戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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三二話

朝日がとても眩しい。

目が覚めると、俺はふと横を見る。

するとそこには蓮子が布団を巻いたまま寝ていた。下着を付けている様子はない。

このまま起こすのもアレだからと静かに起き上がり、シャワーを浴びる。

 

そしてシャワーを浴び、スーツに着替え始めた頃。蓮子が目を擦って体を起こしていた。

 

「よく眠れたか?」

 

そう呼びかけると、蓮子は嬉しそうに答えた。

 

「うん……」

 

そう答える蓮子に、俺はホルスターを背負いながら言う。流石に散弾銃は持って行かないが、拳銃は常に持ち歩いていた。

 

今日も今日とて仕事だ。昨夜聞いた情報を元に情報共有と整理、出来るならば詳しい配置などもまとめ上げなければならない。

武器を隠し持ち、ジャケットとコートを羽織る。そして仕事に必要な鞄と帽子を手に取り、最後に俺がヴァリ・オートランドと言う仮面を被る為に必要な眼鏡を持った。

 

「鍵は置いておく。……尾行には気をつけろよ」

「ええ、分かっている。……行ってらっしゃい()()()()()

「あぁ……」

 

そう言い、俺は彼女に見送られながらアパートを後にした。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

昨夜の告白から初夜までの動きを思い返しながら今日も送られてくる志願兵と戦死者情報を整理する。そして俺が部長から資料取りに行かされる際に資料室でついでに蓮子から聞いた輝の偽名を確認する。

 

「(ヘイルダム…へイルダム……)」

 

あまりにも特徴的過ぎる名前だった為に直ぐに名前は見つけた。

続いて所属部隊に関する情報を集めようとしたが、時間がかかりそうだった為にとりあえず後にする事にした。チラ見したが、やはり魔法兵の記述はそこにはなかった。

仕事場に戻り、先ほど見た情報を思い返しながら印刷された手紙を蝋封印する。すっかり仕事にも慣れ、俺はテキパキと仕事をこなした後に俺はその時部長から呼ばれた。

 

「ヴァリくん、君に電話だよ」

「はい?わ、わかりました」

 

一体誰からだろうか?

そう思いながら俺は部長から受話器を受け取ると相手は……マルゼイ共和国領事館からだった。

 

『こちらマルゼイ共和国領事館です。ヴァリ・オートランドさんで会っていますでしょうか?』

「はい、ヴァリ・オートランドです」

 

驚きの相手に俺は一瞬固まりそうになるも、受け答えをする。

 

『書類に不備がありましたのでご確認の為に今日の夜にお越し頂いてもよろしいでしょうか?』

「……了解しました」

 

そう言い、受話器が切れると俺はそのまま仕事に戻って夜を待つ事にした。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その日の晩、俺はルテティア市内の道を歩く。今日の合流地点に指定された場所であった。

一瞬壁に背を預けた俺はそのまま待っていると目の前を一人の男と思わしき人物が通り過ぎ、ヴァリはそのまま建物を後にする。

着ているトレンチコートのポケットに一個の封筒が入っており、ヴァリも連絡係に白い悪魔の名前が判明した事、所属部隊の旨をやや乱雑に書いた紙を通り過ぎた一瞬で渡していた。

封筒を切り、中身を見た俺はそのままアパートに戻る。

アパートでは蓮子が片手に数少ない荷物を持って部屋で俺を待っていた。

 

「あ、お帰り〜」

「あぁ、ただいま」

 

慣れない空気だが、俺はそのまま荷物をおくと、蓮子に言った。

 

「随分と少ない荷物だな」

 

そう言い、数着の衣服しか入っていない鞄を見ながらそう呟く。すると蓮子は答える。

 

「まぁ、戦場に行った後はいつ死ぬか分からないし、荷物は少ない方が移動しやすいからね。茂くんだってそうでしょ?」

「あぁ、そうだな……」

 

そう言い、俺は机に荷物を置くと蓮子に言う。

 

「すまん、少し仕事で出る。すぐに戻るだろうが、置いてある酒は好きに飲んでいてくれ」

「ん、分かった」

 

