戦場からこんにちは   作:Aa_おにぎり

60 / 150
六〇話

正暦一九三九年 九月一四日

特別訓練施設

 

その日、いつも通りフル装備の彼等だが、雰囲気が違った。

教国の襲撃から二週間、より訓練に励む様になった彼等はそれぞれ個人識別のために色やマークを付けた目出し帽を被り、降下猟兵の飛行魔法兵を表す黒い戦闘服を着ていた。

そしてその前には士官服に身を包み、首に柏葉付騎士鉄十字章をつけたディルクの姿があった。

今日は今までここの教官を務めたシコルスキー大尉の見送りの為に集まっていた。

 

「飛行場までお送り致します」

 

そう言い、蓮子が運転する自動車に乗り込み、ディルクとシコルスキーはあの飛行場に向かう。

飛行魔法兵の訓練場に指定され、正式に軍事施設となった特別訓練施設は名前を『第六三区特別軍事演習場』として地図に名前が載る事となった。

 

飛行場までの道中、大尉は彼等の成長ぶりに驚きをしながらディルクと話していた。

 

「いやはや、これほど素晴らしい人材だったとは思わなかった。ディルク少佐殿は羨ましいよ」

「そう言って頂けるだけで充分です。またいつかお呼びしても宜しいでしょうか?」

「あぁ、是非とも。その時は宜しく頼むよ」

 

そう言い、シコルスキー達はそのまま飛行場に到着すると蓮子が軽々と大尉の荷物を持って車を降りる。

既に飛行場にはJu52が駐機し、同級生達が燃料補給車を使って給油作業をしていた。

飛行機に乗る直前、ディルクはシコルスキーにある物を渡す。

 

「大尉、最後にこれを……」

 

そう言い、ディルクはシコルスキーに二本のダイヤモンドリリーが入った箱を渡す。それを見たシコルスキーは驚いた表情を浮かべながら嬉しそうにする。

 

「今年蔵出しされた新物です。教官を引き受けれくれたお礼です」

「ありがとう、大事に飲ませてもらうよ」

 

そう言い、飛行機にシコルスキーが乗り込む。

 

「お元気で」

「あぁ、ディルク少佐殿もな」

 

そう言うと給油が終わって輸送機の扉が閉まった。そしてエンジンの回転数が上がり、輸送機が滑走路を曲がる。

輸送機を見ながら俺たちは敬礼をして見送る。

どんどん速度を上げ、Ju52は後輪が上がって離陸をするとそのまま曇天の中を飛んでいった。

Ju52が見えなくなるまで見送ると、蓮子が言う。

 

「早いねぇ、二ヶ月間……」

「あぁ……」

 

そう答え、短かった二ヶ月間を思い返した後。クルリと回るとディルクは言う。

 

「さぁ、俺たちも行くぞ。最後の行軍訓練だ」

「うん」

 

そう言うと、二人は大尉を乗せた車に乗り込むとそのまま飛行場を後にして行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

大尉を見送った彼等はそのまま宿舎に戻るとそこで降下猟兵の戦闘服を着込み、頭に黒い目出し帽を被る。

この目出し帽は全員に支給され、それぞれ個人識別のために装飾がされていた。

ディルクの場合は蓮子によって右頬に一対の黒い翼を模した刺繍が縫われ、蓮子の様に目出し帽に蓮の花などのトレードマークを縫っていたりしていた。

 

正直、全員が目出し帽をかぶっているせいで誰が誰だがぱっと見で分からんのだ。ネックウォーマーの場合は慣れで分かるのだが……

まぁ、元々共和国で働いていた同級生達は、これから共和国領内で動く事になる。下手な騒ぎを起こされる前に顔を隠して対策を取っていた。

まだ同級生達用の特殊装備は数が揃っていない為、届いていない。初任務にも届かないと言われているので、やや面倒ではあるが、今回は陸路での移動がメインとなる。

背中に三七式魔導演算機を背負い、装備も全て持った状態で外に出る。

これから行うのは最後の訓練だ。生き残る為に必要な知識を最大限駆使する為に組んだ行軍訓練だ。

 

