戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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四七話

ディルクからの命令で見つかった転移者の護送をしているコンラート。

病院から出た救急車はそのまま幹線道路を進み、帝国領に戻っていく。

まだ戦争の跡地が色濃く残る戦線跡地。乾季の影響で幸いにも地面はぬかるんでおらず、順調に進んでいた。

 

いつ来るか分からない襲撃に備え、コンラートは帝国製半自動小銃を手に持って反対側に横になる包帯ぐるぐる巻きの一人の患者を見る。

 

どうやらこの転移者は捜索中のうちの一人であると言う。幹線道路で大怪我を追っていたところを帝国軍の歩兵部隊に保護をされたそうだ。

 

何でも二箇所の骨折に裂傷、擦り傷。来ていた制服がボロボロになる程の大怪我を負っており、回復魔法を何回もかけて治療をしていると言う。

意識は回復しておらず、こうして寝たきりであった。

 

「転移者か……」

 

コンラートは包帯で巻かれた転移者を見ながらふと呟く。

 

「向こうではどんな生活をしていたのだろうか……」

 

今病院にいる転移者達は大体19〜20歳だった。話を聞き、転移魔法が使われたのはおよそ二、三年前と推測され、気づいた時には変な建物で横になっていたと証言し、肝心の転移装置の場所は分からなかった。

おまけに転移者を教国が狙っていると言うのに加え、転移魔法の情報を掴んだ共和国の連中まで襲撃に来ると来た。

正直教国から彼らを守る理由はなんとなく分かる。伊達に士官学校を出たわけじゃないので、教国の気味の悪さは理解できた。

彼らは教国のトップである教皇の命令ならば自決すら喜ぶと言う狂信者の集団である。

表向きは世界中の魔法を管理している場所であるが、その実態は教国の指定する禁術を使用した場合。問答無用で魔法裁判をかけられ、処刑され。魔法の使用を徹底的に制限しようとしていた。特に、少佐から聞いた話ではこの自分たちの使う魔導演算機ですら使えなくしようと画策していると言うではないか。そんな事、許されるはずがないと言うのに……

 

自分は何百年も前の、いわゆる魔物という伝説上の生き物がいた時代の権力者に言いたい。『こんな面倒なことしやがって』と……

あの条約の影響で教国は調子に乗っていると言える。しかし、転移者を捕まえるのはその後転移魔法を使用したと言うことで関係者をまとめて一掃する為だと言うじゃないか。

少佐と同い年の若い人が処刑されるのは見るに耐えない光景だ。

 

そう思いながらコンラートは銃を持っていると、無線機に手を当てた。

 

「こちら中隊長、各員に報告せよ」

 

しかし、通信はザーッと言う音が流れるだけで何も聞こえなかった。

それを聞き、コンラートは咄嗟に小銃を持った。

 

「(妨害電波……!!)」

 

仕掛けてくるとわかった途端、車に衝撃が走った。

 

「うわっ?!」

 

そしてそのままコンラートと転移者は宙に浮くとそのまま地面に叩きつけられた。

 

「っーーー!!はっ!目標は……!!」

 

咄嗟にコンラートは担架を見ると、転移者は微動だにせず、気絶をしているようだった。

 

「来るか……!!」

 

小銃を持ってコンラートは車両を出ると、森の木に激突した救急車があり、エンジンからは煙が上がっていた。

運転手は消えており、コンラートは毒吐く。

 

「ちっ!運転手は教国の人間だったか……!!」

 

すると、車両を囲うように白装束に身を包んだ集団が現れた。

 

「(上の奴らは何をしていた……?!)」

 

そう思うと、コンラートは白装束に問いかける。

 

「貴様……どこの所属だ?」

 

すると白装束は答えた。

 

「貴様が知る必要は無い……」

「そうかよ……」

 

ジリジリと近づく者たちに対し、コンラートは小銃を握る力が強くなる。

ここで引き金を引けば恐らく蜂の巣だ。どうしたものか……

コンラートは思考を巡らせた結果。周りの白装束に言う。

 

