戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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十一章
一四五話


ッ!

 

一回引き金を引いた後、少し間を開けてから無数の小爆発が無数に空中に響き渡る。

 

「…凄い」

 

その光景に思わず発射した本人であるディルク・フォン・ゲーリッツは呟いてしまう。

発射したのは専用に開発された魔法兵用の12ゲージ散弾。

 

「威力はさすがだが…」

「費用が掛かりすぎです。これじゃあまともに使えんでしょうな」

 

散弾の小球は銀を用いており、とてもじゃないがこんなものを量産できるはずもない。特に先の戦争の影響で軍事費は大幅に引き下げをくらい、軍人は冷飯を食わされているのが現状だ。

だが抵抗軍と呼ばれる組織が帝国・共和国双方で暴れている現状での軍事費の削減は、市民の資産の安全の保障ができなくなっていた。

 

一部帝国の諸地域では独立の気運があるなど、少々不安な話もあり、ディルクとしては勘弁してくれと言うのが偽りのない本心だった。

 

「試験終了」

「…了解」

 

色付きガラスの眼鏡をつけてその爆発を見ていたディルクにエレニカが言うと、彼は散弾銃を片手にエレニカに近づく。

 

「恐ろしい威力ですね」

「ああ、元々計算で導かれていた予想だったが…」

 

そこで彼女はハリネズミのように機関銃の追加された魔導演算機を見てエレニカは考える。

 

「機関銃が流石にデカいわね」

「そりゃそうでしょう」

 

エレニカのぼやきにディルクは頷く。

何せ搭載したアームに搭載された汎用機関銃は二丁。予備弾薬も含めると重量は半端では無い。

 

「予備弾薬も入ってますからね」

 

そこでアームに格納される三〇〇発の弾帯入り弾薬箱を見る。

弾薬箱は予備を含めて四つ。つまり一人で一二〇〇発の小銃弾を保有する事が可能となる。

 

「少なくとも個人が持つ弾薬量では無い」

「まるで車載機銃だな」

 

エレニカも分かっているように笑ったので、内心ディルクはどつき回したくなった。

 

「大体、まだ研究所も復旧していないのにどうして実験をするんですか…」

 

そう言い、瓦礫がまだ散乱している魔導研究局を眺める。

この施設には現在、異世界人が宿舎にてまだ滞在している。無論、改修を終えたMボートも格納庫に留置されており、次の指令を待っていた。

 

「そりゃあできる事が限られているからな」

 

エレニカはそこで瓦礫ばかりと化した研究所を一望する。

 

「人工魔石の研究を進めたいのだが、生憎実験施設を丸ごと移転する事が決まってね」

「あっ、移動するんですね」

 

まあ無理もないだろう。元々小さな飛行場にこれだけパンパンに建物をごった煮で詰め込んだら。絶対道に迷って大惨事になる。

 

「ああ、国立研究機関に所属が変わることとなった」

「おぉ、出世したじゃ無いですか」

 

ディルクはエレニカの栄転に祝いの言葉を軽く述べると、彼女はそれがあまり嬉しくなさそうだった。

 

「面倒なことさ、おかげで私はこれから研究所所長だ」

「出世したじゃ無いですか」

 

ディルクはエレニカが不満な理由を察しつつもそれに気がついてないふりをする。するとそれに気がついているエレニカはディルクに向かって言う。

 

「馬鹿者、国立の所長に格上げだぞ?自由気ままな研究ができると思うか?」

「できるんじゃ無いんですかね」

 

ディルクは能天気にエレニカに返すと、彼女は言う。

 

「貴様、分かっていているだろう?」

「はて?何のことやら」

 

軽くとぼけたふりをすると、ディルクにエレニカは持っていたボードで軽くデコを叩いた。

 

「おのれペッツめ!私を出世して煽てればいいとでも思ったか…!?」

「ちょいちょい、元帥閣下に向かってなんてこと言うんですかいな」

 

ディルクはエレニカの暴論に少し苦笑しながら言う。

頼むから貴女はもう研究しない方が良いと思いますとは、自分の身の安全のために絶対に言えなかった。何故かって?それを言った瞬間に『ほうほう、ならば君に実験協力をさせてもらって総司令部に返さなければ実験は継続されると言うことだな?』と、とんでもねぇ事を言い出したかねないのだ。割とこれが冗談にならないので、迂闊な事を言うと自滅する羽目になるのだ。

 

「良いか?所長になると言うことは、それだけ国の予算も入るから人の目が入ると言うわけだ。どこに行ってもな」

「ええ」

 

ディルクは頷く。何せ国立機関だ。税金を使っているのだがら、国の発展につながる研究をしているか如何かを見るのかは当たり前だろう。

 

「つまりだ、私は誰かに見られている中で実験をせねばならんと言うことだ」

「ええ」

「その過程で私はしたい実験ができなくなってしまう。実験協力してもらえなくなる可能性だってあるんだ」

「あ、その自覚あったんですね」

 

直後、ディルクのケツが蹴飛ばされる。

 

「如何してくれるんだ!?おかげで(ピーー)とか(ピーー)とかの実験が出来なくなってしまったぞ!?」

「人類の倫理観を守るためにその実験はやめた方が良いに決まっているでしょうが!!」

 

だめだこの人、公然とこんな事を言ってしまうぞ。見てみなさいよ、エレニカが堂々と言ったせいでここに来たばかりの研究員がビビって震えた目で見ておりますぞ。

諜報の技を教えてもらった教師でもあるエレニカだが、ぶっちゃけそんな感謝がまるまると吹き飛ぶほど目の前の御仁にはやられっぱなしであった。少々ここら辺で痛い目を見ておいた方が良いだろう。

