戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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一六六話

「ゲホゲホッ」

 

撃ち込まれた二発の魚雷の爆発で立川は吹き飛ばされると、そこで軽く咳払いをしてから埃を払った。

 

「くそっ、思い切りが良すぎるわよ。南部」

 

この攻撃を主導したであろう男の顔が脳裏をよぎると、直後に激しい振動が船体を襲う。

 

「うおっ!?」

 

爆発の正体は舷側の通路に、昔の戦列艦のように並べられた対空砲だ。魔法弾を撃ち込まれ、準備されていた装薬に引火して大爆発を起こしていたのだ。

 

「…」

 

立川はその攻撃の中を走って第一船倉に向かう。中央の広間の階段を降りると、そこではアール・デコ様式の天井が薄暗い中を照らしていた。

 

「急げ!」

「機関銃をもってこい!」

 

そこで彼らは13.2mm重機関銃(ホッチキス M1929)を持ち出すと、牽引して船内を走る。

 

「…」

 

上で大立ち回りをしている南部の猛攻はあっという間に飛行兵を叩き落とし、甲板や船体にあった兵装を次々と破壊していく。

 

「うおっ!?」

 

そして第一船倉が目の前に来た時、彼女は再び激しい振動に襲われる。

 

「なんだ今のは!?」

「また魚雷だ!!」

 

二発の魚雷が船体前方に命中して、爆発を起こしたと言う。四発の魚雷が命中し、巨大な破口を作ったと言うことで、船内では各所で大騒ぎである。すると発電室に浸水したのだろう。ショートを起こして船内の電源が喪失していた。そしてそれで漆黒の暗闇が現れて視界が奪われた。

 

「脱出しよう!」

「ダメだ!沖に出たところで飛んでいる奴に沈められる!!」

 

噂の飛行兵は、敵を発見次第皆殺しにしていると言う話だ。すでに甲板に展開していた兵士は全滅し、補給艦も攻撃を受けていると言う話だ。

 

「(やり過ぎだ。馬鹿者)」

 

その殲滅の噂を前に、兵士たちは半ば恐慌状態に至っていた。そして幾多の場所で攻撃が行われているため、銃弾が文字通り頭上を飛び交っていた。

 

「ああくそッ。面倒ったりゃありゃしない!」

 

彼女はそこで自衛用で共和国製拳銃(SACM Mle1935A)を取り出して伝令を第一船倉の前に持っていく。

 

「伝令です」

 

こんな状況であるにも関わらず、立哨をしている二人の兵士は無機質な眼差しで立川を見ていた。

 

「すでに敵は飛行兵を全滅させ、主要施設に攻撃を加えています」

「…承知した」

 

伝令を聞き、立哨兵は頷いてから背を向けた時、

 

「うごっ!?」

「なっ…!!」

 

その頭に向けて引き金を引いて斃すと、もう一人が驚いて銃を向けようとする前に引き金を引いて始末した。

 

「悪いわね」

 

この混乱状態にあっては、死体が二つ増えたところで誰も気にすることはないだろう。護衛の兵士を倒して彼女は目の前の装飾の施されたドアを見上げた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「撃て!」

 

指揮官が叫び、機関銃(MAC 1931)が放たれる。強襲で乗り込んだ岡崎・調布・小樽は船内の通路で走っていると、通路の角に待ち構えていた部隊が機関銃を使って攻撃を仕掛けてきたのだ。

 

「どうする?」

「どうするつったってね…」

 

客室に隠れて彼らは割れた鏡を使って暗くなった船内を見る。敵が機関銃を連射していることで、発火炎で敵の居場所は丸わかりだった。

 

「…ソマリア撃ちで迎撃しよう」

「なんだそれ?」

「こうやるんだよ」

 

首を傾げた岡崎に調布が理解して持っていた短機関銃を壁から覗かせて引き金を引いた。

 

「うわっ!」

「反撃してきたぞ!」

 

