『〜〜〜〜♪』
その場所では音楽と共に、センターで一人の踊り子が歌を歌い。その周りには紺色の海軍士官の制服や水兵服を見に纏う男たちが酒の入ったグラスを片手に余興に酔いしれる。
そんな中、ダンスホールの隅のバーで一人の灰色の制服を見に纏う一人の男に紺色が特徴的な士官服を身に纏った大尉の階級章を付けた一人の男が声をかけた。
「失礼、ウェルナー少尉でしょうか?」
その士官は灰色の従軍記者の制服に身を包んだ青年にそう声をかけると、彼は海軍士官を見ながら頷いた。
「ええ、初めましてレーマン大尉」
ウェルナー少尉はそう返すと、レーマンはやや申し訳なさげに後ろで馬鹿騒ぎをしている海軍兵士を見た。
「帝都から此処までは遠いでしょう?」
「いえ、これくらいは近いほうです」
二人はダンスホールでこれからの出撃前に一夜を楽しく過ごそうと考えている野獣達をやや呆れた目で見ていた。
「全く、映えある帝国海軍だと言うのに……」
軽く愚痴を零してブランデーの入ったグラスを傾ける。
「明日、
「了解しました」
「早朝にお出迎えいたします」
「ありがとうございます」
明日の予定を伝えると後ろでは帝国海軍の歌を歌い始める兵士達。
そんな大騒ぎのダンスホールを一瞥してウェルナーは後にしていた。
翌朝、海軍の管理している軍港の一角にあるUボートの港に向かう。
ナチスドイツ政権下で建造されたUボートブンカーなるベトンをたっぷり塗り込んだ資材の浪費にも見えるあの施設はこの世界にも似たようなものがあった。
ただ、異世界だなぁと思うのはそのブンカーは敵の爆撃から守るだけでなく魔導砲撃からも守るために振動装甲の施された無人砲塔がある事だろう。
それから立地も、基地のほとんどが山や崖をくり抜いて作られている構造で、皆の知っているUボートブンカーの形とは大きく違っていた。
現代ですらまだ最新技術であるはずの完全無人砲塔がこの時代で当たり前のように実用化されている理由は魔法と言う異世界情緒を感じさせる技術があるからだった。ただ、ゴーレムとかオートマタなどのそう言った技術はまだ無さそうに見えた。
大勢の修理班の人間が行き交い、魚雷がトロッコに乗せられ運ばれ、クレーンに吊り下げされたり、至る所で金属研磨の音や溶接の火花が散っていた。
そんな中を、ウェルナーとレーマン、そして先任士官であるマイント中尉と共に港を歩く。
「異常はあったか?」
歩きながらレーマンがマイントに問いかけると、彼は頷きながらレーマンに伝えた。
「ええ!右舷のスクリューが少し曲がっていました!」
周りがあまりにもうるさいのでやや大声で答えるとレーマンは納得していた。
「そうか、通りで潜航中に異音がしたんだな?」
「もう大丈夫です!スクリューを全部、新品と交換しました!」
「よし!」
Uボート基地を歩いていると、岸壁には多くのUボートが停泊しており。そこで修理や点検、出撃前に魚雷の装填などを行っていた。
『U-995艦長、司令部より電文。至急事務所に』
至る所で騒がしいが、そんな中を三人は歩くとレーマン大尉がある岸壁の前で立ち止まり、少しニヤついた。
それを見て思わずウェルナーは少し興奮した表情を見せていた。そしてレーマンは一度ウェルナーの興奮気味の顔を見た後に岸壁に係留されたそれを再び見た。
「あれだ」
そこには我が帝国海軍が誇る最新鋭の潜水艦、UボートXXI型が停泊していた。
「乗組員全員、気を付け!」
船の甲板で一人の士官が声を張って整列させる。
「艦長に敬礼!」
そして岸壁から近づいてくる艦長と、その後ろをウェルナー達が歩く。
「頭ぁ、右!」
甲板に一列に並んだ乗組員を見ながらレーマンは当直士官を見ると、彼は敬礼をした後に答えた。
「乗組員全員集合、異常ありません。出航準備、完了です」
「よし副長」
確認を取ったレーマン達は桟橋を歩くと、司令塔の側面に描かれた特徴的な笑うノコギリザメのイラストを見ながら甲板に降り立った。
そしてレーマンは甲板に立つ乗組員一人一人を見ていく。
「休め!」
そしてその様子を司令塔の近くで立って見ていたウェルナーとマイント。
「演説が始まるぞ」
耳元でマイントがウェルナーに囁くと、彼は軽く頷きながら一度気を引き締めた。
そして、士官を除いた五十人の乗組員がレーマンを見ると、少しだけ表情を綻ばせた。
「では諸君、」
そして乗組員はその時を今か今かと待っていた。
「出航だ」
此処にいる乗組員の半数が新米の兵士ばかりだ。今回は訓練航海と言う事で、新米兵士はこれからの船旅に心を躍らせていた。
『『『はい艦長!!』』』
若い、張りのある強い声が返されるとレーマンは『良い返事だ』と言わんばかりに短く頷き、他の乗組員が気になっているであろう見慣れない人物を紹介する。
「紹介しよう」
灰色の制服を見に纏う一人の少尉の階級を持つ男。
「ウェルナー少尉、報道部従軍記者だ」
記者と聞き、乗組員の表情は十人十色。興奮する者や緊張する者、嬉しげにする者。
「今回、同乗する」
そんな彼らを抑えるようにレーマンの稍重めの口調が響く。
