戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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三話

無理矢理最前線に送られた俺、南部茂はエリク・ピエールと言う共和国の名前と小銃を貰い西部戦線にいた。西部戦線に来て今日で三日目。早朝に自分は上官に叩き起こされました。

 

「おい新兵。出撃だ」

 

硬い地面で寝ていたので体はバキバキ。あぁ、宿舎の方がよっぽど過ごしやすかった・・・・・・

元々軍事好きで塹壕戦と言うのはこう言うものだと。そして今の世界の技術力は丁度戦間期あたりだと言うのもなんとなく察していたが、百聞は一見にしかず。本当にここは地獄なのだと理解した。

 

「ドム突撃分隊五名、準備完了です」

「ショーク偵察隊二名。いつでも行けます」

「エ、エリク二等魔法兵。準備整いました」

「よし」

 

自分はこの第一三〇小隊の一人となって前線を走り抜けていた。指揮官はコードル軍曹を筆頭に副官のドム伍長を合わせた十人体制だ。人数が足りないのはこの部隊は先の戦闘で二人を失い、その補充に俺が割り当てられたと言う事だ。

 

「エリク、お前は俺の後ろをついて来い。ドムは左右、ショークは敵兵を見張れ」

「はっ!!」

 

この世界で魔法師と言うのはなんとも器用貧乏な兵種だと分かる。偵察、支援砲撃、物資輸送に伝令、砲兵隊への座標指示etc・・・おかげでやる事が過多すぎる。戦闘処女の俺は赴任した日の最初の仕事が部隊全員分の食事を配給所から運んでくる事だった。戦場にとって数少ない娯楽の一つが食事の時間だ。特に温かいスープなどの料理が食べられる時なんか最高だ。俺は配給された食事を冷めないうちに全員分の皿にスープを入れて貰い前線に飛んで戻る。魔法瓶なんて便利な道具がないこの時代、スープは直ぐに冷えるからそれこそ筋力増強術式を使いたいくらいだった。

到着した頃にスープが冷めていると仲間からぶっ飛ばされることも多々あり・・・・・・

まぁ、そんなこんなで俺は今日が初実戦となった。塹壕からヘルメットを出し、顔を覗かせ、小銃に魔法弾を装填し、リア・サイトを覗く。

 

息が荒くなる。

今から自分はこの銃を使って敵を撃つ。

自分の手で人を殺すのだ。

 

息が荒くなっていると右横にいたドムさんが肩を掴む。

 

「落ち着け、新米。ゆっくりと息を吐け。暴発して俺らまで焼豚にされちゃあ困る」

「・・・・・・はい」

 

そう言われ、大きく息を吸うと俺は意識を集中する。

 

「すぅーーーはぁーーー・・・・・・」ドンッ!

 

小銃の反動が肩を伝わり、弾丸が放たれる。魔法陣を潜り抜けた弾丸は赤く熱し、手擲弾程の大きさとなり、塹壕内に着弾する。塹壕内から悲鳴が上がり、燃える音が聞こえる。それを合図にコードルさん達が飛び出す。

 

「行け!突撃だ!!」

 

コードルさんがそう叫び小隊全員が荒地を走り出す。銃弾が飛び交う中、俺は小隊長のコードルさんに守られながら走り抜ける。次の塹壕に滑り込むように入るとそこでは既にコードルさんが小銃の先の銃剣で敵兵に襲いかかっていた。鼻先に焼けこげる匂いがする中、その光景に呆然と仕掛けているとドム伍長の叫び声が轟いた。

 

「ボーッとすんな!新人!!」

 

その声に意識が戻ると俺は小銃のボルトを弾き、弾薬を装填する。するとドムさんから怒声が響く。

 

「馬鹿者!こんな状況で味方に当てたらどうなる!?銃剣を振り続けろ!」

「も、申し訳ありません!!」

「つべこべ言わず突っ込め!」

「は、はいっ!」

 

