戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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(多分)最終章です。


第十二章
一六二話


ーー自分の主目的はどちらなのだろうか?

 

ふと、最近思うことがあった。

今、自分がしている行為というのはクラスメイトたちを地球に帰すことが目的となっているのではないか?

最初の頃、自分は無惨に殺された小隊の上官や他の兵士たちの報復を目的としていた筈なのに…。

 

 

 

 

 

「…」

 

洋上、背中に完全武装を施した魔導演算機を持って飛んでいるディルクは銅のマジック・ソナーを使って周辺を飛んでいた。

背中から水蒸気を吐き、重力魔法を展開して自由気ままに飛行を行う。その手には自動小銃が握られ、突然の接敵にも対応が可能であった。

 

「こっちか」

 

彼は地図をバインダーに挟みながら現在位置を確認しながら小野寺の魔力波を参考に移動をする。

 

「聞こえるか?バッシュ=ヴァール島まで移動してくれ」

 

そこで念話魔法で連絡をすると、島の港で停泊していた小山達の乗る魚雷艇が洋上を進み始める。三つのスクリューと、二五〇〇馬力の大出力のエンジンで構成されるこの高速魚雷艇は、最高速度八〇節を叩き出す。

操舵室周りは装甲化をされ、魚雷は満載の四本が積載されていた。艦首にある銃座には20mm機関砲が装備され、弾薬も満載に積み込んでいた。

 

『了解。すぐに向かうわ』

 

念話魔法で小山は答えると、魚雷艇は洋上を巡航速度で進む。最も船舶にとってエンジンを痛めない速度であり、最も効率の良い燃焼効率。それでも水雷艇という軍艦の中では軽量な船舶であるため、速度も中々に出る。

 

「ヒェ〜、これなら最大船速で突っ込んだらずぶ濡れじゃないか!」

 

操舵を担当する石垣はそう言ってすでに波に揺らされて海水がかかってくる状況に思わず叫ぶ。

 

「仕方ないでしょ。ここら辺は結構荒いみたいだし」

「内海じゃないから我慢しとけよ」

 

そんなことを言いながら洋上を進んでいると、艦首の銃座に上から魔導演算機を装備した南部が降りてきた。

 

「どう?」

「まだしばらくはかかりそうだ。燃料代を持ってきて正解だったよ」

 

銃座から船内に入ると、彼はそこで船室で休憩をした後根室に言う。一五名が乗り込んだこの魚雷艇は、本来の運用要員より少ない人数で航行していたので、部屋割りに余裕があった。その場所には魔導演算機や予備弾薬、食料が詰め込まれていた。

 

「まだ食料は余裕があるか」

「ええ、生鮮食品を先に使っているけどね」

「安心しろ。次の島で市場に出かけて買ってくる」

 

南部はそう言い、魔導演算機を片付けて船室を出る。

 

「どうだ?」

「まだまだ燃料には余裕があるぞ」

「ああ、分かった」

 

そこで軽く操舵をする石垣に確認を取ると、そのまま他の船室の様子を確認する。

 

「エンジンはどうだ?」

 

轟音が響く中で大声で聴くと、機関室担当の大刀洗が言う。

 

「大丈夫だ。まだコイツは元気だよ」

 

彼はそう言って元気に動いているディーゼルエンジンを見る。大出力のエンジンは問題なく稼働しており、彼等を目的地まで運んでいく。

 

「魚雷も問題ないか?」

「ええ、再装填のやり方も問題ない」

 

甲板に上がって聞くと、右舷側の魚雷担当の三沢は手をグッと握って頷いた。帝国の沿岸部から離れて一週間ほどが経過し、彼等は付近の諸島をマジック・ソナーを使いながら移動していた。

魚雷艇の中で南部は八つの船室を回って全員の様子を確認する。

 

「どうだった?」

「全員良さそうだ。まあ、流石に暫くは安心した航海ができるだろう」

 

一番後ろの船室で彼は小山と顔を合わせる。至る所に帝国語の注意書きやらが書かれており、明らかにこの魚雷艇が新品であったのが苦笑するポイントであった。何故こんなものをあの金額で用意してくれたのかは疑問であった。

 

「一応、私たちの預金は全部使っておいたわ」

「ああ、お陰で現金にはまだ余裕がある」

 

彼はそう言い、船室に用意された現ナマを見る。全て経理担当となった小山が握っており、出納帳を作って管理していた。

 

「次の島は比較的大きな島で、本土と橋で繋がっているほどだ。そこで食料と、一部売っていたら買いたいものがある」

「何を買うの?」

「まあ、現地に着いたらとりあえず探すさ」

 

軽く肩をすくめて彼は言うと、操舵室から島が近づいてきたと言う連絡を受けた。

 

 

 

 

到着をした島に、夜に浅瀬に近づいて南部の魔導演算機や小山の瞬間移動魔法で上陸を果たすと、彼等は買い出しに出かける。

 

「何を買うんだ?」

「ちょっとした安心材料さ」

 

小樽の質問に彼はそう答えると、街の住人にもはや慣れ親しんだ帝国語で聞いてその店の場所を聞いた。相変わらず上手く人を騙すよなコイツ、なんて内心で思いながら彼は目の前の南部茂という男の魚雷艇内での立ち位置をふと振り返る。

 

魚雷艇でも率先して誘導を行い、帰って来たらそのまま船内を回って他の面々の様子を伺ってくる。作戦でも最も危険な任務をする事を聞かされている為に、自分たちもそれなりの信頼を置いていた。

もし抵抗軍に寝返ったクラスメイトと出会しても、なるべく殺さないでほしいと言った事で彼の信用は信頼になり、今ではすっかり魚雷艇を取り仕切る立場であった。

 

