戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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一六一話

ブリーフィングを終え、全員が短機関銃や円匙などで武装をすると、その最中に盤城が話しかけてきた。

 

「南部、お前がこの作戦で一番危険じゃ無いのか?」

 

やや不安げに彼は南部を見る。この作戦、最初に敵を誘引する先陣を務めるのが彼の仕事であった。

 

「ああ、だが最初に破壊できる箇所は全て破壊する。これは魔力量が豊富な俺が適任だと思わんか?」

「それはそうだが…」

 

今回、彼は魔道演算機も持ち込んでおり、どこで仕入れたのだろうかと彼らを困惑させていた。

大幅に改造をされたその魔導演算機は、伸縮式のアームに二つの汎用機関銃(MG42)を装備しており、弾帯が三〇〇発入る弾薬箱もフル充填されていた。なお、それを見た小樽が『バイ○ラン・カスタム見たいじゃねえ?』と言っていた。すまん、ロボット系アニメは未履修だからわからん。

 

「一応、魚雷艇にも同じ弾を使う機関砲を装備している。それを使って破壊をしてくれてもいいぞ」

「ああ、徹底的に破壊してやるさ」

 

魚雷艇後方に取り付けられた四連装20mm機関砲(2cm Flakvierling38)の射手を務める彼は余裕たっぷりで言った。魔法によって本来は七名必要な運用要員が、装填手含めて三人でできると言うのはとても良い改良がされていた。

 

「俺はとにかく客船にある大砲を全て破壊する。その為に魚雷艇に積んだ機関砲と同じ弾倉が使える対戦車ライフルを頼んだんだ」

 

そう言い、彼は船の運行をできなくさせるために空を飛ぶと言った。最も危険な役回りであるが、彼でなければできない仕事でもあった。

 

「安心しろ。俺はこれでもエース呼ばわりだったんだからな」

「…ああ、気をつけろよ?」

 

余裕げな彼の対応を見て、盤城は少し安堵した様子で自分の荷物を持って魚雷艇に乗り込んでいく。

魚雷艇中央には機関砲の代わりに自爆用に爆薬を積載しており、起爆した暁には船の竜骨すらへし折る威力があると言われていた。

 

「間違って落とされないでしょうね?」

「問題ない。基本的に船の上を飛ぶだけだからな。エース舐めんな?」

 

根室に聞かれ、彼は手をひらひらとさせて言うと、彼女はそれでも不安を感じつつも、武器を持って魚雷艇の前に集まる。

 

「皆んな。最後に一杯どうだ?」

 

そこでディルクは最後に買ってきたワインボトルを持ち出すと、彼らは一旦顔を見合わせつつも、全員が近づいて南部はコルクを抜いた。

グラスはどこにあるかと高雄が見回したが、

 

「生憎、グラスは無いんだ」

 

その様子で理解して南部は言うと、全員にラッパ飲みをしてくれと言った。

 

「じゃあ頂き」

「早ぇよ」

 

すると早速、長野がボトルを受け取ってボトルを傾けると、口をつけた。

 

「おいおい」

「汚ねえな」

 

彼女の飲み方に青島や土浦が苦笑すると、長野は言う。

 

「あらやだ、うちらもっと汚いものに触れるのよ?今更じゃない」

「…まあそうだけどよ」

「しゃあねえな」

 

そんな彼女に全員は苦笑しながらもワインを飲んで横に渡していく。

 

「…」

 

三沢も全員が口をつけたワインを前に若干戸惑っていたが、意を決してボトルを傾けた。

若干口元から零しつつも、ワインを一口飲み終えて隣に渡した。そして最後の小山、南部と行ってボトルを空にすると、彼はそのボトルを海に投げ捨てた。

 

「うしっ」

「やるぞ」

「ええ、行きましょう?」

 

彼らはそこで忘れ物がないかのチェックを行う。

 

「忘れ物は?」

「全員武器を持ったわよ?」

「祝勝祝いのシャンパンでも買うか?」

「向こうにあんだろ」

 

全員が私服の上に弾倉や武器を下ろしており、一瞬民兵のようになっている彼らは、事前に決められた通りに機関室や銃座、魚雷発射要員などの分担を行なって乗り込む。

 

