戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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諸事情で第七章を分割しました。


一二六話

太陽の国、エスパニア王国。かつては世界帝国と名を馳せたこの国で本格的な休暇をしている南部達は海でバカンスを楽しんでいた。

 

「美味いな」

「ね、本当」

 

さっぱりとしたパエリアを海辺のレストランで二人は頂く。

 

サフランで色付けされた米に染みるオリーブオイルと魚介の旨みが口の中に広がり、その後にエビのしっかりした身が口の中で暴れる。そして、レモンの淡く爽やかな風味が最後に残り次の一口にスプーンが進む。

 

次の一口では取り出したムール貝の身が口の中で貝の旨みを破裂させる。

その後に野菜の少し硬めの食感と、少し焦げた米のざらっとした食感と風味が走る。

 

「「美味ぁ〜……」」

 

思わずそう溢してしまう。そう思うほどに海鮮が美味い。

そして次にサルモレホと呼ぶ野菜のスープを一口。口の中が海鮮になったところをトマトの程よい酸味がこれを押し流し、後味もサッパリしていた。

 

「ビールとよく合う」

「ね、ほんとに美味しい」

 

二人は昼間から飲酒をしながら海を眺めてアラカルトを楽しむ。

休暇を楽しむ二人は勿論酒のつまみも注文していた。

 

「ピンチョス頂戴」

「はいはい」

 

そう答えて小皿に乗ったピンチョスを一つ取る。

 

「じゃあ、そっちのトルティージャを」

「ん」

 

南部はトルティージャを手に取ると一口頂く。とろっと溶け出す熱々の卵の次にホクホクのジャガイモが崩れた。

実に最高の昼食だ、朝にはチュロスとホットチョコレートを食べ。午前は海で泳ぎ、昼にこうしてレストランで昼食を取る。

 

この地は海が近いせいか、大人でも水着姿のまま店に入ってくることが多い。ただし、海で水をしっかり乾かしてから店に入るのがマナーだそうだ。因みに水で濡れたまま店に入ると問答無用で追い出される。

 

そして午後は間食を挟みながら街を巡り、観光する。そして土産物を書いながら車に積み込む。乗らない分は小山の収納魔法に突っ込めば良い。まじで便利すぎるぞ収納魔法、何故これを禁術にしたのか気になるところだ。

 

「午後は何処に行く?」

「そうだな…港にでも行こうかと考えていたが……」

「あっ、もしかしてあの写真?」

「ああ、何かいい情報でもあるといいがな」

「ふーん……」

 

写真自体に関してはあまり興味がなさそうな様子の彼女、俺からやけに興味津々になっているから止めはしないと言った様子だった。

夜に帰ってくれば後はたまに朝までお楽しみをしている場合もある。

 

「じゃあ私はその間に軽く買い物してて良い?」

「ああ、ホテルの鍵は預けておくよ」

「分かった」

 

彼女は頷くとそのまま次はアヒージョに手を出していた。

 

 

 

 

 

午後、昼食を終えて間も無くメリエンダの時間になる頃。南部は車を走らせて西に走る。

目的地は王国海軍屈指の軍港でもあり、王国随一の港街フェロール。

毎日数千隻の貨物船が出入りする巨大港では大勢の人員が出入りし、中には船の修理工場なども存在していた。

 

「今日はこっち側を調べてみるか……」

 

バツ印の打たれた港を地図を見ながら彼は港を見る。

写真の場所と合致する所は今の所見当たらないが、共和国の航海士が一目でフェロールと言い当てていたので確実に同じ場所があるはずだ。

まあ、航海士が勘違いで土地名を言っていたら元も子もないのだが……。

 

「ここか……」

 

クレーンや船が並ぶ港の一角、荷下ろしの作業中なのだろう。木箱を入れた網がクレーンよって持ち上げられ、車や人が押し寄せる。

 

「おい、そこの」

「?」

 

そんな港を歩いていると、ふと声をかけられた。

 

「邪魔だ、どっか行っろ」

 

そこには屈強な筋肉を持つ一人の男が立って彼を注意していた。

 

「ああすみません」

「ここは観光着が来る場所じゃねえよ」

 

そう言うとその男はディルクを港からつまみ出した。

 

「摘み出されたか……」

 

車は市内の駐車場に止めてあるので車上荒らしに合わない限り酷い目には合わない。

 

「はてさて、何処を調査したものか……」

 

近くの小山に登って港を眺めているとそこで徐に写真を取り出してパズルのピースを合わせるように港を眺める。

写真の雰囲気からしてもかなり似通っていると思うのだが……。

 

「ここじゃないのか?」

 

そんなことを呟いていると、彼は後ろから不審な様子で叫ばれた。

 

「おい貴様!そこで何をしている!!」

 

振り返ると、そこでは警察が立っていた。いつでも拳銃を抜けるように腰に手まで当てていた。俺よっぽど不審者に見えるのかな?

