戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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一〇九話

古城の至る所で爆発が起こる。そして爆発の起こる先ではディルクがオート5を持って走っていた。

 

「くそっ、榴弾仕様かよ」

 

銃声が聞こえる先、そこではヘイルダムがカンプピストルを持って射撃をしていた。きっちり安全距離の五〇メートルの間隔を開けて……

 

「散弾銃じゃあ微妙な位置なんだよな……」

 

散弾の有効射程は五〇メートルほど。確実に殺すには十メートルほど、有効打を出すのは無理な位置だった。

擲弾をどれだけ仕込んでいるのか、永遠と擲弾を撃ち続けられていた。

 

「こっちは機械がいかれてるってのによ」

 

ディルクはそう呟きながら外郭が大きく凹んでいる演算機を見ていた。少々煙が上がり、軽くスパーク音が聞こえる。

 

「制御系か?少なくとも演算核には問題なさそうだな……」

 

軽く確認をするとどこが壊れたのかを確認した。

 

「障壁魔法が満足に発動できないか……」

 

いつもは自動的に発動している障壁魔法の制御系が壊れたのを確認すると、そのままディルクは古城を周回してヘイルダムに短機関銃で射撃を加える。

ヘイルダムの魔力が無い事はマジックソナーで確認済み。障壁魔法を放つだけで魔力切れを起こす事だろう。

 

「……」

 

短機関銃の銃声が響いた後、ヘイルダムのいた方向に土煙が上がる。

 

「……これくらいの銃撃で僕が倒れるとでも?」

 

足元に銅色の弾丸が転がり、薄紫色の障壁魔法を展開するヘイルダムはお返しと言わんばかりに擲弾を撃ち込む。

 

「ちっ」

 

擲弾を障壁魔法で防ぎ、銃口のみを開けてライフルシールドの如く射撃を行う。持ち前の魔力の多さを最大限活かし、擲弾の攻撃すらも余裕で防ぐ障壁魔法を作り上げていた。

散弾を装填しながら擲弾の射撃を耐えつつ、近づきながら散弾銃を射撃する。

 

「くっ……」

 

すると限界を感じたのかヘイルダムは接近してくる無数の鉄の小粒から逃亡を図った。

 

「だろうと思ったよ!!」

 

ディルクは散弾銃を持ったままヘイルダムの後を追いかけ始めた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

カセリーヌは小銃を持って手を撃ち抜いた男を蔑んで見ていた。

 

「ったく、こんな甘ちゃんに踊らされていたの」

「ば、バカな…貴様、どうしてここに……?」

 

手を撃ち抜かれ、手首を押さえ込んで止血している男にカセリーヌは言う。

 

「さぁね?その腐った脳みそで考えれば?」

「チームがいたはずだぞ……?!」

「あぁ、そう。そいつらなら今頃林の赤いシミになってんじゃない?」

「「っ!?」」

 

少なくとも五人はいたはずの工作員を遠回しに倒したという事実にゲルハルトですらも驚きを隠せなかった。

すると木の上からドサリと大きな音を立てて一人の影が落ちてきた。

 

「ヒィッ?!」

 

その影は先ほどかセリーヌを連れ去っていった集団の一人でその喉元には自分のナイフが突き刺さり、眉間には穴が空き、悶絶した表情をしていた。それを見てゲルハルトはいつの間にか抜かれていた自分のナイフにまた驚いていた。

その時の彼女の表情はとても人を殺したとは思えないほどいつもと変わらない表情だった。

 

「あら、縛っていたのだけど甘かったのね」

 

そう呟くと彼女は手袋をつけており、そこに印字されていた魔法陣から魔法が発動した。

 

「さぁ、残りの者も出てきてもらおうか!」

 

その瞬間、小規模の爆発魔法が飛んでいき、林の中で木霊する。悲鳴も聞こえ、風が吹いた。

 

「……」

 

返事が無い事からカセリーヌはそのまま小銃を持って男に照準を向けた。

 