これから自分達は転移装置を追いかける事になる。共和国残党、教国の二つを相手取りながら転移装置を目指す事になる。

その道中で生き残る為に必要な技術はこの二ヶ月で教えた。後はそれを活かす為の訓練だ。丁度、良い具合に的も来る頃合いだろう。

 

 

 

さぁ、新しい戦争の前哨戦と行こうか……

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

二週間前に帝国軍にこっぴどくやられた黒檀の騎士団。彼等は複数の被害を出して撤退を選択。

装甲車も持ち込んでいた事から今度は更なる重武装であの半島にやって来た。

あそこに転移者がいたことは確認済み、おまけに彼等が訓練を受けていたのも確認した為。相手を一個魔法兵小隊程であると認識しながら重火器を持ち込んでいた。

教国基準で、一個魔法兵小隊は二個歩兵中隊と同等の火力があるとされ、警戒をされていた。

黒檀の騎士団は半分が魔法兵で構成され、残り半分は重火器兵と歩兵で構成されていた。教国製半自動小銃を持ち、今回は装甲車(AB43)も持って来た。

どうやってそんな物を持ち込んだのかは簡単だ。装甲車を一旦バラして帝国に入れて組み立てたのだ。

我々には巡礼者が多くいる。その者達が快く協力してくれるのだ。だからこうして簡単に帝国に武器を持ち込めた。我々は神からの命令に忠実に従う僕。その為ならば喜んで死を受け入れる。

我々は教国の暗部を担う部隊。最も汚れた仕事を担い、最も嫌われる仕事を主にしている。だが、そこに苦はない。なぜならば、

 

 

 

我々は最も神に愛されているのだから。

 

 

 

最も罪深き生業。しかしこの世界で苦しい分、向かう先で神は救ってくれるからだ。

神は我々を見てくれている。そしてその先で我々を待ってくれているのだ。そしてこの任務は我々を救う更なる道であるのだ。

 

「……中隊、前進せよ」

 

そう指示を出し、黒檀の騎士団は半島の森の中を静かに進み始めた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同日深夜

半島内の森林地区

 

半島に数ある複数の森の中、黒檀の騎士団は進む。装甲車に消音魔法まで使い、エンジン音を消して森の中を進む。

その先に進めば例のコテージが存在している。

多くの人を連れて囲んでいる為、逃げる事も出来ない。明かりのないコテージを目指しながら黒檀の騎士団は銃を手に取る。

装甲車はあのプーマが出て来るまで使わない。対装甲車用として温存するつもりだった。

 

 

 

 

 

黒檀の騎士団は半島根元の森の中を進んでいると、そこで突如横にいた一人が銃声と共に倒れた。

 

「待ち伏せ…うごっ!?」

「あっ!!」

 

その瞬間、首元にナイフが刺さり、その者は絶命する。

それを見ながら右頬に蓮の花が縫われた目出し帽を被った一人の女性兵士が見下ろしていた。

 

「……次、行くわよ」

 

そう彼女は言うと周りに居た同じ格好の兵士は頷いていた。

 

 

 

 

 

 

森の中を迅速に進み、コテージを見下ろす。装甲車に乗った彼等はそのまま建物内に突入した仲間の報告を待っていた。報告は……

 

『室内、および屋外に人一人居ません』

 

やはり、予想通り誰も居なかった。

と言っても此処ら一体に無線妨害をしているし、半島はすでに別部隊が根元を抑えている。

向こうは増援も望めないし、囲い込みも終えていた。

 

「付近一体を捜索だ。必ずどこかにいるはずだ」

 

黒檀の騎士団団長アリエルはそう指示を出して歩兵を密にして捜索を始めていた。

 

 

 

 

 

「うひゃー、探してる探してる」

 

スコープを覗きながら築城が呟くと、横で立川が小さく注意を入れる。

 

