戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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三一話

 

 

 

 

 

「ねぇ、貴方は茂君なの……?」

 

 

 

 

 

日本語で問いかける蓮子は俺の顔を優しく撫でていく。

酔いが回った勢いか、故意でしたことか。

詳細は不明だが、そう問いかける蓮子の目は確信めいてる様にも、望んでいる様にも見えた。

 

俺は一瞬だけ固まると、蓮子が更に口を開く。

 

「私はね……待っているんだよ。茂くんがまだ何処かこの世界で生きているんじゃないかって……。

 

 

 

 

 

だって茂くんが死んだ時、()()()残っていなかったんだから……」

 

 

 

 

 

「……」

 

蓮子はそう言い、少し間を置くと少しだけ蓮子の目元が緩んでいた。

 

 

 

 

 

寒い深夜のルテティアで二人はお互いに見つめあっていた。そこで茂は理解する。

 

今まで蓮子を前にした時、何もしないでしまった事に……

蓮子が輝に殺意を抱いている事に悲しさを覚えた理由を……

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

少しだけ間を置いた後に、俺は付けていた眼鏡を取った。

周りに人がいる気配は無いし、何より今はありのままの姿で話がしたかった……

 

「二年ぶり……と言えば良いのか?」

「何年でも良いよ……」

 

俺は日本語でそう言うと、蓮子は少しムッとした表情を浮かべた後に両手を広げると俺に抱きついた。

 

「無事で良かった……本当に…」

 

そう言うと俺は思わず蓮子の頭をポンポンと軽く叩きながら答えた。

 

「無事では無かったがな……九死に一生を得たのさ」

「でも、こうしてまた会えた…生きていたんだもの……」

 

そう言うと、蓮子は俺の胸の中で小さく啜り声を出していた。

俺も少々申し訳なく思いながら蓮子の思うままにさせる。すると蓮子は目に涙を浮かべながら俺に言った。

 

「茂くん……私は貴方が好きです。ずっと…ずっと前から……」

 

蓮子の告白を受け、俺もそんな蓮子に答える。

 

「ありがとう…蓮子……俺もだよ」

 

そう言うと蓮子は嬉しそうに俺に抱きついた。

 

 

 

深夜のルテティアの一角。一組の男女が人気の無い道でお互いの再会に喜び、そして互いに心の内に育まれた愛を確認した。

 

今ここに、ほんの僅かな平和が流れていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……それで、これから私はどうすればいい?」

「?」

 

しばらく抱き合った後、蓮子は茂に聞く。その問いに蓮子は少し微笑みながら言った。

 

「茂くんがわざわざ身分を隠してまで共和国に来る理由。多分、秘密の仕事でもしているんじゃないの?」

「ハハハ……まぁ、詳しくは俺の家で話そう」

「うん、そうだね」

 

そう言うとすっかり酔いが覚めた蓮子は一緒にアパートまで歩く。

その途中で蓮子は嬉しそうに明るい声で茂に話しかける。

 

「良かった……カクテルを飲んだ甲斐があったなぁ」

「ん?」

「ほら、私が頼んだカクテル。茂くんなら分かってるんじゃない?」

 

蓮子がそう言うと茂が気まずそうに表情を浮かべた後に答える。

 

「……すまん、カクテルは詳しく知らないんだ…」

「…….えぇ〜…」

と言う事はさっき飲んだカクテルの意味もわかっていないと言うことになる。その事実に思わず蓮子は笑ってしまった。

 

「なーんだ。茂君は知らなかったんだ…相変わらず変な人……」

「……あぁ、俺は変人だよ。少なくともクラスメイトから気持ち悪がられるくらいな」

「大丈夫、頭のいい人は大体頭おかしいから」

 

そう言うと蓮子は褒めているのかよく分からない回答をしながら道を歩く。

 

 

 

因みに、蓮子が飲んだカクテルの意味は、

アプリコットフィズは『振り向いてください』

プレリュードフィズは『真意を知りたい』

コープスリバイバーは『死んでもあなたと』

XYZは『永遠にあなたのもの』

と半分ヴァリが茂であると思った上でチョイスした物だった。

 

 

 

告白も兼ねていたのだが、まさかヴァリがカクテルを知らなかったのは驚きだった。

そして、ヴァリが茂であると分かった今。本当はある酒を飲もうと考えていた。

 