「貴様、どこの国の所属だ?」

「い、言うわけ無いだろう!!」

「そうか……」

 

その瞬間、カセリーヌは男の足を撃ち抜いた。

 

「あぁぁあああっ!!」

「肺じゃ無いだけありがたいと思いなさい」

 

至近距離で発射された小銃弾はおそらく過貫通して地面に刺さるが、肺を撃たれた場合。二、三〇分ほど放置すると相手は死に至る。

そして足を撃ち抜かれた男は悲鳴を上げるとそのまま口に銃口を向けされ、カセリーヌはそのまま脅しをかける。

 

「さぁ、私の気分が良い内に吐きなさい。次は左手よ」

「ひぃぃいいっ」

 

女性のその淡々と発せられる表情に先ほどまで自分を脅していた男は完全に萎縮していた。

 

「……そう、なら仕方ないわね」

 

すると彼女は手につけていた白い手袋からまた魔法を発動させる。

 

「あっ、あぁ……」

 

使ったのは自白魔法であるとゲルハルトは一瞬で見て理解した。

 

 

 

 

 

それから正直に力無く話し、そのまま倒れた男にカセリーヌは最後の一発を男の頭に向けて放った。どうせ彼は廃人状態だからいつかは殺される運命だっただろう。

すると、カセリーヌは腿から血を流すゲルハルトを見て近づいて傷口に手をやった。

 

「治すのか?」

「ええ、あなたに死なれては私が困りますんで」

「と言うと?」

 

すると彼女は弾丸が残っていないのを見ると治癒魔法を使って消毒と銃痕を治療していた。

 

「少し後が残ってしまうかもしれませんが……」

「いや、体の傷は男の象徴だ」

 

少々、顔色を悪くしたゲルハルトはそこで立ち上がるとカセリーヌに聞く。

 

「なぜ俺を治した?」

 

その問いに彼女は答える。

 

「あなたに罪を被ってもらうためです」

「…と言うと?」

 

すると彼女は先ほど落ちた遺体から彼のナイフを抜き取るとそのままゲルハルトの右手に強く握らせた。そしてそのまま彼女はゲルハルトの左手に抜き取った拳銃を持たせた。

 

「これで貴方は『独断行動で裏切りつつも、その裏で工作員を殺した勇敢な兵士』になる」

「……」

 

そこでゲルハルトは今度こそ開いた口は塞がらなくなりそうになった。

すると彼女は敵から奪ったのだろうルガーP08をそのままゲルハルトの背負う演算機に向けた。

 

「こっちの方がリアル感が出るかな?」

 

そう呟くとそのまま二発ほど彼女はゲルハルトの演算機に穴を開けた。

動いていなければ撃っても爆発しないわけで、おそらく魔導核は壊れた。それとついでに……

 

「記録装置もこれでおじゃんです」

 

そう言い、拳銃弾の貫通した無線の記録装置を見た。これで通信の情報も消えた。

それを見て、もはや何度目かわからぬ驚きをした。

 

「どうしてそこまで俺を庇う?」

 

ゲルハルトはそう聞くと、彼女は空に浮かぶ月をゆっくりと見ながら答えた。

 

 

 

「子供が本当に欲しいのは親の愛情ですから」

 

 

 

それはおそらく、本当の両親から愛されなかったが故に出た一言なのだろう。

だから彼女は危険を冒してまで自分を庇おうとしてくれた。すると彼女はゲルハルトに言う。

 

「大尉の奥さんと二人の子供は無事のようです。見張りも、私を連れ出すために出払ったようですね」

 

先ほどの尋問だろう。廃人となった男や工作員は全員が死亡し、この場にいるのはカセリーヌとゲルハルトだけだった。

すると彼女はゲルハルトに伝える。

 

「もうすぐここに仲間が来るでしょう。貴方はそのナイフを持ったまま、この場所にいて私の指示通りにしていてください」

 

そう言うと彼女は地面に倒れる。

 

「私はこのまま気絶していますので」

 

