戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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四二話

いよいよ始まった帝国陸軍による大規模攻勢、ミョルニル作戦。

俺達はまず目標であった南方司令部に向かい、襲撃をしていた。新し目の分厚いべトンで固められた司令所に空と地上から突撃し、重火器兵はパンツァーシュレックを用いていた。

元々俺達の乗ってきたハノマークには元よりパンツァーシュレックの弾薬と発射器が積まれており、防楯無しの為ガスマスクをして司令所を襲撃していた。

流石に貫通爆発魔法を何発も使って屋根から突撃したのはドン引かれたが……

 

兎も角、襲撃は上手く行き南方戦域の指揮系統は混乱しているであろう。

 

 

 

 

 

所々煙の上がる司令所から出てから降伏した兵士達。

そんな彼らを見ながら俺は別で動いていたコンラート大尉から報告を受けていた。

 

「重症者三名、軽傷者五名です。少佐殿」

「なかなか手痛い被害だな……」

「しかし、共和国が鹵獲した演算機を使った空中戦を始めたのも誤算でした」

 

そう言い、担架に載せられて後送されて行く隊員達を見ていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

時は少し戻り、コンラート大尉率いる地上部隊に移る。

彼ら第一中隊と第二中隊は爆発魔法やパンツァーシュレックを用いた攻撃と、ピューマの砲撃を行っていた。

 

するとレーダー員が報告を上げていた。

 

『司令所から魔力反応有り!』

「?味方か……?」

 

そう言い、コンラートが報告のあった方角を眺めると向かってくる五つの影があった。

 

「……」

 

夜の中をよく見ると、それはホリゾンブルーのコートを着た兵士であった。

 

「っ!!敵だ!三時方向!数五!撃て!!」

 

その瞬間、発砲したコンラートに驚愕した他の隊員達は対応が遅れ、飛んできた共和国兵の銃撃を喰らっていた。

常時展開の障壁魔法がこの時の隊員の命を救っていたが、威力が高かった影響でそのまま墜落してしまった。

 

なんとか対応できた兵士達がそれぞれ発砲を開始し、コンラート含めた数人は接近戦を試みていた。

 

「っ!?」

「生憎とうちの隊長のナイフが強ぇんだ。運が悪かったな」

 

そう言い、銃剣をつけた帝国製半自動小銃の一振りを受けて共和国兵は首から胸にかけて切り裂かれた。

絶叫じみた顔で落下して行く仲間を見て驚いた隙を狙ってコンラートは間を入れずにそのまま銃剣でもう一人の胸を刺していた。

 

「あぁあぁぁぁぁああ!!」

 

そしてそのまま落下していき、襲ってきた共和国の飛行魔法兵の対処、残り二人は他の隊員が対処していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「驚きました。まさか共和国が魔導演算機を鹵獲していたとは……」

「あぁ、今回は何とかなったが……」

 

それは恐らく熟練度が圧倒的に低いからだったろう。

しかし、コンラート曰く初心者らしい飛び方だったと言う事は使い方をわかっていたと言う事。それはもしかすると……

 

「通信兵、司令部に連絡だ」

「はっ!」

 

そう言うとディルクは通信機を使って司令部に連絡を入れていた。

 

 

 

 

 

「閣下、第五〇〇降下猟兵大隊より通信です」

「……何かね?」

「南方司令部にて魔導演算機を使用した飛行魔法兵を確認したとのことです……」

「なんだと……!?」

 

ディルクからの報告に司令が反応を示し、確認をとっていた。

 

 

 

 

 

現在の戦況は作戦が功を指し、戦線は前進していた。既に第七機甲師団ははっきり言って仕舞えばとんでもない速度で前進し、予定地点目前まで進んでいた。

 

「予想外の効果だ。全戦線で共和国軍は崩壊したと言っていいだろう」

 

そう言い、司令所で喜びの声を上げる参謀達。今日の朝刊が楽しみだと言う彼らに対し。ペッツは司令所を後にすると、司令所のある部屋の前でコルネリウスと合流した。

 

「まだ連絡が付かないか……」

「あぁ、少しディルク少佐と話がしたい。通信機を使うぞ」

「あぁ」

 

