戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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一一二話

「所詮、僕たちは戦争に慣れていない日本人なんだ」

 

そんな小野寺の呟きに南部も答える。

 

「あぁ、そうだな……」

 

互いに銃を下ろさず、されどどこか悲しみに溢れる表情で二人は話していた。

 

「だからこそ、君は素晴らしいと思わざるを得ない」

「?」

 

すると小野寺はそこで南部に話す。

 

「君が他のクラスメイトを()()()()()訓練を施した。今まで共和国のこと以外を何も知らなかった彼らに君は教育を施した」

「……」

 

彼が何を言いたいのか、南部は薄々わかっていた。

 

「日本に帰ると言う餌に釣られ、その大義の元に僕たちは大勢を殺してきた」

「……」

「しかし、その転移装置自体はあの屋敷からある場所に移動した」

 

その時、南部はふと教国の拠点で手に入れたあの暗号文を思い出した。

 

「そして僕は教国にいた協力者から帝国の追手があると聞き、教国の事務所に紙を残した」

「……(やはりな)」

 

 

教国の拠点であの暗号文を残したのは目の前にいる小野寺だと確信する。

 

「君は通信室の写真を見たかい?」

「?」

「…いや、分かって居ないならいい」

 

そこで南部は聞いた。

 

「お前、そう言う事に興味があったのか?」

 

小野寺も南部がその紙を手に入れたと半ば確信して答える。

 

「いや、日本史を好いて居たからその時の影響さ。君みたいな危ない軍事好きではないさ」

「軍事好きほど平和好きも居ないさ」

 

南部はそう答えると、小野寺はふっと笑った。

 

「そうかい?人を殺すことが出来る機械を好きになるなんて、僕には到底できないね」

「その非日常な見た目の機械美がいいんじゃないか」

 

南部はそう答えると、拳銃の照準を外さぬまま彼に言う。

 

「お前を殺すように言われてんだ。悪く思わんでくれ」

「なるほど、君は誰かに頼まれているのか……」

 

どこか納得した様子で答える彼に南部はそのまま拳銃の引き金を引こうとした瞬間。

 

 

ーーーーサク。

 

 

そんなような音が聞こえた気がしたのと同時、南部の腹から一本の炎に照らされたサーベルが突き刺さっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

燃え盛る古城の近くに集結したコンラート達は、その状況を見て言葉を失っていた。

古城は至る所が燃えており、爆発の跡が残って至る所に瓦礫が散乱していた。

 

「……」

 

囂々と燃え、自分たちが明るく照らされて炎の熱で自分たちの体が炙られているように感じる。

 

「し、消化だ!」

「外を探せ!!」

 

ディルクは古城に残って居た抵抗軍の掃討に乗り出して居たのを知って居たが故に慌てて他の隊員達は慌ててトラックにあった消化器を使って火を消そうとする。

 

「馬鹿!この火じゃ消化器じゃ無理だ!」

「しかし……」

 

すると外の林の奥から大湊や百里などの待機していた隊員が現れ、やや震えた声でコンラートに言う。

 

「あの……城が燃える直前に、隊長は一人戻っていったのですけれど……」

「っ!!」

 

その話を聞き、コンラートは燃え盛る古城を見た。

そして咄嗟に彼は自身の異能でディルクの姿を探す。しかし彼は魔力切れを起こしたからか、いつもは十キロ離れて居ても一瞬で分かる魔力波は今は感じられなかった。

 

「(どこだ。どこにいる……?)」

 

あの戦争でもこんな事は無かったが故にコンラートの顔に焦りが見えた。

 

「逃げろ!!」

 

するとその瞬間、誰かの叫び声と共に崩壊する古城。その火の粉を被り、一人の隊員の服に火がつく。

 

「ぎゃあっ!!あちぃっ!!」

 

そしてそのまま地面に転がると、一気に周りにいた隊員が火のついた部分を叩いて火を消していた。

それを見て一人の隊員がコンラートに進言する。

 

「危険です!このままでは!!」

 

しかしコンラートは目を閉じたままディルクの痕跡を探っていた。

 

