戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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一四〇話

時は少し戻り、ディルクが帰還すると言う報を受けてエレニカ達は彼のために用意した三七式魔導演算機の調整を行うために機材を保管している格納庫に移動していた。

 

「ふふふっ、これで彼に最新鋭が引き渡せるぞ…!!」

 

鼻息を荒くし、やや興奮しているエレニカはそこで目の前の修復を終え、その際に改修を施した三七式魔導演算機をみる。

どうせ数十年で廃れてしまう類の兵器、であるならばその成功例を示した彼には常に最新鋭を渡す事で自分の最大限できる技術を贈る。

 

それが自分の夢の代弁者となってくれた彼への、せめてもの礼だった。

 

「よぉし!彼が到着したらすぐに準備にかかるぞ!」

「「「「了解っ!」」」」

 

彼女のかけ声に職員は頷く。

目下、人口魔石と人口感応石の研究のために全力を注いでいる今の魔導研究局。しかし並行して魔導演算機の民生用の低グレード版の開発も行っており、それは完成形に近づいていた。

 

そして二ヶ月ほどの期間、()()()()()()()転移者達に実験協力を()()したことで早々に民生用魔導演算機の開発は終了。以降は民生用魔導演算機のパテントを民間魔導具製造メーカーに売る事で利益を得る事になる。

 

一つの研究を早々に終わらせたことで、エレニカ達研究職員はそこでリソースを人工魔石・人工感応石の研究に振っていた。

 

「改修には金をかけたんだ。しっかり働いてもらわんとな」

 

そう言い、エレニカの自信作となったその魔導演算機を見た時。

 

「ん?」

 

ふと彼女は、設置していた固定型の魔導具の反応が消えたことを瞬時に把握した。

どうしたのかとその異変に疑問に思った瞬間、

 

「敵襲〜!!」

 

門番をしていた憲兵の怒声が聞こえた途端、研究所に衝撃が走った。

 

「な、何だっ?!」

 

すると格納庫の窓の外から灯りが見え、その正体をすぐにエレニカは察知した。

 

「くそっ!誰かの襲撃だ!警報!!」

 

直後、施設にあった警報装置のボタンを叩くと、施設全体にサイレンが鳴り響く。

 

「っ!!」

「何だっ!」

 

それは少し離れていた宿舎でも感じ取っており、爆炎が見えた直後に警報が鳴り出した。

 

「襲撃だっ!」

「敵襲っ!!」

 

すると控えていた憲兵が飛び出て銃を片手に外に出る。

 

「お前達は動くな!」

 

すると最後に出て行く憲兵がそう言うと、それを見ていたカセリーヌが言う。

 

「ならせめて自衛の手段をください」

 

そう言う強い眼差しに憲兵は軽く舌打ちをした。

 

「ちっ…ここに余った武器庫がある。悪いがそれで戦っとけ!」

 

戦力的にこれほどの攻撃ができる部隊では、護衛程度の憲兵では対処できないのは目に見えてわかっていた。

なので憲兵も、戦闘経験のある彼らに武器を渡すしかないと判断していた。

 

「了解しました」

 

そこでカセリーヌは敬礼すると、憲兵の姿はすでになかった。

 

「みんな武器を取れ!急げ!!」

 

そこで横田が叫ぶと、一斉に転移者達は武器庫に入ってそれぞれ武器を持ち出す。

 

「チッ、やっぱ旧式しかないか…」

 

厚木はそこで見た旧式の半自動小銃(Gew43)短機関銃(MP28)を見て軽く毒吐くも、

 

「連射武器があるだけましよ」

 

そう言い半自動小銃(Gew43)を手に取る立川はそのまま時折爆炎が見える研究所の敷地を見る。

 

「チッ、来たわ!」

 

そこで敷地に突入した数台のトラックや、そこから降りてくる歩兵を見る。

 

「迎撃するわよ!」

 

そこで三十名ばかりの転移者達は武装した状態で窓を叩き割って引き金を引いた。

 

ッ!ッ!ッ!ッ!ッ!ッ!

