戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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読者の皆さんは作品に出てくる地名とか兵器の元ネタを調べたりするんですか?一応、地名は元ネタがあるのが多いのですが……。

あとみんな、なろう版も読んで…アカウントがあったらブクマ登録してください……本当にお願いします。


一二五話

三月十三日

帝国南部 大規模訓練場

 

帝国の中でも数少ない戦車の訓練が可能な大規模な演習場だ。そこでは今日、帝国陸軍第七機甲師団が演習を行なっていた。

 

ニョルニル作戦に於いて共和国国境を破竹の勢いで占領し、共和国からも人気を掻っ攫った名将ロンネル率いる第七機甲師団。

年明けの帝都クーデター未遂事件の際には南方の演習場から通常は数日掛かる行軍をわずか一日で帝都に駆けつけ、幽霊師団という渾名と事件を解決した名誉を賜っていた。

歩兵時代に培った経験などを書いた本『歩兵攻勢』は帝国の教練の参考書になるほどの大ヒットを飛ばしていた。

貴族出身ではないことやその人柄、愛妻家などの噂から帝国市民から絶大な人気を誇る彼はその演習を眺めていた。

 

「師団長」

「ん?」

 

演習中、一人の通信時間が電文を片手にロンネルに駆け寄る。

 

「司令部よりであります」

「司令部からだと?」

 

電文を受け取りながらロンネルはすこし驚きの混ざった表情でそれを読む。

年明けに帝都に殴り込みをかけたお陰でロンネルの名声は上りに上がっており、救国の英雄のような扱いを受けていた。

事件後、彼の指揮する第七機甲師団には勲章が授けられ、中産階級の誇りとまで言われていた。

 

現在帝国は戦後の軍縮の影響をもろに受けており、一個軍集団に十個まで編成予定だった機甲師団は七個で止まり。南方軍集団の一員として帝国南方の国境地帯を睨んでいた。ペッツの采配で、大陸に名を馳せた英雄を教国との国境を接する地域に派遣する事で外交上の圧を掛けていた。

その為古巣の第七機甲師団はロンネルが中将となっても司令官を勤めていた。

 

「どうなさいましたか?」

 

副司令官のハリス・フルク少将がロンネルに聞くと、彼は少し笑って話す。

 

「呼び出しだ。至急、帝都に赴けとの命令だ。静かに来いともな」

「ほう、帝都ですか」

「ああ、三日後までに行けば良いそうだ」

 

そう答えるとハリスは少し笑う。

 

「ははっ、流石に一日で来いと無茶は言いませんか」

「まさか、私が一番輝いたのが帝国貴族のおかげとはな」

 

何と言う皮肉だろうかとロンネルは思った。

元々歩兵科出身で、中産階級のロンネルは貴族将校から嫌味を言われる事が多かった。それが、新鋭機甲師団の指揮官として配属となった時には大量の抗議文や嫌がらせが届いた。まあ、そんなちゃちな事はニョルニル作戦で全て吹き飛んだが……。

 

その時、作戦直前に知り合った我が装甲師団の主戦力であるⅤ号戦車を開発したと言う少年と知り合った。

同じ歩兵科出身ということもあり、すぐさま意気投合をした。まだ二十歳になったばかりのその若者の名はディルク・フォン・ゲーリッツ。今は情報参謀長を務めるコルネリウス・フォン・ゲーリッツの養子であった。

彼は戦場で見た新型共和国戦車を見て新たな戦術と、それに対応できる戦車の設計を必要としていたと言う。

 

元々傾斜装甲を戦場に持ち出したのは共和国の新型中戦車だった。それを見た彼はそこに歩兵を随伴させての速度を意識したと言う。

だとしても車台を同じにして重戦車や自走砲まで作れる万能設計には感服させられた。

走攻守、全てにおいてバランスの取れた傑作戦車に間違いない。聞くところによると基礎設計からほぼ採寸を変えただけだと言う。

 

開かれた国境政策で輸出用に作られた自走砲(フンメル)R型と呼ばれる車両は共和国製の155ミリカノン砲を装備しており、元の砲が優秀なおかげかそのまま逆輸入されるかどうか相談していた。

帝国の砲弾の規格化を早速破るのか、性能を取るのか、上では揉めていると言う。

 

『夜中に戦場で塹壕に滑り込む時……奇襲を成功させた時に共和国の本隊に連絡が行く前に制圧が出来たので、その規模を大きく出来ないかと考えた次第です』

 

多くの死地を経験してきた前線歩兵ならではの考え方だろう。息子にも見習わせたい物だった。

その後、共和国の攻撃で負傷して後方に移送された彼はその病院でかの『電撃戦』を提唱した。それが司令部の目に留まり、彼は大きく出世していた。

 

その後の動向はよくは知らないが、ペッツ参謀総長の指揮の元表沙汰にはできない任務を数々こなして来ていると思っていた。その証拠に年明けのクーデター未遂事件では彼は魔導演算機を背負っていた。

噂に聞く秘密兵器だ、そんなものを任せられると言うことは下手に口にすると拘束もしくは寿命を残して倒れることとなるだろう。だからこそ、彼を見た者には記憶からの消去を命じていた。

 

新年明けの帝都殴り込みに際し、アウトバーンが恐ろしい程ガラ空きだったのは彼の優秀な部下の賜物だろう。その者の名はデニス・ハン・イリゴムと言っていた。彼は補給地点のガソリンスタンドの位置までも記した行動書を無線で送っていた。おかげで新記録レベルで帝都に到達することができた。

東方の砂漠を超えた先にある国からの移民の血も混ざっていると言う事で名前にその地名由来の名が入っていた。

 

「暫く離れる」

「はっ、留守の間はお任せください」

 