そう言うと俺は小銃を味方に当たらないように振る。時々発砲することもあったが緊張と射撃から外れることもままあった。

 

 

 

 

 

あれからどのくらい経っただろうか。気づけば自分は塹壕の中で激しく息を吐いていた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・オウッ!」

 

途端に吐き気がし、胃の中身を塹壕に出してしまった。それを見た他の小隊メンバーがあーあーと言った様子で吐いた俺の背中を摩る。そんな中、ドム伍長が話しかける。

 

「いずれ慣れる。それまで我慢しとけよ。新米」

「は・・・い・・・」

 

そう言い、他のメンバーが吐き出した胃液の上に持っていたシャベルで土を被せた。本来は不衛生だが、最低限の処置といった様子だった。そのまま吐き出した分の水を水筒から補給する事もできず、塹壕内で息を整えていた。

 

 

 

 

 

あの後、後続の部隊に確保した塹壕を任せ、自分たちは再び後方に戻っていた。初の戦闘で運良く戦果を上げたことにポンポンと肩を叩かれ嬉しそうにする兵士に囲まれ俺はその日の夕食をとっていたが、正直味を感じなかったし、戦闘時のショックで思わずむせてしまった。しかし、無理にでもスープを流し込んだ後。俺は塹壕内のベットで毛布にくるまって横になっていた。

 

その夜。俺は夢を見ていた。

それは昼間に行った前進で相手の塹壕に魔法弾を撃った後、相手の塹壕から聞こえて来た悲鳴だった。姿は見えなかったが、確実にそこで誰かが死んでいた。塹壕内の戦闘の時だってそうだった。俺はクリップを差し込んで弾薬を装填して人を撃った。

脳裏に悲鳴が聞こえる。自分が殺した兵達のーーー

 

すると不意に自分は体を足で蹴られて起こされた。

 

「喚くなら遠くで寝てくれ・・・」

 

その目は面倒そうで半分呆れている様にも見えた。寝ていた所から起き上がると他にも同じ様な目をした隊員達がいた。どうやらうなされていた様で、睡眠の邪魔をしたみたいだった。仕方なく俺は気分を晴らす為に塹壕の外に出て空を見ていた。

その空はとても綺麗だった。星が煌めき、天の川を作っていた。なんとも綺麗な光景に思わず白い息をしながら見惚れてしまっていると、

 

「そこで何してんだ。新米」

 

ドム伍長が声をかけて来ました。その片手には湯気が出るカップを持っており、匂いからしてコーヒーのようだった。

 

「伍長・・・」

「寝相がひどくて追い出されでもしたか?」

「あ、いえ・・・そんな事では・・・」

 

するとドム伍長は自分の横に座るとコップを見せながら話し出した。

 

「さっき酒保で買ってきたコーヒーだ。いるか?」

「・・・・・・大丈夫です。上官から奢られるなんて・・・」

「何言ってんだ新兵。初戦闘、初勝利の祝いだ。飲める時に飲んどけ」

 

そう言われ、再びコーヒーの入ったカップを出され、少々申し訳なくなりつつもコーヒーを分けてもらった。

 

「こんなコーヒー如きで乾杯ってのも気が締まらんな」

「そう・・・ですね」

 

熱々のコーヒーを飲んでいると伍長は不意に話しかけてくる。

 

「なぁ、新米。お前さん、年は?」

「十七です」

「十七か・・・俺ぁ、そん時何してたかねぇ・・・」

 

そう言い、ボリボリと頭をかく伍長。すると徐に口を開く。

 

「お前さん。この戦争を見てどう思った?」

 

その問いに俺は今までここで見て来たことを率直に答えた。

 

「・・・・・・ここは地獄だと思いました」

 

蛆が蔓延る死体が無数に転がり、異臭が立ち込め、いつ来るか分からない砲撃に備え、一瞬の気も置けない。敵味方の砲撃の中を、機関銃の銃撃の中を突っ込み、隣で味方が撃たれようと前進しなければならない。いつ自分がああなるのかも分からず昼の戦闘は実を言うとほとんど覚えていない。

