戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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一〇八話

爆発した古城、そこの爆発した中心で土埃が上がる爆心地でディルクはやや苦笑する。

 

「ははっ、これを耐えるか」

「生憎と魔導適性は高いんでね」

 

余裕そうに答えるのはヘイルダムだった。彼の周囲にいた兵士が彼を守るように障壁魔法を展開していたのだ。

 

「優秀な部下に恵まれたようで」

「それは君も同じだろう?」

「それはどうかなっ!!」

 

その瞬間、彼は魔導演算機の大量の蒸気を地面に吹き付けてそのまま空に舞い上がった。

 

「追え、逃すな」

「はっ!」

 

ヘイルダムが指示を出すと、そばにいた二人の兵が()()()()()()

 

 

 

 

 

「上に上がればこっちの……」

 

古城にぶちあけた穴から空に飛んだディルクはしたから接近する気配を感じた。

()()を見て驚かないはずもなかった。

 

「なっ……!!」

 

そこには空に上がってくる抵抗軍兵の姿があった。彼らの背中には自分たちがよく知る装備に酷似したものがあった。

 

「魔導演算機?!」

 

そこには魔導演算機を持つ兵士の姿があった。驚愕するディルクを他所に、二人は持っていた突撃銃で射撃をしてきた。

 

「くそっ、敵が魔導演算機かよ!!」

 

東西戦争中に南部方面司令部で見た帝国製のを鹵獲したのと違う、正真正銘の共和国……いや、抵抗軍製の魔導演算機か。

 

「厄介な……」

 

幾つか障壁魔法で防ぎながらディルクは持っていた短機関銃を下に向けて乱射する。しかし、元が拳銃弾ということも相待って貫通はイマイチだった。

 

「まずいな……」

 

向こうのクルツ弾は貫通力がフルサイズの小銃弾までとはいかないものの拳銃弾よりはある。

乱数軌道で避けながらディルクはしまっている改造オート5を取り出す。少し重心を切り詰め、マガジンを延長してチューブに五発詰められるように改造を施していた。

これじゃあオート6になるような散弾銃を持ってディルクは引き金を引く。装填しているのはスラッグ弾。対人にあたればマシじゃない被害が出る一撃だ。

 

そして下に向かって発射されたスラッグ弾は運よく敵の腹を貫通し、そのまま背中の魔導演算機を貫通した。

 

「あっ……」

 

そして最後に何か言う前に魔導演算機は中の演算核が暴走し、そのまま爆発を起こして閃光の中に消えていった。

 

「……」

 

そして光景を目にし、一瞬動きが止まってしまったその時、目の前に突撃銃を持った抵抗軍兵が現れた。

 

「っ!しまっ……」

 

するとその瞬間、横から無数の小銃弾が飛んできて障壁魔法が耐えられずにその抵抗軍兵を瞬く間にミンチにしていた。

そして銃弾が飛んできた方向から聞き慣れた声が聞こえた。

 

「ご無事ですか!?」

 

目を向けると、そこには突撃銃や汎用機関銃を持って現れたコンラート達がいた。

 

「あぁ、この通りな」

 

そう言い、手を広げて自分が無事であることを伝えるとコンラートに聞いた。

 

「外の守備は?」

「問題ありません。いつでも攻撃可能です」

「……ゲルハルトの方は?」

 

その質問にコンラートはしばらく間を置いた後にディルクに教えた。

 

「先ほど、連絡がありました。『目標見えず。監視を続行する』と……」

「そうか」

 

コンラートは悲しみを交えた表情で言う。

 

「まさかゲルハルトが裏切ったとは……」

「詳しい事情は後から聞けばいい。方向は伝えた。だがそれよりも……」

 

散弾を入れながらディルクは遠くの方……正確には穀倉地帯の広がる地域から接近してくる影を見た。

 

「まずはあいつらを片付けなきゃならない」

「あれは……」

 

その問いにディルクは答える。

 

「奴さん、俺たちの演算機のコピーを量産したらしい」

「本当ですか?」

「だったら今堕とした兵士の装備見るか?」

「……確認する必要はなさそうですね」

 

そういえばついさっき自分たちは堕としたと言う事実を思い出すと、ディルクはコンラートに言う。

 