銃口だけを覗かせて両腕で反動を殺して撃ったことで彼は納得して同じように銃だけを部屋から出して撃っていた。元々重い短機関銃であったので、非常に安定して射撃ができた。

 

「ほれよ」

 

そして銃を撃っている間、盤城は共和国製手榴弾(F1 手榴弾)の安全ピンを抜いて安全レバーを外しながら壁を使って投擲する。

 

「っ!手榴…」

 

その投擲に敵は反応する前に爆発して一掃した。

 

「よし」

「行こうぜ」

 

そこで彼らは船室の全てのドアを開けて中にいた兵士たちなどを、着替え途中でも構わずに射殺した。

 

「ま、待て…」

 

驚愕する兵士を前に短機関銃で射撃を叩き込む。そして部屋に使えそうな武器があれば弾薬ごと奪っていた。

 

「大丈夫か?」

「ああ、魔法でなんとかさせるさ」

 

そこで通路のバリケードを乗り越えて彼らは敵が使っていた機関銃を確認する。彼らは牽引式に改造されていたそれを持って弾倉と共に船内を走ると、そこで岡崎が言う。

 

「まるでゲームみたいだな」

「それな」

「やってることはそれとほぼ変わんねえよ」

 

そう言いながら彼らはドアを蹴破って広間に出ると、そこでは複数の兵士たちが重機関銃の準備を行なっていた。

 

「まだ出来上がる前だ!」

「撃ち込んでやれ!」

 

そこで機関銃を柵に備えると、機関銃を発射して兵士たちを驚かせる。側面に備えられた一五〇発入りのパンマガジンを使って無造作に攻撃を行う。至近距離で撃ち下ろしであるため、撃てば当たるような状態であった。

 

「何!?」

「敵襲!上だ!」

「撃て!」

 

そこで彼らは持っていた突撃銃(StG44)軽機関銃(FM Mle1924 M29)を使って攻撃をしてくる。階層を貫いている大広間で彼らは下から撃ち上げの形げ攻撃を受ける。幸いにも床が石材でできていたことで弾丸の貫通はないが、照明のガラスや木片が彼らの頭に降り注ぐ。すると一個下の階のドアが開いて長野達が出てきた。

 

「援護するわよ」

「助かるぜ」

 

彼女達、長野・根室・盤城の組がホテルの受付のような美しささえあった…しかし今では銃弾と魔法が飛び交う戦場と化した広間に突入をして手榴弾や魔法を放つ。

 

「塵になりなさい!」

 

根室はそう言って火焔魔法を話すと、広間の下に火球が流れる。

 

「っ!防御!」

 

そこで魔法兵が障壁魔法を展開すると、その炎を円形状に壁を築いて攻撃を退ける。

 

「こっちもやるぞ」

「ああ」

 

そこでその様子を見ていた小樽達も風魔法を展開して炎を周辺に撒き散らせていく。

少なくともここに襲撃を敢行した十五名は全員が訓練を受けた魔法兵である。帝国式ではあるが、彼らは魔力を用いた攻撃を行なっていた。

 

「くっ、うおっ!?」

 

炎の雨に強烈な風が広間に吹き荒れ、障壁魔法を展開していた兵士たちは広間のありとあらゆる家財が燃え広がるのを見る。元々客船で、多量の木材を使用していたことがここで仇となった。艶を出すために塗られていた樹脂に引火して火災は大きくなった。

 

「うわぁあああっ!!」

 

魔力による暴力は、どれだけ魔力伝導率が良かろうとし次第に限界を迎えて彼らは崩壊した障壁魔法の隙間から紅蓮の炎に巻かれた。そして悲鳴が聞こえなくなるまで魔法を展開すると、魔法をそこでようやく切って炎の残骸となってドロドロに溶けた機関銃を見た。

骨すら残っておらず、嫌に肉が焼けた匂いだけがこの場所には残っていた。

 

「っ!?うわ…!」

 

しかし彼らが人為的に巻き起こした火災旋風は、寄りかかった柵を壊してそれに寄りかかった調布が下に転げ落ちた。

 