「なら…所属不明ってことで死んでくれや」

 

そう言うとコンラートは命令を遂行する為に引き金を引いた。

一人が頭を撃ち抜かれて倒れ、その瞬間に白装束が短機関銃を持ち出して引き金を引いた。

 

咄嗟に障壁魔法を展開し、銃口を中心に盾を作っていた。そして引き金を引くと、また一人倒されていく。

障壁魔法を展開しているのに銃が撃てている事実に驚愕していると、コンラートは叫ぶように言う。

 

「俺の上官の技だ。貴様ら腕が足りんな!!」

 

そう言い、撃ち切った弾倉を交換するとまた引き金を弾いた。

接近して来た白装束……教国の武装組織である騎士団三〇人は倒されて行く。

まさかの障壁魔法の使い方に驚愕する騎士団は、短機関銃を持って射撃をするが。ただの拳銃弾で障壁魔法を突破する能力は無かった。

 

「逃げられると思うなよ?!」

 

そう言い、弾倉を四つほど使った頃には辺りに敵はいなかった。

 

「終わったか……?」

 

そう思った時に森の奥からガサガサと音を立てて白装束が今度は教国製ボルトアクションライフルを抱えて現れた。

 

「マジかよ……」

 

思わず絶句してしまい、コンラートは死を覚悟した。その時……

 

 

 

 

 

突如救急車の中から銃弾の雨が飛び、小銃を持っていた騎士団をズタズタにしていた。

 

「っ!?」

 

穴だらけになった赤十字のキャンバスを見ていると上空から中隊メンバーが現れた。

 

「中隊長!」

「申し訳ありません。幻影に惑わされました」

「幻影……」

 

その時、コンラートはハッとなって死体まみれの間を抜けて中に入ると、そこには……

 

「しょ、少佐殿?!」

「よう、大尉。さっき以来というべきか?」

 

そこにはフェドロフを置いて包帯を取っているディルクが立っていた。

 

「え?なんで少佐殿がここに……?」

 

先ほど自分に命令をした筈なのに……

頭の中が疑問符で覆われていると、ディルクは言った。

 

「何、大尉が運んでいたのは偽物さ」

「え…?で、では…本物の転移者は……??」

 

コンラートがそう聞くと、ディルクは答えた。

 

「今頃、別のトラックで病院に着いた頃だろうよ。総長が手配した安全な方のな」

 

そう言うと、ディルクは戦闘服に着替え終えるとフェドロフを手に取った。

そんな彼にコンラートは思わず聞いてしまう。

 

「少佐殿、なぜこんな事を……?」

 

するとディルクはその訳を話す。

 

「敵を騙すにはまずは味方からと言う……まぁ、今回の場合は少し違うがな」

 

そう言うと、ディルクはコンラートに近づくと耳打ちをした。

 

「俺たちの部隊の中に教国側の人間がいる可能性がある。今回のもそいつを炙り出す為だ」

「っ!!」

 

ディルクの意図にコンラートはまさかと思った。すると、ディルクは続けた。

 

「教国のスパイはどこにでも転がっていると思え、奴らには長い耳があるからな……

大尉、君も警戒した方がいい。

何も教国の狙いはあくまでも転移魔法。それに関係する者は教国の標的の対象になると言う事を……」

 

 

そう言うと、ディルクは演算機を背負い、事故車に遺体を乗せるとそのまま無線で不審車を見つけたと近くの部隊に報告を入れた後。その場を去って行った。

コンラートはディルクの注意に体が一気に冷える感覚に思わず脚が震えていたことに気がついた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

転移者の護送を終えた後。ディルクは飛んで病院に帰還する。

時刻は午後一〇時、就寝時刻は決まっていたがそれ以降の時間が経っていても問題はなかった。

ただし騒がしくするなと言う命令付きだが……

 