「気を付けて。向こうに聞かれるかもでしょ……!!」

「分ぁってるよ」

 

そう言い、再びスコープを覗いていた。横には同じように小銃を手に持つ五人がおり、夜を歩く騎士団を見ていた。

そのスコープには小さく魔法陣が浮かび、彼らの目には緑色の視界の中を歩く白い影が見えた。

 

「始めるわよ」

「了解」

 

そう呟くと築城達は小銃を構えて調整したスコープを覗きながら引き金を握ると銃口に小さな魔法陣が浮かんでいた。

 

 

 

 

「ダメだ、草原にいなさそうだ」

「そうか…見つからないか……」

「おい、次の場所に行くぞ」

 

草原のど真ん中で集まった彼等はそこで捜索を続けていると、一人がふと森を見た。

 

「ん?今なんか光っ……」

「「!?」」

 

その瞬間、草から顔を覗かせていた一人が頭を撃ち抜かれ、草原に鉄分豊富な紅い花を咲かせていた。

 

「狙撃だ!伏せろ!!」

 

咄嗟に草原に姿を隠す。その瞬間、周りを銃弾が掠める。

 

「くそっ!奴らはフクロウか!?こっちが見えているようだ」

「撃ち返せ!あの森だ!装甲車が撃つ!!」

 

その瞬間、狙撃に気付いた装甲車から47mm砲が轟き、森に向けて砲撃をした。数発放ち、森の一部の木々が吹っ飛んでいた。

 

「森に急行だ!行け!」

 

その瞬間、森に向かって走り出し、砲撃の跡地を探し出す。

 

「……逃げたか」

 

遺体の無い砲撃地点を見ながら教国兵士達は吸い込まれるように中に入って行った。

 

 

 

 

 

「ーーー誘導に成功。森の中に入っていきます」

 

横田がそう報告を入れる。それを聞き、茂は軽く頷くとそのまま無音で空に上がり、命令をする。

 

「第一中隊はこのまま森を抜けて行け。残存兵員を把握した後、装甲車を相手にしろ」

「了解」

「第三小隊は罠を張った場所で待機。優先して機関銃を持った奴から排除しろ」

「はっ!ですが少佐殿は?」

 

そう前橋が聞くと、茂は銃をコッキングして答える。

 

「俺は正面から行く」

「「っ!?」」

「では、予定場所で落ち合おう」

「しょ、少佐殿!?」

「マジっすか!?」

 

そう言うも、茂はそのまま空に上がって森の中に消えてしまった。思わず二人は唖然となってしまうものの、茂の命令通りに動いていた。命令無視した時の体罰が恐ろしいから……

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

森の中に入った彼等はそこである物を目にする。

 

「これは……」

 

そこにはすでに倒された様子の仲間の遺体があった。

 

「まだ暖かい…近くにいるな……」

 

そう言い、体を触った時の感触からそう推測するとその瞬間。上から気配を感じた。

 

「ふんっ!!」

「ぐあぁぁああっ!!」

 

首を銃剣で刺され、森に悲鳴がこだますると咄嗟に周りに居た騎士団が集まり、銃を構えた。

 

「撃てっ!!」

 

躊躇なく指示を出すと騎士団の小銃や車載機関銃が火を吹いた。

友軍誤射を防ぎながら銃を撃っていると黒い天使は障壁魔法を展開しながら持っていた銃で射撃をする。

 

「うわっ!?」

「ぎゃあぁっ!!」

 

障壁魔法を展開しているのに銃を撃てる矛盾をしながら彼は我々を倒していくが…

 

「馬鹿め!装甲車に適うはずがないだろう?!」

 

そう言い、装甲車の掃射と砲撃が行われ、流石の黒い天使も空に上がって避けていた。

 

「機銃だ!魔法弾で射撃!!」

 

そう指示すると空に向かって魔法弾が撃たれ、空をレーザーが埋めていた。

 

 

 

 

 




お気に入り登録、高評価をよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。