戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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四八話

翌日

朝早くから通信を聞いていた俺はそこで現在の戦況を聞いていた。

 

「(首都ルテティアを制圧。共和国政府は降伏……)終わったか……」

 

既にビアホール中の国民に更に軍人が加わる事になるだろう。

政変の起こった共和国政府にルテティアの凱旋門に掲げられた帝国の旗の写真を写す新聞を読みながらディルクは息を吐く。

 

 

 

コンラート大尉などは既に理解してくれているが、我々の戦争はまだ終わったわけではない。次なる敵……いや、残党と言うべきか。まだ、我らが相手しなければならない敵は残っているのだ。

それも、特大の爆弾を抱えたまま……

 

 

 

 

 

政治家はこれからどんな要求をするだろうか。

少なくとも義父が講和使節団の一人としてペッツ参謀総長の名代として向かう事になっている。だが、それで政治家の無茶な要求を抑えられるかは分からない。おそらく無理と言うべきだろう。

あまりにも流れた血の量が多すぎた。余程のことがない限りポツダム宣言のような物を国民が受け入れるのは無理だろう……

それに、馬鹿な外交官を連れて行った場合、禁術使用や黒い天使の名前を出して賠償金を跳ね上げさせる可能性もあり、それを防ぐ為に外相がお目付け役として義父を連れていくと言っていたと言う。どんな状況だよ……

 

 

 

現在、治療中の帝国軍負傷兵と記されている彼らは今日も今日とて治療用の注射を刺した後に仕事に取り掛かっていた。

機械の整備もそろそろ覚えた頃合いかと思いながら俺は士官室で久方ぶりの休息を取ろうと思った時、部屋の印刷機が動き出した。

あの印刷機が動くと言うことはペッツ参謀総長達の転移魔法特別対策班からの通信であった。

もう準備出来たのかと思いながら印刷された紙を読むと、そのまま俺は紙を手に持ったまま燃やすのであった。

 

「掛かったか……」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「はぁ〜、疲れた〜……」

 

今日の仕事を終えて腕を伸ばす前橋。夕食を摂り終え、仕事を終えた後。共用の部屋に入り、そこでベットに横になって仕入れた本を読んで鬱憤を晴らす。そんな毎日を続けていた。

新聞も読んでおり、共和国が降伏したニュースもみんなで見ていた。

ラジオも支給され、音楽やニュースも聞いていた。

これからどうなるのだろうかと思いつつ、不安な日々を過ごしていた。

 

見つからない同級生。

降伏した共和国。

 

果たして自分達は帰れるのかと思いながら今日もベットに入り、共同生活をする。

少なくとも、帝国軍は自分達が転移者であることを把握してこの収容所に入れていた。

毎朝打たれる注射には正直参りそうになるが、それ以外は基本的に快適な生活をすることができた。戦場に比べればと言う前提条件があるが……

 

消灯時間までまだ数時間とかあるのでみんなカードゲームやボードゲームをして時間を潰していた。

男達は話しを聞くと、どうやら共和国から鹵獲したトラックやバスを直しているそうだ。誰かが『これ使って逃げればいいじゃん』とか言ってたが、どうせ逃げたところで行くアテはないのだから意味はない。

私たちは風紀の関係から男女で部屋を分けられており、この前更に5〜6人の部屋に細かく分けらていた。

そして、欲を発散するための物を男達は少佐に注文しているようで、あの人もやや苦笑気味にそれを仕入れてコッソリと渡していた。

あの顔はやったことある人の顔だったよ……

 

そんなことを考えていると時計の針が時間を示し、消灯時間となって電気が落とされて廊下の不気味な赤い電灯が付いた。

ホラーでよくある展開だと思いつつカーテンを閉めると私たちは明日に備えて就寝に就くのだった。

 

 

 

 

 

深夜、ふと目覚めた三沢晴美はベットから立つと、そのまま部屋扉に向かった。部屋にトイレは無いので一旦外に出て行く必要があったのだ。

すると、扉越しに警備を担当している帝国軍兵の話し声が聞こえたので、こっそりと扉に耳を当てて盗み聞きをしていた。

 

