戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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なろう版も読んで欲しいです。(唐突なダイレクト広告


一二二話

バーを出て、ホテルに戻る途中。予想外の事態が発覚したが、それでも二人はホテルに戻って行く。

部屋に入るなり、小山はシャワーを浴びにバスルームに入る。

多くが改装中のホテルの中、部屋に入ったディルクはバルコニーに出る。

 

「……」

 

そして海を眺めながら下の道路に停まる運送業者のジュヴァキャトルを見る。保安局の車だ。

 

「(数は四。車に二人、駐車場に一人と裏に一人か……)」

 

帰りにホテルの裏口から入り、違和感のある人物を見ていた。

そして昼と夜を合わせてホテルの周囲を確認しており、そこで確認した人数を把握していた。

 

「人数は十分と言う事ですか……」

 

どうやら保安局は本気で自分の事を探っているらしい。人員もその分しっかりと派遣されている。

 

「少しヘルプ入れるか……」

 

どうやら、帝国で煽ったら本気で向こうを怒らせたようだ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ホテルに入ってから動きありませんね」

「まぁ、朝まで動かんだろう」

 

車に乗っていた上司と青年は車に乗ったままディルクの入ったホテルを見る。

 

「アイツは一ヶ月の休暇を取ったそうだ」

「休暇ですか……」

 

少し羨ましそうにしながら青年は言うと、上司も同じ事を思ったのだろう。軽く愚痴をこぼす。

 

「全く、上も俺たちをこき使ってくれるよ。保安局と軍の情報部のショバ争いだけは勘弁したいね」

 

そう言うと、伝令役の工作員が車の投函口に手紙を入れた。

車には盗聴装置や無線機が備え付けられており、外側は運送業者の広告が貼られていた。

伝令の手紙を見ながら上司はやや眉を顰めた。

 

「チッ、上は軍部にクーデターを起こさせたいらしい」

「どんな司令です?」

 

青年の質問に上司は手紙を渡すと、指示を下した。

 

「一度全員集めろ」

「わ、分かりました!」

 

青年は展開していた工作員を呼びに車を降りて行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「どうやら、保安局は本気で少佐を追い詰めるようだ」

 

帝都に存在する帝国軍総司令部の中、情報参謀長室にてペッツとコルネリウスが晩酌をしていた。

二人は赤ワインを嗜みながらソーセージを口にする。

 

「貴族の犬は余程彼らの戦力化を出来なかった事に不満があるらしい」

「腹立たしい話だ」

 

そう言い、コルネリウスはワインを飲む。

戦後、陸軍の大規模な異動によって行政参謀長から情報参謀長になったコルネリウスはその仕事柄常に軍の目の敵の帝国保安局の行動に呆れと怒りが混ざり合っていた。

 

「かと言って連中は事を大袈裟にしたくないようだ」

「当たり前だ。国の信用問題に関わる」

 

禁術の被害者である異世界からの来訪者は現在は魔導研究局にて保護しており、例のMボートの改修作業を行いながら彼女の元で働いていると聞いている。

魔導研究局はその特性上、ごく一部の人間しか知らず。魔導演算機自体、国家機密の兵器であった。そしれその場所も秘匿されており、研究所は結界によって守られていた。

そして転移者は多くの情報を帝国にもたらし、その見返りとして彼らを帝国軍の一員として迎え入れていた。

教国はそんな彼らの首をまず間違いなく刎ねる。彼らの目的はあくまでも転移魔法だけであり、それらを手に入れられないと分かった瞬間。教国は用済みとして処分している事だろう。それが教国という物だ。しかし本来であれば、これは聖地条約にギリギリ違反する可能性のある危険な物だった。

 

現在は海軍の港湾防衛用小型船舶のMボートという名で採用されている特殊船舶は、本来の目的である八八ミリ砲を搭載した多目的偽装装輪式突撃砲艇からは大きく設計変更がされていた。

