戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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一六三話

魚雷艇を使って敵の本拠地に向かう南部達。彼等は南部の持つマジック・ソナーを頼りに移動を行っていた。

 

「…そろそろ近いな」

 

操舵室で南部が言うと、全員の顔が少し強張った。

ここにいる全員がシュターヘルムに黒い目出し帽、共和国の戦闘服を纏っていた。これから突撃を行う場所を前に彼等は、魔導演算機を背負って重武装な南部に聞く。

 

「どうする?一旦止まるか?」

「ああ、襲撃はできれば夜間に行いたい。補給作業中を狙うから、長いと十日ほど隠れるかもしれんぞ」

「長ぇなあ」

「俺たちが安全に乗り込むためだ。我慢しようぜ」

 

口々に操舵室で男達は笑うと、南部はそこで言う。

 

「相手は所詮民間船だ。軍艦みたいに十分な魚雷対策がされているとは思えん。二本起爆したら確実に傾くだろうな」

「四本当たったら?」

「真っ二つに折れるんじゃないか?」

 

この魚雷艇に搭載された四本の魚雷。操舵室にあるボタンを使ったら発射が可能であった。最初は深度をすこし深めにして航行させて船底に穴を開け、次に浅めに撃って侵入口を作り、浸水を起こさせるのが計画であった。

 

「魚雷の装填時間がネックだ。魔法を使ったら五分で次弾発射が可能なのが救いかな」

「無かったらどれくらいかかるんだ?」

「三〇分くらい」

「なっが」

「その間に蜂の巣だな」

 

ええ、全くもって魔法というのは便利だ。これほど魚雷装填に時間が掛からない素晴らしい船なのだから。

 

「だからこの再装填中に俺たちは狙われないようにしないといけないの」

「死ぬほど撃てばいいんだろ?」

「そう言うこと」

 

そう言うと、今回の操舵担当の青島が速度を落として魚雷艇を停める。

 

「じゃ、偵察行ってくるわ」

「ああ、気を付けろよ」

 

そこで甲板を小走りして魔導演算機で南部は簡単に空に上がると、そのまま彼は洋上を飛んでいく。

水蒸気を使う都合上、清潔な水を必要とするのがこの魔導演算機の欠点でもあった。一応、海水でもできるが推奨をしないのが実情だ。

 

「…」

 

マジック・ソナーを使用してできない場所を探ると、今までは大きく動いていた長針の感覚はすっかり短くなり、ほぼ一直線を指していた。ありがたいことに最近は魔法を使っていないのか、常に彼の魔力波は捕え続けていた。

 

「居た。見つけた」

 

そして上空五〇〇〇メートルほどに上昇をしてから彼は視界の遠くに影をみつけた。双眼鏡で確認をすると、そこでは一隻の大型船舶が、付近に船舶が横付けをされて行く景色が見えた。

 

「ヌヴォ・モーンドゥだな」

 

そこで確認を終えると、補給中であったことに思わずガッツポーズをしてからすぐに引き返す。この距離であれば、この出力であれば魔導演算機をレーダーは探知できないことは今までの経験で分かっていた。本当に移動しかできないほどの出力であったが、威力偵察でも無いのに魔力を撒き散らす必要は無かった。

そして魚雷艇に帰ると、そこで石垣達に言う。

 

「居た居た。しかも補給中と来た」

「マジか」

「運が向いてるぜ」

 

彼等はそこで思わず興奮して笑みが浮かんでしまうと、南部は言う。

 

「お前達は遠回りで回り込んでくれ。今日の夜に決行するぞ」

「了解」

「任せろ」

 

いよいよ結構と聞き、彼等は嬉しげに言って小山達にも言う。

 

「いよいよなのね」

「思ったより早い到着だね」

「おお…」

 

彼女達もやる気を漲らせて言うと、南部は改めて作戦を説明する。

 

「俺が補給艦のある方向から突撃を仕掛ける。爆発が見えたら反対から仕掛けてくれ」

「了解だ」

 

航海図を確認して石垣は頷くと、魚雷艇で陽が沈むまで間にできることをやって行く。

 

