戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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一六四話

ヌヴォ・モーンドゥに単身で強襲を敢行した南部茂。久しぶりに全力を出したことに思わず笑みがこぼれる。

 

「ひ、飛行兵部隊が…全滅…しました…」

 

散弾を使った魔法弾は改良された魔導演算機のおかげでようやくまともな運用ができるようになっており、その広範囲に渡る攻撃は不用意に集合していた飛行兵達を叩き落としていた。

 

「そんな…そんな、馬鹿なことがあるか!?出動して三〇分も経っていないぞ!?」

 

レーダー室で時間が椅子から滑り落ちながら震えた。

 

「く、黒い天使だ…」

 

誰かが恐れをなしてその名をつぶやくと、直後にまた誰かが叫ぶ。

 

「敵の攻撃が来ます!」

「左舷、対戦車砲部隊被害甚大!」

 

散弾を連射して飛行兵を叩き落とした後、南部は再び対戦車ライフルに持ち替えて舷側に設置され、ようやく射撃口が開けられた大砲に弾丸を撃ち込んでいた。

 

「飛行兵だ!」

「殺せぇ!!」

 

そこで75mm砲を旋回させて一部の砲兵が発砲を行うが、ほぼ壁に取り付くように彼は客船の窓に向けて至近距離で攻撃をする。

 

「ぎゃああっ!!」

「駄目だ!射角が取れない!!」

「人員をこっちに寄越せぇ!」

 

左舷側は炎に包まれ、地獄絵図が生まれていた。

 

「早すぎる!」

「応戦する術がありません!」

「総員退…ぐぁあっ!?」

 

その被害に側面から退避しようとすると、そこに20mm魔法弾が入り込んで兵士たちをズタズタに引き裂いて行った。

 

「チッ、流石に大食いだなぁ!!」

 

彼はそこで新しい弾倉と交換して装填を行うと、散弾銃を持って魔法弾を後ろ甲板で展開中だった155mm砲に放つ。散らばった小球が全て連鎖的に爆発を起こすと、砲兵要員はその爆発で薙ぎ倒された。

 

「っ!!」

 

そして薙ぎ倒された兵士達を横に滑り込むように甲板に降り立つと、そこで生存していた砲兵要員を見つけて射殺をする。

 

「アイツらはどうした?」

 

そこで燃えている船を見て首を傾げると、その直後に船体に巨大な衝撃波が現れて水柱が上がった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「始めやがった」

 

爆発した船を見て石垣は言うと、そこですぐに指示を出す。

既に全員があの紙を飲み込んでおり、全員が念話魔法で連絡可能だった。

 

「かぁ、くそっ。まだ変な感覚だ」

「慣れるしかないわよ。まあ使って行ったら良いわ」

 

小山は紙を飲み込んだ大刀洗に言うと、操舵室で石垣が叫ぶ。

 

「突撃をする!魚雷発射用意!!」

 

そしてスロットルを全開にして加速を始める。

派手に南部が大立ち回りをしてくれたことで、敵は反対側から接近する魚雷艇にはまるで気が付かなかった。船から多数の爆発が聞こえ、艦橋を南部が対戦車ライフルを使って滅多撃ちにしているのが見えた。

 

「魚雷発射用意良し!」

 

そして最大船速で海上を進むと、波飛沫が操舵室まで被ってくる。そして魚雷発射用意が完了して赤いランプが灯る。

 

「発射!」

 

そしてボタンを押すと、先端の蓋が開いてゴォンと重たい金属の音を立てて圧縮空気が放出されて二本の魚雷が一〇秒ほどの時間差をおいて海に放り出される。

 

「次弾装〜填!」

 

そこで魚雷発射管に新しい魚雷を四人が装填していく。魔法で調整を終えていた魚雷の重力を抑えると、二人でそれを丁寧に押し込んで新しい魚雷を装填していく。

 

「何だ?」

 

その時、反対で大変なことになっている船の通路で、一人の兵士が海を見て接近する小舟に首を傾げた。何だろうかと思った次の瞬間。

 

「っ!?魚雷だ!」

「何?!何処だ!!」

 

そこで直ぐに探照灯が海を照らすと、そこに二本の白い航跡を見た。

 

「っ!!面舵!避けろ!」

「無理だ!何かに捕まれ!!」

 

至近距離で発射された魚雷は、浅い水面を進んで二本共に爆発を起こした。補給中でほぼ止まっているような状態だった貨客船はまともな対応もできずに横腹に攻撃を受けた。

 

