通信室を抜けて弾薬庫に向かうと、その部屋はありとあらゆるものが散乱しており、スプリンクラーが作動をしている中で瓦礫の中から根室達は戦闘の後片付けをしていた。
「南部…」
「そっちも終わったようだな」
「ああ、他に敵が出てくる気配はないぜ」
そこで青島が気がついて話しかけてくると、彼の後ろに並んでいた石垣達を見て聞いた。
「何だそれ?」
「魔法だよ」
「そうか…」
彼以外に立っているのがいないのを見て、青島は察したように軽く目を閉じる。
「後から追いかけるからな」
そして黙祷を捧げ、彼は強く誓う。
「蓮子が…スプリンクラーを作動させたんだ」
「ははっ、大手柄だな」
そこで彼は回収したクラスメイト達の遺体を運び入れると、根室達も南部が来たのを確認してその後ろについてきた遺体を見る。
「本当、君ってチート級だよね」
「何度も死にかけてんだ。まあ、これくらい力がねえと生き残れねぇよ」
呆れたように彼女は南部に言うと彼はそこで聞いた。
「何人生き残った?」
「私と三沢さん、あと青島と大泊」
「五人か…」
最初の頃に襲撃をした頃に比べればだいぶ死んだと思い、思っている以上に生き残っているとも思った。
「もうどこで何が起こっているのかもさっぱりわからないくらいにグチャグチャだったわ」
「そうだろうな…」
南部はそこでマトモな場所が分からないほど荒れたこの場所を見る。発煙弾を使ったのだろう。白燐の香りがまだ部屋に充満していた。
「今、みんなの遺体を探しているところ」
「手伝うよ」
「クラスメイトの顔覚えているの?」
「おう、学年二番舐めんじゃねえよ」
南部は少し余裕のある雰囲気で返すと回収した同級生の遺体を一箇所に並べていつの間にか止まっていたスプリンクラーを確認する。そして潮の香りが漂う弾薬庫を探索する。
「これじゃあ、完全に弾はダメだな」
そこで水浸しになった弾薬を見て彼は苦笑すると念話魔法で伝える。
「散弾が欲しいやついるか?」
彼は聞くと青島や三沢から弾薬が欲しいと返答があったので、そこで合流してボストンバックに入っていた散弾を全部渡した。
「助かるぜ。ここにある奴は湿気っちまってな」
「おいおい、全員が散弾銃装備かよ」
そこで南部は苦笑気味に青島達がいつの間にか散弾銃に持ち替えていたことに苦笑しながらも生き残っていた散弾を渡す。後で大泊だけは見つけた軽機関銃に持ち替えると言っていた。
弾薬の共有をしている背後で根室は円匙を使って瓦礫を退かせると、新しい見知った顔の遺体を見つける。
「手伝って。調布くんと盤城くんが居たわ」
そこで彼らは全員で瓦礫を退かして新しい同級生の遺体を確認すると、そこで根室は部屋に並べられた遺体の数を確認した。
「よし、これで全員よ」
そこで二〇人分の遺体を並べて全員の顔を確認する。
「終わったか」
「ええ、生き残ったのは今の所確認できていない」
「ああ、そうらしい。隠れているやつも居なさそうだ」
そこで南部はこめかみに指を当てて目を閉じながら言うと、彼女はそこで少し苦笑気味に聞いてきた。
「どうしたの?魔法で探しているの?」
「ああ、命を探している」
彼はそう言うと船内で根室達以外で動いている心臓の音を探す。
「…見つけた」
そして彼は生命の鼓動を確かに耳に聞いた。数は七つ。
「この先だ。食堂の辺りにいるな」
「事前の予想通りね」
「ありがたいことにな」
そこで彼は根室に聞いた。
「武器は?」
「こいつで行くわ」
そこで彼女は聞かれてサーベルを手に持った。それは横田が持っていたサーベルであった。それと彼女はを
「はっ、指揮官のつもりか?」
「だって、どうせまた貴方いなくなるでしょ?」
「大正解だ」
彼も空となった弾倉に新しい小銃弾を装填しながら他の生き残った面々を呼びつけて並べた遺体を見て指を鳴らすと、彼らは一斉に赤黒い血の塊によって丁寧に運ばれて行く。
「どう言う原理だよ」
「教えられんな。まあ魔法の一種だよ」
困惑する大泊に言うと、五人は弾薬庫で武器の確認と装備調達を済ませてから部屋を出る。全員がまだこの時代では珍しい厚手のゴム手袋を見つけ、血でどろっとしている散弾銃が滑らないように全員が自分に合うゴム手袋を嵌めていた。そして海水が染み込んだ絨毯を踏みながら根室が首を傾げた。
「でも結局、舞鶴達は見つからなかったのね」
「ああ、立川達二号車の面々はまだ出てきていないな」
そこで先に誘拐をされて行方不明となっていた彼女達。立川以下四名の姿はまだ確認できなかった。
「船に居ないとか?」
「おいおい、笑えないぞ」
「でも流石にここまできて出てこないってあるか?」
「でも誘拐したのは抵抗軍ですからね…どうなんでしょうか?」
根室達四人はそれぞれ武器に弾薬を装填して準備をしながら船内を進むと船内通路の先でガシャガシャと音を立ててくるのを確認した。
「来るぞ」
そこで南部は全員を部屋に隠れさせると、その音の正体は無数の足を虫のように動かして歩くターレットであった。
『何よあれ』
『自走ターレットだ。機関銃を装備している。動いたものに自動的に攻撃してくるぞ』
『何でそんな最先端な技術がこの時代にあるんだよ』
ドアの覗き窓から彼らかは口々に文句が垂れる。このターレットは戦場だと機関銃の嵐に揉まれてすぐに廃れてしまったが、自宅防衛用ではまだ十分に使われている代物だ。ましてや移動が制限されるこんな室内であれば逃げ場なんてない。
『奴は全周を見張ってる。動いたら撃たれるぞ。ついでに探知情報は使用者にすぐに伝わるからな』
『だるいって』
『厄介ね』
機関銃を装備している上に、現在位置を知られるのは避けたい彼らはそう言うと、ターレットが移動したのを確認する。
『だがな、こいつは対処法があるぞ』
『『『『?』』』』
そこで南部は首を傾げた根室達に言う。
『だるまさんがころんだ、だ。奴は動いたのに撃つからな』
彼は提案すると、全員が同じことを思った。
ーーこいつ、馬鹿か?
