戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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一二九話

写真を追って見つけた抵抗軍の拠点で飛行艇が出ていくのを見送ったディクル達は警察がやってくるまだの間に先程まで飛行艇が格納されていた倉庫の壁を虱潰しに探していた。

 

「……あった」

 

その中、一つのレンガブロックが不自然に浮き出ていたのを発見した。

 

「見つけたぞ!」

「分かった……そろそろ警察が来るよ」

「了解」

 

遠くからサイレン音が聞こえ始め、二人は飛び出たレンガを引っこ抜くとそのレンガのあった厚紙を手に取った。

 

「よし、撤収だ」

「魔法使うよ」

 

そして二人は手に取るとそのまま転移魔法でフェロールの街まで一っ飛びして埠頭を去って行った。

後から到着した警察はもぬけの殻となった倉庫を眺めて呆然としてした。

 

 

 

 

 

市内に転移魔法で逃げた二人はそのまま車まだ移動する。

 

「結局一発も撃たなかったね」

「こいつも必要なかったな」

 

そう言いディルクは黒い目出し帽を扉を開けて車内に放り込むとそのまま乗り込んだ。

 

「さて、戦利品の確認と行きますか……」

 

そこで彼はレンガの奥に埋まっていた厚紙を取り出す。あのレンガは意図的に外されており、小山の話では小野寺自身の命令だという。

 

「本当に何がしたいのアイツ?」

「さあな、俺に聞かれても困る」

 

抵抗軍の副司令のくせして何故か文言を各所に残している。まるで俺たちの行動を完璧に予測しているようで気に食わない。

 

「教国の時然り、この前の古城然り。なんでいく先々でアイツがいるのかしら」

「それだけ俺たちの追っている情報が正確で重要だって証拠だろう」

 

そして厚紙をくるくる回しながら南部は文句を溢す小山に答える。厚紙の大きさはちょうど葉書ほど、しかし真っ白なままだった。

 

「……」

 

ただの厚紙の為にわざわざ伝言を残すはずが無いと、南部は確信しており。その葉書にカラクリが無いかを確認する。

 

「シール……ではないか」

 

まず初めに触り心地からシールが貼られている様子はない。

 

「じゃあもしかして……」

 

軽く厚紙を触った後に南部はある可能性を考えると、横にいた小山に聞いた。

 

「蓮子、火はあるか?」

「え?ああ、あるよここに」

 

そう言うと彼女は車に置いてあったマッチを取り出した。そして彼は念の為に厚紙に鼻を当てて匂いを嗅ぐと確信した。

 

「えっと……南部くん?」

「こんな子供騙しとはな」

 

そしてマッチ箱を受けとった南部は火をつけると、厚紙を均等に炙り出した。

 

「何しているの?」

「炙り出しって、やった事ないか?」

「何それ?」

 

どうやら知らない様子の小山に南部は一瞬驚きながらも、彼女に教える。

 

「炙り出しと言うのは柑橘系の果汁とかを紙に塗っておいてよく乾かした後にそこに火を近づけると、先に塗った部分がゴケて文字が浮かび上がるってやつさ」

 

そう答えると、紙の片面にやんわりと焦げ跡が浮かび、試しに裏側も念入りに炙っていた。どうやら炙り出しは片側オンリーのようだ。

 

「へぇ、なんで分かったの?」

「紙を嗅げば分かる」

 

そう言い、焦げた紙を手渡すと彼女は紙に鼻を近づけた後に手で仰いだ。

 

「試験管かよ……」

「いやぁ、ちょっと変なのだったらやだなって……」

 

そう言い、再び仰ぐとそこで柑橘系の匂いを確かに感じた。

 

「おお、本当だ」

「昔、爺さんに教えて貰った。戦時中、疎開先で暇な時によくこれで遊んでいたそうだ」

 

彼はそう答えると、厚紙を受け取って浮かび上がった文字を見た。そこには日本語でこう書かれていた。

 

『始まりの地にて眠る』

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

三月二三日

統合作戦本部

 

参謀総長公室にて仕事を片付けていたペッツの前に僅かに魔法を感じた。

 

「……来たのか」

 

書類から目を逸らす事なく呼びかけると、その奥から現れた一人の軍人……エレニカはペッツに近づく。

 

「ええ、報告をしにね」

「ふんっ、相変わらず恐ろしい魔法技術だ」

「ええそうね、へたっぴな貴方には無理な芸当よ」

 

そう言い、彼女は持参した革鞄を持ってペッツに幾つかの書類を提出した。

 

「うちで預かってる子達の報告書よ」

「ああすまんな」

 

彼女が持ち込んだのは現在魔導研究局にて保護をしている転移者達の動向を記したものだった。それからディルクの魔導演算機の修理と改修状況の報告などがあった。

 

「全員は見切れないから一枚ずつがっつり略したわよ」

「ああ、分かっている」

 

転移者の人数は二九名、白い悪魔も含めると三十名だ。

 

「彼らの世界では三十人が基本のクラス編成らしい」

「私、異世界に特に興味無いんですけど?」

 

エレニカはそう答えると、ペッツはまあまあと言って彼女に話を聞かせる。

 

「彼らの訪れた世界では過去に二度の世界大戦が起こったそうだ」

「世界大戦……?」

 

初めて聞く単語にエレニカは首を傾げ、その言葉にペッツは頷く。

 

「ああ、文字通り。世界を巻き込んだ戦争らしい」

「世界を?馬鹿馬鹿しい、そんなことがあり得るの?」

「ああ、事実だ。転移者全員が口を揃えて言っていた」

「……」

 

世界大戦などと言う、世界を巻き込んだ戦争……エレニカには想像が付かなかった。

 

