だからこう言う時が一番煙草を吸いやすい時間だった。

 

「先ほどの工作員はどうやらこの作戦直前に入り込んだようです」

「気づかなかったのか?」

 

やや睨みながらコンラートは聞くと、報告をした兵は一瞬怯えるもすぐさま答える。

 

「はっ……どうやら認識阻害魔法を使っていたと言う事もあり、気づく事ができず……」

「……その男は?」

「今は川の方に…」

「連れて行け」

「はっ!」

 

とりあえず話を聞くとしようじゃないか。この部隊のことを嗅ぎつけた時点で色々とこれからの事を考えなければ……。

 

 

 

 

 

近くの河辺に行くとそこでは川の近くの木で裸の状態で縛られ、そのまま吊し上げられた状態の男がぐったりを項垂れていた。そして周りを仲間が囲んで監視していた。

顔面は尋問の影響かボロボロで、赤黒く腫れている部分もあった。

コンラートが近いた事に気づいたのか、その男は顔をゆっくりと上げた。

 

「ごほっ…帝国兵ってのは紳士的じゃ無いのか?この扱いはひでぇぜ」

「そいつぁご愁傷さん。うちの部隊は荒っぽかったのが運の尽きだ」

「へっ、そうかよ」

 

その男は持っていた物からハインツと言う名前であるとわかった。

 

「ハインツ、貴様にはこれからじっくり聞かせてもらうとしようか」

 

そう言うと彼はコンラートに向かって軽く鼻で笑った。

 

「はっ、よく言うぜ。あんた達、()()()()()()()()()()()事も知らずに」

「…何だと?」

 

そんなハインツの呟きに思わず睨み込んでしまう。するとハインツはそんな彼らを馬鹿にするように答える。

 

「アンタらは仲間を信用すぎなのさ。()()()()()()()()()()()()

「っ!?まさか……!!」

 

その瞬間、ハインツを見ていた部下が彼の頭を鷲掴みにして怒鳴り散らした。

 

「そう言って俺たちを惑わすってか?馬鹿にも程がある」

「嘘じゃねえさ。今頃、あの車に乗っていたお嬢ちゃんごとどっか行っちまっているだろうよ」

「なっ!まさか…?!」

 

彼らは衝撃のあまりすぐに動けなくなってしまった。

 

「すぐに追いかけろ!演算機の速度ならまだ追いつける!!」

 

話を聞いていた兵が叫び、演算機を持った兵士はあっという間に空に飛び立って()()の向かった先に飛んで行った。

その様子を見届けながらコンラートは半分呆然となって呟いていた。

 

「まさかゲルハルトが…裏切っただと……?」

 

 

 

 

 




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