戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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一七八話

この世界は不完全な形でできている。

それを認識したのは遥か昔の出来事だった。

 

「ああ、君の言うことは正しい。認めよう」

 

アルレッキーノはそこでサーベルを抜いて新しい弾倉に交換して頷く。

 

「この世界は不完全だ。その事を認知したのは随分と昔のことだ」

 

彼は徐に軽く昔話を始めると、その直後にサーベルを立てて突進をしてきた。

 

「空白の元素表。それが作られるよりも随分と昔の話なんだ」

「ああ、そうかい。昔話はよしてくれや。こっちは一ミリも興味ねぇんだわ」

 

そこで鍔迫り合いの所に機関銃を撃つと、カチッと音が鳴って静寂が一瞬過ぎる。

 

「(弾切れか…!)」

 

そこで空の弾帯が床に転がったのを確認すると、直後にアルレッキーノはサーベルに魔法式を組み込んでバターを切るように脇から伸びていたアームを斬った。

その直後に彼はそこ斬られたアームを握って投げつけると、彼は飛んできた機関銃を視界で捉えられない勢いで機関銃を三つに分断した。

 

「もらった」

 

その直後、斬撃が固まる一瞬を狙ってサーベルの刀身をゴム手袋を嵌めた手で掴んで、彼は直後に銃を放り投げて胸ぐらを掴むと、彼を魔法も用いて床に叩きつける。その直後に円匙を持ち出して叩きつけられたアルレッキーノに振りかぶると、当たる直前にその腕を掴まれた。

 

「…」

「…」

 

そこで二人は睨み合いながら振り下ろした腕が震える。体力的に言えば常日頃から体を動かしているはずの南部の方が力があるはずだった。しかし彼はここまでの連戦と魔力切れ寸前の状態である為、疲労から止めを刺すことができなかった。アルレッキーノが覆い被さる南部の腹を蹴り上げると、南部はそこで距離を取って後ろに転がった。

するとアルレッキーノはそこで出口付近まで投げ飛ばされた事に気がつくと、そのまま部屋の外に駆け出した。

 

「チッ、逃げんなクソが」

 

そこで彼も円匙と銃を手に取ってその跡を追いかけて部屋を飛び出ると、その直後に彼は魔法の爆発を確認すると、外の観測室でアルレッキーノが魔法を放ったのを確認した。

 

「魔石か?」

 

そこで敵方の狙いを察すると、そのまま彼は白い軍服を確認してから持っていた小銃で魔法弾を放つ。

彼の魔力量は増えない病であると言うのは知っての通りだ。その事でアルレッキーノも思わず顔を顰めるほどに魔法が使えない不利な状況を打開する為に魔石を探しに行ったのだろう。

 

「っ!」

 

その攻撃の後、アルレッキーノは部屋を飛び出して船室の廊下を走ると、海水で濡れた絨毯で足元が少し重くなって足がもつれそうになる。するとそこを容赦なく南部は持ち出した軽機関銃で追撃をする。そして背中から撃たれた彼は、そこで部屋に飛び込みながら彼に言う。

 

「私は異世界転移を使って多くの世界のモノを呼び寄せた。そして辿り着いたのが君たちのいる世界。空白の元素表が埋められた完璧な世界だ!」

「…核兵器が使えねぇ代わりに魔法があるんじゃねえのか?」

 

そこで鞄から手榴弾を取り出して投げつけると、すでに彼の姿は無かった。

 

「…」

 

そこで彼の後を走って追いかけると、階段を駆け降りる音が聞こえて従業員用スペースに入ったことが分かる。

 

「ボイラー室か」

 

彼はそこでドアを静かに開けて階段を降りると、下から拳銃弾で応戦されて階段に火花が散った。反撃で彼は鞄から手榴弾を投げ落とすと、その爆発の後に静寂が訪れた。

 

「この先に魔石は無いぞ?」

 

自分で部屋を抜け出し、あえて魔法が躊躇なしで使える状況に移動をしたアルレッキーノ。まさか神様が相手とは思わなかったが、それなら彼が非協力的な理由も理解できた。そりゃあそうだ、彼自身がより完成された世界を求めて異世界転移魔法を使ったのだから。しかしこの先に魔石がありそうな区画は無いはずだ。なぜボイラー室に向かった?