「火の回りが早いぞ!?」

「消化だ!急げ!」

「くそっ!奴らガソリンでも撒いていたのかよ!?」

 

炎の燃え盛る中、中庭で燃え盛る屋敷を呆然と眺め、時折崩れてくる柱などから逃げている仲間。そんな中、築城が燃え盛る城を眺めながら後ろで立っていたコンラートに聞いた。

 

「なぁ……ディルクはいつ戻ってくるんだっ!?」

 

その問いかけに、コンラートは答えることができなかった。

ディルクが見つからない事にただ茫然と彼は燃え盛る城を眺めていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ごほっ」

 

刺されたサーベルの先から赤い血が滴り落ち、地面をまた一層赤く染めていく。

 

「……」

「っ!?」

 

そしてサーベルを突き刺したその男は口を開いた。

 

「ご苦労だった。ヘイルダム准将」

 

その声を聞き、ディルクもヘイルダムも驚愕していた。

 

「君が注意を引いたおかげで私は奇襲をできた」

「ジュール…ファブール……!!」

 

後ろを振り向き、その軍服を着ている一人の初老の男を見た。

 

「君が生きて居た事には驚きだったよ。エリク・ピエールくん」

 

サーベルを引き抜き、炎に照らされたジュール・ファブールは倒れたディルクを見ていた。

炎が木材を燃やしていく音が聞こえる中、地面に赤いシミが広がる。

するとヘイルダムは拳銃をジュールに向けながら睨みつけた。

 

「なぜ邪魔をした。ジュール・ファブール」

「君はあのままではこの男と相打ちになってしまう。ここで君を失うのは大きな痛手だ」

 

彼はそう答えると、血で濡れたサーベルの血を落としてヘイルダムを見た。

 

「ここでの仕事は終わりだ。准将、撤退する」

「……」

 

ヘイルダムはファブールの背後の一突きで拳銃を手放して倒れたディルクを一瞥するとジュールに向かって呟いた。

 

「戦闘を邪魔した事……許さんぞ」

「何を言うか。帝国などに寝返った輩を生かしておく理由は?ましてや敵のエースとなっていた男と君は心中するつもりだったのか?」

「私は彼との純粋な闘いを望んでいた!それを邪魔したのは貴様だろうが!!」

 

するとファブールはそんな反抗的なヘイルダムに忠告する。

 

「君の美学には興味ない。敵を一人でも多く倒し、我々の障害となる存在を消す。そのためにあらゆる手段を使うのが我々の任務だ」

「……」

 

ヘイルダムはいつでも彼を殺したい一心ではあるが、今ここで殺しても意味がないことであることを知っているからこそ引き金を引くことができなかった。

 

「貴様はその反抗的なケツを蹴り上げて貴様は私の手足となって働け。いいな?」

 

どす黒い感情を巻き上げながら彼はそう言い残すとそのまま燃え盛るワインセラーを後にしていった。

至る所を負傷しながらヘイルダムは最後に倒れたディルクを見て最後に一言つぶやいた。

 

「次に会うときはきっと地獄だろうね」

 

そう言い残すと彼は拳銃をしまい、足を引き摺りながら炎で燃えるワインセラーを後にしていった。

 

 

 

 

 

二人が消え。燃え盛るワインセラーの中、一人倒れたディルクは体を起こす。

 

「っ!!がぁああっ!!」

 

腹から血を流し、横に残骸として落ちていたオート5を手に取る。

 

「ごふっ」

 

至る所から血を流し、正直生きているのか死んでいるのかもわからない彼はそのままワインセラーの中をゆっくりと歩き出す。

オート5の銃床を左手で握って杖のようにして彼は燃え盛る古城を歩いていく。

その姿は死してなお現世に遺恨を残す亡霊のようであり、正直ディルク自身も記憶がなかった。

ただ彼はヘイルダムや横槍を入れたファブールがいなくなったのを見て起き上がっていた。

 

「……」

 

頭部のヘルメットは既にどこかに落として無くなり、顔は血で真っ赤に染まっていた。

右手は腹部を抑え、少しでも出血を抑えていた。

意識が朦朧などの次元では無く、記憶がない状態でフラフラと階段を登っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「くそっ!暑くて近づけねぇ!」