「行動は逐一報道される。……慎んだ行動を」
映えある帝国海軍の一兵士として、誇り高き姿と伝統を壊さぬよう注意すると、乗組員達は答えた。
『『『はい艦長!』』』
そんな彼らの返答を聞いたレーマンは頷いた後に号令を発した。
「全員配置に付け!」
そして甲板を後にするレーマンを見ながらマイントが話しかけた。
「名演説でしょ?」
そして次の瞬間、士官達の怒号が甲板に響き渡る。
「総員持ち場に付け!」
「新兵!グズグズするなぁっ!!」
「時間厳守だっ!」
「バラストタンクの最終確認をしろっ!」
そして乗組員達が次々と船内に移動をする中、ウェルナーは一人。司令塔の下で荷物を手放さなかった。
平時の訓練航海という事で、大層な見送りも無く。静かに出航していくU-2596潜水艦。
その船内では喧騒と意気揚々とした雰囲気が蔓延していた。
「なんだこれは!」
「此処は八百屋か何か?!」
「今片付けてんだよ」
まだ散らかっている補給品を片付けながら、そんな乗組員の怒号を聞きながらウェルナーはラインプレト曹長の案内を受けていた。
「今は散らかっていますが、此処は魚雷格納庫です」
そう説明を受けたウェルナーは早速魚雷格納庫の写真を撮ろうとカメラを取り出した。
「おい!写真だ!新聞に載るぞ!」
新米の水兵達を取り仕切っている彼が叫ぶと、男達は各々良い写り方をしようと恰好を付けていた。
「ここがトイレ、一つしかないので要注意を」
諸注意を受けながら二人は狭い船内を移動する。
「それでその後ろが曹長室、俺の部屋で。その後ろは士官食堂、少尉はここで食事を摂ってください」
そして船内を後ろに移動しながら案内を受ける。
「おっと」
「失礼」
移動中に乗組員とぶつかるほどの狭さで、天井には食料の缶詰が積まれていた。帝国軍の中でもまぁまぁ人気のある牛肉の缶詰だ。
「それで、此処が司令部です」
そう言い先ほど降りてきたその場所の写真を一枚。ラインプレトは司令部で少々格好をして写真に映る。
「次は下士官室です」
そう言い司令部のさらに奥に移動すると、そこでは吊り下げられた干し肉や新鮮な野菜と果実が置かれていた。
訓練航海とはいえ、本物の実践を想定したものであり。食料もそれと同等に積み込まれていた。
「頭に気をつけて」
そして防水隔壁の狭い穴を通り越えた先で二段ベットが並んでおり、そこでは下士官数名が二人を出迎えた。
「おう、いらっしゃい」
「此処で交代で寝ることで常にベットは暖かいですよ?」
冗談混じりに言うと、部屋には軽い笑いが聞こえていた。
「少尉は客人ですので、ベットは此処を自由にお使いください」
訓練航海の様子を写真に納める仕事のウェルナーは客人としてベット一つを占有させてもらっていた。
「少尉、これを」
すると一人の士官がウェルナーに雨合羽を手渡した。
「こいつは救命具だ」
そして救命用具を受け取ると下士官達は冗談混じりで話す。
「まぁ今回はいらねえだろ」
「それ以前に使う機会もねえ」
「その前のボカンだ」
潜水艦乗りなりの悪いジョークを交えて言われ、ウェルナーは少々答えづらい表情を見せた。
「此処が厨房で最後に機関室です」
そしてラインプレトは艦の最後方にある機関室に案内した。
けたたましい機械音が響き、艦内の蓄電池に電気を蓄えながら海を航行していた。
「新型のヴァルター機関を装備した最高の機関室ですよ」
そう締め括って船内の案内を終えていた。
船内の案内を終え、洋上を航行中のU-2596。その訓練の様子を次々とウェルナーは写真に収めていた。
「ウェルナー少尉」
「はっ!」
そんな中、司令部でレーマンが話しかけてくるとある提案をした。
「どうです?外の写真を一枚」
「よろしいのですか?」
「ええ、今日の外の状況は穏やかですので」
そんなレーマンの提案に乗った。だが、その前にウェルナーはレーマンに聞いた。
「すみません、甲板に上がる前にフィルムを取ってきてもよろしいでしょうか?」
「ええ、構いませんよ」
そしてその後に部屋に戻って荷物を取ったウェルナーとレーマンは司令塔を登って航行中のU-2596から顔を覗かせた。
「おい!浮き輪準備しろ!」
「少尉が海に落ちたらカメラが台無しだ!」
ウェルナーが落ちる事前提で笑い合う乗組員を他所に二人は慎重に甲板に降りた。
狭い甲板だが、海は非常に穏やかで波が被る事は無かった。
「ここなら誰も聞かれない……そうでしょう?
そう問いかけると、ウェルナーは少し笑った後にレーマンを見た。
「はははっ、大尉殿は知っておられましたか」
そんな彼にレーマンはやや疲れた様子で見返す。
「いえ、私も出撃前に司令部に呼び出されて初めて知りました」
「まぁ、そうでしょう……」
「まさか陸軍のエースを客人として迎えるとは予想外でした」
噂には聞いていましたが、化けるのは得意なようでと締めくくり、レーマンは疲れながらも、何処か興味ありげな雰囲気を滲ませながらディルクを見ていた。
私は大塚さんが吹き替えをしているテレ東版が好きです。
お気に入り登録、高評価をよろしくお願いします。