 

「憑依か?いや、どうだろうな…」

 

日本でのオタク活動の中で彼は色々とライトノベルやら漫画やらを読み漁ってきた経験から、こう言う形の敵と言うのはどう言う性質なのかが予想できた。

 

「…」

 

長い階段を駆け降りると、そこで船底から海水が溜まっているのを確認した。

 

「うおっと」

 

すると激しい音と共に船全体が揺れ始めたのを確認する。

 

「ヤベェな…」

 

金属が軋む音が聞こえ始め、その音に船体がパックリ割れてもおかしくはない。そもそも魚雷を四本も撃ち込まれてまともに船が形を保っているだけでもおかしな話なのである。普通は真っ二つに折れて沈んでいる。

 

「まだ保ってくれよ」

 

どう言う理由なのかは定かではないが、この船は漸く傾き出していた。

 

「っ!」

 

すると前に傾き始めた船体のボイラー室のドアを開けた途端に彼は撃たれて身を隠す。反射的に魔法を使って発射するが、

 

「っ!クソが…」

 

軽く魔法式が構築をされただけで消えてしまい、魔力切れであることを理解する。

 

「暑っ」

 

そしてボイラー室は煙突が塞がれたのに火が燃え続けていた影響で信じられないほど高音になっていた。サウナよりも酷い状態だと言える。彼は持っていた自動小銃や手榴弾を投げて攻撃を始める。するとその中を突っ切ってアルレッキーノはサーベルを向けてきた。

 

「どうやら其方も魔力切れらしい」

「うっせぇやい」

 

そして何度目かわからない鍔迫り合いをすると、そこでアルレッキーノは腹を膝蹴りして姿勢を崩した後に彼の胸元を掴んで横の石炭ボイラーの投炭口に突っ込もうとする。

 

「っ!!」

 

熱いボイラー室ですでに汗が大量に出ているが、そのまま彼は南部を火葬しようとしたのだ。その時、転がっていた石炭を持って近距離で殴りつけると、その攻撃はアルレッキーノの頭に命中し、皮膚を切って血を出すと共に石炭の山の中に顔を突っ込んだ。

 

「暑すぎる…」

 

ここには長くはいられない。なおさらアルレッキーノがここに逃げ込んだ理由が分からなくなると、彼はそこで不安定な石炭の山の上で煤だらけになった彼を見る。

 

「っ!!」

 

立ち上がった彼はサーベルを持って突っ込んでくると、それを足元の石炭の山を蹴って妨害する。この機関室にすら人がいないと言う事は、煙突を破壊した際に急激な温度上昇によって放棄せざるを得なかったからだ。そしてその後の戦闘に巻き込まれたのだろう。慌てて火を消したものの、まだボイラー室は大量の熱がこもったままだった。そしてボイラーで消化された石炭の残火が僅かに二人を照らしていた。

 

「どうする?お互いにほぼ見えない状況だ」

「どうだかな」

 

そこで気配と息遣いで敵の場所を確認すると、敵もこの熱で息が荒くなっていく。すでに頬に開いた銃創は修復しているが、今までの切り傷からの出血が祟ったのか、南部は僅かに表情を歪めながら立っていた。

 

「どうする、足元は可燃物だぞ?」

「どうするも無いだろう?」

 

そこで彼は徐にオイルライターを取り出すと、それに火を付ける。

 

「…自爆する気か?お前も私も死ぬぞ」

「試してみるか?俺は小野寺が吹っ飛ばしたマーチバルでも生き残ったんだ」

 