 

「えっと…俺不審者ですか?」

「何者だ」

「りょ、旅行者ですよ」

 

そう言いながらディルクはパスポートを見せる。

 

「……本物だな」

 

警官はそれが本物であることを確認すると、ディルクに聞く。

 

「目的は?」

「観光です」

 

警官に正直に答えるディルク、実際。国境を越える時にそう言って入ったし実際観光しているし。

ちなみに国境を越える時、小山は転移魔法で別の場所に飛んで隠れてもらっていた。

 

「観光客が港に何の用かね?」

「いやぁ、ある場所を探して旅をしていましてね」

「場所だと?」

 

警官は訝しむような目で俺を見ると、その後に彼は訳を少々ぼかして話し始める。

 

「ええ、とある人から写真をもらいましてね。その場所がフェロールにあると言われましてね。その場所を探しているのですよ」

「……」

「まぁ、この場所なんですが……」

 

そう言い、未だに警戒している様子の警官を落ち着かせるには今の所これしかないかと半分諦めで写真を見せた。

 

「ここは……」

「もしよければ、この場所を教えていただきたいのですが……」

「……」

 

夕焼け空の下、ディルクは警官と話すとその警官は写真を見てやや驚いた目をした。

 

「ここは…六番埠頭だな」

「六番埠頭?」

「ああ、このクレーンはあそこだな」

「おお、そうですか。有難うござます」

 

しかし警官の顔は渋い。

 

「観光客は行かない方がいい。俺たちも滅多に行かねぇぞ。あそこは」

「それは…何故ですか?」

「あそこは使われなくなった修理工場があるが、今はチンピラの溜まり場だ。あそこで喧嘩が起こっても対応しないぞ」

 

その警官はそう答えると、気を付けとけよと言い残して去って行った。

どうやらマジで巡回中に出会したらしい……。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「行くなって言われると行きたくなるんだよな……」

 

夜、六番埠頭の門の前でディルクは立つ。灯りがほんのりと灯っており、その奥からは時折声が聞こえる。主に暴言だが……。

 

「ほんとにチンピラばっかだな……」

 

門をどうやって入ろうかとしばし考えたあと、魔法を使って彼は壁を簡単に登って埠頭に忍び込むと、そこでそのまま人気のない場所を暗視魔法を掛けながら気配を殺して歩く。

 

「……ここか」

 

そして暗視魔法越しでその景色を捉えると懐にしまっている写真を取り出す。その写真に映った景色と、目の前に映る景色は色が抜けただけで全く同じものだった。ちなみに視界は緑色なのだが……。

 

「何の意味があるんだ……」

 

ディルクが小さくつぶやいたその瞬間、

 

「ん?誰かいるのか!?」

 

ライトを片手にこっちに走ってくる人影は肩に小銃(MAS-36)を持って走ってきていた。

 

 

 

 

 

「気のせいか?」

 

ライトを持って監視をしていたその男は岸壁にいた気がした影を追って岸壁スレスレに立って海を見る。

夜の暗い海、いくら暖かいとはいえ所詮は真冬。落ちたら冷えるし濡れた服がべったりくっついて動きづらくなる。

 

「……」

 

試しに海にライトを当てると、そこからは潮が当たる音しか聞こえなかった。

 

「……ふぅ」

 

そして一息付いたその男はライトを持って去って行った。

 

 

 

 

 

そして足音が消えた頃、港の岸壁のボラードの下からディルクはもやい縄を掴んで飛び上がって来た。

 

「あっぶね」

 

まさか見張りの男が銃を持っているなんて普通思わんだろ。おまけにライト持ってたから一瞬目眩しくらったし。

 

「だが、ここが臭いと言うのは確定したな……」

 

主に悪い意味でだが……。普通チンピラ如きが、正規軍の持っているような小銃を持っている時点で甚だおかしな話なのだ。しかも持っていた銃は共和国の小銃だ。王国軍の正式小銃はモーゼルM1893、持っている銃からしてただのチンピラではないことは確実だった。

 

「(歩き方はただの一般人だな)」

 

事実、岸壁の下に隠れていた自分を見つけられなかったし、恐らくは見張り要員なのだろう。私服姿だが、持っている物騒な小銃はまるで何かを守っているようだった。

 

「(後をついて行けば、いずれ分かるか……)」

 

幸いにも港には荷物やトラックが止まっている。夜中とは言え、この大きさの港となると夜でもどこかしら人が働いている。しかし小銃とライトを持って港を徘徊するのは誰がどう見たって異常だ。

そして見張りはディルクが遠くから尾行していることにも気づかず、港の薄暗い灯りを頼りにある倉庫まで歩いていた。

倉庫には船の修理工場のロゴが印刷され、そのロゴは写真のクレーンにも写っていた。

 

「……」

 

そしてその男が入って行った倉庫をディルクも追って、ハシゴを使って屋根に登る。

屋根が抜け落ちないか不安になるが、慎重に確認しながら倉庫の屋根を渡ると男の入って行った倉庫の屋根に到着する。

そして屋根の窓から中を覗き込むと、そこにはリオレ・エ・オリビエ H-246やロワール130と言った数機の飛行艇が格納されていた。

 

「(飛行機ばかりだな……)」

 

よくよく見ると、倉庫の入り口から海までは直結だ。坂になった岸壁のおかげで来れた飛行艇を飛ばすのも簡単だ。

流石にこの倉庫にラテコエール631のような超大型飛行艇や最新のブレゲー730は存在していなかった。

 

『見回り、交代だ』

 

そしてそんな格納庫で先ほど見回りをしていた男が別の見張り員に声をかけて小銃を渡す。二人の間に置かれた恐らくは身分証的な物かは分からないが、脱ぎ捨てられた服を見て確信できた。

 

「(抵抗軍だ……)」

 

奴等、陸上兵器では飽き足らず、こんな飛行艇まで隠し持っていたのかよと。もはやテロ組織じゃなくなっているレベルの規模にもはや笑うしかあるまい。

しかし、いつの時代も金のある犯罪組織の武器の質は正規軍ですら見張るものがある。つまりはそう言うことなのだろう。

 

「(会社名と、場所を通報して接収させよう)」

 

まさか共和国や帝国を超えて、大陸全土にネットワークを持ち始めている抵抗軍にディルクは内心冷や汗を掻いていた。




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