戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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前々に話していた『戦場からこんにちは』のなろう版を十六日、日曜日の十二時丁度にだします。
先に報告をしておきますと、一話からの丸パクリではありません。
ただし、死ぬほど投稿頻度はゆっくりです。


一一八話

第五〇〇部隊の実質的な解散となって二日後、ディルクの姿はゲーリッツ邸の前にあった。

家の前には黒いメルセデス・ベンツ170Dが停まり、ディルクは荷物を積み込んでいた。

 

「必ず連絡をちょうだいね」

「わかっていますよ」

 

カミラの言葉にディルクはそう答えると、奥からコルネリウスが出てきた。

 

「前々から行きたいとは聞いていたがな……」

「ええ、気分転換も兼ねて海を見にいく予定です」

 

そう言うと彼は車のトランクを閉じた。中には着替えが入った鞄が入れられ、一ヶ月の休暇を与えられたディルクはこの機に旅に出ることにしていた。

乗る車はこの前購入した新車で、ローンを組んでいた。

 

くれぐれも仕事をするなと念を押された彼は、休日に何をしていいのか分からないワーカーホリックにどっぷり浸かっており、とりあえずこの一ヶ月の休暇は特に行き先のない旅に出ることにしていた。

 

場所は共和国南部の海沿い。冬の今は人も少ないだろうからと言うことで目的地にしていた。

 

「では、行ってきます」

「気をつけてね」

 

まだ完治はしていないが、日常生活程度なら十分だと言うことで彼はエンジンをかけてハンドルを握る。

そしてアクセルを踏んでギアを動かすと彼を乗せた車は走り出して行った。

 

 

 

 

 

「……」

 

帝都から郊外で一度休憩してアウトバーンに乗る。戦時中の物資統制が解除され、石油の値段も下がってきた頃。横をドライジーネを連結した急行列車が走り去っていく。

上に乗っているのはヴィルヴェルヴィントの対空砲架であり、明らかに対空を意識した物だった。おそらくは抵抗軍の飛行魔法兵対策だろう。Ⅳ号H型の砲塔を取り付けたドライジーネとセットで運用されており、トランペッターのような車両は滅多に連結されていないようだ。

 

現共和国側でもG1中戦車や対空戦車を流用した重装甲車両が開発されているらしく、対空装備の車両も登場していた。

特に共和国側は飛行魔法兵に対する対策をよく知っており、機銃の配置や列車防護に関しては世界一を自負していた。

 

「そろそろ良いぞ」

 

後部座席を見ながらそう言うと、そこから寝そべった様子の小山が答える。

彼女は転移魔法を使って市街のアウトバーンに入る直前に入った休憩の時に車に乗り込んでいた。

立川は研究所でお留守番をしていた。なんでも看病をして疲れたからだと。

 

「はぁ、いつまで此の体勢のままなの?」

「後ろをこっそり見てみな」

 

そう言われ、小山は手鏡を使って後ろを見ると。そこには一台の260Dが付いて来ていた。

 

「……なるほど」

「おそらく保安局は俺がただの雑魚兵士とは当に思っていないだろう」

「面倒な奴らね」

 

小山は軽くため息を付き、南部も同情する。

 

「ああ本当に懲りない連中だよ。奴さん、よっぽど君たちの居場所が知りたいらしい」

「知ってどうすんのよ」

「おそらく誘拐かスカウトだな」

「後者だと願いたいわね」

「どっちも答える気ないだろう?」

「その通り」

 

そして少し二人は笑うと、小山が聞いた。

 

「倒す?」

「いや、変に怪しまれることも無い。このまま諦めさせよう」

「いつぐらいまでかかるの?」

「さぁな、少なくともホテルまで着いてくるだろうストーカーだからな……」

「きゃー変態!って叫んじゃダメ?」

「んなことしたら俺が怒られるよ……」

 

