戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

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五七話

現在同級生達が収容されている訓練施設は地図や名簿に記載されていない秘匿情報である。

その為、普通は与えられる施設名は無く、仮称として『特別訓練施設』と呼んでいた。

この事を知るのは転移魔法対策班のみで、ディルクは彼らの教官のみならずそこの施設長を兼任していた。

 

 

 

 

 

正暦一九三九年 八月一四日 午後一一時

特別訓練施設近くの森林

 

月明かりが無いに等しい深い森の中で、ガスマスクを付けた黒い降下猟兵の戦闘服に身を包んだ五人組が足音を殺して進んでいる。

ぎこちない動きで両手にドラムマガジンを備えた短機関銃や半自動小銃を持って行動する彼等は手でサインを送って動く。

そして森の中を移動する途中……

 

「……うっ?!」

 

闇夜の中、一人が後ろから腕を縛られて呻き声が漏れる。その瞬間、彼等は銃を持って振り向いた。

 

「まだまだだな……」

「そりゃお前に比べられちゃ無理だわ……」

 

そう言い、ガスマスクを外して横田が顔を出すとフェドロフを持った茂を見る。

今日は夜間訓練のために外に出た彼等は茂の襲撃に耐えながら森の中の的を撃つ訓練をしていた。ちなみに襲撃されたのはこれで五回目であった。

 

「仕方あるまい、俺たちの計画の為には必要な事だ。やるしか無いだろう。いずれは徹夜で行動する事も忘れるな」

 

そう言いながら茂は銃を肩に担ぐと森を進む横田達に向けて注意する様に言う。

 

「気を付けろ、足音が響いている。集団行動は問題ないが、もっと背後に注意しろ」

「ひぇぇ…参りそうになるぜ……」

 

そう言いながら半自動小銃を持っているのは築城であった。

基本的に彼等の主な武装は半自動小銃を持つか、短機関銃かパンツァーシュレックだ。汎用機関銃は五月蝿いし、弾がすぐに無くなるので一部しか持っていなかった。

正直短機関銃が彼らにとって一番使いやすい様だった。

 

狙撃の上手い奴は好んで半自動小銃を持ち、夕食の質を増やす為に半島にいた鹿を仕留めていた。解体は仕留めた者やみんなで手伝い、当番が仕留めた鹿肉を使って料理のバリエーションを増やす。

これには俺もシコルスキー大尉も唖然としてしまった。確かにこの半島は人がいないから鹿が多いけどさ……

取りすぎないように一週間に一匹とルールを慌てて追加したのは記憶に新しかった。

 

「次のポイントでまた訓練だ。先ほどの注意事項を念頭に動いてみろ」

『『『は〜い』』』

 

少しだけ気の抜けるような返事だが、理解はしているので茂はそのまま忍者の様に消えていった。

それを見ながら横田が言う。

 

「……よしっ、野郎を倒すぞ!」

「「「うっす!」」」

 

横田がそう言うと先ほどよりも覇気のある声で彼等はそう答えると銃を両手に持って森の中を再び進み出した。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

夜の森の中の訓練は女子達も同様に行われ、ガスマスクを付けた蓮子達の班はその手に短機関銃を持って対峙していた。

 

「……(来た)」

 

視界端に映った一瞬の影を見て指で形を作る。

 

「(前方数三、距離五〇)」

 

すると同じ様にガスマスクを付けた同級生達は頷くと銃を持って静かに動き出す。

反対側では立川率いる班が同じ武器を持って移動していた。

 

「……(居るわね)」

 

真っ暗な夜の中、夜目を駆使して辺りを視界の遮られるガスマスクを付けながら見回す。

 

「……っ!」

 

その瞬間、持っていた拳銃を手に取ってその影がある方に向けた。

 

「ほぼ同時ね…」

「中々やるじゃん」

 

そう言い、互いに銃を突きつけている状態の蓮子と立川は互いにそう呟くと、森の中で銃をしまった。

 

「今回も決着つかずだったわね」

「次は勝ってやるわ」

 

ガスマスクを取りながらそう言うと、二人はそのまま銃を持って森から出ると。遠くから悲鳴に近い声が聞こえた。

 

