戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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五一話

砲兵隊が移動する直前。小野寺に悪戯目的で蓮子と入れ替わっていた立川は自分たちの部隊が教国の部隊に襲撃を受けた時にどさくさに紛れて戦線を離脱。

そのまま幹線道路に出た後、車を走らせていたが、そこで小野寺は私が蓮子ではないと知った時。突然態度を豹変させ、自分の首を掴んでそのまま道路に放り捨てた。

 

「ーーーそれで、目覚めたらこんな大怪我を負っていたと言うわけよ」

 

車椅子に乗って腕と脚を包帯で巻かれた立川からの話を聞き、全員が衝撃を受けていた。にわかには信じ難いと言うものもいたが、見てわかる大怪我を前にそれが事実であると証明していた。

立川は小野寺親衛隊の部類の人であったのは皆知っている。だから、そんな同級生の首を絞め、更には走っている最中の車から投げ捨てたと言う暴挙に言葉を失っていた。

 

「嘘だろ……?」

「そんな、輝様が……?」

「あり得ない……」

 

同級生達はそんなふうに口々に話すと、一人の生徒が声を上げた。

 

「そんなの有り得ないでしょ!!」

 

声を上げたのは親衛隊の一人、舞鶴智子だった。彼女は声を荒げて机に手を叩くと立川に尋ねるように叫ぶ。

 

「有り得ない、そんな事……輝様が?冗談でしょ……」

「そ、そうよ…!!」

「輝様がそんな事するはずがないわ!!」

 

すると舞鶴に連なるように同じく親衛隊の面々が言う。しかし、そこでディルクがそんな彼女らに言う。

 

「彼女の診断書があるし、此処の医者に聞くと良い。彼女が大怪我を負っていた事実は残っているのだから……」

「そんなっ……!!」

 

ディルクの援護射撃で完全に反論の余地を失った彼女らは思わずその場にへたり込んでしまった。

そんな彼女らを見ながらディルクは話す。

 

「聞いて貰った通りだ。残り一人、捜索中であるヘイルダムと言う青年はどこにいるかは不明だが、このような大怪我を負わせた」

「「「……」」」

 

目の前にいる小野寺の非道の証人を見ながら彼らはディルクの話を聞く。

彼らの中に小野寺輝に対する疑惑が生まれていた。

 

「現在、帝国はかの青年を追跡している。共和国政府も捜索をしている事からいずれは見つかるかもしれない。

 

 

 

 

 

だが、その前に我々は早急にしなければならない事がある。それは君たちも知っている通り、一週間前起こった人質事件の事だ」

 

ディルクは話題転換を済ませると先ほどの困惑した様子から一変。彼らはディルクの話を聞いていた。

 

「一週間前の事件を踏まえて、我々は移動する事が決定した」

「「「っ!!」」」

 

ディルクの話しに全員が驚いた様子を見せ、新しい場所に移動すると言う遠足のような気分になっていたが、ディルクが気を引き締めさせた。

 

「だからと言ってピクニックに行くわけじゃない。その点を履き違えないでもらおう」

 

そう言い、注意を促すとディルクは更に言う。

 

「移動は明後日だ。それまで君達には門限付きの外出許可が与えられる」

「外出許可……!?」

「マジっすか!!」

 

外出許可と言う言葉に反応するクラスメイト。だが、そこで俺は彼等に注意事項を話す。

 

「ただし、一分でも遅れた場合は処罰を下す。それから街から離れようとした場合も厳罰が降る。そして……」

 

ディルクはポケットから一本の腕時計を取り出した。

 

「逃亡防止用に外出時はこの時計をつける事。外した場合は街が封鎖され、また二度と外出許可を出せなくなる事に注意してくれ」

 

ディルクからの注意事項に連帯責任があると分かると一斉に気が引き締まる。浮き足だった空気は静まり返ると、最後にディルクは彼らに話す。

 

「君たちのベットの上に現金、外出用の私服とこの腕時計が置いてある。服のサイズなどを変えて欲しい場合は私か近くの兵に言ってくれ。話は以上だ」

 

そう言うとディルクは食堂を後にして行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ディルクが去った後、食堂から移動した彼らは部屋に入ると、そこに置かれた紙幣と色とりどりの洋服、そして発信機が取り付けられた時計を持っていた。

 

「俺何買おう」

「私、前から欲しいやつがあったのよね〜」

 

置かれた紙幣は全て同じ金額で給料の様なものらしい。

紙幣を数え、それで買えるものがどのくらいなのかを予想しながら明日を待っていた。

 

 

 

 

 

「……で、良かったの?あんな自由にさせて」

 

士官室で蓮子が片手に受け取った紙幣を持ちながら机の上に腰をかける。

端ないと注意しながら茂は言う。

 

「あぁ、これから向かう場所はこんな景色とはかけ離れた場所だからな。長閑でいい場所さ」

「それってド田舎って事?」

「少し違うと言うべきだな……」

「?」

「まぁ、明後日になれば分かるさ」

「ふーん……」

 

含みある言い方にどこに連れて行かれるのだろうかと不思議に思いつつ蓮子は茂と話すと、この給料の出所を聞いた。

 

「ちなみに聞くけど、このお金がどこから出て来たの?」

「俺の上官が用意した。戦利品を売った金で手に入れたそうだ」

「戦利品……」

「まぁ、定のいい横流しだな」

「うわぁ、真っ黒だねぇ〜……」

 

そう言いながらこの給料の使い方を考えていると、ディルクは蓮子に言う。

 

「蓮子、頼みだ」

 

そう言い、茂は財布から紙幣を渡す。かなりの大金だ。

 

