「この中に転移をされた悲しき子はおりますか……?」
そう言われた時。思わず私たちは驚いてしまう。周りの護衛の歩兵を排除していて何が悲しき子だと思いながらも穴の空いたトラックの荷台から顔を覗かせ、私達はその人物達を見ていた。
どうして私たちのことを知っているのだろうかと不安になっていると、その白装束の人達は私たちを見るとさぞ嬉しそうに喜んだ顔をしていた。
「おぉ!もしや貴方が?」
そう言い、顔を出したクラスメイトにその者達は駆け寄り声をかけていた。
『ご無事でしたか』
『あぁ、良かった』
そう言い、優しい声をかけられ。他のクラスメイト達はその対応に信じてもいいのかどうか不安だったが、周りに誰もいなくて帝国軍がいつ襲ってくるか分からない状況。
そんな状態で私達を匿ってくれる様な言い草にハーフトラックからみんな降り出していた。まるで魔法にかけられたように……
「もしや皆様が?」
そう言うと、クラスメイトの代表で横田くんが前に出て、その人達に言った。
「あぁ、そうだ。俺たちは皆転移させられた仲間だ」
そう言うと、その初老の叔父さんは横田くんを見て胸を撫で下ろしていた様子だった。
「とにかく無事でよかった……実は私達は貴方がたを探していたのです」
「えっ?!俺たちをですか……?」
そう言うと、その初老の叔父さんは頷きながら言う。
「ええ、我々は神からのお告げで貴方がたを探す様命じられ、この三年間ずっと探しておりました。
……あぁ、申し遅れました。私、ミッドガルド教国より貴方がたの保護の為に参りました、ラウロ・パウリス司教と申します」
「あ、あぁ……俺…じゃなくて自分はマイント・カーディッシュと言います」
双方に挨拶を交わすと、ラウロ司教は私たちの周りを囲う様に立つ。先ほどまで自分達を守ってくれていた歩兵は残った人が片付けていた。
殆どみんながラウロ司教の言う事を信じており、彼の話を聞いた後。ラウロ司教は横田くんやクラスメイトを見ながら案内しようとした。
「さぁさぁ、みなさん。お疲れでしょう。近くに私たちの乗って来た車があります。それに、もうすぐ帝国軍が来ると思います。それまでに離れておくべきです」
「あ、そ、そうですね」
そう言い、横田くん達がラウロ司教に案内されようとした時……
ダダダダダダダァァン!!
突如先ほどまで歩兵の死体処理をしていた白装束の人達がどこからともなく聞こえた機関銃の音と一緒に血を撒き散らしながら倒れた。
「何っ!?」
「伏せて下さい!!」
謎の攻撃にクラスメイト達は泥だらけになろうと構わず地面に伏せた。
その瞬間、森の中から機関銃の音が響き渡り、立っていた白装束の皆が銃弾で撃たれて蜂の巣にされていた。
そして先ほどまで自分達と話していたラウロ司教も他の人と同様に蜂の巣にされていた。
しかも、小さい口径の砲声まで聞こえ、近くに着弾して土煙を上げていた。
「司教!!」
咄嗟に横田くんは目の前で撃たれた司教を見て驚きと衝撃の声をあげていた。
すると上から声が聞こえた。
『転移者の保護が最優先だ!!狂信者は殺して構わん!』
すると私達の目の前に一人のガスマスクをつけた兵士が立ち、全員が仰天する。声は篭っており、誰なのかは分からない。
格好からして確実に帝国軍だ。すると、森の中からエンジン音が響き、茂みの奥から帝国軍の装甲車が現れた。
中には砲塔を装備している車両もあり、さっきの砲撃はこいつだと確信した。
するとその装甲車から複数のさっき現れた人物と同じ様な格好の帝国軍兵士が現れ、同じ様にガスマスクをしていた。
『少佐殿、付近一体に封鎖網を敷きました』
『ご苦労、騎士団にガス兵器は含まれていないか?』
何やら少佐と言われたこの人は部下と思わしき人に話をしていた。
『はっ!今のところ発見されていません』
『注意を怠るな。奴ら、巻き添えで自決するかもしれんからな。部隊にはくれぐれも注意する様通達』
『はっ!』
そう言うと、その人は去っていき。近くにあった白装束の人達の持ち物の確認をしていた。
そんな中、立ち上がった横田くんがその少佐と言われた人に怒鳴った。
「おい、お前!なんてことしてんだ!!この人は俺たちを守るとしてくれた人達なんだぞ!!」
横田くんが抗議をしようとしたが、間を入れずにその少佐と言われた人が横田くんの胸倉を掴むと怒鳴り返した。
『馬鹿者!貴様の目は節穴か!!』
そう言うとその人はさらに横田くんに怒鳴った。
『君達はコイツらの危険を知らんからそんな戯言が言えるのだ!!』
そう言うと一人の兵士がある物を掲げながら報告した。
『閣下!見つけました!!』
そう言うと、その少佐はやはりと言った様子で横田くんに言った。
『おい、お前。あれが何か分かるか?』
「?」
少佐の問いに横田くんは答えられないでいると、少佐は教えてくれた。
『あれは条約違反の毒ガス兵器だ。あれを此処で叩きつけたら君たちは全員死ぬぞ!!
