戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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当初の予定→「まぁ、大体一二〇話くらいで終わるかな〜」
現実→「余裕で超えるやんけ……」:(;゙゚'ω゚'):



一時間後になろうで同じ作品名で作品を出しますので、そちらもよろしくお願いします。
正直、世界観と名前を引き継いだだけで作風はガラリと変わっています。


一二〇話

休暇で共和国南部の都市、マッセリアを訪れている南部と小山はホテルの駐車場に停めている自身の車に荷物を乗せる。車上狙いにも狙われにくい石鹸だと言うことでトランクに荷物をしまうと、そのままホテルに戻ってフロントに近場で美味い店を聞いてホテルを出た。

 

「何でもここら辺で一番上手いそうだ」

「値段さえ気にしなければって言ってたけどね」

「水を差すような事を言うなよ……」

 

軽くジト目で南部は言うと、小山は彼に聞いた。

 

「お金大丈夫?」

 

そう言い、昼間の石鹸屋の一軒を思い返すと彼は自身ありげに答える。

 

「ああ、この前と司令部の危険手当で俺の懐は暖かいさ」

「まぁ、最悪私に言ってね。一応持っているから」

 

共和国側の口座は死亡した事になっているので凍結されており、小山達の給料は帝国の銀行口座に入れられていた。

毎度の如く危険な任務に従事させているせいか、危険手当でそれなりに懐は暖かった。おまけに自分達はほぼ基地から出ない為にお金もほぼ出ていなかった。

 

「まぁ、そんなこともほぼ無いだろうな」

 

そう言い、財布の中に入っている一枚の薄い石板を見た。

それは戦争ではもう廃れた刻印魔法で打たれている銀行のカードだった。昔は感応石の代替品として使われていた時期もあったそうだが、非経済的と言うことで今ではこうして銀行の通帳データを保存しておくカードとして使われていた。

これさえあれば発行した銀行に駆け込んで引き出しが可能なのだった。流石にクレカみたいなことはできなかったが……。

 

「やけに未来だよな。この世界って」

「ね、一部技術だけだけど二一世紀みたいな技術があるよね」

 

小山もその意見には納得していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……」

 

そしてその様子をジュヴァキャトルの中から見ている人影があった。

 

「ほいよ、夕食だ」

 

車のドアを開けてラフな格好をしているもう一人の男が手にサンドイッチを持って入ってきた。

そして運転席に座っていた青年は上司の男からバゲットサンドを受け取ると口に頬張った。

 

「上は何であの男を監視させるんです?」

 

青年は帝国保安局の新人だった。保安局は帝国内の反政府勢力や不穏分子を取り除くことを目的としており、その行動範囲は帝国外にも広がっていた。

そして彼らの今回の任務は帝国の若き少佐ディルク・フォン・ゲーリッツの監視にあった。

帝国内でカートレインを購入していた彼はその切符の行き先を見て街に張り込みをかけて彼を見つけていた。

 

 

 

そんな青年の問いかけに上司の男は答える。

 

「あの少佐について知っているか?」

「ええ、司令部付きだと言うのに滅多に顔を出さない男だと……保安局でも有名じゃ無いですか」

「ああ、()()()()()な」

 

ディルクの対外的な意見としては『せっかく拾われて少佐になったのに仕事をしないクズ男』と言う印象だった。

しかし、その上司はその()()()を口にした。

 

「ああ、()()()でも知っているくらい有名な男だ。だからこそ怪しい」

「どうしてです?」

 

青年は未だ理解できる首を傾げると上司はサンドウィッチを食べ終え、今度は煙草に火を付ける。

 

「軍部以外にも悪い噂が立ち込めていることに違和感を感じないか?」

「そうなる位よっぽど素行が悪いんでしょう?」

 

青年はそう言うと、上司はまだまだ甘いと言った表情で言う。

 

「いや?本来軍部と言うのは臭い物に蓋をする傾向がある。特に……

 

 

 

よく目の敵にしている俺たち保安局みたいな連中になは」

 

 

 

そう言うと、上司はタバコを吹かしながら言う。

 

「連中は俺たちに見栄を張るためにそう言った悪い話はひた隠しにするもんだ。少なくとも、今までそうだった……」

「……まさか」

 

軽く鼻で笑って青年は上司の予想を否定すると、上司は遠くに映るディルクとその横にいる女性を見た。

 

「よく見てみろ。あの男、服の下に拳銃を隠し持っている」

「え?」

 

上司に言われ、よく目を凝らして青年はディルクを見るがそのようには感じられなかった。

 

「よく洗練された歩き方だ。左の脇腹…おそらくショルダーホルスターに入ってる」

「そんな……」

 

歩き方に違和感を感じ無い。その事に青年は目を見開いて驚いていると横で上司が言う。

 

「歩き方を左右対称に寄せるために拳銃の位置も考えられてる。多少抜きづらくしてもな」

「……」

 

すると上司は青年に問いかけるように話す。

 

「そんな歩き方をするような奴が呑んだくれのクズ男にできると思うか?」

「……ただ隠しているだけの可能性も…」

 

しかし青年はそれはディルクが今までにしでかしてきた行動を隠すためのものでは無いかと言うと、上司は反論するように答える。

 

「そもそもウチは軍から目の敵にされている。だから軍の内部を見るには工作員を送らなければならない」

 

そう言うと上司は車に置いていた数枚の紙を青年に見せる。

 

「これは?」

「この前の司令部占拠事件の際に、ゲーリッツ少佐がブラウストン少将と話した後の行動だ」

 

