戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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一六七話

「うわぁ…」

「こりゃ酷え」

 

露天艦橋となってしまったその場所を見て苦笑しながら残骸を踏みつける石垣達。

 

「怪我はするなよ?」

「すげぇ、何も残ってねえや」

 

その場所で大刀洗達と合流をして最初に南部が対戦車ライフルを使って徹底的に破壊した艦橋は、船全体がよく見えるようになっていた。

 

「よし、全員居るな?」

「ああ、五体満足だよ」

 

そこで大刀洗は短機関銃を握って答えると、そこで石垣の包帯に記された文字を見て苦笑した。

 

「ここの人間に意味通じねえだろ」

「モチベモチベ。この方が気分が上がるだろう?」

 

おかげで彼だけは目出し帽を被っていなかった。他の襲撃部隊は全員が顔を隠すように、昔から使ってきた黒い目出し帽を被っており、腕にオレンジのバンダナを識別用に巻いていた。

 

「よし、下に行くぞ」

「ああ、行こう」

 

そこで彼らは鹵獲した歩兵砲を使って船内に入ると、そこで先頭を南部が仕切っていた。

暗闇の中で暗視魔法を使って進んでいると、目の前を残存した抵抗軍兵士が飛び出してきたので、すぐに彼らは発砲する。

 

「敵だ!」

「撃て!」

 

そこで彼らは狭い船内で攻撃を行うと、先頭の南部は障壁魔法を使って攻撃を防いだ。

 

「急げよ!」

「分かってる!」

 

そこで鹵獲した歩兵砲を使って彼らは砲口を向けて砲尾を回転させ、砲弾を装填して砲撃を行った。

 

「うおっと」

 

砲撃を受け、砲弾は確かに敵のバリケードを丸ごと吹き飛ばした。しかし地面に固定しなかったことで砲全体が後退してしまった。正直言って、十分な運用ができているとはまるで言えなかった。狭い船内では砲を旋回させるだけで一苦労であった。

 

「だから言ったろ?まだ迫撃砲の方が使えらぁ」

「…仕方ないな」

 

駐退複座機によって幾らか反動は抑えられたが、それでも十分な衝撃で使い物にならないと理解した彼らは大砲を捨てて、死体やバリケードに使っていた弾薬箱などを漁る。

 

「使えるものは全部持ってけ。こいつら、奇襲でまともに武器を破壊していねえからな」

 

南部はそう言うと小山達は空の弾薬箱を壊し、中の兵器を見ていく。短機関銃を使い切った者から敵の武器を奪って武装していく。幸いにも機関銃や小銃は足元に転がっていた。

 

「くそっ、銃身曲がったかな」

「当たり前だろ。銃床で殴らなかったんだからな」

 

土浦は大刀洗に呆れながら新しい弾倉を受け取る。銃身が曲がったことで大刀洗は短機関銃を放り捨てて敵が持っていた軽機関銃を奪った。使い方は以前に勉強していたので問題なかった。

すでに彼らは七一発ドラムマガジンは全員が使い切って五〇発箱型弾倉を使っていた。ひたすらに敵の迎撃や死霊魔術で蘇った所を頭を破壊していたのだ。

 

「とりあえず死霊魔術は足を吹き飛ばす以外に方法があまり良いのがねえよな」

「問題はそこよ」

 

高雄に小山は言う。どこぞのゾンビ映画のように頭を吹き飛ばしても敵は動いてくるのだ。そのことが何よりも彼らの対応を困らせていた。

 

「…いっそ海水でもかけるか?」

「嘘だろ、塩で除霊できるってか?」

 

石垣の提案に南部は苦笑をした。現在、船内では排水用のポンプが作動しており、それらはすべて稼働した状態のままだった。それの影響で今もこの船は大きく傾いておらず、また船の転覆は南部達もあまり望むものではなかったので排水ポンプは作動させたまま放置していた。

 

「やってみるしかねえだろ?」

「そりゃそうだ」

 