思った事を口に出すと伍長は俺の頭をガシガシと撫でながら俺に言った。

 

「何、初めはそんなもんだ。普段から人を殺す事に慣れるなんてないだろう?それが普通なんだ。・・・それよりも俺はお前さんみたいな若い奴がこんな前線に派遣された事に危機感を覚えたな・・・・・・」

 

そう言うと伍長はかつてのこの場所の光景を呟く。昔のここはただの平原で草木が生い茂っていたそうだ。だけど今は水たまりや土が剥き出し、地面は黒くなり、至る所で地面が爆発し、死体が転がる。空中でも対空砲火の曳光が見え、時々空中で爆発する。

その光景を眺めていると伍長が去り際に俺に言った。

 

「今日は寝とけ。いつ出撃かわからんからな。あ、間違えても外で寝るなよ?低体温症になるからな」

 

そう言い、伍長は小隊長のテントに入って行った。あまり小隊長と話したことがない俺だったが、小隊長がどんな人物なのか少し話してみようかと思っていた。

 

 

 

 

 

翌日、やや寝不足気味の俺は今日も砲撃の中息がやや荒くなりながら小銃を持って塹壕の中で息を殺していた。三十分ほどの砲撃が行われた後、前線指揮官の笛が鳴り響く。それと同時に一斉に兵士が塹壕から飛び出し、機関銃の餌食となる。

登っている最中に撃たれて塹壕の中に落っこちる者。

前線を走っている最中に機関銃に足を飛ばされたり、腕を飛ばされて、地面に倒れる者。

敵陣地からの砲撃で吹っ飛ばされる者。舞い上がった土は俺の頭に降りかかり、砲弾が着弾した時の衝撃が腹に来る。すると軍曹から指示が飛んだ。

 

「新米!あそこの拠点を吹っ飛ばせ!ドムは警戒!急げ!!」

 

辛うじて残っていた廃墟の瓦礫に隠れながら小隊が滑り込むと俺は魔法弾を装填し、照準を合わせる。

 

「ーーーー!」ドンッ!

 

発射された魔法弾は相手の機関銃座を破壊し、敵兵を倒す。排俠し、次の弾薬を装填すると次の指示を聞く。

 

「次!二時の方向!撃て!」

 

そして引き金を引くと魔法弾が着弾して爆発する。弾倉が空になるまで魔法弾を放つと近くにあった機関銃座は破壊され、味方の前進に寄与していた。しかし・・・・・・

 

「砲撃来るぞ!!」

 

軍曹がそう叫んだ直後、相手の砲撃が此方に飛んで来た。どうやら個々に魔法兵とがいるのがバレた様でどこかに観測手がいるのだと確信し、廃墟から撤退する。走って陣地に戻る途中、重砲の攻撃で地面が揺れた。

 

「うおっ!?」

「走れ!塹壕まで!くそっ!観測手はどこにいる?!」

「・・・・・・居たぞ!あそこだ!」

 

偵察兵の一人が空に浮かぶ小さな影を見つけた。そこには黒い軍服に身を包んだ一人の魔法師がいた。敵の、帝国軍の魔法師だ。距離は五百メートル。自分の持っていた小銃では届かない。どうしようかと考えているとふと地面に転がっていた死体の影に隠れていた物を見た。それを見た俺は少し考えた後、死体を退かすとその銃を手に取った。

 

「・・・・・・ごめんなさい。借ります」

 

そう言い、死体の影に隠れていたベルティエ小銃を手に取ると魔法師に照準を合わせた。

 

「ふぅ・・・・・・」

 

そして引き金を弾くと魔法師の腹に弾丸が当たり、観測手の魔法師は地面に降りて撤退して行った。そしてそのまま砲撃が来ることもなく俺は味方の塹壕の中に戻って来れた。




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