参謀本部に寄り道して色々と情報と勲章を持つ事になった俺はそのまま帝都郊外の第五〇〇陸軍降下猟兵大隊の現在の本拠地である第四帝都飛行場に到着した。
整地された地面を踏みながら飛行場に入るとそこには数台の車両と航空機が並ぶ光景が広がっていた。
「これはこれは……」
車を降りて格納庫に向かった俺はそこで隊員達を見つけた。
「何を興奮している?」
そう言うと俺が戻ってきた事に気づいて隊員達が敬礼をした。
「お帰りなさいませ、大隊長殿」
そう言い、敬礼をされ。俺も敬礼する。
「楽にしていいぞ、別に俺も見に来ただけだ」
そう言い、俺は格納庫に止められている車を見ながら俺は思わず心の中で叫ぶ。
「(これは俺の知っているハノマークじゃねえ!!)」
そう思いながら今回支給されたSd.Kfz.251三台を見ていた。
Sd.Kfz.251は有名な装甲兵員輸送車なのだが、この世界のSd.Kfz.251は前はそのままSd.Kfz.251のままなのだが、車体後部がまるっきりM3ハーフトラックのように箱みたいな形になっているのだ。
戦時設計という事らしいが、あの角っと曲がった部分がないのはめっちゃ悲しい。あそこがドイツっぽくて良かったのに……
なんて思いながらも俺は支給された装甲車や航空機を眺めていた。
「この輸送機は……?」
「はっ!航空隊より来ましたJu390であります」
そう言い、大型の航空機をゲルハルト・モーデル中尉が説明した。
Ju390は元は爆撃機だった物を改造した輸送機である。史実ではあのヒトラーが気に入ったことで有名な輸送機であり、この機体はJu390Aー2と言う派生型だった。
この機体は構造に特徴的な物があり。それは機体後部に備え付けられた油圧作動式のローディング・ランプを備えていた。
この機体は設計段階から降下猟兵が使用するために設計されており、史実と全く見た目も設計も性能も異なっていた。正直、型式変更レベルだろこれ……
コイツはまず胴体が大きめに設計され、空中でも車両が投下できるようになっていた。
中に入るとさすがは車両を積むだけあって広く感じ、此処にSd.Kfz.251が二台積めるというのも理解できる。だが……
「どうしてあれを積もうと思ったかね?」
そう言いながら俺は格納庫に並ぶ車両の中の一台を見ていた。
Sd Kfz 234/2
通称ピューマとも言われる八輪重装甲偵察車である。主砲にはIII号戦車を三突に改造された際に余剰となった5cm KwK 39 L/60を搭載し、最高速度は時速80kmは出る優れものだった。
砂漠地帯で稼働する事を考慮して空冷エンジンを搭載した影響で酷寒の地でも動いたことから重宝されていた。
砲塔は試作で終わった軽戦車の砲塔を流用していた。無線機なども搭載しており、後方部隊とも通信ができた。なお、これも史実とは違う箇所が幾つかあった。
因みに作者の一番好きな兵器だったりする。
なんでこんな物があるのかと言うと、俺たちに与えられる任務に必要だからと言う一言で終わってしまう。
俺達の本来の任務は戦線を飛行し、脆弱点を見つけることであった。
しかし、ペッツ参謀総長。コルネリウス行政参謀長による意向で俺たち第五〇〇陸軍降下猟兵大隊は転移魔法の被害者の保護と言うなかなか面倒ながらも重要な任務を任されることになった。
しかし、教国と言うどこにいるか分からない新たな敵が現れた為により一層面倒なことになると感じざるを得ない。
どこまで教国が突っ込んでくるかは分からないが、資料を見た時に確かにちょっとヤバい国だと思わざるを得なかった。
はっきりと隠さず言うならオ○ムみたいな感じだ。教国の人間は必ず五芒星のチャームを持っており、白い物を見に纏っているそうだ。
警戒の仕方がまるで社会主義にびびる冷戦初期の資本主義のようだ……
教国と言う値の知れない敵を抱えながらも、第五〇〇陸軍降下猟兵大隊は明日から特別訓練を行う為に此処でお世話になる事となっていた。
「しかし、参謀本部も無茶を言い寄るわ……」
そんな事を考えながら俺は飛行場の宿舎を間借りする為に基地司令に挨拶に向かうのだった……
翌日帝都郊外にある背の高い大きな施設で彼等はある練習をしていた。
壇上にはディルクが立ち、声を上げていた。
「諸君!この訓練は次の作戦において重要な物である。
皆も思う事はあるだろうが、大丈夫。俺も正直同じ事を思っている!」
そう言うと隊員達は思わず吹き出しそうになってしまうのを堪えていた。
「しかし!我々に課される命令はいままでの主軍援護とは違う、完全な独立任務である。その為、補給の面で著しく不安定だ。そしてこれは補給の面で極めて重要な事である事を留意して貰いたい。
あの過酷な雪山での入隊試験を突破した君達ならば必ずこの訓練も習得できると信じている!!」
『『『はっ!!』』』
隊員達の返事を聞き、俺は溌剌とした力強い声で言う。
「では、諸君。これより訓練を始める!!」
施設では俺と同じような改修を受けた三八式魔導演算機を背中に抱えながら四人の隊員が天井からハーネスを引っ掛けて空に上がっていた。そしてその下には土嚢の山が乗った鉄板があった。