奴らは君たちが確保できなかったらあの毒ガス手榴弾を撒くつもりだったんだ。つまりはそう言う奴らなんだよ!』
マスク越しでも伝わる剣幕に横田くんは半ば呆然としていた。
すると少佐は横田くんを掴んでいた手を離すとマスク越しで自分達に声をかけた。
その後ろでは回収したガス兵器を密閉された箱の中に入れて兵士が慎重に運び出していた。それを見ながら少佐は横田に聞いた。
『さてと……君達が転移者であっているのかね?』
そう問いかけ、急に落ち着いた少佐の問いかけに横田くんは少し虚取りながら数を数える。
「あ…あぁ、ちょっと待ってくれ…今数えるから……」
そう言い、横田くんはこの場にいるクラスメイトの人数を数えた時違和感を覚えた。
「……あれ?二人足りない……」
『何……?』
「二人いねぇ!それに輝はどこに行ったんだ?!」
そう言うと途端にクラスメイトは騒ぎ出す。輝がいない、クラスメイトが二人いない事実に驚愕の色があった。
「え!?輝様が?!」
「輝様!!」
「ってあと一人は誰?」
「あっ!立川が居ない!」
「え?絵里ちゃんが?!」
そう言い、ざわついている所を少佐は話しかけた。
『どうした?』
「あ、ああ……二人だけどっかに行っちまった……」
『何?』
そう言うと少佐は先ほどの部下の人を呼んでガスマスクを取ると目出し帽が現れ、部下の耳元で囁いていた。
「二人転移者が居ないらしい。捜索範囲を広げる様、中将に要求してくれ」
「了解しました」
そう答え、同じ様にマスクを取った部下の人が去ると、黒い目出し帽を被った少佐は横田くんに言った。
「今、その二人を捜索するよう指示を出した。見つかったら君達に報告しよう」
「あ、ありがとう…ございます……」
横田くんがそう答えると、少佐に聞いていた。少なくとも、現状が全然わからない上に生殺与奪権が向こうにある今は下手に動けなかった。
「あの、少佐さん…俺たちはこれからどうすれば……?」
そう聞かれた少佐さんは少し間を置いた後、顎に手をやりながら答えてくれた。
「そうだな……
まずは疲れているだろうから寝ていてもらおうか」
「は……?っ!!」
次の瞬間、足元が若干淡く光り、クラスメイトは一斉に激しい眠気に襲われてそのまま倒れてしまった。
「う…そだろ……??」
最後にそう呟くと横田くんやクラスメイトはそのまま瞼を閉じて倒れてしまった。
同時刻
共和国南東部のとある幹線道路
まだ帝国軍がやって来ていない場所を一台の車が走る。
見た目は共和国の自動車メーカーの作った乗用車で、これは士官用に渡される車の一つであった。
「急いでくれ!」
その車内で小野寺は運転手を急かしていた。彼の横にはもう一人同乗者がいた。
それは撤退直前に小野寺が腕を掴んで乗せた蓮子であった。彼女は輝の横に座ると車の中で微動だにせず座ったままであった。
しかし、そんな彼女を気にせず輝は運転手に幹線道路を走らせ、目的地を伝えた。
「デリブールまで行けるか?」
「それは少し厳しいかも知れません。何せここから反対側ですからね」
「必要な代金は僕が払う。ジュール・ファブール少将がそこで待っているはずなんだ」
「分かりました。……でも帝国の事もありますから最短でも一ヶ月はかかりますぜ」
「その時は何処かの強硬派の部隊に身を匿ってもらうさ」
「了解です」
そう言うと、小野寺はようやくここで心の落ち着きを取り戻したのか車に無理やり乗せて来た蓮子に声をかける。
「……あぁ、ごめん。無理やり乗せちゃったね。小山……さん?」
そう言い、小野寺が顔を見た時。違和感を覚えた。
「(こいつは小山さんじゃない……!!)」
するとその瞬間、蓮子と思っていた少女はイタズラがうまく行った様子で、嬉しそうな様子で輝に飛び込む様に抱きついた。
「わーい!輝様ぁ〜!!」
「よ、立川さん!!??何で?!」
そう言い、驚愕する小野寺に蓮子を演じていた立川絵里が子供の様な顔で真相を話す。
「へへ〜、蓮子に頼まれて代わって貰ったんだよ」
「なっ……!!」
驚きの事実に輝はまたもや驚愕する。
「蓮子も勿体無い事をしたよ。こんな輝様と一緒に行けるんだから」
そう言い、絵里は満足げな顔を浮かべているが、輝は騙された気分となり、焦りと相待って彼女に怒りが湧いた。
「っ……!!」
そしてその感情に飲まれてしまい、彼は思わず立川の首元を左手で強引に掴み、右手でドアノブを手に持ってしまった。
「……へ?輝様?」
小野寺の行動に固まる立川。すると彼は憤慨した表情でこう言った。
「よくも…よくも僕を騙してくれたな……!!」
「ちょっと輝様?」
すると小野寺はドアノブを引きながら立川に言った。
「君の様な嘘つきはとっとと死んで仕舞え!!」
そう言うと小野寺はドアノブを引っ張って扉を開けるとそのまま立川を突き飛ばした。
「えっ……?」
一瞬宙に浮いた彼女の体は重力に引かれ、幹線道路の上に落っこちた。
彼女はその瞬間、地面にバウンドしながら。身体中を傷付けながら幹線道路の上を転がって行った。
そしてそのまま彼女は道路の真ん中で倒れてしまった。
その時の小野寺の顔は悪魔が宿った様にとても冷徹で邪悪であった。
そして彼女を乗せていた車はそのまま走り去ってしまった。
「ふぅ……ふぅ……」
蓮子に化けた立川を突き落とし、車の扉を閉めた小野寺は息を荒くしており。一連の光景を見ていた運転手はその小野寺の姿に恐怖した。
「……行き先は変わらずだ。良いね?」
「は…はいっ!!」
そう言うと運転手はハンドルを握りながら幹線道路を走って行った。
お気に入り登録、高評価をよろしくお願いします。