北部戦域において戦闘に参加する前に俺の使用する三七式魔導演算機に改修が加られていた。
主な改修内容は通信設備の追加とガンラックの追加、感応石板が棒状に変化し、より整備性が向上した事だろう。
元々ブロック生産式の本機はこんな感じで改修も簡単にできる優れものだった。おかげで結構場所を取っていた感応石板は感応石棒となり、タブルカラムの様になり、よりコンパクトになっていた。コンパクトとなり、余った分のスペースは予備弾薬の追加に使われた。
通信設備は分かるがガンラックなんて何に使うんだよと思っていたら案外使えること使える事。
右側には俺の身長くらいあるゾロダーン対戦車ライフルを付けることができた。てか結局コイツを使う事になっちまったよチキショウ……。他誰も使わないからって押し付けやがって……
そして反対側にはソードオフのブローニング・オート5を持ち、近接用に備えていた。
一応ナイフも持ち合わせ、腹には俺がフェドロフに使うバナナ型の弾倉を入れた肩掛け式マガジンショルダーを六つ程、一応予備として背中に三つの予備弾倉を持ち。右太腿には拳銃入りレッグホルダーを持ち、見た目は現代の軍隊の装備に似ていた。
頭には降下用シュターヘルムを被り、背中に改修した三七式魔導演算機を。そして足元はブーツを履き、顔は黒い目出し帽で隠していた。
俺たちの部隊の特性上、個人で持てる弾薬は多い方がいい。なにせ補給が受けられない可能性が高いのだから。
まぁ、だから本当はフェドロフを持ち込んだのは弾薬の共有が出来ないからあまり望ましくないのだが、ライフル弾をフルオートで撃てると言うメリットがある為に俺はこの銃を使わせてもらっていた。まぁ、持っているのは俺だけだし、他にも武器持たされたから何とかなるでしょう。
はっきり言ってこんなどっかの映画でありそうなフル装備で出る事はないが、常に持っているのはフェドロフとブローニング・オート5であった。
対戦車ライフルはよっぽどな事がない限り持って来ない。
こんな時以外は……
「目標、距離約5000。魔法弾使用、爆発貫通魔法……スゥ〜……」
曇天の空模様の中、空中に立つ黒い影。その手には使用者の身長くらいありそうな大きいゾロターン S-18/100を構えている。正直50キロ近くある対戦車ライフルを両手に持つと言う信じられない光景だが、カラクリが分かれば何ともない代物であった。
「撃てっ!!」
その瞬間。銃口の魔法陣に銃弾が通り、真っ赤に熱せられた20mm弾が共和国側の陣地に飛んでいく。
そしてその後共和国陣地に大規模な爆発が起こった。貫通魔法で共和国の砲陣地の弾薬箱に当たったのだろう。結構デカかった。
「お見事です。大隊長殿」
その様子を見ながら一人の隊員が彼に接近すると、珍しく目出し帽を取っているディルクが目出し帽で顔を隠しながら指示を出した。
「これより我が隊は前線支援を開始する。でかい的から落としていけ!」
『『「はっ!」』』
空中に上がったディルク達第500降下猟兵大隊はそのまま地上に降りると機関銃の銃撃の中を避けながら地上に接近しながら射撃をする。
「うおっと、魔法兵も居ますか……」
そんな中、ビームも混ざっており、中に魔法兵がいるのだと分かる。
基本的に魔法兵は貴重だ。人的資源の関係から後方からの射撃が多いのだが……どうやら今日の共和国は前線に魔法兵を置いていた様だ。
「お返しだっ!!」
そう言い、俺は対戦車ライフルで地上に向かって爆発魔法を使用する。
その瞬間、兵士達は退避を始め。俺はその気を逃さず、引き金を引く。落下する様に落ちた弾丸は地面に突き刺さると爆発を起こし、逃げ出した兵士ともども吹っ飛ばした。
その瞬間に着地し、他の隊員よりも先に塹壕戦を始める。
『コイツっ!!』
『死ねぇぇえ!!』
咄嗟に持っていた共和国製半自動小銃が襲いかかる。しかし、俺は障壁魔法を展開しながら銃の先端だけ前に突き出す。
「あばよ……」
『『っ!?』』
その瞬間。対戦車ライフルの引き金が引かれ、前にいた二人は20mm榴弾に撃たれて木っ端になって吹っ飛んだ。
その瞬間、横に居たであろう兵士が逃げながら叫ぶ。
『く…黒い天使だ!!』
『逃げろ!!』
『火力だ!!機関銃のある場所に行け!!』
『これでも…!!』
そして一人の兵が手榴弾を投げてきた。
しかし、投げてきたのは点火まで時間がある物だった為にそのまま手榴弾を持つとそのまま投げ返した。