『降下開始!』
拡声魔法でディルクがそう言うと隊員達のハーネスのロックが外れ落下し始める。
その瞬間、隊員達が慣性制御魔法を発動して土嚢ごと対象を入れるとそのままゆっくりと地上に着地した。
それを見ているとコンラート大尉が言う。
「まぁまぁ、妥協点。と言った感じですか?」
「あぁ、だが当日は初速に大分速度が加わっている。その中で正しく慣性制御魔法を使えるのかどうか……」
「相変わらずお厳しい……」
「何、必要な事だよ」
そう言い、ディルクは訓練中の隊員達を見ながらそのような感想を抱いていた。
初日の訓練はまぁまぁな結果だった。
次の任務の際に行う魔導演算機の技能を遠慮なく使うこの訓練に隊員達は疲労を溜めながら裏に上がっては落とされる。まるでストラップのような気分を味わっていた。
「う、うえぇぇ〜……」
「おいおい吐くなよ?」
「此処は前線じゃねぇぞ」
そう言いながら盛大に揺らされて酔ってしまった隊員を見ながら他の隊員が背中をさすって慰める。
今日、載せていた土嚢の重さは大体三トンくらいだ。それを四人で分け合って慣性制御魔法を展開しているがやはりもう少し分散すべきだと考えているとカウスマン中尉が意見を申した。
「少佐殿、ハインリム・カウスマン中尉より意見具申」
「なんだい?」
「あの人数であの重量の荷物を制御するのは個人への負担が大きいです。出来ればもう少し人員を増やしていただけませんか?」
「あぁ、そうだな……」
少し考えた後、俺は取り敢えずカウスマンに答える。
「取り敢えず今日の訓練は終わりだ。また明日考えよう」
「了解いたしました」
そう言うと俺達は今日の訓練を終えるのであった……
翌日、訓練において土嚢の山を五人目で分担する事にした。
丁度一小隊だし、三個小隊で一個中隊を編成する我が部隊。そして我が部隊は一般的な部隊と同様五〇名で構成されている。
まぁ、ここ最近はちょっと損失が出てしまい、その分は本部直衛の重火器兵から割り当てていたが、今度補充を要求しようと思っていた。
現在、我々と同じような魔道演算機を用いた降下猟兵部隊は現在自分達も含めると第五〇七陸軍降下猟兵大隊まで八つ編成され、それぞれ戦線を飛行し、脆弱点捜索をしていた。
この脆弱点こそが電撃戦の為に必要な場所の為、頑張って欲しい。
そして、我々第五〇〇大隊に配備された車両は四台、そして中隊は三つ。では残る一両はどうするのか?
答えは簡単。
『これより、訓練を開始します』
俺はハーネスと紐で繋がれた鉄板の上に立つ。
すると次の瞬間、ロックが外れて落下を始めるが、俺は三七式魔導演算機を使って慣性制御魔法を使う。
すると重量のある鉄板は静かに地面に着地した。
それを見ていた他の隊員が一言。
「やっぱり大隊長殿は化け物だ……」
その呟きに全員が頷いていた。言っておくが本番だとお前らも八トンくらいの荷物を扱うんだぞ。
まぁ、正直今回の慣性制御魔法は落下中に魔導演算機特有の魔法を指向できる機能を存分に生かすから直接接近するのが一個小隊なだけで。それも着地点を調整する為で、遠くから中隊も慣性制御魔法を使うのだ。
この建物の高さは25m、訓練にはもってこいの高さだった。
「諸君!一週間後には実機での訓練となる!中に荷物が乗る事も留意して魔法をかけろ!」
『『『了解!!』』』
幸いにも慣性制御魔法は発動さえすれば落下速度を抑えることができる。協力プレイという事になり、それなりの魔力も要求されていた。
そして、俺の乗る事になるSd Kfz 234/2にも運転手が追加されることが決まっていた。
隊員の訓練中、当日は彼等を乗せる二機のJu390Aー2も飛行訓練と空中投下の訓練が行われていた。
何せ天井スレスレな上に当日の車内には物資、弾薬が詰め込まれる。
一応後方からマウルティアで構成された補給部隊が戦線を突っ走る事も決定されているが、目標が移動しているために何処の方面に出るかも分からなかった。
投下するのは装甲車と装甲兵員輸送車。どちらも重たい物だから失敗した時は機体にもダメージが加わるレベルのものだった。
『ハッチオープン』
『ハッチオープン』
予定地点で席のスイッチを入れると後方の油圧式ローディング・ランプが開き、下の景色がよく見える。
『投下開始』
『投下開始します』
パイロット達は操縦席のスイッチを入れて電気式ロックを外し、投下のために機体をやや上に傾ける。
何せ乗せるのはエースの黒い天使。帝国の黒いダイヤとも称される唯一無二の魔法兵だ。
年齢不詳、性別は男と言う事以外ほぼ知られていなかったのだ。そんな彼が率いる部隊だから彼等も緊張していた。
そしてエース部隊な為に武装も充実していた。
少なくとも重装甲車を渡されるくらいだ。見ただけで分かってしまう。噂の新設機甲師団と同じくらい頼もしい。
そしていよいよ大攻勢が始まるのだと彼等も理解していた。
正暦一九三九年 六月一〇日
その日は徐々に近づきつつあった。
お気に入り登録、高評価をよろしくお願いします。