戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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一三五話

軍の報道記者として乗り込んだディルクはウェルナーと言う偽名とともにU-2596に乗り込んだ。

 

訓練航海の新米乗組員達を乗せながら出港した潜水艦は洋上を進むと、司令部から命令されたポイントで浮上訓練やシュノーケルの確認を行う。

 

「急速浮上!」

「バラストタンク排水急げ!」

 

バルブを慎重に回しながら潜水艦を徐々に浮上させて行くと、船体が上に傾く感触が徐々に伝わる。

 

「モタモタするな!これは実践だと思え!!」

 

発破をかける水雷長、しかし悲しいかな。戦争が終わった事による軍縮を一番モロに被害を受けているのが海軍だ。

 

陸軍や空軍は抵抗軍によるテロ攻撃で警察からの依頼という形で抵抗軍に協力してこれの撃破を狙っており、戦時中より軍備は減っているが。それでも平時の時と比べると多かった。そこで軍事費を減らせる所となると、海軍が目をつけられる羽目となっていた。

 

今では二線級装備品となった帝国製半自動小銃が主装備の警察では、短機関銃を装備する抵抗軍の兵士相手には正面火力の面でかなり劣っており。緊急で軍用短機関銃を仕入れていた。

 

「深度は?」

「現在八〇!…七〇!」

 

深度計を確認しながら徐々に水面が近づくのを確認していると、騒然とした艦内でディルクは冷静に写真を撮っていた。

 

「(後で現像したら『下手くそ!』って怒られるんだろうなぁ)」

 

なにせ自分はペーペーの写真家、ロンネル閣下がこんな姿を見ていたら色々とダメ出しを出すに違いない。

ただ、一応マジもんの写真として使うかもしれないので真面目に写真は撮っていた。

 

後に機密の関係で撮った写真がほとんど使えないと言う事実を忘れながらシャッターを切っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

時は少し戻り、夜中に王国の港より離陸したロワール130などの水上機編隊はとある信号を探していた。

 

「っ!信号捕らえました!」

 

すると闇夜の海に一発の銃声が響くと一つの光球が浮かび上がり、直後に強い光と共にゆっくりと落下しており。辺り一面を明るく照らすと同様な信号弾が上がった。

 

「あれだな……」

 

非常に困難な夜間着水を少しでも楽にするために洋上に照明弾が多数打ち上げられ。なんとか着水に成功するとそこで停船していた大型船から桟橋とクレーンが降ろされ、荷物を詰んだ最初のロワール130はそのままクレーンに繋がれて釣り上げられる。

 

「第二〇三補給部隊、現時刻をもって補給任務を開始いたします」

「うむ、ご苦労」

 

そして補給将校の男が船に乗っていた兵士に敬礼すると、後ろでは水上機に積み込まれた荷物の搬入が行われていた。

洋上には他にも飛び立った編隊が続々と着水しており。クレーンやもやい縄で繋がれるとバケツリレー方式で荷物を運んでいた。四発機のH-246では

 

「今回の補給物資は生鮮食品を中心に食料品です」

 

そして木箱の隙間から見えた玉ねぎを確認すると船に乗る兵士も軽く頷いた。

 

「補給目録はこちらに。サインをお願いします」

 

そしてバインダーに挟まれた紙を見せ。士官がそれにペンを持つと、

 

「ご苦労だった。モーンド少佐」

「っ!副司令!」

 

そこに白い軍服が特徴的な一人の軍人、ヘイルダム・ルメイその人が居た。

抵抗軍の副司令という立場をもらっている彼は、滅多に顔を覗かせないジュール・ファブールに変わって組織の実質的な指導者として指揮を執っていた。

 

「次の基地を記した地図を後で渡す。補給がある程度片付いたら、私の部屋に来るように」

「はっ!」

 

王国の補給基地は現地警察に摘発されたので、この補給部隊は新たに設定された場所に移動することになる。その地図をヘイルダム等上層部はすでに用意していた。

 

「これからは接戦となるやも知れぬ。その時はよろしく頼んだぞ」

「はっ!」

 

補給物資を見ながら呟いたヘイルダムに補給将校は綺麗な礼で返していた。

 

 

 

その後、水上機部隊からの補給を終え。少しの休憩を部下に伝えた時に補給将校はヘイルダム用に割り当てられた一等客室に向かった。

元が客船で、それを武装化し。移動司令部として改造したこの客船の居住性はとても良く、燃料補給は港から油槽船がやって来るので問題無し。

 

本拠地が海の上になるなどと最初に考えた人は中々にイカれた思想を持っている事だろう。

元は共和国軍の敗残兵や脱走兵が集まって編成された我が部隊は、今や共和国妥当を掲げて共和国内各地で行動を起こし、同志も多く集まっていた。

『悪の帝国に屈した現在の共和国を打倒し、真の意味での平等性をもたらす。その為にいかなる努力を惜しまない』と言うのが抵抗軍の掲げるスローガンだった。

 

コンコン「モーンド・ボゥ中佐であります」

『入りたまえ』

 

扉をノックして中に入ると、そこではヘイルダムは先ほど搬入された物資の確認を行なっており。片手には紅茶が用意されていた。

 

「まぁ、掛けたまえ」

「はっ」

 

そしてモーンドは言われて部屋の彼と反対の席に座ると。彼は紅茶を秘一口飲んだ後にモーンドと軽く話す。

 

「取り敢えず、軽く聞きたいことがあるんだ」

「はっ、何でありましょう?」

 

年下だが、とても有能であり。よく慕われている彼の言葉に、モーンドはまるで何かに取り憑かれたように彼の聞いた問いに答えた。

 

