戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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四四話

「ーーーはい、対象は確保しました。司令官」

 

眠らせたクラスメイトを到着した赤十字付きマウルティアに乗せながら俺は一報を入れる。

ピューマに搭載された無線電話で司令部のペッツ参謀総長に連絡を入れると。総長は大変安心した声で俺に言う。

 

『良くやってくれた少佐』

「しかし油断はできません。教国の白檀の騎士団が出て来ていました。彼ら相当躍起になっている様です」

 

そう言うと、総長は非常に困った声色で電話越しでつぶやいた。

 

『よりにもよって白檀か……』

「そのため、この電話も盗聴されていると見て一旦ここで切らせて頂きます」

『あぁ、分かった。また会おう少佐』

「はっ!」

 

そう言うと電話は切れ、俺は借りていた受話器を返した。

するとコンラート大尉が俺に報告をあげた。

 

「少佐殿、対象者全員を乗せました」

「よし、すぐに出せ。教国の騎士団が来る前に移動する」

「了解っ!」

 

そう言うとクラスメイトを乗せた五台のマウルティアはピューマを先頭にハノマークの護衛を受けながら共和国領を西に移動を開始していた。

 

 

 

 

 

「(ーーーしかし、ギリギリだったな……)」

 

帰還中、車列の最後尾のマウルティアに座って空を見上げていた。

空中ではハノマークに乗れない各中隊の中の一個小隊が空に上がって交代をしながら車列の護衛をしていた。

護衛中の隊員を眺めていると俺は話しかけられる。

 

「お迎えありがと。茂くん」

「……あぁ」

 

横には俺に体を傾けて冷えた体を温める蓮子の姿があった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

特秘匿無線で教国の部隊が共和国を越境していたと言う情報を受け取った俺は全速力で蓮子の魔力を覚えさせたマジック・ソナーを頼りに飛んでいると、コンラート大尉から無線通信が入る。

 

『少佐殿!』

「大尉か?今どこだ!」

『少佐殿の後方200mです!』

 

無線通信をする俺はそこで大尉に命令をする。

 

「大尉、今対象者を発見した」

『何ですと?!』

「各部隊に付近を囲う様命令。機関銃兵は全員俺に食いついて来い!装甲車が来るまで待たなくて良い。急ぐぞ!」

『りょ、了解!』

 

そう言い、通信を切ると視界に白装束に囲まれた共和国の砲兵隊を見つけた。

 

「見つけた……っ!!」

 

そしてそのまま空中で急停止すると射撃を始める。まずは死体処理中の奴らからだ。

弾倉を一個使い切った頃に機関銃を持った兵が追い付き、俺の指示の元白装束に向かって撃たせた。

 

幸いにも白装束だけが立っていたので地上から追い詰める歩兵は半自動小銃の引き金を引くのに躊躇が無かった。

向こうも短機関銃で反撃をするが、精度が宜しく無かった上にそう言うのは大体上から機銃で真っ先に血祭りにされていた。

 

そして装甲車が森の脇で停車する不審な車を発見し、これを鹵獲したと報告が上がった。

 

「通信兵、至急第二三歩兵師団師団長に周囲一帯の封鎖を要請してくれ。あの人は事情を知っている」

「はっ!」

 

そう言い、展開中の歩兵師団に封鎖を要求し、俺はそのまま地上に降りる。

正直クラスメイトに関しては、はっきり言ってどうでも良かったので久方ぶりの再会をしても何も感じなかった。と言うか目出し帽アンド普段知っている俺のイメージからかけ離れている事から誰も俺が南部茂であることに気づいていないらしい……嘘だろ?