そう言い、そこにはディルクを取り逃したと言う報を受けてマンリヒャーが灰皿を投げ飛ばして怒鳴りつけたと言う報告が書かれていた。

 

「普通、悪評を聞いていたら少佐が捕まえられなかった事に灰皿を投げるくらい怒ると思うか?」

「……事件に下手にちょっかい出されたく無いとか「その直後にマンリヒャーは逮捕された」あっ……」

 

マンリヒャーは中の強硬派と繋がっていた事で憲兵にしょっぴかれていた。その事を思い出し、上司はその時の状況を思い返す。

 

「マンリヒャーが逮捕される直前、帝都に第七機甲師団が乗り込んできた」

「ああ、例の幽霊師団ですね」

「そう、第七師団がなぜ南方の訓練場から一夜で帝都に到着できたのか……」

 

ニュースでも散々話題になった話だ。帝都から遠く離れている訓練場から買った一日で帝都に到着した理由はまったく持って不明だった。

何でも夜中のアウトバーンを封鎖して帝都まで一直線に進んで爆走してきたと言われていた。

 

「…裏で誰かが手を回したと?」

「それ以外考えられない」

 

アウトバーンは年中無休の高速道路であり、代用滑走路としても機能させるために直線的な設計が施されている。しかし、夜中にも当然車は走っており、爆走して移動するにしたってそれらは障害となる。

 

「そして彼の友人には運輸課の男がいる」

「運輸課……」

「そしてその男はアウトバーン公社と強い繋がりを持っている」

 

青年はそこで上司に聞く。

 

「あなたは幽霊師団はゲーリッツ少佐が手引きした可能性があると?」

「そうすれば色々と辻褄が合わないか?」

「まぁ……そうですね」

 

青年は遠くに移動するディルクを追って車を動かしながら答える。

 

「そして極め付けはロンネル中将とゲーリッツ少佐の個人通話だ」

 

それは事件後に中将が愚痴って彼の家に電話したものだ。彼らはディルクの内定をする為に電話の盗聴を行なっていたのだ。

 

「どうやら彼は中将とかなり深い関係がある。おまけに事件の最中、中将と少佐は何度か直接接触したと言う未確認情報もある」

「それはつまり……」

 

そこで青年はある疑惑が浮かんだ。そして上司は頷く。

 

「ああ、あの少佐は何か隠している。それこそ、軍上層部が動いているようなでっかい秘密をな……」

 

そこで青年は顔が青ざめる。彼の年齢はまだ二十代だ。そんな男に軍の上層部が隠すほどの秘密があると思うと同時に暴いてみたいと思う興奮もあった。

しかしそこで青年は単純な疑問を浮かべる。

 

「じゃあ何故彼を逮捕しないんです?」

 

そんな秘密を抱えているのなら適当な罪状をつけて逮捕して尋問知れば良いと首を傾げると、上司はそんな青年に聞き返す。

 

「お前、どの罪状で捕まえるんだ?婦女暴行か?アイツを捕まえたらまず間違いなく軍部から圧力がかかる」

「国家反逆の容疑で捕まえれば……」

「なもんもっと無理だ。でっち上げたらそれこそ幽霊師団が戦車で脅してくるだろうな」

 

冗談まじりに上司は答えると、車はディルクが入っていたレストランの近くで停まる。

 

「まぁ、どちらにしろ俺たちは表立ってあの男を検挙できないのさ」

 

少なくとも帝都の駅で保安局の工作員を撒いた行動をとった時点で上司はクロだと確信していた。

 

「良いなぁ、フルコース……」

「仕事に集中しろ」

「あでっ?!」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ホテルマンからおすすめと聞いて入ったレストランで南部と小山はフルコースを注文していた。

 

「良い味が出ていて美味しいわね」

「地元の人が一番うまいと言うだけある」

 

そう言い、二人は切り分けられたブイヤベースを食べていた。

二人とも食事のマナーは育て親から扱かれおり、こう言った仕来りのある高級レストランでも恥ずかしく無いほどだった。

 

「この後はどうする?」

「久しぶりにバーにでも寄りたいな」

 

特に地酒を飲んでみたいと言うと小山が聞いてくる。

 

「どんな地酒があるんだろうね」

「少なくとも白ワイン以外が良いな」

 

色々な酒を楽しみたいと彼は言うと、次に魚料理が出てくる。

 

「お待たせしました。本日の魚料理です」

 

そうして出された料理に二人は外側からナイフとフォークを取るとそのまま小さく切り分けて口に入れる。

流石は港町の魚料理。新鮮なまま調理され、ここの潮風のように爽やかなハーブで香り付けされた魚は格別とも言える味だった。

 

「やっぱり魚は新鮮なものに限る」

「そうね、このバーブが程よくて食べやすい」

 

今回頼んだコースは店で一番高いものであり、元が街一番の高級レストランなだけあって周りにいる人間もお金持ちばかりだった。

 

「なんか変な感覚だわ」

「そうか?」

「だって周りの人の雰囲気がもうそっち系の人だからさ」

「俺たちも似たようなもんだろう」

 

そう答え南部は紺色のスーツに白いシャツ、水色のネクタイ。小山は最近流行りの直線的なワインレッドのドレスを羽織っていた。この旅行の為にわざわざ仕立てたものだった。

 

「似合っている?」

「ああ、十分にな」

「ふふっ、ありがとう」

 

南部の答えに小山は嬉しそうにしながら食事を摂っていた。

 

 

 

 

 

そして二人の食事を外から見ていた保安局の青年が羨ましそうにしていたのを彼の上司が引っ叩いていたのを二人は見ていた。




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