「同盟を組んだ国同士が争い、数百万の死傷者を出す戦争だそうだ」

「数百万ですって?」

 

この前の、史上最大の戦争とも目される東西戦争の時でさえ死傷者は十万人程度だ。数百万なんて、どこかの小国と同じ規模の人数だっだ。

 

「ああ、そんな大惨事を引き起こした戦争は二回も続いた。しかも二回目の死傷者は民間人含めて数千万規模だそうだ」

「民間人も……?!」

 

エレニカは目を見開く、戦争に民間人が巻き込まれる?そもそも戦争というのは少し前までは貴族のステータスだった職業だ。

民間人を容赦なく殺すのは俗のする所業であり、戦争で死ぬことは今までの歴史上はほぼほぼ無かった。それに数千万単位の戦死者など、大国とされる帝国や共和国でもそれほどの戦死者を出せば国自体が滅ぶ可能性すらあった。いや、大陸全体でもそれほどの人口減少は幾つかの小国家は滅びを迎える事だろう。

 

「彼らの世界ではそのような戦争が終わった後、七十年以上の平和が続いたそうだ」

「ええ、らしいわね」

 

前に魔導研究局で職員に話していた彼らの世界の状況、それを聞いていた彼女はすでに知っていた。

 

「だが、それは大国の庇護下によって守られた偽りの平和というのは聞いているかい?」

「は?」

 

エレニカの反応を見てペッツはニヤリと笑うと、おもしろげに話し続ける。

 

「アメリカやソ連という国が、核兵器なる世界を終わらせる事の出来る兵器を持っての睨み合いの戦争。冷戦と呼ばれる時代だそうだ」

「冷戦……」

 

そのままの意味で捉えるなら冷たい戦争……戦争とは熱いものでは無いのかと思ってしまう。

 

「分かりやすく言うと、戦争直前の共和国と帝国の睨み合いが何十年も続くような状態という事だ」

「……よく予算が持ちますね」

「ああ、私もそう思う」

 

軍事費の増額は国民生活を蝕む毒と同じ。緊張状態の時に膨大が軍事費が加算されたが、同時に国内の福祉に大きな影響を与えた。だから戦争に突入して資源確保を急務としていた。

しかしその結果は帝国の事実上の勝利という形であり、本当の勝利では無かった。得られたのは領土の一部であり、その地域も微々たるものだった。主なものは戦場跡とあとは畑、主に小麦がよく取れる土地だった。

そりゃ怒るわけだとエレニカは当然の如く思う、むしろペッツのような連中が普通は頭がおかしいのだ。

 

「しかし、戦争をせずともこれほどの利潤を与えてくれるとは……やれやれ、開戦を決意した先任達は面白く無いだろうな」

「でしょうね」

 

散々共和国を目の敵にしていたペッツの前の参謀本部のメンバー。開戦の狼煙ともなった鉱山地帯での接触の時は飛び上がってシメたと言った様子だったという。

 

「だから年明けの事件を起こしたのでしょう?」

「ああ、関係者に交えて通報したさ」

 

証拠もあったしと言ってペッツは愉快げに語る。これで国内の不安要素が消えたと手を握って喜んでいた。

 

「……とまぁ、彼らの国ではそんな状況が何十年と続いた後にソ連という国が崩壊したそうだ」

「ふーん」

 

エレニカは転移者達の世界の話を聞き、あまり興味はなさそうな雰囲気だった。だがペッツはある言葉について言及した。

 

「そこで、私が気になったのは核兵器という彼らの世界独特の兵器のことだ」

「かくへいき?」

 

世界大戦は想像がつくが、核兵器に関しては本当に訳がわからなかった。

 

「ああ、なんでも巨大な爆弾であり。ほうしゃせんと呼ぶ見えない毒が体を蝕むそうだ」

「蝕む?」

「ああ、なんでも体が知らないうちに腐食して行って、激痛を伴って死ぬらしい」

「……そんなやばい爆弾が彼らの世界にあるの?」

 

想像しただけでゾッとなる景色だ。まるでいつの間にかゾンビになっているようなものだ。

 

「ああ、ゾンビと言えば……」

 

そこで思い出したようにエレニカは真剣な眼差しでペッツを見た。

 

「死霊術式を使った奴がいるんだって?」

「ああ……抵抗軍の死体を調べて判明した」

 

ペッツは極めで悪質なやり方だと、使用者の特定に勤しんでいるとも伝えた。しかしエレニカはそんな小言に耳を貸す様子もなく彼に言った。

 

「……その死体、今度上がったらうちの寄越してくれない?」

「……何をする気だ?」

「ちょっと気になってね……」

 

その目は研究者としての目をしており、彼女の腕を買っているペッツは二つ返事で了解した。何せ娘のように育て来た子だ、そんな彼女の要望に応えない訳がなかった。

 

「ところで、教国随一の天才魔術師と呼ばれた君は転移魔法に興味は無いのかい?」

 

そしてそこでペッツは魔法学を好むエレニカにそう聞くと、彼女は当たり前のように答える。

 

「ええ、微塵も。あんな世界を崩壊させかねない魔法に手を出すなんて愚の骨頂ね」

「……何?」

 

予想外の返答にペッツは思わず下げかけた視線が戻ってしまうと彼女は続けた。

 

「元々異世界との通路を魔力を大量に消費して無理やり繋ぐのよ?次元が歪むから、少しでもヘマをすると両方の世界の次元が歪んでとんでも無いことになるわよ?」

「……もしそうなったら、どうなるんだ」

 

彼女のいうとんでも無いことと言う言葉にペッツは恐る恐る聞くと、彼女は真面目に応えた。

 

「二つの世界は互いに入り混じって、存在がなかったことになる可能性が高いわね」




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