「おやおや、男子達は徹底的に扱かれているみたいだねぇ〜……」

「まぁ、茂くんの事だからボロボロになりそう……」

 

そう言い、夜の森を見ながら女子達は停めてあった車に乗り込んで宿舎に戻って行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

宿舎に戻ると、蓮子と立川はそれぞれ拳銃を整備する。

蓮子はモーゼル・シュネルフォイヤーを、立川はルガーP08を、それぞれ武器庫に置いてあった物を自分用に持ち込んでいた。

それぞれ分解整備をする中、蓮子は横川に聞いた。

 

「ねぇ、絵里は茂くんの事が好きなの?」

 

そう問いかけ、立川はすんなりと答える。

 

「そうね…好きなのかもしれないね」

「ふーん」

 

そう答えると、立川は蓮子にさらに続けて言う。

 

「その様子だと、初めては取られちゃたみたいだけどね」

「……」

 

一瞬だけ手が止まってしまうが、そのまま清掃を続けていると立川は蓮子に言った。

 

「まぁ、私と貴方が彼を好きになっているのは分かっている。だけど……」

「ええ、勿論……」

 

すると彼女達は同時に呟く。

 

「「まず小野寺輝を殴ってから」」

 

そう言うと、二人は不気味な笑みを浮かべる。そしてその後、二人は普通の顔に戻ると立川が言った。

 

「それまでは休戦と言うことで」

「ええ、勿論。……だけど、茂くんとの関係は私の方が先だと言う事をお忘れなく?」

「ええ、望む所」

 

そう言うと、二人の関係を見て思わず周りの女子達は彼女達から距離を取っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「エブシッ!?」

「ん?風邪ひいたか?」

「馬鹿野郎、軍人が風邪ひいてどうすんだよ」

 

森の中で男子達を扱いているディルクは指導中にくしゃみをしてしまった。

現在の時刻は午前一時、そろそろ訓練を終える時間であった。

 

「よし、今日はここまでだ。帰るぞ」

「了解〜」

 

そう言い、トラックの荷台に同級生達が乗り込んでいく。疲労が溜まっている様で宿舎に移動する間に揺れる荷台でぐっすりと寝ていた。そんな彼等を見ながらディルクは日にちを思い出しながら考える。

 

「(期限はあと一年、それまでに事を片付けなければならない……か)」

 

そう思いながらハンドルを握りながら胸に手を当てる。神の加護として受け取った技術を上手く使えているだろうかとおもいながら空を眺めていると、後ろの荷台から寝言が聞こえる。

 

「…母さん……」

「智子……」

 

思わずその寝言を聞いて微笑ましくなるが、意識を前に戻す。何も無い場所だが下手に事故って怪我人を出したら馬鹿みたいだ。慎重に運転しながら宿舎に到着するとそこで何人かの女子が帰って来るのを待っていた。

戦場という非日常で共に過ごしてきた彼等の友情は愛に変わり、戦争が終わったのを一区切りとして何人か告白をして多数の二人組が出来ていた。

この施設に来てから避妊具の注文が増えた事から色々と察せる。そしてかく言う俺も……

 

「出迎え有難う」

「全然、待っているだけだし」

 

そう言い、蓮子と合流した俺はそのまま宿舎に入っていく。他の者達も彼女いる組の奴は格好つけ、居ない組は血涙を流しながらその光景を眺めていた。

そしてそのまま部屋に入ると、そこには立川の姿もあった。

 

「おぉ、立川もいたのか……」

「ええ、用事があったものですから」

 

そう言うと俺は来ていた装備を置き、部屋にあるシャワーに向かおうとすると蓮子が提案をした。

 

「茂君、どうせなら大浴場の方行ったら?」

 

すると、立川からの援護射撃も入った。

 

「そうよ、貴方が要望したんじゃ無いの?」

 

ここの施設にある大浴場は茂がわざわざ設置したが、肝心の本人が士官室にあるシャワーで済ませる事が多かった。だからこそ二人はやや不満げに茂に浴場に入る様に勧めていた。

 

「そうだな…久しぶりに行ってみるか……」

「ええ、行ってらっしゃい」

「片付けはこっちでしておくから」

「あ、あぁ……」

 