確かに理論ではそうだ。だが敵がどれほどの感度なのかが不明な状態でそれを行うのは危険極まりなかった。
『だるまさんは却下だ阿呆。ここまできて蜂の巣は勘弁だぜ?』
『じゃあどうするんだよ』
青島と大泊は言うと三沢が隠れた部屋を見てふとある提案を持ちかけた。
『皆さん。この狭い通路を使えませんか?』
『『『『?』』』』
そこで彼女の持ちかけた提案に全員は笑って承諾をすると、早速彼女はドアを蹴飛ばしてそれにターレットは気がついて機関銃を撃つ。
「ひゅい!?」
その時、勢いよく開いたドアに無数の弾痕が付いてドアが破壊されると、その時にドアが着弾時の反動で動いた。そしてその動きに反応して射撃を続行していた。
「行くぞ」
そこで南部達は次々とドアを蹴飛ばすとターレットは確認した胴体検知で機関銃を放つ。
ッーーー‼︎…!
すると放っていた機関銃がカチッと音を立てて停止した。弾切れである。
「それっ!!」
そこですかさず弾切れの状態のターレットに魔法を打つと、それは爆発して胴体が破壊をされて擱座して動きを止めた。
「よし、次行くぞ」
「ええ、行きましょう」
根室達もターレットの破壊を確認すると、部屋から出てきて薬莢と弾痕で埋め尽くされた廊下を見て先に進む。
「本当にこの先?」
「ああ、間違い無いぞ」
そこで根室が少し不安になって聞いてきたので、彼は確証を持って頷いた。すると彼らは吹き抜けの階段の前に出た。
「ここ?」
「ああ、事前の設計図の通りなら、この先が食堂だな」
そこで南部は持ち込んだ設計図を取り出して確認を行うと、そこで斃れている二人の兵士を見る。
「どうだ?」
「頭を撃たれてる。至近距離からやられたみたいね」
そこで事態を確認すると一人から小銃と弾薬盒が無い事に気がつき、撃った人物が奪ったのだと理解する。
「誰がやったんだ?」
「一人しか思い浮かばねえだろ。こんな事をするのは」
「…小野寺か」
彼にしては横暴なやり方だなと内心で思いながら開きっぱなしのドアを通過する。
「…ん」
その時、彼は他全員を止めて振り返って持っていた自動小銃の引き金を引いてドアのサッシを壊す。
「どうしたの?」
「魔導具だ。何人入ったのかが分かるようになっている」
そこで知らない魔道具を知って根室達は驚きながらドアを通過して行く。これで南部だけしか入っていないことになる。
「誰がこんな珍妙なのを設置したのかね」
「さあな。だが俺たちが来たことはバレたぜ」
そう言い魔導具の魔力を持った者が居なければ動かせられない特性を思い出して警戒を促すと、彼らの後を追うように遺体が部屋の前で運ばれて安置される。
「どのくらい経った?」
「…だいたい、六時間くらいだな」
そこで腕時計で彼らは作戦が始まってからの時間を確認すると、時間帯的に日の出の時間だと察して苦笑する。
「外は朝かよ」
「徹夜だぜ?全然眠たくねえけど」
「やめて?言ったら眠くなるから」
青島達はそう話すと、さらに奥に進んだ部屋で魔導具などに警戒をしたが、
「うおっ!?」
「臭っ」
「何この匂い?」
部屋に漂う悪臭に思わず顔を顰めてしまう。
「ガスマスクをつけろ。この匂いはやばいぞ」
南部はまさかあの戦争の匂いがこんな場所でするのかよと苦笑しながら目出し帽を外して購入していたガスマスクを付ける。真新しい酸素缶をつけたことで先ほどの不快なほどの匂いは抑えられた。すると会話が難しくなるので、全員が念話魔法を使う。
『何なのよこの匂い』
『腐敗と泥の香りだ。西部戦線じゃあよくある匂いだったぞ』
南部はそう言うと、根室達は彼だからこそ分かった知りたくなかった事実に苦笑すると、目の前に茶色い沼が出来上がっていたのを見た。
『こいつだな?』
その泥の塊は今にも崩壊しそうで、誰かと争ったような痕跡が壁や潰れた機械を見て察する。
『ここは独立した電源があるんだな』
そこでスパークが散っている機体を見てそう感じると、足元に感触を覚えた。
『うわっ』
『何だよこれ』
それは泥の山に埋もれるように多数重なっていた。その状態に大泊は思わず顔を顰めた。
『死体だ』
『それも古い。腐敗している』
三沢はそこで冷静に死体を見て匂いの正体を理解すると、その死体にはすでにどこから飛んできたのかハエがたかっていた。
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