「大丈夫か?!」

「ああ、これくらい平気さ」

 

そう言い、下に落ちた彼はそのまま階段を登って戻ってくると、そこで合流できた長野達と共同で敵に当たり始めた。

 

 

 

甲板から乗り込んだ南部達は、そこで部屋を蹴破って中に兵士が居ないかを確認していく。

 

「家族とかは居ないのね」

「流石に乗せられないんじゃないのか?叛逆者の家族とはいえ」

 

魚雷攻撃で電源が落ちたことで暗闇が支配している船内。しかし救助ボートについた炎が彼らに視界を与えていた。

 

「この部屋が終わったら上に上がっていくぞ」

「了解」

「艦橋がある場所か?」

 

彼らはそこで残敵掃討を行うと、他にもこの階層に大刀洗達を呼び出していた。

 

「そっちの状況はどうだ?」

 

右舷側を担当する彼らに聞くと、大刀洗達は言う。

 

『順調に進んでいる。敵は全員、下に逃げた可能性があるな…これは』

 

そう言い、彼は短機関銃で南部の攻撃で死にかけていた抵抗軍兵士に慈悲の一撃を与えていた。最初に南部が奇襲攻撃で敵の大型兵器を破壊した影響は大きく、すでに砲兵の多くが制圧されてしまっていた。

 

「艦橋で集合しよう。その後に俺たちは機関室に爆弾でも投げ込むか」

『そりゃあ良い。ああでも、ちょっとやってみたいことがあるんだ』

「?」

 

どうしたのかと思うと、彼は目の前に転がっていた展開前の大砲を見る。

 

『歩兵砲を見つけた。俺でも見覚えがあるやつだ』

 

彼はそこで37mm歩兵砲(37mm mle 1916)を見つけてこれを使おうと提案してきた。

 

「まだこっちに対戦車ライフルはあるぞ?」

『ああ、だが使えなくなっちまうだろ?弾無くなったら使えるかと思ってな』

「良いとは思うが、まともに運用出来るとは思えんな」

 

念の為、南部は持っていた20mm砲弾の弾倉を確認する。事前に持ち出していたとはいえ、かなり消費してしまっており、あと弾倉が丸々一つあるだけだった。

 

「そろそろこいつも放棄だな」

「撃ち切ってからにしろよ?」

「無論だ」

 

自動小銃を持って南部は言うと、背中の魔導演算機が熱を持つことを警戒しながら崩れかけの階段を上がっていく。

 

「しかし、これだけ派手にやったら通報されんじゃねえか?」

 

そこで燃え盛って破壊された救命ボートを見ながら石垣が言うと、南部は言う。

 

「どうだろうな。軍艦ってのは思ったより準備に時間がかかるからな」

「そうなのか?」

「ああ」

 

そこで彼は頷いて説明をする。

 

「まず、この時代の艦船…つっても今も一部はそうなんだが、まず船ってのはボイラーに火を入れて湯を沸かして蒸気を作る『気釀』という作業を行い、これにまず早くて一時間、長くて二四時間ほどかかる」

「ほ?」

 

予想外の時間に石垣は目を丸くした。二四分の間違いかと思ったが、おそらく違うだろう。

 

「次に蒸気タービンやシリンダーを動かすために蒸気管や蒸気弁を温める『暖気暖管』と言うのを行う。これに小さい艦艇は三、四時間。大きいと二四時間かかる」

 

彼の説明を隣で聞いていた小山は段々とジト目になっていく。

 

「そしてそれが終わったら試運転だ。スクリューが問題なく動かせられるかを確認し、そこでようやく出航ができる」

 

長々しい彼の説明を聞き、石垣はようやく理解できた一言で返す。

 

「つまり通報されても馬鹿遅く着くってのは理解できた」

「それが分かれば十分だ。まあ最近は性能が上がっているし、大体は事前に準備しているから到着はこんなに遅くはならないと思うがな」

 

彼はそう言うと、三人はもはや屋根すら残っていないボロボロの艦橋に辿り着いた。




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