「被雷!被雷した!」

「魚雷艇がいたぞ!!」

 

船体中央に命中した魚雷は、その後に放たれた二本目の魚雷がさらに奥に命中した。

 

「よし、やるぞ」

「ほいほい」

 

そこで魚雷の命中を確認すると、艦首の銃座で高雄は引き金引いて攻撃を開始する。20mm機関砲が発射され、貨客船の船体に攻撃を行う。

 

「魚雷艇だ!」

「沈めろ!」

 

二発目の魚雷が装填される前に、船体から75mm砲が押し出されて砲撃が散発的に始まった。近くに水柱が立ち上がり、魚雷艇はまともに食らったらひとたまりもない。

 

「探照灯を狙え!」

「馬鹿だなぁ。あれじゃあ丸わかりだぜ」

 

そこで高雄は艦首の機関砲の引き金を引くと、曳光弾に合わせて照準を合わせると、探照灯を破壊していく。すると発射された75mm砲の砲弾の光跡が見えた。

 

「来た来た来たぁあっ!!」

 

石垣は舵を右に切って砲撃を避けると、次に華麗に左に避けて乱数軌道で回避をしていく。その動きに敵弾が着弾した時の水柱を被ってずぶ濡れになった大刀洗が言った。

 

「やるじゃん」

「だろう?」

 

そう言いながら最大船速で砲撃の合間を縫って接近をグングンする魚雷艇。元々魚雷艇にしては大型な部類であった為に、この船は重武装であった。後部の四連装機関砲でも射撃が始まると、二人の装填手が弾倉を次々と交換しながら射撃をしていく。

発射速度がよく問題視されているこの機関砲だが、流石にこの期間距離となるとお構い無しに弾幕が船体側面を貫通していく。

 

「銃身が赤熱して来たぜ」

「壊すなよ?まだ使えるんだからよ」

 

そこで新しい弾倉を持って土浦は徹甲榴弾を装填して射撃をしていく。

 

「魚雷装填完了!」

「よし、二回目いくぞ!!」

 

そこで小山が柵につかんで叫ぶと、石垣は意気揚々と舵を握って船体を左右に振って機関銃の攻撃も装甲化された操舵室が弾いてくれる。

 

「魚雷発射!」

 

そこで少し角度をつけて魚雷を、今度は同時に射出すると二本の魚雷は真っ直ぐ直進を始める。

 

「魚雷だ!!」

「撃て!迎撃しろ!!」

 

その雷跡を確認して、抵抗軍兵士たちはそちらの方に注意が行く。しかし迎撃は間に合わずに二発の魚雷は船体に命中する。

 

「あらよっと」

 

するとエンジンを切って、水面を自分の体のようにドリフトさせながら船体を破口に横付けして、後部の機関砲が初撃で浸水が始まった破口に機関砲を叩き込んで、中にいた抵抗軍兵士たちを射殺していく。この距離で20mm機関砲が命中をすると、文字通り生身の人間など爆発四散していた。

 

「死ねぇええっ!!」

 

全ての弾薬を使い切る勢いで盤城達も機関砲を全て使って攻撃をしていく。

 

「乗り込むわよ」

「うん…!」

 

そこで射撃をする中で小山は三沢と他に甲板に上がってきた小樽や大泊の手をとって、瞬間移動魔法を使って破口に飛び移る。

 

「おっと!?」

「危ない!」

 

着地をすると、その時に雷撃で壊れた廊下が傾いていて、小樽が海に落ちそうになったのを小山が咄嗟に手を掴んで支えた。

 

「大丈夫?」

「ああ…悪い」

 

そこで彼は少し嬉しさを隠しながら姿勢を前傾にして安定させる。

 

「しかしすげえな。この爆発かよ」

 

そこで雷撃の影響で開いた大きな破口を見る。

 

「すぐに行わよ。他にも移動させないといないんだから」

 

そう言い、小山は横付けした魚雷艇に戻るとそこで今も攻撃を行っている魚雷艇の銃座を確認する。

 

「行け行け!こっちは撃ち切ってから時限装置に点火する!」

 

石垣は叫ぶと、魚雷艇が作った破口によって浸水が始まっているヌヴォ・モーンドゥを見る。

 

ッ!ッ!