そもそもとして転移者の一人である彼女を連れ出している時点で随分と問題だった。

 

「さて、行くとしますか」

「ん、了解」

 

こうして二人の旅は始まった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

ストーカー(帝国保安局)を引き連れてのスリリングなドライブは国境近くの駅で止まる。

 

「よろしくお願いします」

「わかりました」

 

今の時代にしては時代錯誤にも思えるカートレインの切符を渡して、彼は列車に乗る。

戦争が終わり、鉄道はこれから来る車時代に対抗する為、利益を出すために様々な取り組みを行なっていた。それがこのカートレイン制度だった。

貨物列車の後ろに車を乗せられる貨車を繋げ、目的地まで運ぶ物だった。

 

駅まで着いて来た秘密警察は常に監視をしており、その数は四人ほどだった。

おそらく国内の所用に介入する保安部による命令であると想定していた。

小山は車に乗ったまま迷彩魔法を使っており、カートレインに乗せる時も気付く事は無い。食料も置いてあるので、餓死も心配いらなかった。

 

今は国内での魔法犯罪摘発の為に都市部ではよく設置されるようになった魔導レーダーは魔導適正と魔力保有量の差から生じる魔法発動の波を感じて反応する。

魔導レーダーの開発によって、今まで血液のような物だと思われていた魔力は指向性の波であると言う認識が広まりつつあった。

次元に干渉し、通常ではあり得ない事象を引き起こす力である魔法の媒介となる感応石。そしてそれら指向性の波をそのまま封じ込めた魔石。どちらも必要な軍需物資であることに変わりなかった。

 

駅の構内で戦時中に設計された傑作機関車、52型蒸気機関車が貨物列車や近郊列車を走らせている中。南部は一人、ベンチに座って到着する列車を待っていた。

 

ここは国境近くの駅ということもあり、多くの行き先の列車が並んでいる影響でどの列車に乗るのか彼らも推察しかねているらしい。

彼らは国外にも拠点を多く保有しているとされており、違法行為もバッチリ行う特務機関だった。

帝国に対する不満を大っぴらにいうとしょっ引かれるというわけだ。

 

「(やれやれ、こっちはただの休暇だと言うのに……)」

 

彼らは表立って逮捕する事はできない。理由は簡単で、自分が逮捕されればそれこそ軍部に付け入る隙を与えてしまう元凶になってしまうからだった。

ただでさえこの前の古城での戦闘で持ち出した帳簿の中に記載されていた、抵抗軍に協力していた人間の中に帝国貴族や保安局の人間がいたのだ。彼らも相当動きづらくなっていたのだ。

というか、共和国軍や帝国軍にも取り入っていた事実に対策本部の面々の口が開いて塞がらなかったのはここだけの話だ。

 

「(俺より自分たちの上司を調べろよ……)」

 

なんて内心愚痴りながら南部は入ってくる列車を待つと、目の前のホームに赤色の05型蒸気機関車がシュルツェンワーゲンとボワリョー重装甲車両を連結して入って来た。

 

帝国にドライジーネがあるのと同様、共和国はボワリョーを保有していた。元々列車強盗にあったのが帝国と共和国を結ぶ列車であり、戦後の帝国と共和国の融和を目的に運行を始めた列車だった。

両国政府肝入りの特急列車であったが故に強盗の報を受けて上は怒り浸透だったようだ。

そしてこの特急こそがその共和国まで向かう二国間特急の一つ、『マッサリア・ロール』であった。列車の防護は共和国軍人が担当し、運行は帝国国鉄が担っていた。

 

列車は停車し、国境と言う事で人が多く乗り降りする中。ディルクはベンチから動かずに待つ。

遠くでは帝国最速の蒸気機関車が出発準備と給水をしており、戦後の融和を体現するかのように後ろには共和国の装甲車両をつなげていた。

 

「……」

 