そう言い残すとヴァリは銃を仕込んで部屋を出ていく。

 

 

 

 

 

部屋に残った蓮子は茂が帰ってくる事を祈りながら部屋に置かれていた数本のボトルの中から適当に選ぶとグラスに注いでいた。

 

もう我慢しないことにした。

昨日、思いを伝えられた私は茂くんが何をしていようと良い。私はただ彼のために尽くすのみだ。

私は共和国陸軍砲兵隊の兵士カセリーヌ・モンロー中尉と言うもう一つの顔もある。小野寺輝に対する殺意は大分薄れたが、茂を殺そうとした事に対する怒りはまだ残っていた。だけど、今はそんな事はどうでも良かった。茂が生きてくれていた事だけでも自分には変えられない喜びだから、茂と共過ごす時間を大切にしたかった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

帰り際に渡された封筒を読み、俺は夜のメトロ駅に向かう。今日は情報屋からの連絡を受けて物を取りに行く任務だった。

俺に取りに行かせるとは、よほど人手不足なのだろうと感じながらその人物が来るのを待っていた。

終電後の人のいない改札を通り、真っ暗なホームのベンチに座った俺は少し待っていると深夜の回送列車が通過していく際に音に紛れて一人の人物がベンチに座った。その人物は俺を見て分厚い封筒を渡しながら言った。

 

「……例のものさ。中に入っている」

 

そう言い、渡された封筒の中身を見た俺は返答をする。

 

「金は渡そう。だが、その前に……」

 

その瞬間、ヴァリは懐からワルサーPPKを取り出した。

 

「お前さん、団体客のバスガイドでもしていたか?」

「っ!?」

 

その瞬間、ヴァリは拳銃の引き金を弾き、構内に銃声が轟いた。

その直後、地下鉄の柱の裏から呻き声が上がる。

 

「走れ!」

 

その瞬間俺と情報屋は線路に飛び降りた。

深夜の地下鉄と言うこともあり、闇の中を後ろから追いかけてくるのは共和国側の人間。しかも拳銃を適当に撃って来やがった。

 

「持っててよかったブロだな……」

 

今度連絡係に出会ったら厳しくなった理由を聞いてやる。

そう思いながら俺は懐からブローニング・オート5を取り出す。ここは狭い空間。散弾を撃つには打ってつけだ。

共和国の連中も散弾銃を持ち出した事に驚愕した様子を浮かべ、一瞬足が止まってしまった。

 

その瞬間をヴァリは逃すことはなかった。

引き金を弾き、地下鉄坑道に甲高い銃声が轟いた。

 

「あ…あぁぁあああ!!」

 

そしてそのまま牽制のために引き金を連続で引く。結構反動がやばくて両手で押さえないとキッツイが、距離が離れていた事もあって散弾がいい具合に散らばっていた。

そして五発撃ち切った後も共和国の連中が出てくること出てくる事……

直ぐに黄色く塗装された12ゲージ散弾を突っ込んだ後、迫ってくる共和国の連中の真ん中目掛けて引き金を引いた。

中身はスラッグ弾に似ているが、地面に突き刺さった瞬間に坑道を真っ白にするほどの眩しい閃光が彼らに襲いかかった。

 

「ぐあっ?!」

「撃つな!閃光弾だ!!」

 

誰かがそう叫び、同士撃ちを避ける様に叫ぶ。

視界が元に戻ると、そこにヴァリと情報屋の男は居なかった。

 

「くそっ!逃げられた……!!」

「遠くに行っていないはずだ!探せ!!」

 

そう叫び、地下道を大勢の共和国の連中が走り去っていった。

 

 

 

 

 

「はぁ…ひでぇ目にあった……」

 

人気の少ない裏路地を縫う様に走るのはヴァリと先ほどの情報屋だった。

閃光弾を放った後、地下鉄から水道に移動して、そのまま人気のない場所で地上に上がっていた。

 

「(今頃はデコイに釣られて離れていっている……かな?)っ!!」

 

一瞬、目の前の道を走っていく者がおり、一瞬だけビクリとなってしまった。

その時、情報屋の男が俺に話しかけて来た。

 