「大尉、ここを任せてもいいか?」

「はっ!!」

「下に敵がいるんでな。そいつを制圧してくる」

 

そう言うと、ディルクはそのまま一気に落下し、古城に向かって降りていった。

 

「お気をつけて!!」

 

コンラートは最後にそう叫ぶと、部下に無線で命令した。

 

「お前らよく聞け、敵は俺たちのコピー品を使っている。能力はおそらく同じだ」

 

無線を聞き、後ろにいた演算機持ちの兵士たちに緊張が走った。しかしコンラートはそんな彼らを鼓舞するように無線で言う。

 

「つまり、戦いは己の腕による。百戦錬磨の俺たちで蹴散らしてしまえ!!」

『『『『『了解!』』』』』

「よし、迎撃任務だ!叩き落とせ!!」

 

コンラートはそう叫ぶと、接近してくる演算機を持った抵抗軍兵を迎え撃った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

林の中で男の声はよく響いていた。

 

「とっととその演算機を俺に寄越せ。でなければ殺す」

 

デリンジャーを向けて男はゲルハルトを脅す。しかし、そんな脅しにゲルハルトは失笑で返した。

 

「……はっ、それくらいのことで俺が挫けるとでも?」

 

その返しに男は馬鹿にした様子で返す。

 

「お前は立場をわかっていないのか?俺が引き金を引くだけでお前は死ぬんだぞ!」

「だから?そんなにこいつ(魔導演算機)が欲しいのならその引き金を引けばいい」

 

ゲルハルトは腿から流れる出血を耐えながら男に話しかける。

 

「俺を殺して、そのまま魔導演算機を持ち去ればいい。すでにお前さん達は転移者を誘拐した。手札はお前が持っているだろう?」

「っ!!」

 

その瞬間、ゲルハルトは半ば確信めいた表情で男に言った。

 

 

 

「お前、人を殺した事が無いんだろ?」

 

 

 

その瞬間、帽子で顔を隠している男の表情が一気に変わっていた。するとゲルハルトはそんな男に続けて話す。

 

「今、お前は圧倒的優位な位置にある。そんな状況下で、魔導演算機を俺から剥ぎ取ってでも持っていけばいい。

しかし君は焦っている。俺に怒鳴りつけてその不安を消し去ろうとしているようだが……」

「黙れっ!」

 

すると男はひどく憤慨した様子で怒鳴り散らす。

 

「ふざけるな!俺が怯えている?!馬鹿なこと言って抜かしてんじゃねえぞ!!」

「自分を見ろ、感情が大きく揺れている。その行動、少し言われた程度で叫ぶのはそれが確信をついている時だ」

 

そしてゲルハルトは()上司を思い返すと彼よりも何十歳も上に見えるその男に言い放った。

 

 

 

「少なくとも君は、上に立つべき人間では無さそうだ」

 

 

 

その煽るような堂々たる宣言にその男は持っていたデリンジャーが震えた。

 

「なんだと……?」

 

今までゲルハルトを脅していた男は憤怒に満ちた表情でゲルハルトの眉間にデリンジャーを向けたまま怒鳴り散らす。

 

「俺が上に立つ人間じゃねえだと?ふざけんじゃねえ!」

 

すると男は持っていたデリンジャーのサイトをゲルハルトに合わせた。

 

「てめえは何も知らねえだけだろうが!その状態で命乞いの言葉か?!馬鹿にすんじゃねえ!俺は……!!」

 

そして男は持っていたデリンジャーの引き金に力を込めた。

その時、ゲルハルトは死を持って今までの行動を償おうと思っていた。

 

「死ねぇぇええっ!!」

 

そして引き金を弾き始めた瞬間、

 

「ぎゃあっ!!」

 

銃声がした瞬間、男の手から鮮血が飛び散った

 

「ああぁぁあぁぁあああっ!?!?!?」

 

デリンジャーを落とし、貫通した手を持って悲鳴を上げる目の前の男。何があったかと困惑するゲルハルトに林の奥から小銃を手に持った一人の人物が現れた。

 

「ったく、死んで償うってか。馬鹿馬鹿しい」

 

そう呟いて現れた女性にゲルハルトは驚きと苦笑した様子で話しかけた。

 

「連れ去られたんじゃなかったのかい?

