高純度感応石は魔導砲弾の芯に使う材料である。名前の通り不純物が限りなく少ない感応石であり、魔石と石英の絶妙なバランスで成り立っていると言われている。人工で作る技術が開発されているが未だ高純度な物は作れていないらしい。
高純度感応石は魔力伝導率がとても良く、魔力の無駄が殆ど出ない。
その為、帝国ではより大規模な砲撃が可能となるカノン砲級の砲弾の芯に使用され、管理はとても厳重にされていた。
共和国では魔石鉱山が少ない代わりに感応石鉱山が多く存在し、高純度感応石も多く算出していた。
共和国が一撃必中思想、帝国が数打ちゃ当たる思想なのも此処から来ていると思われる。
高純度感応石を産出する共和国は狙撃用小銃弾にすら高純度感応石を使用できるほど潤沢に保有している。その為、魔力伝導率が高い魔法弾を使用できた。一発の威力が高い共和国製魔法弾は次第に思想おも変化させ、共和国の定義における優秀な魔法兵と言うのは魔法適正の高い者となった。
それに対し、帝国は高純度感応石の産出量が少ない代わりに魔石は大量に取れる。
魔石にも高純度魔石と言う魔力保有量が高い物も存在しており、質の低い感応石に大量の魔力を注ぎ込んで魔法弾を使用していた。
その為、帝国における優秀な魔法兵の定義は魔力保有量の多い者となっていた。
その時、ふと俺は思ってしまった。
この高純度感応石と高純度魔石を等価交換する条約でも結んでおけば戦争は起こらなかったのでは無いか?
『帝国内の魔石鉱山を確保する為に共和国軍が侵攻し、戦争が始まった』
帝国ではそのように書かれており、記録でもそう言う事になっている。
しかし共和国では
『帝国軍が感応石鉱山確保のために共和国軍の陣地を砲撃し、侵攻してきた』
と言うふうに報道されており、意見が真っ向から対立していた。
まぁ、どちらも有り得そうな話な為、真相は闇の中だ。
魔力は血中を流れる血液のような物だと言われてきた俺だが、少しだけ違和感を感じていた。理由は共和国や帝国で使われた検査機にあった。
ヘルメットにコードを繋いだようなあの機械や魔力を流すのを見て、俺はそこで魔力は電波と同じ
魔力は脳波を増長させ、指向できる波であると仮定した場合。それはあるものに転用できるのでは無いかと考えた。
その物の名は
魔力が波の一種であると仮定すれば、魔力を発射し。返ってきた魔力を画面に映す。幸いにも帝国には遠距離に魔力を指向させる技術を有している。つい先月、帝国は魔力や電力を使用するレーダーの開発に成功し、早速採用された。それを応用すれば……
「……できた」
俺は卓上にデニスから送ってもらった高純度感応石を削って、先ほど購入した方位磁針に組み込んだ物を置いた。
感応石の特徴は魔法を覚えさせる事ができる事。それはつまり
三分後…
別の方向を向いていた方位磁針の向きが動き出し、自分の方を向いた。
「おぉ……」
思わず、俺は気持ちが高まってしまうが、それを押さえ込むと一旦魔力を切ってみる。すると針はそのまま元の方向に戻ってしまった。
「ふむ…いろんなグレードでやってみるか……」
これは面白い事になりそうだと思いながら俺はさまざまなグレードで時間を計りながら実験を繰り返し始めていた。
実験は夜遅くまで行われ、休暇は一瞬で溶けていった。そして、何度も実験をしていくうちにある結果が判明した。
「純度の低い感応石は魔力を流すと磁場が発生するのか……」
そう、純度の低い感応石はその余剰となった魔力が磁場に変換され、針に魔力を覚えさせやすいと言うものだった。
面白い結果を前に俺は部屋を動いて針の動きを見てみる。
俺のいる魔力の方向に反応して低純度感応石から磁場が形成され、針は俺のいる方向に移動していた。
「成功した……!!」
感応石の実験から擬似的なIFFが完成し、少しだけ小躍りしてしまう。
まぁ、実を言うと量産とかは考えていない。理由は感応石削るのが超絶面倒だったから。正直、神様から貰った技術が無かったら出来んかった。これ絶対機械生産無理だわ。削っている間に感応石が割れちまう。例えるならかたぬきくんの激ムズレベル程だと言えば分かるだろう。
こんなのちまちまと手作りで作っていたら絶対間に合わん。寧ろ効率が悪くなると思われ……
おまけにどのくらいの距離まで使えるかも分からない。少なくとも感応石が俺の魔力に反応するまでだが……
「少し実験してみるか……」
そう呟くと、俺は誰かが扉を叩く音が聞こえ。咄嗟に眼鏡をかけた。
この眼鏡も高純度感応石を削った時に出る石粉をフレームに削った溝に詰め込み、周りを高いけど開発されたばかりのシリコーンで薄くモールドした物だ。これで感応石粉から俺の魔力を頼りに魔力の逆位相を発生させて俺の中にある魔力を掻き消していた。
基本的に魔力を有していると何かと疑われる可能性がある。理由としては魔法は未知数の部分が多く、把握できていない魔法があるかもしれないからだ。例えば通信ができる念話のような魔法なんかがあれば一瞬で情報が筒抜けになってしまう。その為共和国もレーダー開発に躍起になっているようで、魔力を感じ取る為の装置を開発していると聞いている。