「しっかしMボートじゃねえのが残念だぜ」

「あんな便利なものを市販されていると思うなよ?」

「分かってるよ」

 

南部は大泊に言うと、彼は苦笑して返した。

 

「行けるか?」

「ああ、ちょっと待ってろ」

 

そして操舵を担当する石垣はエンジンを入れると、魚雷艇用の大型ディーゼルエンジンは一発で燃料に点火して起動する。

 

「よし、行けるぞ」

「出すぞ」

 

南部はそこでもやい縄を解いてゆっくりと進み出す魚雷艇に飛び乗って、全員が乗り込んだのを確認して魚雷艇は出発していく。時間は夜であるため、暗視魔法を使っての航行だ。

 

「流石だな」

「お前に褒められると背中が痒いよ」

「なんで事言いやがる」

 

そう言い、彼は夜の海を見る。

 

「だが、」

 

そして彼はここまで自分たちを導いた男を見る。

 

「お前の誠実さは認めるよ」

 

彼はそう言い、ここまで準備を行ったクラスメイトに信用をしていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その頃、ヌヴォ・モーンドゥの船内で立川は通過する抵抗軍将兵に一礼をした。

 

「ふむ…」

「あれが副司令のお気に入りか」

 

小声で話しているが、まるっきり聞こえているので、彼女は内心で顔を顰めた。下衆な連中め…。

現在、抵抗軍の司令部として活用されているこの貨客船だが、中には二個大隊規模の兵員が乗り込んでいた。元々は三〇〇〇名以上の乗客を乗せて西大洋を横断可能であったというこの客船だが、兵員や武装などを積み込んだ影響で客室部分は狭くなって、部屋もだいぶ減っていた。

元々一等船室であった場所は将官や一部佐官が使用し、二等船室は佐官から尉官、三等船室は下士官兵などが使用していた。

 

「…風紀が乱れているわね」

 

彼女は通り過ぎた将校がいなくなったあたりで呟くと、資料を持って一等船室改め副司令官公室に入る。

 

「失礼します」

「ああ、ご苦労だったね」

 

部屋の中では小野寺が笑みを見せて出迎えた。

 

「どうだったかな?」

「さあ?相変わらず厳重。私が命令を届けようとしても、中には入れさせてもらえない様子だったわよ」

 

彼女はそう言い、元は食堂であったという第一船倉の状況を伝える。

 

「やはり通しては貰えないか」

「ええ、少なくとも正規の方法で入るのは無理でしょうね」

「ふむ…」

 

そこで彼は少し考える。司令官しか入ることを許されない場所だが、彼女を使いに出して何度も調査をさせていた。しかし結果は全て同じで、彼女は一度だけ命令書を渡しにいく際に部屋の中身を確認できたことがあった。

 

「中は二重構造で、コンピューターが接続されていたわね」

「ああ、中で何かの研究を行っていると言うのは想像ができるが…」

 

そう言い、彼は再び疑惑の部屋について考えだしていると、立川はそこで質問をした。

 

「ねえ、この前保護をしたって言う立川達。どうやって見つけたの?」

「脱走をした報告を受けて部下を向かわせた」

「…その報告をしたのは?」

 

その問いに彼は答える。

 

「司令部だ。将軍からだと言う」

「…どうして船内にこもってばかりの彼が命令を、それも的確に出せるの?」

「ああ、僕も前々から怪しいと思っているが、いまだに結論は出せていないよ」

「…危険じゃないの?」

「泳がしているって?まあどうだろうね。彼ならその可能性も捨てきれない。あの城の出来事だって、僕は驚いたんだ」

 

彼はそう言い、南部と対決をしたあの共和国での城の話をする。

 

「あの時、僕は将軍が来るとは聞いていなかった。おまけに彼は燃える地下室の中を突然現れた」

「突然?」

「ああ、彼の死角から出ていたから僕も見えなかったが、彼はサーベルを突き立てていたよ」

「…」

 

その話に立川は驚き、そして疑問に思った。小野寺は魔力伝導率が圧倒的であり、優れた魔力効率を誇っている。そんな彼は魔力量が少ない代わりに、副作用的に魔力波などの敏感であった。そんな彼が気が付かないことなどあり得るのだろうかと首を傾げた。

 

「いずれにせよ、彼には注意をしなければならない。特に居場所がわからない今ではね」

 