黒い中折れ帽にトレンチコート。下は喪服のような黒いスーツを着ており、黒いベストも身につけていた。

そして列車の乗降が収まり、列車出発の合図が鳴りその後ゆっくりと動き出した直後。

 

「っ!!」

 

ディルクは目の前の客車の足場に乗ってそのまま扉を開けて中に入った。

突然の事やあまりにも危険な行動に保安局の人員も驚きのあまり動くことができなかったのだ。

彼らはディルクの乗った特急の行き先を調べ、その先にいる仲間に連絡をとっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

保安局の工作員を欺き、特急列車の三等車に乗り込んだディルクはコンパートメントの中を歩いてそのうちの一つに座った。

 

「ふぅ……」

 

少々危なかったが、うまく欺けたと思ってホッと息を整えると懐から封筒を取り出した。中には一枚の写真が入っていた。そう、古城にいた協力者から受け取った時に同封されていたあの港を映した写真だ。

 

元々持っていた通信記録の紙は俺が刺された時に胸ポケットに入れていたのが災いし、紙は俺の血でべっとり塗られてしまい、紙を開くだけで破れそうなほどになってしまった。

 

そしてあの古城から持ち出したワクチンに関しての報告書も彼は読んでいた。抵抗軍に新型ワクチンとして打っていたのはとある禁術を混ぜ込んだ魔薬だったのだ。

 

その魔法は一度死んだ人間に仮初の命を吹き込んで再活性化させる悪魔の所業とも取れる魔法、死霊魔術(ネクロマンシー)だった。

転移の次は死霊術かと内心呆れながら、ディルクはジュール・ファブールの目的を推察する。

 

「(転移魔法を使って何をしたいのか……おまけに死霊魔術を使うと来た)」

 

少なくとも並々ならぬ大きな目的があっての行動なことに変わりはない。

彼の目的は一体何なのか。世界中を敵にまわし、人の所業とは思えぬほどの悪行の限りを尽くす。まさに悪魔の化身のようであった。

 

「(悪魔の化身か……)」

 

ふと突拍子もなく浮かんだその言葉にディルクは途端に首を振ってしまった。そんなことがあり得るはずがないと……。

 

「(兎も角、今は休暇だ。静かに過ごしたい物だな)」

 

一ヶ月の休暇、せいぜい楽しませてもらうとしよう。

行き先は共和国南部の港町マッサリアだ。この時期、海水浴はできないが人も少ないので観光するにはうってつけの場所であった。

第一、蓮子が行ってみたいと言って騒いでいたので試しに行こうと言うことになっていたのだ。

 

「(どんな所だろうか……)」

 

写真をしまいながらディルクはそんな妄想を膨らませていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その頃、帝国の魔導研究局では悲鳴が上がっていた。

 

「さぁ!次の試験と行こうか!!」

「もう嫌ぁああ!!」

「た、助けて……」

 

最近では珍しく上機嫌なエレニカの足元で死屍累々の如く横田達は地面に倒れていた。

彼らは研究補助ということで部隊再編やその他諸々の作業が終わるまで研究局の所員の……要はテストパイロットとして魔導研究局に勤めており、悪魔の科学者(エレニカ)の実験対象として魔力切れを余裕で引き起こす程の実験を行わされていた。

 

「はっはっはっ!まだまだこんなもんじゃないぞ!しっかり着いて来たまえ!」

 

エレニカは実に晴れやかな笑顔で言うと、白目を剥いて気絶している築城の首根っこを掴んで引きずっていた。

そしてそのカオスな空間を見て立川は魔力切れで気絶する寸前にある事を感じた。

 

「私も…連れて行って貰えばよかった……」

 

下手に遠慮しとかなきゃよかったと後悔で埋め尽くされながら視界が真っ黒になった。




ボワリョーってあの気持ち悪い連結装甲戦車列車じゃ無いからな!!
あくまでもウチの架空兵器だからな!(なお、形はモデルにしたらしい)

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