「今、俺が見た限りではこの場所に微速前進をしながら停泊している」

「んなの、測距やるくらいなら近づいて撃ちゃあ良いんだよ」

「お前マジか」

「確実に当てる。博打みたいな作戦ならこの方法が一番だよ」

 

大泊はそう言って魚雷発射管に積まれた魚雷を見る。既に調整は終えてボタンを押すだけであった。

 

「燃料は?」

「タンク一杯に入れ終わった」

「問題は圧搾空気だな。間に合うか?」

「コンプレッサーぶっ壊す勢いなら間に合うと思うぞ」

 

彼等はそう言って最終調整を済ませると、手に届く範囲に武器を置いていつでも中に入れるようにする。

そして確認を終えて南部は全ての武装を確認していく。

 

「コイツ、持って行くぞ」

「ああ、気を付けろよ」

 

船内の弾薬箱から二〇発入りの20mm弾倉を手に取ると、そこで銃座から見ていた高雄が言う。

 

「俺より先に死ぬなよ?」

「ああ、もちろんだ」

 

そこで装填手の土浦が聞いたことで彼等は確認するように手を軽く叩く。

 

「しっかりやり切ろうぜ」

「もちろんだ」

 

操舵室では石垣や大刀洗が拳を当て、これからの作戦を前にに意気込む。

 

「やるわよ」

「ええ、ここまで来たからにはね」

「興奮するねぇ」

 

後部でも長野や根室が機関砲を前に弾薬を並べて互いに目を合わせ合う。その体には中に突入するための武器が降ろされていた。

 

「大丈夫かな?」

「大丈夫よ」

 

魚雷の前では三沢と小山が話していた。やはり不安げな彼女に、小山は笑って彼女に言う。

 

「だって、こっちは何度死にかけても生きて帰ってきたエースがいるんだから」

 

彼女は堂々と胸を張って言うと、三沢もそのことに少し笑って安心した様子で緊張の顔つきが緩んだ。

 

「あぁ、これがこの世界の最後かよ」

「なんだ、後ろ髪引かれてんのか?」

「残っても良いんだぞ?」

 

機関室で岡崎・調布・小樽の三人が言う。

 

「馬鹿、母ちゃんの料理食うために帰るんだよ」

「はははっ、俺も白米が恋しいぜ」

「全くだ」

 

彼等は全員が識別のために腕にオレンジのバンダナを巻いていた。

 

「ふぅ…」

「俺にもくれよ」

 

そして船内で青島と大泊は魚雷装填の補助役として働き、最初に船に乗り込む要員として帝国軍の軍用煙草を最後に吸い合っていた。

 

「…」

 

そして南部は甲板に上がって太陽の沈んだ大洋を見つめる。常闇が支配するその空間は、満点の星空が輝いていた。

 

「南部」

 

そこで操舵室から石垣が顔を出して南部を見た。

 

「ありがとう。感謝するぜ」

「…ああ」

 

先鋒で攻撃を行う彼に、石垣は軽く言葉を掛けると、南部は少し笑って拳を合わせる。

 

「茂くん」

「ああ、ちょいと派手にやってくるさ」

 

そこで甲板に降りてきた小山に軽く抱擁をすると、目出し帽をしっかりと被る。

 

「よし、状況開始だ。始めるぞ」

「了解」

 

そこで操舵室手前から先端までの短い甲板の上を走って船を蹴って空に上がる。

 

「よーし、作戦開始だ!行くぞ!」

 

そして空に上がった南部を確認すると、石垣はスロットルを倒して速度を上げ始めた。

 

 

 

 

 

空に上がったディルクは、魚雷艇が旋回を初めて距離を取ったのを暗視魔法で確認すると、そこで手元に魔法を展開してから一斉に周辺の空間にその魔法を展開した。

 

「何だこれは!?」

 

その直後、船内のレーダー手は泡を食って驚いた。

 

「た、多数の魔力波探知!すごい数だ!!」

「何だと!?」

「そ、総員戦闘用意!!」

 

レーダーには軽く一個大隊はあろうかという魔力波が探知され、その直後に爆発が起こった。

 

「くそっ!」

「襲撃だ!」

「補給艦を切り離せ!」

 

彼等は慌てて補給作業を中断して給油ホースを外す。

 

「迎撃しろ!飛行兵を出せ!」

 