「あの倉庫に残した紙は、どうした?」

「閣下に言われた通り、あの場所に残して去りました」

 

素直に答えると、ヘイルダムも軽く頷いた。

 

「分かった……」

 

そしてその報告を聞いた彼は徐に地図を手渡すと、モーンドは赤い印の打たれた場所を見た。

 

「それが今度の君たちの所属だ。第二〇三補給部隊は明朝〇時を持って、半壊した第二〇六補給部隊と合流。当該地にて新たな補給任務にあたってくれ」

「はっ!」

 

少し前に、抵抗軍内部のスパイの炙り出しと。帝国軍と警察との戦闘で補給部隊や戦闘員に若干の損害を出した抵抗軍は部隊編成の見直しが行われ、その作業に上層部は大忙しだったと聞いていた。

 

「閣下」

「何だね?」

 

そして去り際にヘイルダムにその手紙のことで聞いた。

 

「なぜあの白紙の手紙を態々あの様な場所に?」

「……」

 

その問いにヘイルダムは答えることなく手を組んで顔の前に置いた。

 

「何、単なる願掛けと思ってくれ」

「…失礼します」

 

彼の言葉に納得したモーンドは副司令室を後にしていた。

 

 

 

そして補給を終え、離水して行く編隊を見ながら甲板に上がったヘイルダムはそこで柵に手を乗せる。

 

「……あれだけヒントを与えたんだ。これで動かなければ、君達は間抜けだな」

 

誰もいない虚空に向かって呟いた彼に一人の軍人が近づいた。

 

「副司令」

「君か……準備は?」

 

その姿を見た時、ヘイルダムは一瞬固まるも。そもそも日本語で溢していたのでバレていないかと軽く安堵した。

 

「はっ、まもなく完了いたします」

 

その軍人は青灰色に片手に銃剣付きの自動小銃を構えながら答えた。

 

「よし、くれぐれも傷をつけないで連れて来い」

「分かっております」

「彼等はこの計画に重要な参考人だ。頼むぞ」

「はっ!」

 

そしてその軍人が敬礼をすると最後に発艦するロワール130に、同様の装備を持つ複数の兵士たちが乗り込むと砲塔上のカタパルトから発進していった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その時、帝国のとある深い森の中。そこにひっそりと隠れる様に存在している帝国魔導研究局。

日々悲鳴や怒号の飛び交う阿鼻叫喚の地獄のその場所で小山蓮子もとい、カセリーヌ・モンローは半分絶句していた。

 

「うわぁ……」

 

そこでは泥の様に眠る同室のオードリー・モレノが寝言で譫言を連ねる。

 

「も、もういやぁ……」

 

いったいどんなことをさせられたのかはここ数日は彼女も巻き込まれたので分かるが、とにかく魔力を持っていかれる実験ばかりだ。

主な内容は人工魔石や感応石の精製の研究。今まで専用の鉱山を必要とする魔石と感応石、先の戦争もそれぞれの鉱山を巡っての争いだった。

 

『さぁさぁ!今日も張り切っていこうか!!』

 

ここの所長であり、諸悪の権化であるエレニカ・ネーデルハイト。彼女は精神的に\(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ!状態の転移者達に容赦無い言葉を投げかける。

ただ魔力が吸われるだけの日々で、それ以外の生活に不満はないが。厄介なのは魔力切れを起こす点なのだ。ほぼ毎日研究所に駆り出されては黙々と魔力切れになるまで培養装置に手を翳す日々。

 

「お、おのれ小山……!!」

 

事情を唯一知っている彼女が恨み言の一つでも言いたい理由がよく分かる。

 

「同じ苦しみを味わえ…!!」

 

そんな言葉と共に彼女はほぼ毎日実験に付き合わされていた。

体力に自信のあるはずの男子…この歳だと男性か、が覇○色の覇気でも食らったかの様に気絶して倒れているのでそれはそれは酷い物だった。

 

「あぁ、やばっ。頭痛くなって来た」

 

魔力切れ用の錠剤を口に含みながら小山もベットに滑り込む。

ここでの生活は、実験を除けば快適な物であり。許可制だが森の近くにある街に行く事もでき、そこにある娼館に憂さ晴らしも含めて走る男もよく見かけていた。そしてそう言う奴らの帰りはだいたい朝帰りというおまけ付き、後たまに腰痛めてる奴もいる。

 

「あぁ、羨ましい……」

 

今頃帝都で悠々自適な生活でもしているのかと少し妬きながら小山は意識を手放していた。

 

 

 

 

 

「いやはや、運が良かった良かった」

 

そんな転移者達に容赦無い阿鼻叫喚の地獄を経験させている悪の張本人は非常に良い笑顔で人工感応石の培養装置に手を当てる。

 

「流石に人数が違うだけ、ディルク中佐とは大違いだな」

 

何せ二九人の転移者達だ、いくら膨大魔力量を有するディルクと言えど数の暴力に勝るものはなかった。

転移者達の保護と言う名の下、自分の実験に協力させる事を司令部に許可させた彼女の努力もそうだが、それを許可した司令部も司令部である。

 

「所長、今日の研究結果が出ましたよ」

「おう、試作品の感応石は早速我々で試すぞ」

「「「はいっ!」」」

 

そこで職員達は目を輝かせながらできた感応石を簡易的な魔導具に入れた。そして試作品の人工感応石を起動するとその間にエレニカは後ろの格納庫の方を振り向いた。

 

「さて、こちらもそろそろ完成だな」

 

そしてその格納庫には先の戦闘で盛大に破損した三七式魔導演算機の改装版が置かれていた。




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