魔法を使わずに死霊魔術に対抗できるのであれば、これほど便利なこともない。試しに近くのポンプや海水の在処を探して、紐を付けたバケツに海水を掬って運んだ。するとピタピタと湿った足音が聞こえて視界に頭が半分吹き飛んだ死体が歩いているのを見た。

 

「くそっ、いきなりかよ」

「ちょうど良いさ。やるぞ!できなかったら足を撃ってくれ」

 

そこで速度を上げて飛びかかってくるその死体に石垣は持っていたバケツをぶっかけた。

 

「…」

 

すると海水を被った死体はそのまま崩れるように倒れていった。

 

「マジか」

「何でここだけ和風チックなんだよ」

 

信じられないようなものを見た目で彼らは死霊術で倒れた死体を見た。その時、南部は脳裏に画期的な提案が浮かんだ。

 

「なあ、確かこの船って消火設備あったよな?」

「ああ…作動させるにはその部屋に行かなきゃならんけどな」

 

その一言で彼らは南部が何を考えているのかをお方察した。そのため、彼らはちょうどあった船内地図を見て消火栓のある場所を確認する。

するとそこで大刀洗がバリケードで積まれていた武器を見た。

 

「南部、この武器は?」

「パンツァーシュレック?それはいいぞ。素人でも使える良い武器だ」

 

そこで見つけた武器に南部は言うと、彼らは使い方を簡単に知ってそれをバリケード突破用に持ち出してく。

 

「へぇ、これで良いんだ」

「しかも照準器も要らないくらいの距離だぞ」

「へへっ、楽ちんだ」

 

彼らはそう言いながらドアを開けると、そこは元サロン室であった場所だ。今は改装をされて、多数の通信機材が用意されていた。

 

「こいつら、どっからこんな機材を持ち込んだんだよ」

「戦後の混乱で持ち出したんだろ?」

「でっけえアンテナもあったくらいだしな」

 

前後のマストに偽装するように設置されていた巨大な通信用アンテナ。南部がへし折ったことで、この船はまともな通信機能も喪失していた。

 

「しかし、前橋達はどこに行ったんだ?」

「さあな。船に乗ってなかったんじゃねえの?」

 

そこで高雄の疑問に土浦が言うと、南部は言う。

 

「これから消火栓を開く。その途中で広間に…」

 

彼はそう言い、指示をしようとした瞬間。

 

「っ!?」

 

気配を察し、彼は障壁魔法を展開すると、その直後に爆発が起こった。

 

「隠れろ!」

 

南部は持っていた自動小銃を発射すると、一斉に他の面々は通信機材の影に隠れた。

 

「…まさかここまで派手にやってくるとは思わなかった」

「ああそうかよ。残念だったな」

 

その日本語で話しかけられたのを聞き、障壁魔法を解いて南部は通信室の通路に立つ影を見る。暗視魔法で確かにその姿は捉えていた。

 

「前橋…」

 

その声を聞いた大刀洗は呟いて相対した同級生を見た。

 

 

 

広間で敵を制圧した長野達は、そこで近くの弾薬保管室を制圧していた青島・大泊・三沢と合流していた。

 

「見ろよ。こいつら散弾銃も持ち込んでる」

「ありがてえ。狭いとどうしてもこっちの方が良かったりするからな」

 

そう言い、彼らは死体からポンプアクション式散弾銃(ウィンチェスターM1912)を奪う。銃弾も制圧した弾薬庫に十分にあり、鞄の中に短機関銃を使い切った者や、欲しいと言った者達は弾薬庫で自分たちが持っている武器の整理を行っていた。

 

「銃剣欲しいなあ」

「近いからやっぱりね」

 

新しい弾倉を貰い、短機関銃を持つ岡崎に根室は頷くと、三沢は敵から奪った散弾銃に銃剣を装着していた。銃にべっとりとした感覚があり、それを着ていた戦闘服で拭う。もはやその濡れていた正体は知るべきもないし、知ろうとも思わない。