そう言うと城の一室に入り、ペッツ達は部屋の中にいた数人の兵士たちを見ていた。

 

 

 

 

 

ここにいるのはペッツとコルネリウスが信頼できる人員で構成された『転移魔法特別対策班』であった。

現在転移魔法の使用が囁かれている共和国。参謀本部でもその噂は広まり、確実に教国が乗り出すと判断した彼らは転移魔法の情報を、引いては転移者を確保してその発動場所を発見してその装置を破壊すると共に転移者から情報を得ようと考えていた。

元々教国というきな臭い国を嫌う二人、理由は簡単であの魔導演算機を独占する為に何度も技術者と技術を寄越せ寄越せと言ってきたのだ。

そんな軍事機密を早々渡せられるかと思い蹴り続けていたのだ。

それは参謀本部とて同じ考えを持つ者が多かった。

部屋に入り、ペッツは置かれていた特一級暗号無線を使用する電鍵をペッツ自身が使っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「少佐殿」

「?」

 

時刻は午前四時を過ぎようとしていた頃。蓮子の魔力を頼りにするマジック・ソナーを頼りに車両を走らせていると通信兵から報告が上がった。

 

「参謀本部より通信です。こちらを……」

 

そう言い、不思議そうな顔をしながら渡された数枚の紙を見て俺は一瞬だけ目が細くなると通信兵に言った。

 

「ーーすまん、少し出る。俺の後についてきてくれ」

「はっ!」

 

そう言うと俺は魔導演算機を用いて空に上がる。

 

 

 

 

 

空に上がった俺はそこで受け取った紙を重ね合わせるとそれを日の光に当てて透かして読んだ。

 

『本部よりエンジェルへ

現在第七師団は境封じを完了させつつあり。部隊越境の情報なし、そちらの続報を求む』

 

重ね合わせて浮かび上がるモールスを読んで俺は演算機スイッチを入れた後に持っていた電鍵を打っていた。

 

 

 

 

 

ディルクの打った無線は暗号化された後に司令部地下の対策チームに届く。

 

「閣下、エンジェルから通信です」

「見せろ」

「はっ…」

 

そして受け取った連絡を読んだ。

 

『エンジェルより本部

未だ的は発見出来ず。しかし、砲兵部隊移動の報有り。これより追跡す』

 

報告を読んだ後、コルネリウスに紙が渡され、それを読んだ彼は血相を変えた。

 

「ペッツ!!まずい事になったぞ……」

 

名前呼びをしたコルネリウスにペッツは彼を見ると、彼はペッツに渡された紙を見せた。

 

「これは……!!」

 

紙を読んだ彼は続けて電鍵を打たせていた。

 

 

 

 

 

「少佐殿!!また通信です!!」

 

通信兵がそう叫び。俺は一旦着陸すると紙を受け取り、空に上がって再び通信を見た。

あいにくとスペースの関係で印刷機が積めなかったことが悔やまれると思いながら紙を読むとディルクの顔が青ざめた。

 

「不味いな…奴さん本気出してきやがった……!!」

 

そう言うと俺は通信機を入れると全体に連絡を入れる。

 

「総員、武器を持てるだけ持って着いて来い!本気で飛ぶ。遅い奴は置いて行くぞ!」

『え?ちょちょちょっと隊長!?』

 

カウスマン中尉の驚きの声を聞きつつ俺は一気に加速した。

その時の風圧で後ろにいた隊員が吹っ飛んでいた。

 

「閣下ぁぁ!!」

「追いかけろ!少佐殿に置いていかれるぞ!!」

 

コンラート大尉の叫び声を置いていき、ディルクは先に恐ろしい勢いで飛んで行っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

何があったのだろうか。

周りの兵士たちが慌てた様子で走り出し、私たちも叩き起こされた。

 

彼らの話しを聞いていると、どうも大量の帝国軍が前線を押してきているらしい。

一部では戦線が突破されたと言う話もあり、クラスメイト達も唯ならぬ状況に異常事態が発生していると感じ、すぐに警戒体制に移っていた。

私は思わず懐中時計を見ると北の方を針が向いており、針の揺れがいつもよりも細やかになっていた。

 

 

 

 

 