『う、うわぁぁああ!!』
まさか投げ返されると思っていなかったのか慌てて共和国兵が逃げ出す。そしてそのまま手榴弾は投げてきた方寄りの空中で炸裂し、周りに破片が飛び散った。
そしてその後俺は持っていた柄付き手榴弾のピンを抜いた後、反対側に投げた。
数秒後に爆発が起こるも反応がなく、俺は塹壕を進むと無線機から連絡が入った。
『こちら01、予定地点到着』
『こちら通信員、後続部隊が前線に到着しました』
『こちら02、援護を求めます』
「03の状況は如何だ?」
『……問題ありません。間もなく予定地点に到着』
「了解した。重火器兵は俺と共に02中隊の援護に向かう。それまで他部隊は橋頭堡を守れ」
『『『了解!』』』
こうして戦線は前進と後退を繰り返していた。
正暦一九三九年 六月三日 午前一〇時頃
帝国 西部戦線南部後方 霧の森
ここは高い木が密集して生えており、霧が発生しやすいことから霧の森と呼ばれていた。
ここは常に湿気が高くて霧が発生しやすく、暗くて深い森であった。霧が常に発生しているため航空偵察もあまり出来ない。そのため隠し事をするには十分であった。
そんな森の中、ディルクは一人。ある視察に訪れていた。
「おぉ…これが……」
視界の先に映る大きな戦車を眺めていた。
すると俺は声をかけられた。
「君がディルク・フォン・ゲーリッツ少佐だね?」
「貴方は……」
帝国軍の戦車兵服の上にコートを羽織り、軍帽を被った一人の男性が立っていた。階級は中将であった。
俺は敬礼をとりながら答える。
「はっ!第五〇〇陸軍降下猟兵大隊大隊長ディルク・フォン・ゲーリッツ少佐であります」
そう言い、挨拶をするとその男性は敬礼をしながら答える。
「初めまして、ディルク少佐。この度帝国軍第七機甲師団師団長に任命されたエドウィン・ロンネルと言う」
「はっ!お初にお目にかかります。ロンネル中将閣下」
一瞬だけ本物のロンメル将軍にあったような気分で思わず息が止まってしまいそうになるが、俺はそのまま返事をする。
ロンメル将軍といえば史実ではかの有名な砂漠の狐と呼ばれた人だが、この世界でもそうなのだろうか……
そう思っているとロンネル中将は止まっている戦車を見ながら俺に話しかける。
「この戦車の基礎設計は君が行ったと聞いているが……どうかね?」
「感極まれりであります」
「はっはっはっ!それはそうだろうな……
しかし、本当に君のような若い子が戦車を作ってしまうとは…世の中も変わったものだ……」
そう言うと、ロンネル中将は戦車に近づくと俺に聞いてきた。
「君は元々歩兵の出身だったか?」
「はっ!元々は中部戦域で歩兵をしておりました」
「そうか、歩兵か…若い時の私と同じだ……」
そう言うとロンネル中将は懐かしむように俺を見ると俺に言った。
「ディルクくん、もう少し気楽に話そうではないか。私も、君の戦功はよく聞いている。それに私も、君に個人的に聞きたいことがあるからね」
「し、しかし……」
「なに、こんな素晴らしい戦車を思いつくような天才だ。それにここには誰もいないし、時間もあるんだ。ゆっくりと話そうではないか……」
「はっ!」
そう言うと俺はロンネル中将に連れられ、ある場所に向かうことになった。
同時刻
西部戦線 共和国側 後方のとある村
そこでは共和国に接収された村の一つで、ある部隊が補給を兼ねた一時的な休憩がされていた。
その部隊の名は独立魔導砲兵大隊。共和国の持つ強力な砲兵大隊であり、かの有名な白い悪魔の所属する砲兵部隊であった。
参謀本部直属の部隊であり、155mmカノン砲を主力とした砲兵隊の一つであり。機械化率100%を達成している数少ない部隊の一つであった。
そんな部隊の主力である砲兵は村の中で最も大きな建物に集まっていた。
「では、今回は俺がこの会を取り仕切らせていただきます」
村の集会所とも思わしき場所で音頭を取るは横田敏夫。今は偽名を持つクラスメイトの一人であった。
そしてそれに答えるは同じく転移をさせられたクラスメイト二九名。片手にジョッキやグラスを持って三週間ぶりの小休暇に花を咲かせていた。
この世界に来て三年。この生活にも慣れてきたもので、今は憎き帝国を倒し、その後に家に帰ることを心に秘めながら日々を生き抜いていた。
自分たちも努力しているが、何より自分たちの心の支えとなる人物がいた。
