戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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四九話

三沢が人質に取られた日から一夜明けたこの日。

朝の話題はディルクに関する物だった。

 

「凄かったね、あの少佐」

「あぁ、一瞬で制圧しちまってたや」

 

そう言い、朝食を彼らは取った後も深夜の出来事を話の種にして盛り上がっていた。

 

 

 

 

 

それはディルク達護衛の帝国兵も同様でコンラートが俺の部屋で追求をしていた。

 

「昨夜の人物は一体誰ですか?少佐殿」

 

そう問いかけられた。まぁ無理もない、突然幽霊のように現れ。フィッシャーを一撃で倒した後にそのまままた消えてしまっていたからだ。

そりゃ聴きたくなるのも分かる。だからこそ俺はこう答えた。

 

「『俺の個人的な協力者』と答えておくよ」

「それは、我々に教えることはないと?」

「当たり前だ。元々部隊内のネズミを囲うための人員だぞ?今回のだって本来は予定になかったんだからな」

「そうですか……」

 

事情を把握したコンラート大尉はそこで身を引いた。

此処で欲張って聞かれたらどうしようかと思っていたが……

そう思いながら内心ホッとするとそのままコンラート大尉は部屋を出て行った。

どうやらあの指は一部の人しか見えていなかったようで、部隊内では突然悶絶したと思っている人も居るらしい。

 

「やれやれ……」

 

コンラートが出て行った扉を見ながらディルクは座っていた椅子を立つと謝りながら言う。

 

「すまんね昨夜は。いきなり呼んで」

 

そう言うと、壁の一部が変化し。そこから病院着の蓮子が現れた。彼女は少し伸びた髪を翻しながらやや不満げな様子を浮かべて言った。

 

「まさか通気口を通って後ろに行けって言われると思わなかったわ」

「君の体なら通れるだろ?」

「うん、まぁそうなんだけどさ……ただね?出た瞬間に光学迷彩を展開しろって言うのもなかなか酷だよ……」

 

そう言い、蓮子は昨夜の事を思い出していた。

 

 

 

 

 

昨夜、三沢が人質に取られたのは蓮子も確認した。そして武器を持った兵士が脅しをかけている時、ディルクは蓮子に見えるように右手で指文字を作っていた。

それに気づいた蓮子はメッセージを途中まで読んだ後、何をするのかを理解し。そのまま注目の集まる扉から離れ、一人茂から渡された魔法発動用の媒介となる魔法弾入り弾倉を持って部屋のベット下に隠してあるダクトの蓋を開けた。

この蓋はこの部屋にしかなく、蓮子の場所もディルク自身が決めていた。

 

そしてダクトを通りながら蓮子の得意な隠密魔法と光学迷彩を使ってフィッシャーの真後ろに出た後。片手に弾倉から抜いた拳銃弾を持ってディルクとの話に夢中なハインネムの肩に電流を流した。

 

騒ぎが起こっている隙に蓮子は元の部屋に戻って何気ない顔でベットに横になっていた。

 

 

 

 

 

「いやはや、蓮子の手際には驚かされたよ」

「私も、あそこまで作戦がハマるとは思わなかった……」

 

そう言い、病院着の蓮子は感心した様子で呟くと茂に言った。

 

「昨日の事があったからすっかり君は人気者だね」

「あぁ、このディルクと言う名の仮面をつけている時はな……」

「そうね、剥がれた時はどうなるのか…まぁ、ある意味で面白い反応にもなりそうだけど……」

 

そう言うと、蓮子はそのまま部屋を出ていく。一応彼女も捕虜となっているので仕事を戻らなければならなかった。

俺は蓮子を見送ると彼女はそのまま光学迷彩を展開して部屋を出て行った。

 

「……しかし、これで作戦は次の段階に進める。後は……」

 

ディルクはそう言うと士官室を出て行った。

 

 

 

 

 

ディルクは立川が治療を受けている病室の前に行く。

するとそこには一人の歩兵が扉の前で立っており、ディルクはその兵に声をかけた。

 

「此処は私が警備する。君はしばらく屋上の応援に向かってくれ」

「はっ!了解致しました」

 