「ーーー入ってくれ」

 

そう言い、茂は部屋に蓮子を招き入れる。前にワインを飲んだ時とは違い、非常にゆったりとした気持ちで蓮子は部屋に入った。

茂が扉を閉じると、蓮子は早速茂に聞いた。

 

「で、茂くんは今までどうしてたの?」

「まぁ、話すと長くなるんだが……ちょっと待ってくれ」

 

そう言うと茂は地面に立方体の箱を置くと、スイッチを入れた。何をしているのかと思うと、茂が答えた。

 

「これで盗聴対策はした。これで誰にも聞こえる事はない」

「すごい…そんなの持っているんだ」

「俺の自作だよ」

「やっぱり天才は違うね」

 

そう言い、まさか自作で防聴装置を作ったと言う茂に思わず感嘆の声が漏れる。しかし、茂にとってはこれくらい簡単にできる技術であった。

茂の異常さの片鱗を見つつ、茂は今まで起きた事全てを蓮子に話した。

 

マーチバル攻勢の後。死にかけの重傷を負いつつも帝国兵に助けられ、そのまま訳あって帝国市民になった事。

その後は帝国の魔法兵として働き、今は指揮官をしている事。

共和国には白い悪魔の調査にやって来た事など、全てを話した。

 

 

 

 

 

話を聞き終え、蓮子は興味深そうに頷きながら呟いた。

 

「成程…茂くんも随分すごい歩みっぷりだね。まさか帝国の少佐だなんて……」

「少佐は成り行きさ、養子になった家がたまたま軍人のいい家柄だったんだよ」

 

そう言い、茂は久しぶりに日本語で話しながら来ていたコートを脱ぐ。すると中に仕込んでいたものを見て思わず蓮子が驚いていた。

 

「わぁ、武器持っていたんだ……」

「何があるか分からんからな。最低限は持っているよ」

「だからって散弾銃は過剰火力じゃない……?」

 

そう言い、ショルダーホルスターに入っているワルサーPPKや、改造されたブローニング・オート5を見ていた。

 

「と言うか散弾銃持ってて動きづらくないの?」

「上手くすれば慣れるさ」

 

そう言い、茂は武器を置くとそのまま部屋のテーブルに持っていた鞄を置く。すると、蓮子は茂がここに来た理由を思い出しながら話す。

 

「うーん、白い悪魔ねぇ……まぁ、確実に()()()だろうね」

 

お互いに認識が同じだからこそ、茂は蓮子に聞いた。

 

「所属部隊は知っているか?」

「当然、同じ部隊だし。名前は《独立魔導砲兵大隊》よ」

「偽名は?」

「当然貰っているよ。ヘイルダム・ルメイって。階級は茂くんと同じ少佐」

「なんだその名前?ギャラルホルンでも吹く気かよ……」

「そう言う茂くんだって名前から復讐する気満々じゃん……」

 

互いに元ネタを知っているために俺と蓮子は少しだけ笑ってしまう。しかし、そこで俺は少しだけ本音を漏らした。

 

「俺は、アイツを追っている。俺の慕ってた上官があの砲撃で殺されてな…だから追い詰めて、殺すつもりだよ……」

 

つい漏れてしまった俺の気持ちに、蓮子は耳を傾け。同じように自分の心情を語る。

 

「ーーーそっか…私も、もしヴァリが茂くんじゃなかったらたぶん。……同じ感情を持っていただろうね……」

 

蓮子の話を聞き、やっぱり正体を明かしといて良かったと思う茂。

 

少々申し訳ないが、今の蓮子はいわば依存状態に近い。そんな状態ならば、裏切る心配が低い。協力者にはもってこいであった。

 

 

 

 

 

そんな事を考えつつ、俺は蓮子に言った。

 

「蓮子、こんな時になんだが……さっきの白い悪魔の情報提供をしてくれた代わりに何が欲しい?」

 

そう聞くと、蓮子は少し考えた後に俺を見ながらこう言った。

 

 

 

「君と一緒に居られるまで、ずっと此処に住まわせて欲しいなぁ」

 

 

 

そう蓮子が言った。

それはお安い御用だが、蓮子に監視の目はないのかと聞くと、彼女は答えた。

 

「私は一般の兵士よ?目をつける必要がどこにあるの?」

「それもそうか……」

 