 

「お前か?私を所長に据え置いたのは」

「しらねぇっすよ、自分はそこまで関与できるわけないじゃないですか」

 

ディルクは否定をするが、他の研究員は疑っていた。なにせ情報参謀の養子だ。そう言うこともできるのでは?と、半ばいつも振り回されている研究者たちから縋られるように思われていた。

 

「それから一つ聞きたいのだが…」

「?」

 

そこでエレニカは今まで騒ぎ立てていた感情から切り替えてディルクに聞く。

 

「彼等は、これから如何なるのだね?」

「…あぁ、」

 

そこでディルクは異世界人が収容されている宿舎を見た。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「…」

 

統合作戦本部の一室、陸軍元帥の執務室でペッツは数枚の資料をペラペラとめくって確認を行う。

 

「抵抗軍の襲撃回数は着々と増えております」

 

報告に来たのは警察から出向してきた人物だ。

普段は帝国内の治安維持を務める彼等であるが、重武装で襲撃をしてくる抵抗軍に対し、自分たちの部隊の訓練が終わるまで軍部に頭を下げに来ていたのだ。

 

軍は外、警察は内。

 

帝国の公的武装組織はそう棲み分けがなされている。それぞれが専門職を強めるためにお互いの業務には干渉しないと言うのが長年の伝統であった。

 

「其方の部隊は如何なっているのだ?」

 

ペッツは出向してきた警察に聞く。

するとその警官は少し言いにくそうにして答える。

 

「はい…お恥ずかしながら抵抗軍の武装は分厚く。また彼等のテロ行為は帝国全土に広がっており…」

 

しかし東西戦争後に抵抗軍というテロ組織が出来て以降、帝国と共和国両国の社会不安を煽っており、そのテロ行為の件数の増加と、彼等のやり方に警察としてもより強力な対テロ対応部隊の訓練が急務となった。

そこで警察は軍に協力を依頼。テロ対応部隊の訓練と武器貸与、それまでの部隊派遣を要請していた。逆に言うとそうでもしないと彼等の勢いを抑えることはできなかった。

 

「抑えきれていないと?」

「はい…」

 

そこで軽くペッツは吐息。まだ正直に非を認めて協力のために頭を下げにきた時点でマシだなとペッツは今の内務省の国家保安委員会に考える。

ここでもし保安局の連中が口を出してきていたらもっと面倒なこととなっていたに違いない。だが、かの組織は現在抵抗軍の数々のテロ行為を防げていない事態に内部で責任の押し付け合いとなっており、半ば内紛状態だった。

散々彼等には煮湯を飲まされ続けてきた身としてはザマァないと思っていた。

しかし協力体制をとっている警察とはこれからも良い関係を保ちたかった。

 

「分かった。こちらからも武器や人員を供給しよう」

「ありがとうございます」

 

そこで一例をすると、連絡員は部屋を出ていく。

 

「…なりふり構わずか」

 

ペッツは連絡員が居なくなった後、挙げられてきた報告書を読む。

最近の抵抗軍は基本的に爆弾によるテロを行っており、その影響で多くの市民に死傷者が出ていた。

 

「奴ら目…」

 

ペッツは歯噛みをしながら吸っていた葉巻をへし折りそうになる。

彼等は異世界人五名の誘拐後、活発に行動を起こすようになっていた。

 

ーーまるで人を殺すことが目的のように。

 

新聞はこれを抵抗軍の犯行と糾弾し、それを防げていない帝国に不満と政府の怠慢であるという記事を書く。

抵抗軍の生まれを記して『共和国は倒すべきであった』『下手に生き残らせるべきではなかった』と書く。現在も国会議事堂の前では抵抗軍撃滅のための共和国進駐を訴えるデモが行われている。

 

共和国では『帝国が解き放った手先である』『抵抗軍の使う爆弾は帝国製』であると記し、共和国大統領府の前では帝国との終戦条約の破棄を求めるデモが行われていた。

 

タチの悪い事に、抵抗軍は共和国では帝国製、帝国では共和国製の爆弾を使用してテロを行っていた。

まだ戦後すぐの期間であり、国民感情は双方に良くない。

また終戦条約の結果に不満があるのもまた事実で、共和国から領土を獲得したが、賠償金がなかったことで首都では一時暴動が起こった。俗に言う『レルリン焼き討ち事件』である。

あの時は警察だけで対応できたが、抵抗軍はそういかなかった。

 

「馬鹿な事を…」

 

ペッツは戦争を訴えかけようとする新聞に腹を立てて暖炉の焚き付けにしたくなる。

 

「…仕方ない」

 

軍事費を減らされ、国民は抵抗軍撲滅のための対応を迫る。

 

「ヴァルトーに頭を下げるしかないか…」

 

現在大幅な軍事費の削減を行い、徴兵部隊からの撤退を終えて粛軍による希望者退役を行なっている帝国軍。

ペッツはそれでも抵抗軍にやられっぱなしでは帝国の基盤の崩壊の恐れがあるとして危機感を持っていた。無論、帝国の民主化クーデターを画策している身であるが、それ以前に国がなくなっては意味がないと考え、そこで同志に電話をかける。

 

「至急、財務省に繋いでくれ」

「畏まりました」

 

ペッツはそこで交換手に伝えると、少しして財務省に連絡が付いた。




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