 

一斉に響いた銃声に前進していた歩兵達は数名が倒れると、

 

「あそこだ!窓を撃て!!」

 

指揮官を担当していたモーンド・ボゥは宿舎に向けて発砲を行うが、

 

「っ!射撃待て!」

 

慌てて射撃をやめさせると、すぐに叫ぶ。

 

「撃てっ!」

 

すると直後に待機していた部隊が81mm迫撃砲(Brandt mle 27/31)を発射すると空中で弾けて煙幕が周辺を包んだ。

 

「ちっ…」

 

白煙弾を発射され、視界を奪われて軽く舌打ちをする立山はそこで格納庫に仕舞われているMボートを見る。

おそらくすでに警報が出されているので周辺に駐屯している陸軍部隊が到着するまで二十分ほど、それまで持ち堪えれれば良い。

 

「車出すわよ!」

 

すると横にいた舞鶴と築城が驚いた声を出した。

 

「えっ?!まじっ?」

「鍵ないけど!?」

 

格納庫にあるMボートは改修作業を行うために持っていた鍵を全て回収されており、エンジンをかけるためには鍵を探す必要があった。

すると立川は笑う。

 

「何のために格納庫を見てきたと思ってんの?」

 

そう言い彼女は障壁魔法展開の練習や実験の協力をしているときに一瞥して確認していた格納庫と、そこで置かれていた鍵の場所を思い返す。

 

「場所は入り口にまとめて置いてあるわ」

「えっ?」

「マジか、見てたの?」

「すげっ」

 

そんな彼女に感心する聞いていた転移者達。

 

「分かったら行くよ」

「えぇ」

「分かった」

 

そこで彼らは頷くと、煙幕で覆われた下の敷地を見ながら宿舎を走る。

 

「君たち!」

 

すると階段下で少々怪我を負った研究員が降りてきた小山達に行った。

 

「すぐに、格納庫に出てくれ…準備は、やっておいた」

「お、おいっ!」

 

するとその研究員は疲れた様子で壁にへたり込むと、咄嗟に大湊が駆け寄った。するのその男は、

 

「鍵だ。持ってけ、異世界人」

 

そう言って彼は持っていた五つの鍵を手に握ると、そこでカセリーヌが近づいて治癒魔法をかけた。

 

「ふぅ…」

 

手慣れた様子ですぐに治療を終えると、その研究員はカセリーヌに言う。

 

「上手いな…」

「そりゃ慣れていますから」

 

彼女は端的に返すと、研究員の持っていた鍵を受け取った。

 

「ありがとうございます」

「何、俺たちは戦えんからな」

 

そう言って彼は軽く笑みを見せると、小山達はその意思を感じ取るとすぐに行動に移す。

 

「格納庫まで行くわよ!」

 

そして治癒魔法を使われたことで疲労が溜まって眠りについた研究者を横目に彼らは宿舎を出て格納庫に向かう。

中にあるMボートの数は七台。一台は予備目的で、残り六台は改修作業をすでに終えていた。

 

「…」

 

それぞれの車長に鍵を渡し、煙幕の白い煙で包まれた研究所。

宿舎の扉を開け、その手に銃を持った転移者達は小山を先頭に一斉に走り出す。

 

「走って!」

 

そして格納庫に向かうと、最後尾を走っていた立山はそこで白煙の中から聞こえた飛び出した影を見た。

 

「っ…!!」

 

反射的に持っていた銃を盾に受け止める。

 

「敵っ…!?」

 

しかし直後、声を上げかける前に前の数人も同じ影が飛び出すと同様に持っていたリボルバー拳銃(Mle1892)の引き金を弾くと、気絶弾が発射された。

 

「立川っ!!」

 

それを微かに耳にしていた小山は軽く舌打ちをするも、格納庫の扉を開ける。

 

「小山、どうした?」

「…何でもない」

 

後ろにいた築城が聞くと、小山は誤魔化した。

脳内にはあらゆる想定が浮かんだが、ここでそれを言うと直ちに戦闘行動に歪みが生じ、共倒れになる可能性があった。

 

「急いで乗って!」

「シャフト回せ!!」

 

格納庫に入った後は置いてあったクランクシャフトを手に取り、車両後方に差し込んで二人がかりで回転させる。

 

ッーッー!