監視役の人員も勿体無いくらい最近の共和国は警備が厳しい。寧ろ俺が国防省で働けているのが可笑しいくらいには……

実際何人か捕まっているのを目撃しているし……

禁術追跡の方は遅々として進んでいないらしい流石に三年近くの前の魔力反応を探すのは至難の業だそうだ。

蓮子に聞いて見ても『分からない』と返され、俺も少々頭を悩ませていた。

 

「じゃあ、シャワー借りるね〜」

「ああ、分かった」

 

そう言うと蓮子は部屋のシャワーを浴びに向かった。

一応このアパートは二人くらいなら余裕で住むことが出来るくらいの広さなので問題なかった。ただ、同じ部屋に同年代の女性がいると言う経験が全くと言って良いほどない為に少々気まずかった。

 

少ししてシャワー室から体に大きめのタオル一枚を巻き、艶めかしくしながら熱った肌と濡れた髪を拭いている蓮子が現れた。

流石は学校でも人気のあった同級生、スタイルも容姿も抜群だ。思わず見惚れてしまうよ……と言うかそんな格好で恥ずかしく無いのかと思っていると、蓮子は少し無邪気な雰囲気を出しながら言った。

 

「あぁ、ごめんね。ちょっとタオルを借りたよ」

「あ、あぁ……」

「早く茂くんも入ってよ」

「わ、分かったから……」

 

そう言い、蓮子は俺の背中を押してシャワー室に押し込んでいた。

蓮子に言われ、シャワーを浴び。部屋着を着た後に部屋に入って戻ると蓮子は先程と変わらず、それどころか部屋に置いてあったダイヤモンドリリーを持ち出して待っていた。

 

「おいおい、寛ぎすぎだろう……」

「良いでしょ?せっかくの再会だし、この前はゆっくりと飲めなかったんだし……」

 

そう言い、タオル一枚と言う格好で過ごす蓮子に俺は思わず目を逸らしそうになってしまう。

すると蓮子は俺に聞いて来た。

 

「さっき見たら凄いお酒が一杯あったけど……全部飲んでるの?」

「そうだな…美味い酒か、甘い酒をよく飲んでいるな」

「ふーん……因みにシェリーはある?」

「あるぞ、欲しいのか?」

「うん、持って来て」

 

そう言い、蓮子の要望に合わせて部屋の戸棚から一本のシェリー酒の入った瓶を持ち出す。

 

「おー、やっぱりあったんだ。茂くんも酒豪だね〜」

 

そう言いながら蓮子はグラスに注ぐと、そのままショットで飲み始めた。いや、結構貴方も酒強いぞ?既にカクテル四杯行っているのにこれだぞ?

そんな事を思いながら俺と蓮子はショットでシェリーを飲み始める。流石は酒精強化ワイン、一杯で蓮子も酔いが回って顔が赤くなっていた。

かく言う俺も体が熱くなって来ていた。

 

酒が入った後、蓮子が徐に立ち上がるとそのままベットに倒れ込む。そして甘える様に声を出した。

 

「茂く〜ん。来て〜」

 

そう言い、なんとなくこのまま駄々を捏ねられそうな気がした俺は椅子を立ち、蓮子の側による。

 

「風邪引くぞ、そのまま寝たら……」

 

そう言い、ベットに座った時。後ろから蓮子に抱きつかれた。

柔らかい感覚が背中に感じ、火照った体温も感じる。すると、蓮子は抱きついたまま俺に言った。

 

「茂くん…さっきシェリーを頼んだ意味。教えてあげるよ」

「?」

 

すると蓮子は俺にシェリーのカクテルの意味を教えてくれた。

 

「『今夜はあなたにすべてを捧げます』」

「……」

 

すると、蓮子は更に俺に言った。

 

「覚えておくと良いよ。シェリーは夜のお誘いの意味があるって事を……」

 

そう言い、蓮子の求めている事に、思わず俺は聞き返してしまう。

 

「……良いのか?俺で」

 

すると、蓮子は答えた。

 

「うん、その為に取っておいたんだから……」

 

蓮子の返答を聞き、俺は覚悟を決めて部屋の電気を消した。まさか俺があっち側の人間になるなんて思うだろうか?

 

 

 

 

 

その日の夜、アパートの一室では愛に溢れた声に包まれていた。

 

 

 

 

 

 




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