 

 

 

取り敢えず騒がれると面倒なので一旦全員に寝て貰い、後送してそこで必要な治療。その後は捕虜として扱う事となっていた。

そして俺はそこで先ほどの魔法にかかったフリをして横になった一人の砲兵と抱えると顔を合わせた。

 

「三ヶ月ぶりだな」

「…ええ、久しぶり。茂くん」

 

そう言うと、別れた時より圧倒的に泥だらけになった蓮子と再会していた。

彼女の顔が見えない位置で抱えているので他の隊員達も気づく事なく作業を進め、最後尾のトラックに蓮子を乗せていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「これから私達はどうなるの?」

 

移動中、蓮子が俺にそう聞き。これからの動きが気になるご様子。

俺は取り敢えず推測しながら答える。

 

「君達には戦時条約が適応される。帝国軍の捕虜として一旦後方に移動。必要な治療を受けてその後は一旦身を隠すことになるだろうな」

「身を隠す?」

 

すると茂は遠くに映る白い影を見ながら言う。

 

「さっきの白装束が居ただろ?アイツらは何処にいるかわからない、見えない化け物だからな」

「そんなに危ないの?」

「ああ、君達の命の危機レベルと言っておこう」

「おぉ、危ない危ない……」

 

そう言い、合流した二人は後方に到着するまで短く話を済ませると、蓮子が茂に銅色の懐中時計を渡した。

 

「はい、君の依頼は済ませたよ」

「おぉ…流石だな……」

 

そう言い、懐中時計の中身を確認した俺はそのまま時計を仕舞うと、蓮子が嫌味を凝縮させた様な声色でぼやいた。

 

「全く…撤退直前に絵里と交代して正解だったわ」

「絵里?あぁ、捜索中の立川か……」

「そう、個人的にちょっとやる事があったし、彼女の小野寺好きを利用してね……」

 

小野寺には申し訳ないが……と付け加えて言い、蓮子はトラックの荷台で呟く。

 

「今、歩兵師団がこの地区を捜索をしているが……」

「まぁ、無理でしょうね。士官用の車に乗って行ったから」

「だろうな……」

 

時間が経っている上に車に乗っているなら相当な距離を移動したに違いない。少なくともこの地区は脱出しているだろう。

 

「国境地帯は封じた。後の逃げ道は……」

「空路か海路」

「そう、今現在帝国は前線を突破。一部部隊で残敵掃討が行われて……って、済まんなこんな話で……」

「ううん、大丈夫……」

 

そう言い、蓮子はそのままトラックの椅子に倒れる。

 

「少し疲れちゃった…このまま寝かせて……」

「……あぁ、休んでいると良い。暫くかかるからな」

 

そう言うと蓮子は揺れる車内で、小さく寝息を立てて横になっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

数時間後…

 

共和国幹線道路をあるトラックの集団が走っていく。乗っているのは帝国軍の歩兵で、整地された道を四輪トラックが進んでいると、運転手が道路に横たわる影を見つけた。

 

「ん?何だあれ?」

「どうした?」

「あれ、見ろよ」

 

そう言い、運転手が指を指してその影を見る。

すると助手席に座っていたもう一人も不思議そうな顔をしてその影に近づく。

 

「馬の死骸か?」

「いや、馬にしちゃ小っせぇな」

「じゃあ何だよ」

「近づくしかねえさ」

 

そう言い、トラックがその影に近づくと思わずギョッとなってしまった。

 

「うわぁ……」

「ありゃ共和国の砲兵だぜ」

「しかも……よく見りゃ女だ。可哀想に……」

「若いのになぁ……」

「おいおい、よく見たら俺の娘くらいじゃねぇか……?」

「可哀想に…痛かっただろうなぁ……」

 

そう言い、はっきりと見えたその影を見て思わず兵士は周りに飛び散った血痕などを見て車から落ちたのだろうと推察し、思わずその遺体に祈りを捧げていた。

すると荷台に乗っていた指揮官が道路に横たわる女性砲兵の遺体を見て車列を止める様に言った。

 

「トラックを止めてくれ」

 

そう言い、車列は一時停止する。

兵士達は何事かと思うも、先頭の車両の横で倒れている遺体を見て理解すると、指揮官がトラックを降りた。

 

「可哀想に……」

 

そう言い、トラックを降りたヘルマン・シコルスキー大尉はその共和国の女性砲兵を見て体を動かす。

左腕や右足は骨折して有らぬ方向に曲がっており、身体中が擦り傷だらけになり、制服はボロボロだった。

見た目も若い子で二十歳くらいだろう。そんな倒れている彼女を仰向けにした時。

 

