弾薬庫で休憩をしていた途中、襲撃を受けた長野達。彼女は会敵した築城を見て念話魔法を起動する。
「こちら長野。築城達と図書室で遭遇」
『了解した。こっちも前橋と出会した。サロン室だった所だ』
南部からの連絡を聞き、長野は自分たちと同じような状況なことに苦笑をする。まるで示し合わせたかのようだ。
「図書室は弾薬庫になっていた。大まかな船の構造は変わっていなさそうよ」
『ああ、思っていたよりも改造は原型をとどめている。これなら転移魔法装置も思ったより早く見つけられそうだ』
南部はそこでバリケードや部屋に隠れた状態で長野と話していた。
この船舶に行われた改造の様子は部屋の中身を変えただけで、構造そのものに手を加えた様子が見受けられなかった。それ故に南部達は事前の作戦通りに行動できていた。
「こっちはこっちで交渉をしてみる」
『ああ、こっちもやってみるさ』
そして念話魔法が切れると、彼女は横で隠れている他の面々に目線を合わせて確認を取る。
「築城、私だ」
「…長野か」
暗闇の中、彼女は話しかけた。
「聞きたいことがある」
「脱走をしたことか?」
「そうよ。どうして正規軍を抜けたの。大義名分はこちらにあるのよ?」
帝国軍から脱走をし、あえて動きづらくなる抵抗軍に身を落とした。その疑問が彼女達の中にはあった。その疑問に築城は軽く鼻で笑う。
「大義名分はどうでもいいのさ。俺たちは俺たちなりの方法でことを成すために逃げた」
「ふんっ、そのために私達を囮に使ったっての?ふざけんじゃないよ」
彼女はそう言ってアウトバーンで肋を折り、その後に古城に幽閉された時のことを思い出す。
「謝ってくれない?割とあのあと苦労したんだから」
「すまなかった。これで良いだろうか?」
「しばくぞ阿呆」
誠意のかけらも感じない謝罪に彼女は思わず本音がこぼれると、そこで言う。
「そもそもテロリストの軍門に降る時点で頭おかしいでしょ」
「脱走兵だけで突入をしてきた君たちだけには言われたくない」
彼はそう言うとその手に
「小野寺はどうした?」
「会ったさ。俺たちは船の乗り込んだ時にな。相変わらず良い笑顔をしていた」
彼はそう言うと、弾薬庫を前に武器の使用に警戒をしてサーベルを抜く。
「俺たちはここで過ごす。ここで転移魔法装置の在処を見つけ、ジュール・ファブールに恭順を誓って帰る方法を模索する」
「そうかい、焦って私たちを置き去りにした割には随分と呑気なことを言うもんだわ」
長野と話している間、彼らは隷下の部隊を弾薬庫を囲ませる。
『敵が周囲を囲んでいる』
『俺たちを包囲するのか?』
その動きを見ていた岡崎達は少し緊張をしながら見ていた。
「?あ、これ…」
その中で三沢は棚が吹き飛んだ弾薬庫で、見上げて夜目に慣れた目でその文字を読み取った。
「…」
長野もまたその敵の動きに気がついており、彼等が自分たちをどうするのかをあらかた察した。
「どう、私たちに味方する気はない?私たち、日本に帰れる方法を知ったのよ?」
彼女はそこで南部から聞かされた話を思い出しながら築城達に提案をすると、彼らはそれを鼻で笑った。
「どうせ南部だろ?あいつは信用ならん。あいつの言葉で俺たちが帰れる確証がどこにある?」
「そうね。でも私たちはそんな確証がないことに縋らなきゃ生きていないのよ?」
そこで彼女は覚悟を決めて短機関銃を強く握った。
『みんな。魔法を切って』
すると念話魔法で三沢が警告をしてきて、彼女が持っていたものを見て全員が理解して警告をしながら魔法を切っていく。
「縋って何になる?そもそも俺たちは
「っ…そう」
その瞬間、長野達は彼らの説得は無理だと確信した。
「じゃあ死になさい。死体を引きずってでも返してやるわ!」
「…死にたがりの馬鹿どもが」
そこで冷めた目をして彼らは銃撃をしてきた長野に障壁魔法を展開して防護をすると、三沢がその武器を使って安全装置を抜いた。
「伏せぇ!」
その動きを見て青島が叫ぶと、長野達は全員が目を瞑った。その直後、安全装置を抜かれ、放たれたそれは爆発をして凄まじい閃光を放つ。
「うおっ!?」
弾薬庫で迫撃砲用の照明弾を放つ砲弾を見つけた彼女は、それを室内で放ったのだ。点火されたマグネシウム粉は凄まじい閃光を伴って弾薬庫をビカビカに照らした。その閃光は、暗視魔法を使っていた築城達の視界を完全に奪った。
「うらぁあ!!」
そしてその直後に長野が円匙を掴んで突っ込み、その動きに築城は何とか追従をしてサーベルで円匙を押さえた。
「この時代にサーベル?授賞式と間違えてんじゃない?」
「黙れ。これは将軍から賜ったものだ」
「…へぇ、随分と変わっちゃったじゃいのよ」
そこで円匙とサーベルの鍔迫り合いを弾いて両手で長野は円匙を振って築城の顔を下から狙った。
「っ!」
そしてその動きはスンデのところでのけ反って開始されると、彼の付けていた緑色のゴーグルを弾き、額を掠っただけで終わった。そして築城は避けると、そのままバック転をして距離を取った。
「痛いな。そんなものどこで仕入れた?」
「園芸用品店でどこでも売っているわよ」
金属製の柄を持って彼女は槍のように円匙を持って突っ込んでいく。その時、築城は顔を上げた。
「なっ!」