「ダメだ!こっちの窓からも侵入できない!」

 

燃える古城の外から中に入ろうと試みる築城達、その横でコンラートを必死に引き止める隊員達の姿が。

 

「ダメです!いくら冷却魔法を使ってもこの火では!!」

「まだ中に少佐がいるんだ」

「危険です!離れてください!!」

 

一人で救出に向かおうとするコンラートを引き留めて彼らは燃える古城から離れられずにいた。

この火災でディルクの生存はもはや絶望的だと言うのに、彼らはまだ何処かで生きていると思って作業をしていた。

 

そしてその様子はゲルハルトやカセリーヌも見ており、車内でカセリーヌはディルクに無事を心から願っていた。

自分の魔法はもう使えない。既に魔力切れを起こしており、転移魔法を使う事はできなかったのだ。今すぐ叫んで無理にでも突入したいと言う感情を全力で押さえ込んで車の中でひたすらに無事を祈っていた。

 

古城の至る所でさまざまな騒動が起こっている中、ある一人の兵が炎の奥から出てくる一つの影を見た。

 

「おい…あれ!!」

 

その隊員が指差した方向を誰もが見た。

そこには炎の奥方ゆっくりと杖をついて歩いてくる一つの人影があり、その姿がよく見えた瞬間。全員が歓喜の声に包まれた。

 

「少佐だ!」

「少佐が生きていたぞ!!」

「おい担架だ!担架もってこい!!」

 

しかし、彼らが喜んだのも束の間。彼は持っていた銃ごとそのまま地面に倒れてしまった。

 

「っ!!」

 

それを見て真っ先に立川が駆け寄った。

 

「大丈夫?!」

 

そう叫んで彼の体を触ったとき、生暖かい感触を感じて思わず手を見る。するとそこには真っ赤に染まった自分の掌があった。

 

「こ、こんなに出血を……?!」

 

よくよく見れば彼の体の至る所に傷跡があり、彼が歩いてきたところも血で赤く染まっていた。

 

「くそっ、このままじゃ死ぬぞ」

 

病院に運ぶ前に失血死すると思った彼女はまず初めに持っていた救急キットと治癒魔法で応急処置を始める。

 

「担架持ってきました!」

「動かさないで!」

 

隊員が車から担架を下ろしてそのまま倒れたディルクに近寄るとオードリーは静止させた。

 

「出血が多い、この状態で下手に動かすと隊長さんが死ぬわ」

「「っ!!」」

 

するとオードリーはそのままディルクの背中の魔導演算機を外させるとそのまま治療を始めた。

 

「腹部の出血がひどいわね」

 

服の上からでもわかる傷の具合に救急キットから輸血用キットを取り出すと周辺の人に聞いた。

 

「血が足りない……誰か!この人の血液型を知らない!?」

 

そう聞くと、一人の兵士。ハンス・フォン・ウルバッハが手を挙げた。

 

「お、俺は少佐殿と同じ血液型です」

 

するとオードリーは彼に嘆願する。

 

「お願い。あなたの血を頂戴。出ないと彼はこのまま死んでしまう。急いで!!」

「わ、わかりました!!」

 

彼女の言葉に驚きながら彼は背中の魔導演算機を下ろすとそのままディルクの横に寝そべった。

そしてそのままチューブで血液が繋がれると、燃え盛る古城の近くで緊急治療が行われた。オードリーの横に部隊の衛生兵が付いて同じように治療を始める。

 

「傷口の縫合を……」

「その前の中の組織を治してからだ」

 

そう言い、衛生兵は血の流れている腹部をメスで軽く開いた。

 

「まずいな。傷が肝臓に当たっている。これ以上出血はまずい」

「まずは血管を塞ぎます」

「よろしく頼む」

 

救急キットで衛生兵のような手際で治療を進めているオードリを見て横でひたすらに輸血をしているハンスは土器色の表情で弱々しい気をしているディルクを見て驚愕をしていた。

 

 

 

 

 




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