半ば追い出される様に体を押されながら部屋を出た茂はそのまま浴場の方に向かう。

 

 

 

 

 

浴場では壁に取り付けられたシャワーの奥に大きな湯を張った浴場があり、男達が汗を流していた。

 

「はぁ、今日も勝てなかったな……」

「だな、コテンパンにされたわ……」

「南部って、こんなに強かったんだな……」

「能ある鷹は爪を隠すってか?」

 

そう言いながら水に付けたタオルで体を吹いていると扉が開いた。

 

「ん?誰か来たか?」

「んん〜…あっ!」

 

すると入ってきたのは話題に上がっていた茂であった。

 

「「「「……」」」」

 

思わず浴場が静まり返ってしまうが、茂は気にした様子もなくシャワーを浴び始める。

入ってきた彼を見ながら思わず築城が呟く。

 

「すっげぇ…筋肉……」

 

少なくとも六つに綺麗に割れた腹筋やガッチリとした骨と身体を見て、男達は憧れを抱いてしまった。

シャワーを浴びて石鹸で体を洗った後、タオルを巻きながら風呂に入ると茂は大きく息を吐いていた。

 

「ふぅ〜……」

 

そして息を吐いた後、思わず横田から質問が飛んだ。

 

「お前、何食ったらそんな身体になるんだ?」

 

少なくとも軍服を着ていた状態だとそんなマッチョには見えなかったと言われるも、茂は答えに困ってしまった。

 

「そうだな…強いて言えば……銃を持って戦場を走っていたから…と言うべきか」

 

そう言うと茂は足や腹部を指差しながら言う。

 

「これは共和国兵士として走った時に敵から撃たれた痕、こっちは帝国兵の時にできた傷だな。それでこっちは……」

 

そう言いながら身体にできたと言う傷を見て、思わず横田達の息は止まっていることに気づいた。

身体に傷なんて日本人の感覚ではまずあり得ないからだ。そんな軽々しく言えることに驚きを感じつつも、彼等はどれほど過酷な環境で南部茂という男が嘘をついて生きてきたのかを感じていた。

 

『世の中には必要な嘘がある』

 

前に彼自身がそう言っていたが、それがよく理解出来た。嘘をついた結果できた傷と言うことになるのか……

そう感じながら茂ぼ話を聞いた彼等は、彼の言葉で現実に引き戻される。

 

「じゃあ、早めに出ろよ。明日も早いぞ」

「あ、あぁ……」

「じゃあな」

 

そう言うと茂は風呂をさっと入った後、浴場を後にして行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

風呂を出た後、髪を乾かして部屋に向かった彼は扉を開けるとそこには薄めのネグリジェに身を纏う蓮子と立川がグラスを片手に待っていた。下着見えてんぞ……

 

「何やってんだお前ら……」

 

思わずそう呟いてしまうと、二人は答える。

 

「まぁ、良いじゃん。たまには」

「息抜きにはちょうど良いでしょう?」

 

そう言うと、蓮子がグラスに酒を注いだ。それ俺が飲んでた奴やん。

 

「ちょっと付き合ってよ」

「……了解」

 

そう言うと茂は空いていた椅子に座り、ワインを飲みはじめた。すると早速立川が言う。

 

「今日は二人でお相手願おうかしら?」

「……本気か?」

「ええ、本気ですとも」

 

そう言い、渋々と言った様子の蓮子を見ながら俺は思わず言う。

 

「……生憎と俺は小野寺みたいに上手く無いぞ」

「ええ、知っているわ。だからこそ、狙いたくなると言うもの。私はそうね……愛人でも良いと思っているし」

 

そう言うと、やや驚いた様子の蓮子を見る。いや、なんでお前が驚いてんねん。

そう思っていると、立川は席を立ちながら言った。

 

「じゃあ、早速お願いできるかしら?」

「せっかちな奴だな……」

「あなたがのんびり過ぎるのよ」

 

そう言いながら席を立ちがった俺は扉の鍵を閉めるとそのままベットに向かう。既に二人はベットの上で座って待っていた。

 

「こりゃ、明日がキツそうだ……」

 

そう呟くと茂も二人の間に向かって行った。

 

 

 

 

 




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