そしてそんないつの間にか自分たちから絶大な信用をされていた南部は、ある店の前で立ち止まった。

 

「ミリタリーショップか?」

「ああ、軍の放出品を取り扱う業者だよ」

 

二人はそこで軍用品を取り扱う業者の戸を開けると、そこで彼は店内を物色し始める。中には大量に軍から放出をされた衣服や装備品が用意されていた。

 

「すみませーん」

 

そこで南部は店主を呼ぶと、そこで手に持った帝国軍の空挺部隊が使うシュターヘルムを取って幾つか聞いていた。

 

「これと同じものはどれくらいありますか?」

「あー、そうだな。最近装備品が一新されたからまだある筈だぞ」

「じゃあこれを一五個ほど」

「まいどあり」

 

そこで彼はいくらか余裕があった現金を使って他にも弾薬盒や共和国の戦闘服を買って行く。

 

「中に入った時用か?」

「ああ、思ったより小樽達が現金を残してくれたからな。ここで使っておくのさ」

 

そう言いながら全員分の衣服を買い終えると、そこで小樽は言う。

 

「逆にここくらいじゃねえと使い道ねえだろ」

 

彼はそう言い、完全にすっからかんになった自分のカードを見る。

彼等は南部から言われた通りに食料品や弾薬を買って行ったのだが、この世界にいることはもうないと分かっていたので、残っていた金を全て使い果たしていたのだ。幸いにも軍にいた頃に幾らかの金はあったので、食料品や弾薬、燃料などを購入して魚雷艇にこれでもかと積んでいた。

 

「まあな、お陰で助かったよ」

「みんなお前に賭けてるってことさ」

「いやはや、全くもってありがたいね。日本じゃあ考えられないぜ」

 

追加で購入した装備品を持って彼等は店を後にすると、彼は南部に聞いた。

 

「で?お前の作った魔導具はどうなのよ?」

「十分機能している。これから共和国側に向かえば、いずれ見えてくるだろう」

 

順調に近づいていると彼は言うと、飛び石のように島々を移動している彼等は西に向かっていた。

ディルクがどのような方法で魚雷艇や武器を手に入れたのかはもはや聞く必要はないが、彼は小野寺の魔力波を測定できる魔導具を使って着実に目的地に近づいていた。まさか誰もこんなチート級の道具で簡単に敵本拠地を割り当てるなど思わないだろう。

 

「どのくらいで着きそうだ?」

「三日もあれば見つかるだろうな」

 

彼はそう言うと、小樽と分担して購入した軍用品を人気のない海岸まで運んだ。

 

「帝国軍の追跡はないんだな」

「ああ、取り敢えずはな」

 

そしてその近くの森の中で隠れながら海を見ていると、彼等は今までディルクを監視していたはずの帝国軍の追跡が無いことに安堵していた。

 

「魔導レーダーにも引っかからないように出力を抑えて飛んでいるからかもしれん」

「あーね」

 

やや気の抜けた様子で彼は海を見ていると、背中からガサガサと音を立てて市場で新鮮な青果を購入して来た小山達が荷物を持って現れた。

 

「あら、もう帰ってたの?」

「ああ、必要なものを追加で買っておいたぞ」

 

そう言って彼はシュターヘルムを被ると、それを見て小山は苦笑した。

 

「別にそのヘルメットに防弾機能はないでしょ?」

「でも生身の顔で銃撃戦は怖いだろう?」

「それはそう」

 

そう言い、他にも新しい酸素缶と共に用意されたガスマスクや弾薬盒を見る。

 

「共和国の戦闘服じゃないの」

「ああ、青灰色だから一瞬は騙せると思ってな」

 

そこでさらに購入していた他の軍用品を見て苦笑した。

 

「騙し打ちでもするの?」

「じゃなかったら、どう考えても三〇〇〇人以上が乗り込める客船相手にできねえっての」

「やっぱいくら考えても無謀蛮勇だよな」

 

そこで土浦が苦笑気味にこの作戦を立てた南部を見る。

この作戦、言っては悪いが魚雷を放った後は行き当たりばったりな、作戦とも言えるか分からない計画であったからだ。

 

「だがやらなきゃ帰れねぇよ」

「分かってるってばよ」

 

土浦はそう言って答えると、太陽が沈んで夜になった頃に、浅瀬に近くの入江で隠れていた魚雷艇が出てくると、暗視魔法で魚雷艇の場所を把握する。

 

「蓮子」

「はいはい、ちょっとお待ち」

 

そこで南部は精霊石を使って魚雷艇まで飛ばされると、そこで魔導演算機を背負って購入した物品を船に運ぶ。

 

「え?またなんか買ったのか?」

「ヘルメットと戦闘服だ。流石に私服で戦闘をするわけにもいくまい」

「ああ、なるほど」

 

そこで南部は購入した戦闘服の調子を渡して確認させた。

 

「わあ、ピッタリ」

「よくこんなサイズ見つけられたわね」

 

そして船内で着替えると、男女別れて戦闘服を纏ってシュターヘルムを被った。

 

「どうしてこんなぴったりなものを用意できたですか?」

 

三沢は不思議がって南部を見ると、彼は平然と答えた。

 

「別に体型は見たらだいたいわかる。体に合う服じゃなかったら動きずらいだろう?」

「「「…」」」

 

その一言が他の面々、特に女性陣達を凍り付かせた。

 

「「「(ああ、やっぱコイツ変態だ)」」」

 

そして冷めた目で南部を見ていた。一歩間違えなくても女子からビンタされる発言をしたことに、少し南部に対する信用度が下がっていた。




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