「これで、ダイヤモンドリリーを何本か買って来てくれ。明日、俺は動けないからな」

「おぉ、酒ね。だったらお任せ〜。ついでに私も何本か買おっと」

「あまり調子に乗るなよ?」

「大丈夫、そこは自重するから」

 

そう言い、蓮子は酒に使おうと乗り気になっていた。ルテティアでもそうだけどやっぱ蓮子って酒好きだな。

そう思いながら部屋を出て行く蓮子と共に部屋を出て行く。

今日は部屋鍵を閉める気は無いので、皆ここで一番大きい食堂に集まって雑誌などを読んでいた。

あまり夜中まで起きていると明日に影響してくるので自重するだろうが、かなり盛り上がっているみたいだった。

そんな食堂の前で俺は蓮子と別れる。

 

「じゃあ此処で別れよう」

「うん、また明日」

 

短く言葉を交わして別れた二人、そして蓮子は食堂へ。ディルクは病院内の車庫に移動した。

 

 

 

 

 

「状況は如何だ?」

 

車庫に着くと、そこではコンラート達が転移者の整備したトラックに荷物を運び入れていた。

俺が確認に来たことに気づき、敬礼をしていた。

 

「あぁ、作業を進めてくれ。俺のことは気にするな」

 

そう言い、作業を進めさせ。そこで俺は車庫に停まる一台のオムニバスと、二台のトラック。そしてSd Kfz 234/2を見ていた。

 

「明日、先にトラックを向かわせます」

「うむ、時間が命だからな。輸送機が到着したら先に荷物は乗せておけ」

「了解です」

 

コンラートが反応すると、ディルクは明日の予定を伝える。

 

「先ほど連絡があった。輸送機は明日一四〇〇時に到着する」

「では……」

「補給と整備の時間も合わせて移動は明後日二一三〇時に開始だ。遅れるな」

「はっ」

 

そう答え、コンラート達はトラックに荷物を積み込み。準備を進めていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

とある部屋では双眼鏡片手に一人の男がある施設を眺めていた。

其の男が双眼鏡を持っていると、部屋の別の男が入って来てその男の肩を軽く叩いた。

 

「交代の時間だ」

「ああ、了解」

 

そう答えると、男達は双眼鏡を持って其の視線の先に映る病院を見ていた。

すると、先ほどまで監視をしていた男が思わず呟く。

 

「本当にあそこに目標がいるのか?」

「あぁ、搬入されているのを見た奴がいるんだ。おまけに少し前に教国の連中が事を起こした」

「にしては姿が全然見えねぇけどな……」

 

そう言い、軽く毒を吐きながらその男は買ってきて貰ったプレッツェルを食べ始める。

 

「ケッ、まさか帝国に潜入するとはな。それも双眼鏡で廃病院を見るだけの……」

「これで二週間、動きは一切なしか……」

 

そう話し、二人の男達は家具も何も置かれていない、やや埃塗れた一室で一夜を過ごす。

 

 

 

二人は共和国軍残党兵の一員であった。

帝国に負けた現政府から離反し、本当の共和国を取り戻す為に働くべく地下で動く住人であった。

彼らは帝国に囚われたままだと言う独立魔導砲兵大隊の隊員達の追跡を命じられていた。

そして、噂や数少ない情報を集めて此処まで来ていた。

 

「助け出すつったってこの警備じゃぁなぁ……」

 

そう言いながら一人は其の病院の近くに待機している駐屯地を見る。

元々あの病院は軍関係の施設であり、軍の施設なのだから当然と言わんばかりに近くには陸軍の駐屯地があった。

 

「おまけに護衛は黒の天使が混ざっていると来た」

「あぁ、帝国のエースだな」

「それも厄介な飛行魔法兵のな……」

「俺たち見たいな普通の歩兵には勝てないな」

 

二人は床に共和国製半自動カービン銃を置いて夜食を摂り終えると再び監視の任に就いた。異変があれば本部に連絡するのだ。

 

「さて、仕事だ」

「いつまでやらな行かんかねぇ……」

 

そんな事を呟きながら一人は双眼鏡を、もう一人は銃を持っていた。

 

 

 

 

 

二人はこんな生活をかれこれ二週間続けていたが、士気の低下はなかった。何故なら、彼らには士気を支える大きな希望があったからだ。

 

「俺たちには先の戦争の英雄が居るんだ。これほど心強いことはないねぇ……」

「まぁ、こんな市街地にぁ撃てねえがな」

 

そう言いながら二人は噂の病院を見ていると、一人がある違和感を覚えた。

 

「ん?なんか一瞬閃光が……」

 

其の瞬間、双眼鏡を持っていた一人の頭が撃ち抜かれ、部屋に赤い鮮血が飛び散った。

それを見た銃を持ったもう一人が驚愕する。

 

「っ!!狙撃っ!!」

 

咄嗟に壁に身を隠すと、窓枠に空気の擦れる音と壁に銃弾の当たる音が聞こえ、居場所がバレているのは明白だ。

 

「撤退しなければ……!!」

 

直感的にそう感じ、小銃を担いで撤退する為に部屋の扉に手をかける。其の瞬間、

 

「……があぁっ!!」

 

一瞬だけ見えた手を撃ち抜かれ、ドアに銃弾の穴が空いた後。扉の前には掌から血を流して倒れる共和国の残党兵が倒れていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

スコープ越しに敵性勢力の排除を確認したディルクはそのままスコープから目を離す。

 

「ゲルハルト大尉。至急、あの場所に人員を送ってくれ」

「わ、分かりました」

 

ディルクの手にはフェドロフが握られ、薬莢が屋上に転がっていた。

距離はおよそ500m、いくら光学スコープを使用しているとは言えよく当たるもんだと思いながらゲルハルトはディルクを見ていた。

 

 

 

 

 




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