というより、アイスフォーゲルの噂を聞いた海軍がわざわざ魔導研究局に視察に行って製作中の本車を見た際に海軍用のボートを要求したと言う。

そして海軍用にトラックの偽装や大型演算機を取り外した水陸両用の戦闘艇Mボートを開発していた。

そしれそれを隠れ蓑にしてアイスフォーゲルはMボートと名を変えていた。

 

「そもそもなぜあの小型艇を空に飛ばそうと思ったのかね?」

「儂に言われても困る。そもそも大型魔導演算機がこんな短期間でできた事実に驚いているのだ」

 

実際には五センチ程しか浮かばないが、どれだけ高速で走っても土埃が舞わないし、何よりぬかるみでハマらない強い特徴があった。

 

「元々予備車含めて七両の生産だ。改修作業も容易に終わるだろう」

「それよりも問題はディルクの演算機だ。修理に一ヶ月かかると言ったか?」

「ああ、前回の戦闘で外殻が完全に割れて中の魔導核が丸見えだったそうだ」

 

その時の損害を話しながら二人はワインを飲んでいると、コルネリウスは軽くため息をつきながら呟く。

 

「抵抗軍に教国、その次は保安局と来たか……」

「永遠の厄介者だよ。転移者と言うのは……」

 

ペッツの言葉にコルネリウスが突っ込む。

 

「保護したのは我々だろうに」

「技術情報を提供した見返りだ。おまけに、彼らはディルク少佐の部隊を見ている。あれを口外されるのはこちらとしても問題なのでな」

「それはそうだな……」

 

少なくとも我々の世界よりも発展した科学文明を持っていた彼らは基礎知識だけでも十分帝国の発展に寄与していた。

 

「転移した時、彼らの着ていた服や携帯していた物は全て当時の共和国軍に持って行かれていたそうだが……」

「それを手に入れられれば、より技術革新が得られるか……」

「そうだ」

 

ペッツは頷くと、今後の未来を予想していた。

 

「おそらく、今後共和国との国境は消える事になる。その為に教国からの支配を脱却する必要があり、古い慣習は捨てなければならん」

「その為の味方作りだろう?」

「ああ、そうだ」

 

ペッツは頷くと、グラスを置いてソファーを座り直す。

 

「幸いにも少佐は生きていた。彼には転移魔法の一件が片付き次第。我々の計画の首魁になってもらう」

「彼の能力は我々の知るところだ。誰も反対はしないだろう」

「ロンネル中将は今度の人事異動の合わせて大将に昇進させ、帝国軍機甲師団をまとめ上げてもらう」

 

ペッツはそう言い、コルネリウスはその後の想定が脳裏に浮かんだ。

 

「ここで一気に叩くつもりか……」

「その前に、ゲーリッツの爵位を返上しておいてくれ」

「分かっている」

 

ペッツやコルネリウスを筆頭に、陸軍は暫くした後に完全民主制へ移行するための革命を画策していた。

目的は貴族院の解体と皇帝の君主権を制限させる立憲君主制の確立であり、その為の準備は着々と進んでいた。

 

「幸いにも先の司令部占拠事件で国内における貴族への眼差しは厳しいものとなっている」

「お陰で保安局も動きずらい……か」

 

墓穴を掘ったなと内心コルネリウスは思った。

 

「それに、協力な魔砲兵(転移者)も揃っている事だしな」

「なるほど……」

 

コルネリウスはペッツがなぜ転移者を確保したのか納得する。

転移者は元は優秀な魔砲兵として働いており、彼らに国は関係ない。そしてその優秀……つまり強力な魔導砲撃ができる彼等を使って帝室に脅しをかけるのだ。

 

「まぁ、どれもこれも転移魔法の一件が片付いてからだな」

「ああ、まだまだ戦争は終わりそうにないしな」

「全く、厄介な事件だ」

 