私達が今居るのは南方司令部の後方約20キロ。

カノン砲の整備の為と補給の為に移動してきていたのだ。

私達は普段は移動する時に軍用ハーフトラックに乗り込んでおり、ついでに言うと護衛という名の随伴歩兵も付いていた。

それも装輪装甲車付きの一個小隊とご丁寧な物だった。

飛行魔法兵の一件もあり、砲兵も緊急時用の攻撃手段として拳銃の他に小銃の使い方を教えられていた。

その為数は少ないが、ハーフトラックに共和国製半自動小銃を搭載してあった。

拳銃は全員が携帯し、腰に共和国製自動拳銃を持っていた。

 

深夜に叩き起こされた私たちはそのまま砲撃の準備をするのかと思いきや、なんとハーフトラックに乗せられてさらに後方に移動を開始するとの事。

初めは砲撃のための準備が行われていたが、予想外の帝国の進撃速度に一旦後退する選択がとられ、私たちはそのままハーフトラックに乗せられて移動を開始していた。

その際、大隊長である小野寺は蓮子を呼んでいた。

 

「ごめん、小山さん。ちょっとこっちに来て」

 

そう言い、蓮子の手を取り。彼は士官用の車に二人で乗り込んでいた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

早朝

深夜に叩き起こされてから徹夜をしたこの日。私達独立魔導砲兵大隊は霧の漂う道を走っていた。移動する中、無線機から情報が入って来た。

南方司令部は降伏。北方司令部も残存勢力を掻き集めているらしい。中央司令部は通信途絶。現在予備兵力が前線に向けて送られているそうだ。

前線は崩壊。国境地帯も占領が進んでおり、逃げることも出来なくなっていた。

 

 

 

 

 

前線の崩壊。それはつまり……共和国が戦争に負けたという事だった

 

「……」

「……」

「……」

 

ハーフトラックの中で誰も喋らない。無理もない、自分達が帰るためにここまで努力して来たと言うのに。それが全部水の泡となったからだ……

これから自分たちはどうなるのだろうか。どんな扱いをされるのだろうか。

 

 

 

いつ帝国軍が襲ってくるのだろうか……

 

 

 

見えない、分からない恐怖に誰もが身を寄せ合っていた。はっきり言って士気は絶望的状況だった。

 

 

今自分たちは前進してくる予備兵力と合流して反転攻勢に出ると言うが、その部隊が今どこにいるのか分からなかった。

 

誰もが恐怖と疲労で一言も発さずにしていると突如車列が止まった。

 

「おい!どうした!?」

 

即座に運転手が叫ぶと先頭にいた護衛の歩兵の一人が叫んだ。

 

「おい!そこの!邪魔だから退いてくれ!!」

 

そう叫び、なんだなんだと誰もが前を見ると、そこには五人ほどの白い聖職服の様なものを着た薄気味悪い集団が通せんぼをしていた。

右に避けて通ろうにもその集団が移動して行手を阻む。

 

「おい!聞こえないのか!?此処に帝国軍が来るんだぞ?!」

 

そう言っても全く動かない五人組に中隊長は痺れを切らし、遂に……

 

「歩兵隊!前へ!」

 

そう言うと集まった歩兵が小銃をその五人に向けて脅した。

いつ来るか分からない帝国軍にこんなところで止まっている暇はないのだ。

するとその五人組は気持ち悪いくらい同じタイミングで言葉を連ねる。

 

「「「「「神よ、この者らに与えたる罪を救いたまえ」」」」」

 

その瞬間、森の脇から数多の銃声が響いた。

 

「伏せろ!!」

「きゃあああ!!」

 

咄嗟に屈むと頭上を縦断が掠めて行く。歩兵の悲鳴や怒号。そして装甲車からの砲撃が行われていた。

しかし、投げられた手榴弾によって中身から吹き飛ばされてしまった。その際、中隊長が最期に何か怒鳴っていたがよく聞き取れなかった。

 

咄嗟に屈むも、襲って来た者達は徐々に姿を現した。その者達は先ほどの白装束の者達と同様の格好をし、その手には短機関銃や小銃を抱えていた。

彼らは車列を囲むとそのうちの一人が一歩前に出て自分たちに話しかけて来た。

 

 

 

「この中に転移をされた悲しき子はおりますか……?」

 

 

 

 

 




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