『ーー全く、共和国もひでぇ事しやがる。俺の娘くらいの子供を誘拐した挙句薬漬けとはな』

『あぁ、俺も独身だけどちょっと思っちまったよ……少なくともここに来てからそうなんだろ?』

 

薬漬け?いったい何を言っているのだろうか?この人達は……

そう思いながら話しを聞いていると、その兵士は盗み聞きに気づいていないのか哀愁漂う言い方で話していた。

 

『正直、俺だったら他人の子でも出来ねぇよ』

『あぁ、きっとあの子達を呼び出した奴は極悪非道に違えねぇ』

『早く薬が抜けると良いな』

『あぁ、そうだな』

 

そう言うと兵士はそのまま扉の前を後にしていった。

話しを聞き、三沢は困惑していた。薬漬け?自分達が?

晴美は少し考えるも、取り敢えずトイレに行く為にドアのボタンを押すとそのあと兵士がやって来て私を部屋から出し、そのまま私はシャワー室の前を通ってトイレに向かった。

 

この施設は共用のシャワーがあり、そこで一定時間のシャワーを浴びることができた。毎日シャワーを浴びれる事に喜びを覚えられるあたりだいぶ感覚が麻痺していると思いながら彼女は女子トイレに入るとそのまま用を足した。

 

 

 

 

 

その後手を洗い、トイレから出ようとした時。私は突如口元と腕を掴まれて床に押さえつけられた。

 

「っーー!!」

 

咄嗟の事に困惑し、思わず暴れてしまうも抑えつけた人はそのまま何も言わずに魔法を唱え始めた。

 

このままではマズイと直感的に感じた私は抵抗し、動かせれる所を動かして抵抗する。

そして、バタバタと暴れた足はトイレの個室の扉を蹴飛ばした。

静かな廊下に野太い音が響き。その瞬間、二人ほどの兵士がこっちに向かって走って来る音がし、私を押さえつけていた人は驚いた様子を確認した。

そして、先ほど私を部屋から出した兵士が押さえつけられているのを見て銃口を向けて大声を上げた。

 

「貴様っ!何をしている!!」

「警報を鳴らせ!侵入者だ!」

 

兵士がそう言い壁のボタンを押したその瞬間、病院内に警報が鳴り響き、病院内が一気に警戒体制になり。武装した兵士たちが集まり始めていた。

警報に何があったとか思いながら目を擦らせる同級生達であった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

警報が鳴り響き、ディルク達は武器を持って報告のあった場所に向かう。

するとそこでは転移者の三沢晴美を人質に取る一人の帝国兵がいた。

 

「貴様っ!教国のネズミがぁっ!!」

「……」

 

三沢の首筋にナイフを当てる一人の兵士は何も言わない。

 

「何か言ったらどうだ?えぇ?!」

 

銃口を突きつけながら一人が言うと、その兵士。この前の増員時に派遣された一般の兵士の一人が言う。

 

「ならば其処をどけ。私はこの娘を連れ帰る権利がある」

「何が権利だ馬鹿野郎」

 

そう言うゲルハルトは言う。

 

「既に周囲は歩兵が囲んでいる。この状況で逃げられるとでも?」

 

そう言い、窓の外には軍用トラックから降りてくる兵士の姿があった。

しかし、そんな光景を前にしてもその兵士は余裕そうに言う。

 

「問題ない。何故なら私は教国の巡礼者だからだ」

「へっ!あんな狂った国家の巡礼者に何の意味がある」

「…神を侮辱することは許されないぞ……」

 

ややドスの聞いた声で答える兵士。一向に進まない話し合い。何事かと同級生が窓から様子を伺い、そして三沢を見て驚いた声を出していた。

そんな中、ディルクは一歩前に出ると、人質を取った兵士に話しかける。

 

「やぁ、フィッシャー軍曹。穏やかじゃ無いねぇ……」

「…ディルク・フォン・ゲーリッツ……」

「おいおい、上官には階級付けないかんでしょう……」

 