軽く脅すように彼は言うと、アルレッキーノは少し沈黙をする。

 

「…貴様はなぜ生きているのか不思議に思った事はないか?」

「ああ、何度も思ったさ」

 

そこで彼は今まで何度も感じた命の危機を思い出す。目の前の宿敵に憑依した男だってそうだ。あの燃え盛る城の地下室で、彼はこのサーベルを使って背中から一突きだ。

 

「じゃあ私から教えてやろう」

 

そのでアルレッキーノは火を付けたライターを握る彼に話す。

 

「君は最初の時点で死んでいる。あのマーチバルの時にな」

「…」

 

その時、僅かにライターの炎が揺れたのを見た。

 

「そして君は蘇った。君の世界の神の力を使って」

 

淡々と彼は述べていく。

 

「君の場合はアンデッドとも違って明確な意思がある。天に登りかけた魂を異界の神が押し戻したのだ」

「で?それがどうした」

「…」

 

平然と、衝撃も受けることもなかった様子の彼にアルレッキーノは沈黙をする。

 

「悪いな。んな事はとっくの昔から分かっていたんだよ。動揺を誘うならもっと良いネタ探してくれ」

 

南部はそう言うと、ライターで煙草に火を付ける。

 

「ふぅ…っぱ、美味くねえな」

 

敵から奪った煙草(ジタン)を吸って彼は思わずそう言うと、煙草ばかり吸っていた周りの環境を思い出した。

 

「…死んだ事に驚かないのか?」

「別に?俺だけかもしれんが、魔法やらアンデッドやら見させられたら蘇りだって想像できるだろ」

 

煙草を咥えながら彼はアルレッキーノに言う。

 

「俺はこの体が蘇りの死体でも驚かねぇし、舞鶴達が変な改造をされた事だって怖くはなるけど、驚きはしねぇよ」

「…」

 

南部はそこで休憩をするように煙草を一服。アルレッキーノはこんな可燃物に塗れた状況で呑気に吸っている彼に、彼等が船に乗り込んだ理由を察して話す。

 

「なぜ自爆覚悟で突っ込んだ」

「日本に帰る為だよ馬鹿野郎。それ以外にあるか」

 

軽く睨んで彼は言うと、そこで自分達以外に生き残りがいない状況に苦笑する。

 

「まあ、全部背負うって奴?」

「君に背負えるのか?他人の人生を」

「本当は超勘弁だわな。死ぬなら勝手に死んでくれ」

 

そう言うと彼は座り込む。

 

「でも一度約束しちまった手前、無為にしたら後が怖ぇよ。小山も死んで、小野寺が死んだと言うのなら、異世界人で生き残ってんのは俺だけだからな」

 

そう言うと、彼はまだ吸いかけの煙草を足元の石炭の山に放り投げた。

 

「っ!」

 

それが再開の合図だと理解すると、アルレッキーノはその煙草を弾き飛ばそうと突進をする。すると直後に最低限の魔力を回復させた南部から発火魔法が展開されてボタ山に火がつけられた。

 

「っーー!!」

 

直後に炎を巻き上げられ、逃げ出した南部を追ってアルレッキーノは身体中に火傷後を作りながらボタ山から出てきた。彼の体は身体中に火傷を負っていた。

 

「っ!?!?」

 

するとその瞬間、彼は一酸化炭素を一気に吸引した幻覚が頭を襲った。

 

「僕は…ああ、いや、俺か?私は…」

 

幻覚によって一人称がバラバラとなった彼。

 

「…他人に憑依しすぎて自滅したか」

 

そこで南部は持っていた小銃の引き金を引くと、アルレッキーノに発射する。しかし彼は本能的に障壁魔法を展開して防いだ。

 

「チッ、往生際が悪いな」

 

そこで燃えるボイラー室から一旦逃げ出すと、そこで銃剣を息も絶え絶えなアルレッキーノの身体に突き立てた。




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