 

舷側に周り、側面の戦列艦のように大砲を並べていた船を貫く通路に攻撃を加えていく南部が対戦車ライフルを使って攻撃を行っていた。

 

「はははっ、派手にやってらあ」

 

爆発で窓ガラスが吹き飛んで、その破片が魚雷艇に降り注いでくる。そしてビチャリと音を立てて魚雷艇に誰かの腕や吹き飛んだ人の顔などが降り注いできて、一瞬乗っていた者達を驚かせる。

 

「っ!!」

 

銃座から果敢にも攻撃をしてこようとした面々に彼は持っていた短機関銃の引き金を引く。

 

「うわっ!」

「ああぁああああっ!?」

 

撃たれ、船から落ちる抵抗軍兵士。その様子を見て、石垣は満足そうに大刀洗に聞いた。

 

「まだ弾はあるか?」

「ああ。十分にな」

 

すでに役割を終え、弾薬を船内から運び出すことに従事していた彼ら。船内には十分な20mm砲弾が用意され、迎撃に来た兵士たちをズタボロにしていた。

 

「小山達の援護をしろ!」

「上の心配はするな!」

 

そう言うと、南部が降りてきた。

 

「どうよ」

「ああ、ばっちりさ」

 

そこで舷側がボロボロに破壊された貨客船を見る。

 

「煙突も全部へし折った。俺は上から敵兵を迎撃していく。もし壁が浸水対策で隔壁が閉鎖されていたら言え。こいつで吹っ飛ばしてやる」

「ああ、任せたぜ」

 

粗方の大型兵装をたった一人で破壊してしまったことに誰もが苦笑をしながらあらためて彼の能力として高さに舌を巻く。

 

「弾は足りているか?」

「貰っていく。全部寄越してくれ」

「はいよ」

 

そこで彼は肩掛けができるようにベルトを通した弾薬入りのボストンバッグを手渡すと、中には装填済みの弾倉や裸の銃弾が詰め込まれていた。

 

「もうひと暴れしてくれ。なるべく中に入る小樽達の注意を引いてくれるか?」

「問題ない。全員殺せばいいだけの話よ」

「実に簡単な命令で助かるぜ。中佐?」

 

石垣はそういうと、南部はフッと小さく笑みを見せてから真水をタンクに補給してから空に上がった。

 

「…」

 

彼は破壊した右舷の通路に着地すると、そこで持っていた散弾銃に弾薬を装填しながら走る。

 

「っ!?」

 

その時、残骸から抵抗軍兵士が出てきて鉢合わせの形になって驚いて固まってしまった。その瞬間をすかさず南部は散弾を叩き込んで至近距離で敵のヘルメットを跳ね上げさせる。そして両脇の機関銃が容赦なくその後続を肉塊にしていく。

 

「敵だ!」

「撃て!」

 

直後、発砲音が甲板に響いて大砲の残骸の影に隠れた。見てみると47mm対戦車砲(47mm SA mle 1937)がこちらに照準を合わせていた。

 

「敵が中に侵入したぞ!」

「迎え撃て!」

 

発砲を行うと、一人の砲兵が言った。

 

「ダメです!残骸が邪魔で…」

「残骸がなんだ!まとめて吹き飛ばせ!」

 

そう言うとそこで砲弾が放たれる。ここで効果的な榴弾を持ち込んできていない辺り、かなりの混乱を感じ取れた。

 

「(徹甲弾運用とは頂けんね)」

 

大砲の影に隠れていた彼は、そこで隣で焼死体となった兵士の遺体を押し倒すと、そこに向けて砲撃がされた。

 

「っ!」

「しまった!」

 

反射的に動いたものに撃ってしまった事に指揮官は目を見開いて驚愕をすると、物陰から飛び出した南部は持っていた散弾銃に魔力を込めて即座に魔法式を構築させると、引き金を引いた。

 

「「「っーーー!!」」」

 

そして叩き込まれた散弾の爆発は容易に砲兵を薙ぎ倒していく。そして新しい残骸によって一時的にこの舷側の通路に静寂が訪れると、南部はそこで隣で艦橋を破壊されて火災が発生している補給艦を見た。

 

「…総員、よく聞け」

 

そして念話魔法で彼は自分に賛同をした部下達に指示を出しながら対戦車ライフルに持ち変える。

 

「脱出艇は見つけ次第破壊しろ。こいつらを全員生きて帰すな」

 

そう言うと、彼は引き金を引いて20mm砲弾を補給艦の喫水付近に次々と当てていき、船体を破壊していく。




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