そんな装置ができても、この魔導具とも言うべきこれがあれば魔力を相殺しているのでバレる可能性は限りなく低かった。
まぁ、この眼鏡の逆位相の関係から魔力は波だとほぼ確信したのだが……
そんな魔力相殺眼鏡をかけて扉を開けると、そこには郵便屋が立っていた。
「郵便でーす。ヴァリ・オートランドさんであっていますか?」
「はい」
「書留をお渡しにきました」
そう言い、郵便屋は俺に少し分厚い封筒を渡し、代金を払うとそのまま出て行った。
「差出人は……」
封筒に書かれた名前を見た時、思わず目元が細くなってしまう。
「本国から……」
思わず封筒を切って開けてしまう。中には一冊の新聞が入っており、俺は中身を読んでいた。
「(帝国軍の新型戦車の開発が完了。……よって大規模攻勢作戦を四ヶ月後に開始する。一ヶ月以内に現任務を切り上げて帰国されたし)……いよいよ完成したのか」
新聞から暗号を読み取り、俺は少しだけ考える。
「(まだ輝に関する詳しい情報が把握できていない……だが、手がかりはある……)少し返答するか……」
そう呟いたヴァリは家の電話機で電話をかけた。
『……もしもし?』
「失礼、マルゼイ共和国領事館と間違えました」
『……はい、此方マルゼイ共和国領事館です。ご用件をどうぞ…』
「ペズ殿に『我、マーチバルの解法に至る』とお伝え下さい」
『……了解しました』
連絡を終え、受話器を置いた後。俺は電話機の前で一息つく。
マルゼイ共和国というのは帝国北部に実在する国の一つだ。だがその実態は帝国の傀儡国家であり、我々帝国側の諜報員が本国に連絡を入れるための通信所の一つだ。
「これで暫くは動かなくても良いか……」
この情報が伝わればギリギリまで帰らなくても良くなるかもしれない。そうすればカセリーヌ……蓮子とまだ話せる時間や、蓮子の魔力を自作IFFで覚えさせる事ができる。まだ実験段階だが、どのくらいの距離まで使えるのかやってみる必要があった。
「……まだ、明かすわけにはいかないか」
少なくとも今の俺は秘密調査員、それも共和国の敵である帝国の調査員だ。一種の諜報員でもあるのでバレたら一瞬んでお縄になるような人物だ。下手に隙を見せたらそこで終わり。
だから蓮子と接するのは避けたいと思っていた。だが、なぜあの時番号を教えてしまったのだろうか……これが分からない。
そもそもなんでこんなことを考えてしまったのだ……?
「……」
心の内にモヤが掛かる気持ちになりながら俺は先ほど作ったIFFの性能を確認する為にどうしようかと模索していた。
しかし、その前に結構重要な問題が立ちはだかった。
「あ、これどうしよう……」
そう呟いた目の前には余った感応石のブロックが積まれていた。そもそも感応石は軍需物資であり、そんな物を街中に捨てるわけにもいかず。どうしようかと考えていた。送り返そうにも、この感応石は帝国の倉庫から破棄寸前の古い物を譲ってもらった物。それは危険であった。
「……」
少し頭をポリポリと掻いた後、俺は余った感応石全部を取り敢えず加工して証拠隠蔽を図ろうと考えた。
あのヴァリさんとの食事から一夜経った。
やはりあの話し方、雰囲気、口元の動きを見て同一人物だと感じざるを得ない。
だけど、彼は死んでしまった。それは変わらない事実だ。
だけど確かめたい。もし、本当に彼だったら……
だが、もし本当の彼だった場合、私はどうすれば良いだろうか……
何を話せばいいのだろうか……
私はあの時、必死に反対したけどダメだった。見捨てる形になってしまったのだ。無理にでもついていけばよかったのに……
駄目だ。話す内容も思い浮かばないし、申し訳なく感じてしまう。
「……はぁ」
思わず部屋の受話器を取ろうとした手が止まってしまう。
カセリーヌという名前を貰ってから早二年。クラスメイトもこの世界での生活に順応して行き、何故自分たちが砲兵として働いているのかも忘れ始めていると言うのがあった。自分たちが苦労しているのは元の世界に帰る為だと、常に持ち歩いていた携帯などのあの世界から持って来た物を見て思い出すような状態だった。
それに、個人的にあの初めて来た時に渡されたあの飲み物も私は正直怪しいと感じていた。
何処となく薬っぽい味を感じ、一口飲んだが苦手なタイプだったので全く口につけていない。それに、あの飲み物は酒保に行っても売っておらず、後方にしか置いていなかったと言うのも怪しかった。クラスメイトはあの飲み物を飲むと楽しくなれると言っているが、その様子がとても不気味だった。
正直言って仕舞えば。私は上司であるジュール・ファブールという男を信用出来ない。それこそ小野寺輝よりも……
滅多に会うことはないが、時々会うとあの薄っぺらい笑みに不気味さを覚えるのだ。
よくよく考えれば自分の周りには多くの不安要素があると思いながらカセリーヌはベットの上に倒れて天井を眺めていた。
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