「少佐!」
「少佐殿!」
「大隊長!」
「大隊長殿!」
様々な言われ方をされており、集会所の一番上座に座る青年に視線が集まる。
その青年は伸びた髪の毛を後ろで纏め、白い縁の入った砲兵隊の制服を着用していた。彼は今や彼らの心の拠り所であり、一種の新興宗教団体の神のような扱いをされていた。
「輝様ぁ!!」
すると取り巻きの一人がその者の名を言うと、彼は軽く笑みを浮かべながらグラスを掲げて言った。
「皆んな、よく頑張ってくれた。我々の敵帝国が倒れる日も近いだろう。そうすれば、僕たちは念願の日本に帰ることができる!」
そう言うとクラスメイトはおぉ、と軽くざわめく。すると輝は次に言葉を発した。
「一人いなくなってしまったことは非常に残念であるが、僕たちは故郷に帰るために生き抜かなければならない。この残虐な事実を我々は忘れてはならないのだ」
すると取り巻きの一人が明らかに不満げな表情で小野寺に言う。
「えぇ、まだあんなやつのこと覚えていたの?」
「あぁ、あのゴミね……」
「名前は…えっと……」
「南部。南部茂よ」
そう言うと、他のクラスメイトも思い出したように貶し始めていた。
「あぁ、そいえばそんな奴いたな。忘れてたわw」
「いいだろあんな落ちこぼれ、どうせここに居たって邪魔なだけだったろ」
「そうだそうだ」
「あぁ、せっかく良い時間なのに気分悪くなるわ〜」
そう言い、クラスメイトから文句が出る中。輝は制する様に言う。
「君達、クラスメイトを貶すようなことはやめたまえ。
たとえ君たちが嫌いであったとしても、あの子はかけがえの無い同級生なのだ。人の命を貶す様なことは僕が許さない」
力強く言う彼にクラスメイトも一瞬で黙ると渋々と言った様子だったが、本人はもういないんだしどうだって良いだろうと内心思っていた。
少し気分が悪くなっていたが、輝はグラスを掲げながら言う。
「では、平和な時代が訪れる様。僕たちが日本へ帰れることを祈りながら……乾杯」
『『『乾杯!』』』
そう言うと、クラスメイトたちもジョッキやグラスを掲げ。大部屋で飲み会が始まっていた。
クラスメイトの間でうまいうまいと好評の桃色のジュースやビールなどの酒を酌み交わしながら彼らは苦労を労っていた。
明日には移動を開始する為、彼らは補給が終わるまで宴会をしていた。
喧騒が響く中、輝はふと誰かに声がかけられる。
「ーーー後で裏に来て」
声だけでそれが誰なのか分かり、輝は一瞬息が止まる。
すぐにその人物を探すが、見つからず。輝は取り巻きを置いて宴会を抜け出す。
宴会を抜けた彼は村に一人出て、自分用に与えられた部屋の鏡で自分の衣装を見て完璧に整え直した後。言われた場所に向かった。
「小山さん?」
宴会が行われている部屋の横の場所で輝は外に出る。空は綺麗に晴れており、太陽が照りつける中、輝は自分を呼んだ人物を名を呟く。
しかし彼女は来ていなかった様で輝は少し待っているとその人物は現れた。
「小山さん、どうし……」
輝はどうして呼び出したのかと蓮子に聞こうとしたが、彼女の持っていた物を見て納得した。
彼女に手には木製のバインダーが置いてあり、一目でなんで自分を呼んだのか分かった。
「今回の補給目録です。目を通しておいてください」
「あ、あぁ。分かった。ありがとう……」
そう言うと、蓮子はぶっきらぼうに自分から離れていった。
あぁ、いつも通りの光景だとやや残念がりながらバインダーの紙を見ていた。
「……案外簡単に終わったわね」
銅色の懐中時計を見ながら蓮子は確認をする。そこには変な方向に向く長針があり、そしてその方にはあの悪魔が居た。
彼女はマリアンヌからの加護で貰った隠密魔法の技術で彼が宴会場から出て行くのを確認し、一人になったところで茂から渡されたマジック・ソナーを起動し、彼が身を整えている間に彼の魔力を覚えさせていた。
案外あっさりと終わってしまった仕事。銅色の懐中時計をしまった後、私はポケットから銀色の懐中時計を取り出して蓋をあける。中に入った長針は一時方向を示しながら揺れていた。
あの方角に茂がいるのだと実感しながら私は時計を仕舞っていた。
「待っているからね。茂くん……」
小さくそう呟くと時計の示した方角を見ていた。
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