「…ぅ……」

 

微かに声が聞こえた。シコルスキーは一瞬ギョッとなってしまうが、慌てて心音を確認する。すると、微かに動く脈を確認した。

 

「なんと……おい!看護兵を呼べ!!」

 

シコルスキー大尉はそう言うとトラックに乗っていた兵士達も驚いた表情を浮かべていると、シコルスキーは指示を出す。

 

「担架持ってこい!」

「大尉?!」

「馬鹿者!目の前で生きている女性を見殺しにしろって言うか?!」

「っ!?は、はいっ!!」

 

そう言い、シコルスキー率いる歩兵中隊は道で大怪我を負っていた一人共和国砲兵を捕虜に捕らえ、後方に搬送していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

目を覚ますと、俺は二段ベットの下の柵の様な物が見えた、

最期に帝国軍の少佐という人物に魔法をかけられて倒れたところまで覚えているのだが……

 

そう思いながら体を起こすと、思わず頭をぶつけてしまった、

 

ゴンッ!「っ!いってぇ……!!」

 

ぶつけた箇所に手を当てながら悲鳴を上げると、クラスメイトから五月蝿いなどの声が上がっていた。

部屋のは二段ベットが置かれ、男のクラスメイトはみんな集められていた。

 

「ここは?」

「さぁ?」

 

辺りを見回しながら外を見ると、そこは柵でガッチリと固定された窓があり、そのさらに奥では帝国の旗を掲げる鉄柱があった。

 

「……」

 

よく見れば自分たちは砲兵隊の制服ではなく病院着を着ており、身ぐるみは剥がされていた。

色々とわからない事だらけだと思っていると部屋の扉の鍵が開き、部屋に白衣を着た医者が入って来た。

 

「やぁ、起きた様だね」

「貴方は……」

「私はここの軍医だよ」

 

そう言いながら後ろに入って来た看護兵と思われる人はトレーを持っていた。

 

「今から診察をするからベットで待ってて頂戴」

「は、はい……」

 

そう言い、俺達はベットに座らせられるとそのまま医者の診察を受けた。そして最期に……

 

「はい、じゃあ接種するぞ〜」

 

と言って次々とクラスメイトに看護師が持って来た注射器をブッ刺していた。一部同級生がそれを見て怯えている様子だったが、軍医はお構いなしに注射を刺していた。そして俺を最後に診て同じ様に右腕に注射を刺すと軍医はそのまま部屋を出てしまった。一体何があったかと思っていると、一人が鍵の掛けられた扉の窓を覗きながら声を上げた。

 

「どうやら女子は反対側の部屋みたいだぞ」

「本当か?」

「ああ、さっきの医者が入って行った。女子の声も聞こえたぞ」

 

そう言い、ホッとした声を出し。無事だったのかと思っていると俺は窓に近づいた。

 

「いったいここは何処なんだろう…それに、俺たちはどうなるんだ……?」

 

そんな横田の呟きに部屋にいた全員が心配する声を出す。

 

窓の外には帝国兵が立っており、帝国製の装甲車が走っていた。

静かな物だが、それが返って彼らは不安感を募らせていた。

 

そんな横田の呟きに全員が沈黙し、気が重くなる中。扉の閉まる音が聞こえ、反対側の女子部屋でも診察が終わったのかと思っていた。

 

「向こうも終わったのか……」

 

そう思うと、再び部屋の扉の鍵が開けられ、中に一人の軍人が入って来た。

その者は帝国軍の士官服を着ており、首元には柏葉付き騎士鉄十字章を付けていた。するとその軍人は部屋に入るなり口を開いた。

 

「ジュネール条約において。自らの氏名、階級、生年月日及び識別番号等を答えることが出来るならば、君たちは帝国軍の捕虜となる」

「……お前は… 」

 

するとその眼鏡を掛けた糸目が特徴的な軍人は俺たちを見ながら敬礼をした。

 

「初めまして、転移車の諸君。私は帝国陸軍少佐、ディルク・フォン・ゲーリッツと言う者だ」

 

 

 

 

 




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