そう言い、ディルクは軽く注意を入れるとフィッシャー軍曹(本名かは分からないが)はムッとした様子でディルクに要求する。

 

「今すぐ銃を下ろさせよ」

「その前にその子を離しな。話はそれからだ」

「拒否する」

「…こっちの話は一切受け付けないですか……」

 

そう言うと、ディルクは後頭部に手を当てて軽く掻きながら聞いた。

 

「君、少し勘違いをしているよ」

「……?」

 

そう言うとディルクはフィッシャーに言う。

 

「君がどんな指令を受けたかは分かるがね、正直に言うと彼女を誘拐しても転移魔法の情報は手に入らんよ」

「何を言っている……?」

「そのまんまだよ。君は、運転手だから知らないと思うかもしれんがね。ここに居る転移者は転移魔法に関する情報を持っているわけじゃ無い。ただの被害者でしか無いよ」

「……っ!!」

 

ここに来てフィッシャーは焦りの様子を浮かべる。どうやら効果はあったらしい。動揺し始めの傾向にあった。

 

「後で調書でも上げるから読んでみるといいさ」

「隊長っ?!」「少佐殿?!」

 

同時にそれぞれの中隊長が驚いた声を上げた。するとディルクはそんな彼らに言う。

 

「転移者一人の命なら、これくらいの情報はくれてやれば良い。どうせ特に大した情報もなかったしな」

「し、しかし……」

「大丈夫さ、後で俺が大目玉喰らった後の減棒で済む」

「それが一番まずいじゃ無いですか……」

「解任&降格よりはマシだろ」

「「「……」」」

 

ディルクの発言にもはや怖いと感じる彼らであった……

そんな苦笑とも絶句とも取れる彼らを横目に、ディルクはフィッシャーに提案する。

 

「どうかね?その子の命とウチらの集めた情報と交換というので……」

「……」

 

おぉ、乗っかって来た。態度がさっきから変わって来ている。ナイフの力も緩んでいるよ。

そんな彼を見ながらディルクはやや邪悪な笑みを浮かべながら言う。

 

 

 

 

 

「……ま、それも君が優位に立っている時のみだが」

 

 

 

 

 

「……は?」

 

その瞬間、フィッシャーの後ろから急に人影が現れ、彼の首筋に指を当てると、魔法を使った。

 

「ゔっ!?がぁぁああっ?!?!?!」

「「「っ!?」」」

 

体に微弱な電気が走り、それは痛覚の電気信号が反応してフィッシャーは悶絶した声を上げ、ナイフを落として倒れた。

あまりの痛さに床に倒れたまま動かないフィッシャーに近づくとナイフを踏んづけて遠くに蹴飛ばした。

 

「さて、君のような嘘つきにピッタリな施設に送ってあげよう」

 

そう言うとディルクは懐から金属製の手錠を取り出すとそのまま後ろ手で手錠を嵌めると、次に彼はフィッシャーに魔法をかけて眠らし、悶絶した声を黙らせた。そして捕まえたフィッシャーをコンラートたちに任せた。

 

「大丈夫かね?」

「は、はい……」

 

そう言い、三沢に近づいて声をかけるとディルクはそのまま彼女を元いた部屋に移動させる。

 

「こう言う時は慣れ親しんだ人に慰めてもらう方が良いだろう。暫くゆっくりと休んで息を整えなさい」

 

そう言い、ディルクは三沢を部屋に入れるとそのまま後処理をし始めた。

 

「大丈夫だった?」

「怪我は?」

 

そう言い、早速心配した声を上げながら同級生に話しかけられると三沢はやや震えた声で答えた。

 

「うん、大丈夫……」

「おっと……」

 

腰が抜けて倒れかけた三沢を前橋が支えるとそのまま三沢をベットに座らせ、彼女の擁護をした。

 

 

 

 

 

外では捉えられたフィッシャーが猿轡と手錠をつけられた状態でトラックに乗せられていた。

部屋からディルクの手際を見て転移者達は驚いた声を上げていた。




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