そう言うとその兵は扉を後にする。それを見届けた後、俺は病室に入る。

懐に常に拳銃を所持しているので何かあっても対処はできるし、最悪部屋のボタン押せば大尉達が一斉にやって来る。部屋に入り、俺はベットで眠る立川を見ながら椅子に座るとそのまま片手に本を開いていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ぼんやりと目が開く。

見えたのは白い屋根と灯りのついていない電灯だった。

横から日光が指している影響でとても明るく、白さがより際立っていた。

 

「……」

 

何処なんだろう、此処は……

何かで固定されていて体を動かす事ができない。

私は何があったのかを思い返していた。

 

 

 

私は、蓮子に変わって輝の車に乗り込んだ。

 

だけど、私が蓮子じゃないと分かった途端。輝は怒り狂った顔をし、私の首を掴んでそのまま……

 

 

 

 

 

「目が覚めたようだな」

「っ!?」

 

突然声が聞こえて思わず驚く。誰かいるのか?

すると、その声の主は覗くように私の視界に入った。その顔を見た時、私は息が止まる感覚に陥った。

 

「っーーー!!」

「動くな。まだ骨は繋がっていないんだから」

 

そう言い、その男は近づいて来たが。私は思わず睨み付けながら渇いた喉から掠れた声でその男に言った。

 

「な…んぶ………!!」

「……ほぅ、お前は気づいたか…」

 

眼鏡を付けていたり糸目で誤魔化している様だが、見間違えることはなかった。どう言う事だ?

そう思っていると茂は手に水の入った上呂のような形のグラスを彼女の口元に持って行った。

 

「飲め、話すにもまずは喉を潤す所からだ」

「……」

 

すると立川は自分でできると言わんばかりに奪い取るようにグラスを持つと、水を吸い込むように口に含んだ。

砂漠に雨が降ったみたいに喉が潤うと、立川は茂を見ながら聞いた。

 

「……私は死んだのか?」

 

そう聞くと、茂は日本語で答えた。

 

「だったら自分の腕を見たまえ」

「……」

 

そう言われ、顔を上げ。目を下に向けて自分の体を見るとガチガチに石膏で固定された右腕と左脚を見た。

骨折しているのだと理解が追いつくと、立川は茂に聞いた。

 

「……じゃあ、なんでアンタは生きてんのよ」

 

そう聞くと、彼は淡々とした顔で答えた。

 

「色々あったんだよ。あの小野寺に吹っ飛ばされてからな……」

「……」

 

あんまりにもざっくりとした説明をされるも、南部茂と言う男が生きていたと言う事実。それも、敵である帝国の軍服を着用していた事実に困惑していた。それを見て私は思わず呟く。

 

「……悪堕ち?」

「おい、エ○同人じゃねぇんだぞ」

「なんでそっちに行くんだよ……」

 

そう言い、想像とズレた返答に立川は苦笑してしまう。て言うか、こいつそう言う趣味か……?

 

 

 

目が覚めて。茂と会話していると、茂が単刀直入に聞いて来た。

 

「……何があった?」

「……」

 

茂が聞いているのは恐らくこんな大怪我を負った理由だろう。本当は顔も合わせたく無いやつだったが、一方的に拒否してもそれが何の意味もないのは理解できるし。何より今此処にいる中で顔を知っているのはコイツしか居なかった……

 

思い返すだけでゾッとしてしまうが、立川はその時の状況を茂に話した。

 

「私が移動する直前に蓮子と変わって輝様と車に乗った。

そして暫くしてみんなを乗せた車列が銃撃を受けた隙に車が逃げるように走り出し、そのまま幹線道路に出ていた……

だけど、輝様は私が蓮子じゃないと分かった途端に血相を変えて、私の首を掴んで走ってる車から突き落とした。そっからは何も覚えていない……」

 

その時の詳細を語った後、茂は話しを聞き終えると一言。

 

「…そうか……」

 

とだけ呟くとそのまま病室にあった壁に付けられた受話器を手に取ると慌てた様子を作りながら言った。

 

「私だ、患者が目を醒ました。至急医者を呼んでくれ!」

 

そう言い、受話器を置くと、一部始終を見ていた立川がやや苦笑しながら茂に言った。

 

「アンタやっぱりペテン師ね……」

「はっ、勝手に言ってろ」

 

そう言うと、病室に医者と看護師が慌てて入って来て立川は医者の診察を受けた。

時間は昼だったのでまだまだ明るい日光が差す中。ディルクは部屋の隅で診察が終わるのを待っていた、

 

