戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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一八話

冬の極寒の山脈からこんにちは。ディルク大尉であります。

現在自分は新部隊創設の為の隊員選抜のために自分が考える中でもゾッとするほどきつい訓練をしています。

元々半分を落とすなんて簡単だと思っていましたが、思っていた以上に落とされずに内心ヒヤヒヤしております。皆さん思いのほか頑丈ですね。

さて、一二合目まであるこの登山ルートのうち、すでに八合目まで進んだ今日ですが、自分は登山道の影に隠れながらやってくる兵士達を待ち構えます。こっちは後九人落とさなければならない。

つまり、二個チームを脱落させる必要がある。山頂までは時間的に二日。それまでどこでどのチームを襲撃しようか・・・

 

そう考えていると耳許に各チームリーダーに配った無線機から通信が入った。

 

『こちら、Dチーム・・・大尉殿。我々は・・・辞退を所望します・・・』

「そうか・・・それは全員の意志か?」

『はい・・・我々も限界と判断しました・・・全員の承諾は取りました・・・』

「了解した。来た道を戻れ。八合目で落ち合おう」

『はっ、了解致しました』

 

そう言うと通信が切れた。これで残りは四人。申請をすればそれが一人でも、行軍を抜けることができる。命を大事にがモットーの俺は異変があれば報告する様にも伝えている。一応、今日も体調を見ていたが無事そうで何よりだった。

 

今回の訓練で厳選されるであろう部隊ははっきり言って仕舞えば最も危険な任務が与えられるだろう。ただでさえ、希少な魔法兵だけで編成される大隊。それも飛行可能な魔導演算機を使用したこの部隊は文字通り死地に向かうことになる。

上が何を考えているのかは定かでは無いが、まぁ西暦世界でも特殊部隊というのは酷使される運命にある。恐らくはそうなるだろう。

 

「やれやれ、神のご加護には感謝せんとな・・・」

 

あれ?その場合俺は神社に行くべきなのか?いや、でも神社なんて心当たりないしなぁ……教会に行くべきなのか?

 

「まぁ、後で追々考えるとしよう」

 

そう呟くと俺は魔導演算機を用いて空を飛んだ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「あれは・・・」

 

その時、空を飛んで行く大尉を見た。向かっているのは後方のさっきまでいた八合目のある方向だ。今日はここでテントを立てようと設置しようとしていた。

 

「誰か脱落者でも出たか?」

 

同じメンバーがそう呟く。どうやらチームメンバー全員が同じものを見た様だ。大尉はリタイア者が出ると後続に繋ぐまで必ず随伴している。なんでも『こんな落とす試験で本当に命を落とされたらたまんない』らしい。こんな落とす試験を作った大尉のモットーは『命大事に』だそうだ。その時俺達の思いは一緒だった。

 

ーーアンタが言うな!!ーー

 

そんな風であんな隊長から生き残る為に俺たちは必死だった。少なくともこの行軍も終わりが近づいて来たこの頃、俺達の団結力は高いと言える。

だからこそだろうか、メンバーの一人が突拍子もない提案をする。

 

「これ・・・今進めば大尉の妨害がないんじゃ・・・?」

「「「「!!!」」」」

 

その発想はなかった。確かに後続に随伴する今、俺たちを山頂まで続く山道に妨害者はいない。

大尉以外に飛べる兵士もいないし、監視する航空機の姿もない。行くなら今だ!!

 

それからの行動は実に早かった。展開しかけたテントを早急に片づけ、荷物を持って登山を再開する。

今のうちにできるだけ山頂に近づくのだ。途中、出くわした他のチームも、俺たちがかつてない程早く走って山頂を目指している事に気づき、暫くしても攻撃が無い事から大尉が居ないのだと直感的に感じ、テントを閉じて走っていた。

 

「山頂につけば俺たちの勝ちだ!!」

 

いつの間にか競争になっていることにも気づかず、俺たちはとにかく必死で走った。足場が不安定でも、兎に角山頂まで走る。今は陽が落ちているが、ランタンを付けると一瞬で居場所がバレるから付けていない。幸いにも大尉の示した山頂は場所が広い。暗闇の中、目が慣れると自然と足場がボンヤリと見え、次第に山頂の証である石を積み上げた三角錐状のケルンが見えた。

 

「おい!山頂だ!!」

「やった!見えたぞ!!」

「お、終わったのか・・・俺たち・・・」

「急げ!大尉が来る前に!!早く!!」

 

これがずる賢い?使える機会はなんでも使わねば俺たちがやられる。だったら戦友が倒れようと俺たちは前に進んだ。とても普通の兵士とは思えぬほどに貪欲に()()を狙った。

これは自分たちの生き残りをかけた戦争だ。どんな小さな希望でも貪欲に勝ちを狙う。たとえ戦友の犠牲であろうと・・・

 

 

 

今思えばこの時に俺達は()()になったのかも知れない。

後々の作戦に従事した多くの作戦で俺達は忠実な部下として隊長を支えていた。隊長の考えている事を全て見通すのは不可能だ。だったら我々は隊長の指示に従い、生き残る事を前提に戦争で活躍する事を決めたのだ。

這いずり回っても生き残ろうとする精神は恐らくこの時に生まれたのだろう。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

正暦一九三八年 一一月三日

ライヒ帝国 第五〇駐屯地

 