「なぁ、金はどうなったんだ?」

「……ここにあるさ」

 

そう言い、フランクフランの札束を放り投げた。

すると情報屋は息を吐きながら呟く。

 

「しっかし死ぬかと思った…あんな大勢追いかけてくるとはな。あんな写真如きで……」

「写真?」

 

すると情報屋は気になる情報を話し出した。

 

「俺が戦場にカメラ持って行った時の話だ。ある砲兵隊の写真を撮ったんだが、怒られちまってよ。しかもその時の剣幕と言ったらまぁ凄かったのさ」

「……その話、詳しく聞いても?」

 

そう言うと、情報屋は俺を……正確には俺の懐を見ながら答える。

 

「条件次第だな」

「先ほど地下鉄から地上に逃したのででどうだ?」

「うむ……仕方ねぇか…共和国の連中も撒いた様だしな」

 

周りに来なくなった共和国の人員を皆からそう言うと、情報屋は詳しくその時の状況を話してくれた。

 

「記者としてこっそり行った時のことだ。

ある砲兵隊が後方でカノン砲を撃っていたんだが、驚いた事にその砲兵隊は使う砲弾が全部魔導砲弾だったんだ。

それで変に思っていると一斉に砲撃してよ、帝国軍陣地を一斉に吹き飛ばしやがったんだ。いやぁ、あれは良い宣材写真になると思ったんだがな……。

それで写真を撮ったら近くにいた憲兵っぺぇ人に捕まってよ、フィルムを捨てろって言うから偽モンのフィルム捨てたのさ。

それで事なきを得たと思っていたんだがな……」

「そうか……」

 

話を聞いた後、俺は少し考えた後その場を去ろうとした時に情報屋が俺に話しかけた。

 

「お前さん、もっと情報を欲しくねえか?実はな、この話には続きがあんだよ」

「……その情報が偽物の場合は?」

「この世界は信用だけの世界だ。ここで信用失ったら俺は餓死しちまうよ」

「……金額は?」

「マケてこんくらいだな」

 

そう言い、男は一本指を出した。

 

「……いいだろう。聞かせてもらおうか」

「へへっ、毎度」

 

そう言い、交渉が決まり。情報屋は俺に写真を渡しながら話した。

 

「そいつはおそらくその部隊の隊長だ。そいつの撃った砲弾が一番デカい威力だった。俺はそれを見た時に火山が噴火したかと思ったさ。

砲弾を撃つ時に魔石箱も使ってよ、そりゃあスッゲェ魔導砲兵と思ったのさ。

それに、他の奴らが撃ったのも凄くてな。ありゃ全員魔導適正がA以上はあるぜ。よくもまぁあんなに集めたもんだ。

その部隊は他の砲兵とも仲が良さそうでな。上官だってのに気楽に接してて…それがちょっと気味が悪かったぜ……」

 

そう言い、渡された写真を見て一瞬だけ俺は目が細くなってしまった。

 

「(この顔は間違いない…小野寺輝だ……)」

 

渡された一枚のモノクロを見ながら俺は確信する。ハーフトラックであるソミュアMCL11の前で同級生の誰かと気楽に話している様子の一人の男を見て俺は思わず写真を握りつぶしそうになってしまうが、俺は持っていた鞄から札束を渡し。そしてその情報屋に言った。

 

「感謝する」

 

そう言うと、俺は裏路地から立ち去る。

その途中で情報屋が聞いて来た。

 

「なぁ、旦那。今、帝国は何を調べているんでさ?戦争とは関係のねぇことばかり調べているみたいだが……」

 

そう言い、情報屋は変なことばかり調べる帝国に疑問を持っていた。

俺も、このくらいなら良いだろうと思い、その情報屋に一言だけ言う。

 

「そうだな…強いて言うなら……

 

 

 

 

 

共和国が世界の敵になるかもしれない爆弾。

 

 

 

 

 

とだけ言っておくさ」

 

そう言い残すと俺はそのまま裏路地から消えて行った。

 

後ろで半分唖然となっている情報屋を置いて行きながら……




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