そう言うと二人は最後の一滴になるまでグラスにワインを注ぐ。

 

「だが、目下の問題として。保安局をどう黙らせるべきか……」

「既に保安局はディルク少佐の確保に動いた。もしかすると、尋問するかもしれんぞ」

「そんな事をすれば余計身を滅ぼすだけだろうに……」

「それほど向こうも焦っていると言うことだ」

「共和国で揉め事を起こす気か?やれやれ、保安局を政治家が嫌う理由が理解できる」

 

戦争とは誤解から生まれる事もある。帝国に混乱を招きたいと思うのかは定かではないが、国内を引っ掻き回すと言う時点で教国が絡んでいると思いたくもなってしまう。

 

「……ところで教国の動きはどうなっているんだ?」

 

コルネリウスの疑問にペッツはグラスを傾けながら答える。

保安局の行動に関してはディルク自身でやり遂げられるだろうと感じていた。それほどの腕前はあると、彼等は予測していた。

 

「マルケッティ大司教からこの前連絡があった。どうも、予想以上に禁術保管庫の爆発で教皇庁内部は荒れているそうだ」

「あの『謎の魔導鍵』のあれか?」

 

コルネリウスが聞くと、ペッツは頷いた。

 

「どうやら持ち出された魔導鍵は警備の兵の物のようだ」

「待て、だとすると可笑しくないか?」

 

その違和感にペッツも頷く。

 

「警備兵のもので一つ、アンジョラ大司教が持ち出したので二つ、そして抵抗軍が持ち出した物で一つ。三つの魔導鍵がなければ可笑しくないか?」

「そうだ。あの魔導鍵は最高グレードの感応石を使用しており、複製は今の技術ではほぼ不可能だ」

「……」

 

深まる謎に、教国の出来事だからと二人はとりあえず考えるのを放り投げた。

 

「まぁ、そんな騒動があっても教国は抵抗軍や帝国に対して転移魔法関係の情報を仕入れる為に躍起になっているそうだ」

「この前捕らえた教国のスパイは?」

「尋問した後、今は刑務所の中だ」

「自殺の可能性は?」

「一応、魔法を使えない振動装甲で覆われた場所で隔離している。食事も排泄も、全ての動きを監視されている」

 

ペッツはそう答えると、コルネリウスは軽く溜息を吐く。

 

「しかし、強硬派を煽って混乱を起こした隙に情報収集か……」

「元々賠償金目当てで戦争に加担したような連中だ。今回の終戦条約には不満タラタラだっただろうな」

 

今回の戦争で共和国から賠償金を殆ど得られなかった事実に初めの頃、国民からもちろん不満は出た。だが、その後の抵抗軍のテロ行為で連日の報道が埋め尽くされるようになるとそれら問題は有耶無耶にされた。

お陰で帝国も共和国も国内経済の状況はほぼ同じ状況となり、両国政府は国内経済回復の為に『開かれた国境政策』を行なって物流を行き来させ始めた。

 

戦争が終わって間も無く八ヶ月。この政策によって国内経済は徐々に活性化を見せて来ていた。

おまけに両国の発展のために結ばれた『魔石・感応石条約』はそれぞれの国の等級を採用する事で穏便に進んでいた。

 

「あの条約のお陰で我々は合法的に感応石を補充できる」

「共和国と帝国の宥和政策か……」

「ヴァルトーの働きかけのおかげだな」

 

それを聞いてコルネリウスは苦笑する。

 

「世の中金を握っている者の方が強いな」

「まさしく同感だ」

 

二人の酒の友人であり、仲間である外務大臣は同時に帝国一の電機メーカーの会長であり、その影響力は恐ろしいものがあった。

彼もまた帝国の共和国化政策に賛同する一人だった。

 

 

 

強いバックを持つ彼等は着々とその準備を進めつつあった。

 

 

 

 

 




多目的偽装装輪式突撃砲艇ってなんか格好いい響きだと思いません?

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