その日、帝都に程近い駐屯地である部隊の発足式がひっそりと行われていた。

壇上にはコルネリウス・フォン・ゲーリッツ行政参謀次長が立ち、文書を読み上げていた。

 

『ーーーーよって、現時刻を持って。ここに《第五〇〇陸軍降下猟兵大隊》設立を宣言する』

 

綺麗に整列した兵士達は全員降下兵特有の迷彩柄の降下スモックを身に纏い、降下用ズボンと降下用ブーツを履き。降下用シュターヘルムを被り、背中に金属製のノズルの付いた。帝国らしい角ばった見た目の箱を背負っていた。

帝国製半自動小銃や、最新鋭の汎用機関銃を持ち、五列横隊で並んでいた。その数は五〇。一般的な魔法科の大隊の編成人数であった。

 

『諸君等は、この戦争の終結の切り札である。

この戦争を終わらせる為の、きっかけとなる事を信じている。

我が帝国は君たちの奮戦に期待する!!』

 

文書を読み終えるとコルネリウスは壇上を降り、傍で待っていた俺を見る。俺はそのまま壇上に上がると壇上で立ち、隊員達を鼓舞する様に叫ぶ。

 

「諸君、この度《第五〇〇陸軍降下猟兵大隊》大隊長に任命された。ディルク・フォン・ゲーリッツ()()である!」

 

俺は胸を張り、腕を後ろに回して堂々と言う。

 

「諸君等はこの度晴れて帝国軍の魔法兵として活躍する機会を与えられる!!

これから向かう場所は戦地である!明日には横にいた仲間が倒れているかも知れない!翌日には居なくなっているかも知れない!

そこは地獄だ!

この世の地獄である!

しかし、人が死ぬのは世の理。ならば!奮戦し、忠義を尽くして満足の行く結果を出そうでは無いか!」

 

張りのある。堂々とした若くも、毅然とした声はコルネリウス以外にも来ていた少数の参列者達の印象に残らせる。俺は最後に声を目一杯大きくして言い放った。

 

 

「私は、諸君等が一騎当千の活躍をする事を期待している!!」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

発足式の後。演説を行った俺は正装のまま義父と駐屯地で対面する。

 

「良い演説だった。俺が教え込んだ甲斐があったな」

「ありがとうございます。義父さん」

 

駐屯地の執務室で俺は義父に頭を下げると、義父は愉快そうに俺を見ていた。そう、発足式の時の演説術は全て義父から教え込まれたものだ。選抜試験から戻ってきて二週間ほどの突貫工事だったが、来賓の印象には残ったようだ。

そこに俺はホッとしていると義父は俺に言った。

 

「さて・・・ディルク少佐。貴官に預けた部隊を早速生かして欲しい」

 

そう言うと義父は後ろにいた義姉じゃ無い部下がファイルから一枚の紙を俺の目の前に出した。それを読んだ俺は一言つぶやく。

 

「中将。最初の任地にしては少々危険では?」

「貴官の部隊を拝見したが、十分実戦で使えるだろうと判断する」

「・・・了解致しました。命令を受託いたします」

 

そう言うと義父は部下を引き連れて部屋を後にする。部屋に残った俺は後ろに居た大尉の階級章を持つ軍人に義父から渡された命令書を渡す。

 

「コンラート大尉、早速命令だ。出撃するぞ」

「ハッ!」

 

コンラート・ゲルニッツ大尉

この《第五〇〇陸軍降下猟兵大隊》の副隊長兼第一中隊隊長を任された兵士だ。西部戦線を経験済みであり、あの選抜訓練時に真っ先に山頂に走る事を指示した隊員であった。

俺はリタイア者を送っている間に山頂を目指したと言う貪欲さと、疲労していても適切な判断が下せたと言う結果から俺が直々にお願いした兵士だった。正直、リタイア者を使って山頂を目指したと聞いた時は驚いたものだ。流石にそれは想定していなかったが、それだけ生に貪欲というのか浮き彫りになった。だからこそ俺はコンラート大尉に自分の部隊の副官をして欲しいと直々にお願いした。あぁ、因みに残りの四人は襲撃を恐れて遠回りした影響で時間までに着くことができず、失格となった。ちょっと可哀想だが、仕方あるまい……

 

 

 

コンラート大尉は命令書を見るとやや気まずそうな表情をした。

 

「少佐、最初の任地がここでありますか?」

「おや、大尉は知っているのかね?」

 

そう聞くと大尉はどこか懐かしげに答える。

 

「はっ、私は元々ここの近くの部隊に配属されておりましたので」

「ほぅ?では、戦線への里帰りというわけだな?・・・詳しい立地はわかるか?」

 

その問いかけに大尉は至極真っ当な返事をする。

 

「はっ、あそこは地獄だと申します」

「はっはっはっ、あそこは全てが地獄だよ」

「少佐、それを言ってしまわれてはお終いです」

「それは違いない。・・・さて、何人が塹壕で吐くことになるかね?」

「はっはっはっ、新兵だった頃が懐かしいです」

 

ーー兵士は吐いてから始まるーー

西部戦線で生まれた言葉の一つにこの様な言葉がある。理由としては初めて人を殺すことに抵抗感を示し、死んでいく味方や、死臭からほぼ確実に塹壕で吐いてしまう事から生まれていた。実際、俺も初めて戦争をした後塹壕で盛大に吐いた。

 

そんな冗談を言いながら俺達は早速初任務の為に出撃した。




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