彼はそう言うと、部屋に用意されたワインを開ける。

 

「どうだ?」

「…はぁ、遠慮するわ」

「釣れないなぁ」

 

小野寺はほろ苦く笑うと、自分で開けたボトルをグラスに注ぎ入れる。

 

「今、築城君たちが僕たちの元に帰ってきた。これなら」

「その子たち、帰ってきて早々に司令官に呼び出されていたわよ?」

「ああ、故に彼女たちは信用できない」

「…」

 

小野寺はそう言うと、立川は少し目線を鋭くした。

確かに、保護をした後にジュール・ファブールに面会を行っていたが、帰ってきた彼女たちに小野寺は全く信用していなかった。

 

「じゃあどうして匿わなかったのよ」

「流石にあそこまで堂々とされたら、僕はどうしようもできないんだよ」

 

テロ組織を率いる副司令官として、彼は上司の命令には逆らうわけにはいかないと言った。

 

「結局あなたたちは何を目的に活動をしているのやら」

「最近は僕でも分からなくなってきそうだ。共和国でも帝国でも、部下は私の知らない作戦を結構しているときたらもうね」

 

ため息をついて彼は言うと、グラスを傾ける。

 

「…手綱しっかり握りなさいよ」

「僕の知らない組織が勝手に作られているんだ。もうどうしようもない」

 

小野寺はそう言うと部屋がノックをされて、その音に小野寺がワインを一気に飲んでグラスを片付け、立川は秘書モードに頭を切り替えてドアを開けた。

 

「ああ、補給かな?」

「はい。間も無く補給艦が到着しますので、補給作業を行う報告に参りました」

 

補給将校はそこで敬礼をして今回の補給目録を渡しにくる。そして目録を受け取った小野寺は頷くと、その一覧を見てサインを行う。

 

「これを渡してくれ」

「はっ、失礼しました」

 

そして補給将校は再度敬礼をして部屋を後にすると、彼はそこで腕を伸ばして大きく息をついた。

 

「はぁ、これでしばらくは人が来ないよ」

「お休みになられますか?」

「ああ、そうするよ」

 

そこで彼は疲れたように眉間を軽く揉んで立ち上がる。そしてそのまま資質につながるドアを開けると、彼は立川を見つめた。

 

「…何か?」

「いや、君も一緒にどうかなと思って。最近は起きているところしか見てないから、疲れてるんじゃないかなって思って」

「結構です」

 

立川は即答をすると、その返事に小野寺は心底気を落とした様子であったので、彼女はため息をついた。

 

「…そうやって今度は私を海に突き飛ばすんですか?」

「え?いやいや、違うって!本当に!」

 

彼は慌てて弁明をするように混乱した様子で返すと、立川はそんな小野寺の反応を見て呆れたため息をついた。

この数ヶ月間、彼の秘書として働いていて分かった意外な事実があったのを、彼女は知っていた。

 

「はぁ…残った仕事があるので、その整理をする間だけですよ」

「助かるよ」

 

そう言って彼は嬉しそうに立川を私室に案内した。

 

 

ーー彼、一人で寝れなくなっていたのだ。

 

 

正確に言えば、一人で寝ることに恐怖を覚えていたと言うべきか。寝室に誰か信用にたる人物がいなければ満足に寝れた試しがなかったのだ。

 

「…」

 

彼の寝室は一等船室を改造しただけあって広く、十分なベッドの大きさがあった。それこそ二人で十分寝れるほどの大きさが。

その寝室の中で小野寺は瞼を下ろして薄暗いランプの灯りに照らされながら静かに寝息を立てていた。そしてその横で彼女は鉛筆で彼の明日の業務日程を書いていた。

眼鏡をつけて彼女は仕事を行う途中、静かに寝息を立てて熟睡している小野寺の顔を見た。

 

「…」

 

その顔は安心し切った顔をしており、自分に対して心を開いている様子であった。信用し切った様子で彼は、ここ最近の顔色も劇的に良くなっていた。まるで子供のように彼は眠っており、その様子を見て立川は少し難しい顔をした。

 

「…難しいわね。人間関係ってのは」

 

彼女はそこで眼鏡を外すと、灯を消して彼の眠っているベッドに入り込んだ。




第十一章『分水嶺』完

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