そこで客船の客室から魔導演算機を装備した兵士たちが空に上がって迎撃を始めるが、無数の魔力波は、暗闇の中でまともに敵を見ることができなかった。

 

「くそっ、何処だ!?」

 

無線で連絡を取ろうとした直後、彼等の真横を自分たちの数倍の速度で何かが通過して行った。

 

「何っ!?ぎゃあっ!!」

 

しかし直後、空を上がっていた彼等は無数の魔力波。崩壊寸前の魔法が衝突して、魔法式破綻による爆発に巻き込まれて堕とされていく。

 

「飛行兵、突破されます!」

「対空防御だ!急げ!」

 

艦橋で船長が指示を出すと、船の窓ガラスの前に一つの人影が現れた。

 

「っ!?」

「ひっ!?」

 

その影は黒い目出し帽を被った一人の飛行魔法兵で、彼は持っていた対戦車ライフルを艦橋に向けると、引き金を引いて魔法弾を発射した。至近距離で放たれた魔法弾は容易に艦橋の窓を貫通すると、その弾丸は艦橋の中で爆発を起こして、内側から窓ガラスを破壊して炎に包ませる。

 

ッ!ッ!ッ!ッ!ッ!ッ!

 

そして立て続けに弾丸を撃ち込んで艦橋を徹底的に破壊すると、次に前甲板にあった155mmカノン砲に照準を合わせてアームに伸びた機関銃の引き金を引くと、解撤作業中であった兵士達を容赦なく四散させる。

 

「次は…」

 

そして前甲板の対空砲やカノン砲、艦橋を破壊すると、次に彼は破壊優先目標の三本の煙突に照準を合わせる。

 

ッ!ッ!ッ!

 

持っていた対戦車ライフルを発射し、その弾丸が煙突の一本を破壊すると、次々と彼は煙突を移動しながら破壊した。

 

「う、うわぁああっ!」

 

根本からへし折れた煙突が倒れ、客室部分を崩していくと、それに数名の兵士が巻き込まれて圧死する。

煙突を繋いでいた鋼鉄ワイヤーが鞭のように弾けて兵士たちを真っ二つに引き裂いていった。

 

「くそっ!」

「突っ込め!」

 

すると何処からか生き残っていた飛行兵が煙突全てを破壊した南部に照準を合わせると、彼はそこで海面スレスレに降りて高速で飛行を始める。

 

「追え追え!」

 

すぐに飛行兵は彼の後を追って海面を進むが、南部は背中の演算機の出力を上げて水面に衝撃波を作る。

 

「何!?」

「速い、速いぞ!」

 

その速度に慌てて追いかけると、彼は一旦上昇をしてこっちに突っ込んできた。

 

「な、なんだ!?」

「迎撃しろ!」

 

彼等はそこで持っていた反自動小銃を発射して魔法弾で迎撃を行うが、その爆発は南部のはるか後方で炸裂をすると、彼は二人の間をすり抜けて補給艦に移動する。

 

「くそっ!…ぎゃあ!!」

 

振り返って後ろから攻撃を行おうとしたところを背中から破綻寸前の魔法式を当てられて爆発を起こすと、その炎に焼かれてその飛行兵達は海に堕ちる。

 

「何だよあいつ!?」

「帝国だ…帝国の黒い天使だ…!!」

 

補給艦のクレーンをすり抜けて彼は船の艦橋に持っていた対戦車ライフルを向けると、通り魔的に弾丸を補給艦にぶつけて破壊する。

 

「ごぎゃっ!?」

 

彼の速度に追いつこうとして速度を上げた飛行兵は、補給艦のクレーンにぶつかってスプラッタに血を撒き散らし、骨が粉砕される。

 

「正気かあいつは!?」

「殺せ!近づけさせるな!」

 

そこでようやく機関銃による対空攻撃が行われると、南部はそこで対戦車ライフルから散弾銃に持ち替えて弾を発射する。

 

ッ!ッ!ッ!ッ!

 

そして銃口から霧散した散弾の小球が爆発を起こす。

 

「おお、良い花火じゃないか」

 

そこで彼は背中の魔導演算機に引火し、爆発を起こして海に堕ちていく飛行兵達を見下ろしていた。




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