「終わったか……」

 

今、俺は病院内のとある病室の前にいる。

先ほど搬送されたばかりで医師や看護師が慌ただしくしている様だった。

 

「面会時間は一〇分です。それまでに戻って来てください」

「了解です」

 

医師にそう告げられ、俺は扉を開けて中に入った。

 

 

 

部屋入ると、月明かりがベットに横たわる一人の女性を照らしていた。

頭や腕、足などを包帯と石膏で巻かれ、目を閉じて静かに息をしていた。

 

「よくこの状態て生きているな…いや、意識が回復していないからまだ分からないか……」

 

そう言うと俺は病院着を着ていて、ベットで横になっている立川絵里を見た。

治療した医師の腕が良かったのか、身体中にあったと言う傷は綺麗に治っており、骨も繋がり始めているそうだ。

魔法はなんて便利だろうかと思いつつ、俺は寝ている絵里を見て少し想像していた。

 

「(恐らく輝を騙した事で怒りに触れて車から突き落とされたか……?)」

 

小野寺輝と言う人物をよく見ていた経験から、何が起こったのだろうかと想像しながら俺は片手にガラス製の注射器を二本持つと、本当は医者や看護師以外できない注射を立川の骨折した患部に打ち込んでいた。

 

「うっ……!!」

 

こうやって感覚には反応するが、話せる状況では無いので意識不明という形になっていた。

 

「我慢しろ、少しでも早く治る為だ」

 

そう言うとアルコール除菌無しで打ち込んだ注射痕を回復魔法で治して証拠隠滅をした。

打ち込んだのは高純度魔石を混ぜ込んだ回復剤と言うべきだろう。水溶性の薬剤にとても細かく粉砕した魔石を少し混ぜ込み、混ぜ合わせた物だった。

本当は飲ませるのが最適解だが、目を覚ましていない状況で無理矢理飲ませるとそれはそれで危険だ。

 

砲兵の制服に入っていたドックタグから判明し、ペッツ参謀総長の指示であの捕虜収容病院からこの病院に移動させていた。

多分、一人だけ動けないとは言え別所で監視をさせるより一箇所にまとめた方が管理が楽だと思ったのだろう。

やれやれ面倒だと思いながら俺は病室を出る。

 

彼女が搬送されたことは蓮子や他の者が知るのはもっと先だろう。

なぜならここまでの大怪我を負った理由が帝国の為だと勘違いをされたら面倒だし、蓮子の場合は自責の念に駆られてしまうかも知れなかったからだ。

 

病室の扉を閉め、俺は部屋を後にして行った。

彼女は直前まで小野寺と共に行動をしていた人物だ。もしかすると何かしらの情報を持っている可能性があった。

その為、ペッツ参謀総長達も彼女の治療に積極的だったと言える。だから早めに目が醒めて欲しいと思うのであった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同じ頃、横田達同級生が収容されている大部屋ではディルクが仕入れた本を読んで消灯時間まで思い思いの時間を過ごしていた。

しかし、そんな中。築城だけベットで横になりながら考え事をしていた。

 

「(彼奴は南部じゃないとしたら……いや、しかし南部の姿声に似すぎだ。間違いなく本人だと思うが……)」

 

築城はディルク少佐が南部ではないかと考えていた。

しかし、その理由は顔と声が似ているからと不安定過ぎる信憑性のない理由。だが、この本が仕入れた時。俺たちは日本語で会話をしていた。帝国人に分かるはずがないのだ。それなのに……

 

「……」

 

築城は彼方の中の誰が、帝国兵の誰かに要望をしたのだろうか……

何も分からない。様々な可能性があるから何とも言えないが、一番気になるのは……

 

「(もし、彼奴が本当に南部茂だったら…俺達は殺されてしまうのだろうか……)」

 

少なくとも転移前はそれに値することをして来た自覚がある築城は復讐される可能性を考えてしまっていた。

 

 

 

 

 




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