 

「疲れた…」

 

彼らはすでに数時間に渡る戦闘を行なっており、だんだんと疲弊の色が見え始めていた。

 

「大丈夫か?」

「まだ、何とかなる」

 

元々、クラスメイトの中でも文系女子で体力に自信のなかった彼女は、そこで盤城に聞かれて答えると、散弾を装填して、弾薬盒の中に散弾を目一杯入れていた。流石に南部のように散弾を魔法弾に加工する離れ業はできなかったが、それでも彼らは一介の魔法兵としては高い能力を発揮していた。

 

「おい、飯いるか?」

「…くれ」

「何がある?」

 

そこで彼らは無性に空腹感を感じると、そこで小樽が少し笑っていった。

 

「運がいいぜ。近くの食糧庫にコンビーフとランチョンミートがあった」

「ああ…」

「そりゃあ良い」

 

そこで彼がどこから持ってきたのかわからない缶詰を渡すと、昔に帝国軍で支給された缶切りを使ってそれらを開けていく。

 

「鰊の缶詰ない?」

「鰯の油ならあるぞ」

 

根室が聞くと、調布が持っていた缶詰を渡す。この作戦が始まる前に彼らは市井に赴いて大量に缶詰を購入していた。

 

「あぁ〜、スープが美味え」

「火傷すんなよ」

 

そこでチキンスープを魔法で加熱をしてから飲む。あまり褒められた料理方法ではないが、温かい料理は何よりも元気づけた。

 

「薬剤あるか?」

「ええ、ここに」

 

そこで普通に薬局でも売られていた魔力切れ対策用の錠剤を口に放り込む。

 

「魔力切れ?」

「いや、もう一戦やるために補給をしてんのさ」

 

長野の疑問に青島は首を横に振って錠剤を飲んだ後、自分の中手体調が回復していくのを感じて魔力量が回復しているのを感じ取る。

 

「寿命縮むわよ?」

「構わんさ。魔法が使えなくなるのだけは勘弁だからな」

 

しかしこう言った用法での錠剤の服用は、心臓に負荷をかけるのて推奨されなかった。しかし魔法が使えなくなって死ぬのだけは誰だって避けたいこと。目の前の命を守るために彼は寿命を贄に捧げる。

 

「…後どれくらいかかるかな」

「さあな」

 

座り込んだ盤城に小樽が答えると、彼らは束の間の平穏で食事を取っていた。

 

「周りは敵だらけだ。早く食えよ」

「分かってるさ。正念場だからな」

 

大泊に岡崎はそう返してトマトスープを傾ける。ツナ缶を入れていたので、少し食感と風味に変化を加えていた。

 

彼らは武器の整備を終えて食事を摂っていた。

これが最後の食事かよと言うと、誰かが言った『召喚魔法の儀式?』と。するとこんなことでも彼らは笑ってしまった。極度の疲労と緊張のせいで彼らは笑いのツボの感覚が少しずれ始めていた。

 

「っ…!」

 

その瞬間、彼女はこっちに向かって走ってくる音を聞いた。

 

「敵が来る…」

「警戒して。いつでも魔法出せるように」

 

彼女はそう言った瞬間、魔法が飛んでくる感覚を感じ取って三沢が障壁魔法を展開すると、そこにぶつかった魔法は爆発を起こして弾薬庫の棚を吹き飛ばした。

 

「嘘だろ!?」

「あいつら正気かよ?!」

 

周りに爆発物を多数備えている弾薬庫に爆発する魔法を打ち込んだことに彼らは驚いていると、彼らは弾薬庫の棚に隠れて様子を伺った。

 

「出てこい!いるんだろうお前達!!」

 

そこで出てきた兵士たちを率いていた男の声に長野達は気がついて、同時に歯噛みした。

 

「くそっ…」

「やっぱりそうだよな」

「だろうと思ったよ」

 

そこで相対した築城を見た。




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