その瞬間、彼女は一瞬驚いてしまうと、その隙に彼はサーベルを前に突き出してきたので、慌てて柄を掲げてその斬撃を滑らせた。
「何よ。その目…」
彼女はそこで何かの紋様が浮かんだ築城の目を見て驚愕していた。
通信室で前橋と相対した南部は、そこで話しかけられた。
「何、他のみんな誑かしたの?」
「ふむ。そう捉えてもいいし、そうじゃなくてもいい。皆の自由に任せたらこうなった」
彼はそう言い、自動小銃を握ったまま前橋に言う。通信室には彼女達の他に、彼女達の指揮下にあるであろう部隊が銃をこちらを見ていた。
「呆れたものね」
「いやはや。君達に逃げられたと聞いた時は泡を食ったものさ」
彼はそう言うと、立ち上がって銃を片手に両手を上げる。部屋は外の火災で照らされており、照明が落ちたにも関わらず彼の目出し帽の姿が照らされていた。
「小野寺はどこにいる?」
「知らない。あの人はずっと船室に篭ってばかりだったから」
今は交戦の意思がないことを暗に伝えながら彼は前橋と話す。
「でも驚いたわ。まさ絵里が彼の秘書をしていたとは思っていなかったから」
「そうかそうか。彼女は生きていたわけか」
吉報だなと言うと、前橋はそこで抜いたスモールソードを持っていた。
「この時代剣か?塹壕戦でも中々お目にかかれなかったぞ」
「そう。まあ貴方なら分かるでしょうね」
彼女はそう言って南部を見ると、彼は前橋に質問をした。
「あの集団脱走を計画したのは君かい?」
「ええ」
正直に彼女は頷くと、南部は疑問に感じていたことを質問する。
「なぜだ?正規軍を抜けたら君たちは追われる身なのだぞ?」
「それは貴方も同じでしょ?」
「君たちのせいだと言っておこう」
南部は前橋に心外な感情を持って答えると、そこで炎の灯りに照らされて、抵抗軍の制服を着ている前橋達を見た。
「で、君たちはジュール・ファブールに恭順を誓ってテロ組織に加担したわけだな」
「ええ、そうでもしないと私たちは帰れないでしょう?」
「どうだろうな」
南部はそこで軽く笑って前橋を見る。
「少なくとも俺は帰り道を導き出したぞ?」
「…」
「乗るか乗らないかは君たち次第だ。まあ、その前に俺たちは後ろにいる君の部下を生きて返すわけにはいかないんだがね」
彼がそういうと、隠れていた小山達は全員が自分の持っている武器の確認をする。彼女達は全員が短機関銃や軽機関銃で武装をしていた。
「投降するつもりはないの?」
「生憎、私は誇り高き帝国軍人として最後まで戦う覚悟を持っているんだ」
「ふーん、そう」
そこで彼女は持っていたスモールソードを握ると、直後に後ろに展開していた兵士たちが一斉に南部に向けて銃を放った。その銃弾は南部の障壁魔法で弾かれると、直後に彼は指を鳴らす。
すると小山達は持っていたパンツァーシュレックを発射し、魔法陣が天井に展開されて通信室の屋根が爆発を起こして瓦礫が降り注いだ。その崩落に後ろで銃を構えていた抵抗軍兵士たちは巻き込まれた。
「…」
「魔法ってのは便利だな。視界全てが射程範囲になるんだ」
彼はそう言うと持っていた自動小銃を握って彼女に銃弾を発射すると、彼女は最小限の障壁魔法を展開して銃弾を切っていた。
「ヒュ〜、この数ヶ月でどんな技を体得してんだよ」
「やはり貴方は危険だわ。ここでケリをつけないと…」
彼女はそこで細くて鋭い剣先を突き刺してくると、その剣戟を首を振って軽く避けて敵から奪った手榴弾を投げると、それを彼女は通信機材の上に飛んで隠れた。
「俺の邪魔をするなら死んでくれ。死体引っ提げてでも日本に返してやるよ」
彼はそう言うと自動小銃に二五発入りの箱型弾倉を入れて使い切った弾倉を鞄に入れる。交渉が決裂し、敵が撃ってきたのを確認してから小山達も攻撃を始める。念話魔法で向こうでも交渉が決裂した様子を確認すると、石垣達は思わず毒吐く。
「ああ、クソッタレめ!!」
「同級生で殺し合いとはなぁ!!」
そこで彼らはほぼ同数の同級生達と相対すると、松本や松島達に銃撃を加えていく。彼女達は軽機関銃の攻撃を通信機器の影に隠れて手榴弾を影込んでくる。
「全く持って戦争はクソだぜ!」
「違いない!なんでクラスメイト同士で殺し合ってんのかねえ!!」
数ヶ月前までは肩を組んで戦っていた同級生達を見ながら彼らは接近してきた彼女達に円匙を握って対応する。
「あっぶね」
そこでスモールソードで装備した彼女達の攻撃を円匙を使って弾く。
「一人で対応しようとするな!」
南部は叫ぶと、前橋を蹴飛ばして自動小銃を発射する。しかしその攻撃は銃身を掴んだ彼女によって明後日の方向に飛んでしまう。そして小山達は二人一組で組んで敵に対応する。
「っ!」
小山は持っていた拳銃の引き金を引いて百里の体を撃つと、彼女は体をしならせて彼女の首を掴んだ。
「くっ…」
そのまま壁に押し当てられて首元を締め付けられると、それに大刀洗が円匙を振って彼女はその動きを読み取って小山から手を離す。
「げほっ」
「気をつけろ。こいつらヤバいぜ」
大刀洗はそこで死んだような目をした彼女を見て軽い戦慄を覚えた。
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