そう答えると、彼女は目を閉じた。それを見てゲルハルトは彼女の手際の良さや、自分の対する施し。そして何より、家族の安否を聞かされゲルハルトは持っていたナイフが震えていた。

 

「……すまない」

 

ゲルハルトはそんな年端も行かぬ若い女性に救われた事に羞恥心よりも感謝を覚えた。

 

「ありがとう…ありがとう……」

 

ゲルハルトは柄にも無く涙をこぼしていた。血縁でもない自分のために、なんの意味も無いむしろ命の危険を与えたと言うのに、それでも彼女は施しを与えてくれた。

 

「早く泣き止んでください。人が来ますから」

 

そんな彼に彼女は気絶したふりをしてそのまま端的に返していた。

 

するとその時、林の奥から人声が聞こえてきた。

 

『死んでやがる』

『足跡だ!この先にいるぞ!!』

『急げ!!』

 

その声と共に現れた見慣れた飛行魔法兵……追跡に出た一個小隊はそこですでに死亡している敵の工作員のボスと、気絶している転移者。

 

そして血のついたナイフと拳銃を持って息も絶え絶えで、顔色の悪いゲルハルトの姿を見ていた。

 

それを見て隊員達はゲルハルトは命からがらで転移者を守ったのだと推測できた。

するとゲルハルトは今にも気絶しそうなほど汗を掻きながら出てきた兵士たちを見て聞いた。

 

「すまん……家族が…危険なんだ。電話を……」

 

しかし、今まで出血をしすぎたせいかそのまま倒れてしまった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

古城や、その上空で空中戦が起こっているのを外からMボートに乗る前橋達も視認していた。

 

「……ねぇ」

 

車内で前橋が装填手の築城に聞く。

 

「確か、対空用の砲弾ってあったよね?」

「え?あぁ、確かにあるが……」

 

確認を取ると、前橋は無線で指示を出す。

 

「全車、弾種対空砲弾に変更」

「おいおい、まさか対空砲で撃つ気か?」

「それ以外に意味ある?」

 

すると遠くで爆発音が響き、まるであの地獄の戦場を彷彿とさせるような音だった。

 

「…まじでやるの?」

「やんなきゃ、ウチらがやられるだけよ」

 

すると無線手を担当する横田が叫ぶ。

 

「前橋、例の大尉から。『援護してくれ』って連絡が来たぞ」

 

すると待っていたと言わんばかりに彼女は無線で連絡をする。いいのかと返すと、誤射の心配するなら速く撃ってこいと怒鳴り返された。

 

「よっしゃ、全員聞いて。今から大尉達を援護する。全員、対空用砲弾を装填。近づいてくる敵は機関銃で迎撃。良いわね?」

『『『『了解!』』』』

「各車両、準備出来次第発砲開始!」

 

車長席で前橋はキャノピーを開けると、暗視魔法を使って敵の位置を把握するとそのまま上を飛ぶコンラート達に向かって連絡する。

 

「今から発射します。大尉達は離れてください!」

『了解した』

 

無線で連絡を取ると、空域から一気に離れていく漆黒の軍服姿の飛行魔法兵を確認する。

そして下では築城が砲弾を入れ替え、砲手の小牧奈々が砲身の仰角をあげて報告を入れる。

 

「装填完了!」

「照準よし!」

「撃てぇ!!」

 

その瞬間、バラバラに各Mボートから対空砲弾が発射され、空に魔導砲撃特有の緑白色の爆発が起こった。

 

「各車自由射撃。接近してくる敵兵にもよく注意して!」

『敵、こちらに気がついたみたいです!何人か向かってきます!』

「迎撃!機関銃で蹴散らして!」

 

その瞬間、対空マウントから射撃を開始する。無論、シールドは無いので障壁魔法だけが頼りだ。

 

「くそぅ、これが終わったら追加で褒賞を要求してやる!!」

 

そう叫ぶと第二射、第三射が放たれ、接近してくる飛行魔法兵の至近距離で爆発していた。

 

 

 

 

 




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