 

 

 

 

「ーーーでは、もし何かあればそこの受話器で電話を掛けてくださいね」

「はい、分かりました」

 

短い診察を終え。医者と看護師が部屋から出て行き、病室は再び立川と茂の二人だけとなった。

 

「……んで、なんでアンタが残ってんの?」

「別に?大怪我を負った同級生の見舞いのつもりだが?」

「そうですか……じゃあ、もう充分でしょ。出てけ」

 

直球で茂に要望を言うと、彼は壁から背を離してそのまま病室の出口に行く。

そして彼は扉のドアノブに手を当てると最後にこう言った。

 

「また来るぞ。明日から事情聴取だ」

「断ったら?」

「その状態で病院を歩かせる」

「はぁ…最っ低……」

 

そう言うと茂は何も答えずに病室を出て行った。

部屋に残された自分は体を起こすとそのまま外の景色を眺めていた。

 

「……彼奴に此処が何処なのか聞いときゃよかった」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

病室を出て次の交代の兵に警護を任せると俺は今の仕事場である士官室に入る。

元々は院長室の部屋に必要な機械を置いただけだが、俺はそこで置いてある電話である番号に電話をかけた。

 

「……」

 

二回目のコールに入るか位の時間で回線が繋がる。

 

『……私だ。何かあったかね?』

 

電話に出たのはペッツ参謀総長だ。この電話がちゃんと繋がっている事を確認した俺は電話越しで報告を入れた。

 

「参謀総長閣下、件の転移者が目を覚ましました。意識は問題なし。記憶も問題なさそうです」

 

そう言うと総長は声がやや高くなりながら言う。

 

『おぉ、そうか!』

「先ほど目覚めたばかりなので聴取は明日から私が行います」

『あぁ、分かった』

「かなり最後まで白い悪魔と接触をしていたそうなのでもしかすると行き先も分かるかもしれません」

『分かった。なるべく早めに報告書を提出してくれ』

「了解しました」

 

そう言うとディルクはそこでペッツに聞いた。

 

「総長殿、共和国との講和会議は進んでいないと伺いましたが……」

 

そう言うと、総長は苦虫を潰したような表情が思い浮かぶ声でディルクに言う。

 

『うむ、戦後保障で政治家と軍部で意見の食い違いが起きておる。おかげで共和国側の使節団も困惑している有様でな……』

「そうですか……」

『コルネリウスから毎日悲鳴の電話が上がって来ておるよ』

「禁術の方はどうなっていますか?」

 

ディルクがそう問うと、総長は教えてくれた。

 

『やりよったわ。使節団の一人が共和国に禁術使用の疑いを掛けて賠償金の吊り上げをしようとしとる』

「やはりですか……」

 

ディルクの予想通り、馬鹿な外交官が禁術使用の疑いで賠償金を釣り上げようとしたのかと思い、面倒な事になったと感じざるを得ない。しかし、総長は続けてその後に起こった事を話した。

 

『だが、外相とコルネリウスがそこで間に入ったからまだ何とかなった。それに共和国はどうやら切り捨てる方針になっている』

「切り捨てる…ですか……」

『ああ、どうも向こうの軍部も把握していなかったらしい。混乱の兆候が見られる。少佐の予想通りだ……』

「そうですか……」

 

電話を聞き、俺はやはりと言った様子を浮かべながら総長と話す。

 

「総長殿、例の条文の方はどうですか?」

 

そう聞くと、総長はそれも教えてくれた。

 

『あぁ、共和国側の要人や外相は好意的だった。だが……こちらの外交官と政治家からは嫌意的と言うべきだな。まぁ、仕方あるまい。目先の事しか見えぬ官僚に話が通じるとは思えなかったが……』

 

面倒そうな声色で話す総長に心中お察ししますと思いながら最後に聞いた。

 

「……講和会議はいつまで掛かりそうでしょうか?」

『現時点では不明だ。何せこっちの意見が分かれているのだ。会議も今は意見をまとめる為に双方一休止を入れておる。まだ、共和国国内には抵抗組織が存在し、現共和国政府から離反する兵士も居る。そして何より……

 

 

 

 

 

我々も共和国政府も白い悪魔の捕捉も出来ていないからな……』

 

 

 

 

 




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