 

 

 

カセリーヌ大尉」

 

 

 

ゲルハルトは肩にシュミット・ルビン K31 騎兵銃を持って現れたカセリーヌにそう話しかけていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

先ほど落とした落雷魔法のせいで古城の至る所で火災が起こっていた。

とっくに兵や指揮官は散り散りに逃げ出しており、集積していた物資や車両は一部は放置されたままだった。

 

「……」

 

しかし、そんな中でもディルクは彼がいるとなんとなく感じていた。

手にはオート5を持ち、物陰に隠れて息を殺していた。

 

「……」

 

そして近づいてくる足音を聞いた瞬間、一気に体を起こして目に前にいたヘイルダムの護衛の兵の体を12ゲージ散弾で撃ち抜いた。

 

「ぎゃぁぁあああっ!!??」

 

最期の悲鳴が聞こえ、その声を頼りに人が集まってくる気配を感じてそそくさと退散していく。

彼のそばにいた護衛の兵の数は四人。これで実質的に次は最後の一人なわけだ。

燃え始める屋敷の上では魔導演算機を持った者同士の激しい空中戦が繰り広げられ、その魔法の余波は下にあるこの古城にも降り注いでいた。

 

「くっ……!!」

 

目の前の壁が爆発で吹き飛び、土埃が舞う。おそらくは上で爆発魔法を使ったが、照準をミスって壁を撃ったのだろう。

 

「そこにいるんだろう?」

 

するとその瞬間、頭上を拳銃弾が通過していった。

 

「ちっ」

 

そしてそのお返しと言わんばかりに散弾を一発撃ち返すとそのまま走って消えていく。

 

「あいつなんでこっちの位置が分かるんだ?!ニ⚪︎ータイプじゃねえんだぞ!」

 

その瞬間も後ろから彼の持っている武器である共和国製自動拳銃(Mle1935S)を撃って来ていた。

 

「逃げてばっかりなのか?」

 

そして撃ち切った後に弾倉を交換している最中に散弾を二発撃ち込み、そのまま古城の倉庫に駆け込んで散弾銃に装填する。

 

「やった感触はないな……」

 

不意打ちをするにも、護衛の兵士を排除しない限り、ヘイルダムを倒せはしない。

 

「……」

 

言い知れぬ緊張がディルクを包んだ瞬間。

 

「なっ……?!」

 

隠れていた倉庫の天井が崩落し、その上からヘイルダムの護衛をしていた屈強な兵士が現れた。

 

「くっ!」

 

そしてその男は持ち出したナイフを振ってディルクに襲いかかる。

 

「うわぁちゃ?!」

 

咄嗟にディルクは持っていた銃剣でナイフを防ぐとお返しに至近距離で散弾を撃つが、当たらずそのまま屈強な男の横を掠めただけで終わった。

 

「くそっ!!」

 

その瞬間、その男が俺を殴ってきて咄嗟に避ける。

 

「ひえっ!?」

 

数回殴られた時、ついその男の拳が背中にあった演算機を殴り飛ばしてした。

外の箱が大きく凹み、確実にどこかが壊れた音が聞こえた。

 

「ウッソだろ?!」

 

金属を凹ますパンチに驚愕したのも束の間、またナイフで襲いかかってきた。

咄嗟にディルクは持っていたF1手榴弾のピンを外してレバーを上げるとそのまま男に向かって投げつけた。近距離だったら手榴弾が一番だ!!

その直後に爆発し、倉庫の扉が吹っ飛ぶほどの爆発が起こった。

 

「ゲホッゲホッ!!」

 

そしてその奥から煤まみれとなったディルクが現れ、吹き飛んだ倉庫跡を見た。

 

「これで終わりか……」

 

そう呟いた瞬間、ディルクの近くで何かが炸裂した。

 

「うわっ?!」

 

障壁魔法に阻まれ、大した被害はなかったもののそのとんできた方向を見ると……

 

「外したか……」

 

その手にカンプピストルを持って、中折れ式の銃身に擲弾を押し込んでいるヘイルダムの姿があった。




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