ロンネルはそう言うと自らは車を呼んで演習場を後にしていた。

静かに来いと言う命令に少し違和感を感じていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同時刻

エスパニア王国 ラ・チャンコ

 

何処となく日本人からしてみると美味しそうに聞こえてくるこの地は、大陸南方にある影響で比較的暖かい上に近くを暖流が流れているおかげで、一年中を泳ぐことができる。

その為真冬に海水浴ができる地として人気であり、事実。白い浜辺には多くの水着姿の観光客がパラソルを立てて真冬の海岸を楽しんでいた。

 

その中の一人、南部はサングラスを着け、トランクスの水着の上にシャツを羽織って借りたパラソルの下で休んでいた。

 

「買ってきたよ〜」

 

そしてそんな彼に横から小山が両手にドリンクを持って話しかける。彼女は上下に分かれ、下がスカートのようになっていた水着で、最近の流行なのか他の女性観光客も似た見た目の格好が目立っていた。

 

旅行に際し、ドレスや水着を持ち込んでいた彼女……それも恐ろしいのが教国の禁書書庫で見たと言う収納魔法を使っている点だ。彼女にチートの称号を与えたい気分だ。

 

「ありがとう」

 

この世界にも海の家のようなものはあり、海岸近くには多くの出店が並んでいた。置かれているのはワイン、ビール、カクテルなどの酒やそのつまみ。あと普通のドリンクだ。

 

デブの血液とも言えるコーラはこの世界にアメリカが無いからなのか存在しない。

代わりにコカジュースと言うのがあるが、重度の鬱用の薬な上に原材料のコカの葉はコカインの原料だからバッチリ依存性があるわけで……まあ、日本人の身からすると敬遠する品物だ。

 

 

 

そう、この世界にアメリカのような超大国は存在しない。それと同時に我々の世界にはあってこの世界にはないものがある。

 

 

それは原子力、核エネルギーの理論だ。

 

 

初めにそのことに気づいたのは築城だった。年末から暇すぎて勉学に励み始めた時にどの書店にも原子力の理論の本などが無かったと言ってきたのだ。

それらを聞き、独自に調査をしてみたら何と驚き。この世界には核の理論が存在しないのだ。ウランやプルトニウムが存在していない。つまり、それら関係の技術もなかった。だから放射能という言葉も無かった。

 

ただ、それを埋めるようにこの世界にあって我々の世界に無いのが魔石と感応石だ。そしてそれらに関連する障害として魔石障害が存在していた。これは胆石のように体内に魔石ができてしまう病だ。ただ胆石より厄介なのは魔石の鋭い尖端部が組織を傷つける事だ。おまけに一度発症するとギックリ腰の様に再発しやすかった。

 

「上手いな」

「でしょ?あの店、人気なんだって」

 

今飲んだカクテルが中々に甘くて美味く、なかなか行ける。店を見てみると行列ができていた。

 

リゾート地であるラ・チャンコのホテルを取り、此処を拠点に休暇を楽しむことを決めた。

ここは車でフェロールまで行ける距離であり、あの写真の調査もできる。

 

保安局の追跡も振り切り、ようやく心置きなく休暇が楽しめる。

連絡はハンスを通じて義姉達に届いており、エスパニアと言うまあまあな遠い場所に苦笑していた。

流石にペッツ総長の方からの監視は無い様子なので安心していた。

 

ただ問題なのは公安局の人間に小山の姿が見られているので後で証拠隠滅をしないといけない。幸いにも小山の能力でどんな秘密の部屋で入れるので幾らでも偽造し放題なのが何とも言えない。

転移魔法が禁術となった理由が何と無く分かった気がした。

 

『土産はサングリアを頼む』

『断る』

『仲介料だ』

『ふざけんな』

 

公衆電話の電話口でそう言葉を交わしていたのは良い思い出だ。

 

「ティント・デ・ベラドだって。店によって少し味付けが違うんだって」

「飲み歩きをしても良いな」

 

そんな事を話しながら二人はパラソルの下で早速カクテルを飲む。

因みに言うとこの二人、酒はめっぽう強い。

 

「暖かい中で飲む冷えた酒は最高だな」

「あとでビールでも行く?」

「ああ、そうだな」

 

二人はそう話すと、波の打ち付ける海岸を見て小山は呟く。

 

「泳がないの?」

「パラソル借りちまったからな……」

「大丈夫だよ。荷物持ってきてないし」

 

盗難対策で小銭程度しか持ってきていない二人はカクテルを飲み終えると南部はビーチチェアから体を起こした。

 

「んじゃ、泳いでみますか」

「うん」

 

そして二人は足が砂で塗れながら海に入る。

 

「うわ、冷たっ!」

「本来真冬だからな」

 

腰あたりまで浸かった小山に南部はそう答えると、彼女は南部に引っ付きながら聞く。周りには自分たちのようなカップルも多くいたので特段違和感はなかった。

 

「でも何で泳げるんだろう?」

「近くの海を暖流が流れている影響で海中が常に温められているから、水温が比較的高いのさ」

「ふーん、自然ってすごいね」

 

そんな南部の説明に小山はそう短く答えるとそのまま二人はくっついたまま海に入って行った。

 

「あそこら辺までで泳ごうか」

「よし、そこまで競走と行くか」

「乗った」

 

そして二人は海に潜って泳ぎ始めていた。

 

 

 

 

 




もう分かって居るだろうけれど、一応の国家設定とそのモデル国家

ライヒ帝国→帝政ドイツ
フランク共和国→フランス第三共和政
ミッドガルド教国→スイス+バチカン
マチャ共和国→チェコ=スロバキア
ノルデンランド連合→フィンランド+ノルウェー
エスパニア王国→スペイン王国

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