 

そして手慣れたエンジンの初動操作を行い、回転数を上げたところで点火プラグを指した。

 

ブォンッ!

 

そしてエンジンが掛かり、車両全体が振動を始めると車両にクランクシャフトを回していた装填手と無線手が乗り込む。

 

「出して!」

「りょ、了解っ!!」

 

小山はそこで的確に指示を出す。操縦手の三沢はクラッチを操作して前進を始める。

 

「主砲発射用意!キャニスター弾!」

「キャニスター弾了解!」

「仰角下げ!至近距離よ!」

 

そして前進を始めるMボート。他の四両もエンジンを掛けて乗り込む。

 

「(やっぱり…)」

 

キャノピーから顔を出していたカセリーヌはそこで敵の思惑に納得する。

 

「機銃、出た瞬間に撃てるようにして」

「了解です」

 

そこで無線手の小牧は頷くと、自分の前にある車載機銃の装填をする。

そしてそのまま発進をすると、勢い良くMボートは格納庫のシャッターを破って外に飛び出す。

 

「発射!」

 

ッ!

 

そして飛び出した直後に発射された88mmの散弾は目の前に居た歩兵隊をミンチにする。

 

『くそっ、何人襲って来たんだ!?』

 

新型無線機で厚木が愚痴る声が聞こえると、格納庫から飛び出したMボートはそのまま敷地を走りだした。

 

 

 

その時、襲撃をした抵抗軍部隊長は、数名の歩兵と彼らに担がれて気絶している数名の立川含めた転移者達を遺体袋に入れるとそのまま手早くトラックに乗せた。

 

「よしっ、出せっ!」

「はっ!」

 

そして部隊長と共に転移者を乗せたトラックは走り出していった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ッ!ッ!

 

その時、かつて滑走路があった場所では五両のMボートがキャニスター弾を発射し、展開していた歩兵部隊を発射された無数の巨大な散弾によって引き裂く。

 

「「「ーーーーっ!!」」」

 

声にならない悲鳴をあげて一掃される歩兵部隊。

それを前に砲手を担当していた築城が少し表情を悪くした。

 

「ちっ…!!」

 

車長の前橋は軽く舌打ちをしながらキャノピーから顔を出して、備え付けの汎用機関銃(MG42)の引き金を引くと、毎分一二〇〇発の銃弾が襲撃してきた歩兵部隊が飛び出した所を蜂の巣にする。

 

「撃て撃て!!」

「くそっ!取りつかれる!」

 

視線の先では燃えているトラックが数台、濛々と煙が上がる研究所はかつての静寂は消えていた。

 

「ちぃっ…!」

 

そこで近づいてくる抵抗軍歩兵を前に、小山は機関拳銃(モーゼル・シュネルフォイヤー)を取り出して近づいた歩兵に引き金を弾く。

 

「うぎゃっ…!」

 

頭を撃ち抜いて一人倒すと、また別の歩兵が登ってきた。

 

「不味いっ…!!」

 

小山は死を覚悟した時、

 

ドゴーンッ!!

 

自分達が飛び出た格納庫とは反対の格納庫の屋根が突き破られると、深夜の空に上がった一つの影が持っていた汎用機関銃(MG42)の引き金を発射し、Mボート近くに展開して来た歩兵部隊を射撃する。

 

「何だあれはっ!?」

 

一人の抵抗軍歩兵が驚愕し、反射的に持っていた半自動小銃(MAS-49)の引き金を弾く。

 

ッッ!ッ!ッ!ッ!

 

そして発射された小銃弾だが、その人影は持っていた半自動散弾銃(ブローニング・オート5)を持って発射すると、

 

ドドドドンッ!!「「「「ギャァァァァアッ!!」」」」

 

地面一帯に無数の小爆発が広がり、迫撃砲やトラックを吹き飛ばした。

 

「あれは…」

「…」

 

一瞬で苦労していた歩兵部隊を掃討したその攻撃に小山は安堵した顔を浮かべてその人影を見ていた。




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