ディルク達を襲撃に来た教国の武装組織『黒檀の騎士団』。彼等の目的は転移者達の捕縛であった。
そして半島を封鎖した彼等は半島内の森で戦闘をしていた。
貫通魔法特有のレーザー光が夜空を彩る。
その上空には森の木々を避けて飛ぶ一人の兵の姿が。
その空飛ぶ兵は片手に自動小銃を握り、射撃をする。
その内の数発が命中して兵士の絶叫が聞こえる。
「奴を近づけさせるな!!」
そう装甲車に乗った指揮官と重わしき女が叫ぶ。奴ら、どうやってここまで装甲車を運んだんだ?
試しに貫通魔法を撃ったが、中に高純度感応石を使用した振動装甲が入っている様で表面の鉄部分しか溶けなかった。
「硬すぎんだろ……」
そう苦笑してしまうと、痺れをきたのか貫通爆発魔法を使い始めやがった。空に爆発魔法特有の乳白色の混ざる煙が生まれ、VT信管が爆発したようだった。
「あっぶね!密集しすぎだろ……野郎上手く回れたか?」
そう言い、一向に離れようとしない敵集団に愚痴りつつもその瞬間、背後から砲声が轟いた。
けたたましいエンジン音と共に森の中を抜けて外から南回りで回り込んだ別働隊が森の中に居た集団を攻撃し出した。
「前方距離三〇〇、撃てっ!」
プーマの車長を務める事になった松本が無線機に叫び、その瞬間砲撃が飛ぶ。突貫での訓練だったが、なんとか実戦で使えるまでになった。
そして松本自身も対空マウント用の汎用機関銃を地面にいる騎士団に向けて撃っていた。
「死ねやクソったれぇ…!!」
半分恐慌状態の彼女は死体撃ちすら敢行し、確実に根絶やしにする気満々であった。
そして相手の装甲車が指向する中、松本は再び叫ぶ。
「至近距離だ!真横からぶち抜け!!」
「装填完了!」
「停車っ!!」
そう叫び、ややスリップしながら急停車すると目の前を砲弾が掠めて行った。そして装填までの間に松本が叫ぶ。
「撃てっ!!」
その瞬間。プーマの5cm砲が火を吹き、装甲車を貫通した。砲塔が火を吹いて打ち上げ花火の様に飛び、地面に転がる。
中から火に包まれた人が地面に転がる。その光景を眺める事なく松本は指示を出す。
「まだ敵が残ってる。制圧するわよ」
そう言い、森の中に隠れる教国兵を探していた。
そこからはほぼ一方的だったと言えよう。装甲車という火力を失った彼等はトラックに積んできた重機関銃を撃ちながら果敢に抵抗するも、5cm砲の前には無力であった。砲撃が来ると感じて兵士達は逃げ出し、そこを逃すまいと機関銃で撃つ。
一時間も経てば辺りには燃える装甲車と教国兵の遺体。そして破壊されたトラックの残骸が残されていた。
「……終わった?」
「移動用の車の姿はない」
「ってかまだ電波妨害続いているの?」
そう言い、松本はプーマの上に乗って来た茂に聞くと、彼は無線機に手を当てながら呟く。
「予定通りであれば、そろそろ……」
その瞬間、砂嵐の音ばかりであった無線からいきなり声が聞こえた。
『もしもし?こっちは終わったよ』
「あぁ、了解した……ほらな?」
「いやはや、運がよろしい事で……」
そう言いながら松本は早速無線機を使って増援を要請していた。
数時間前
蓮子率いる第一、二小隊一〇名は半島付け根で銃を片手に警戒中の帝国兵を確認する。
彼女らは黒い戦闘服の上に枯れ木や先ほど刈り取った草を身体に巻き付けてギリースーツを作っていた。
「なるほど、敵は帝国に扮しているか……」
「うっわ、立派な陸戦条約違反じゃん」
「いや、テロリストだったら違反にはならないな」
そんなことを言いながら藪に身を隠す彼女らはガスマスクを被って闇夜の草原を走る。
元々ガスマスクという視界が大いに制限される物をつけながら茂の扱きを受けていた彼女らにとってこれくらいは造作もなかった。
接近し、ナイフを脇腹か喉元に突き刺す。
一部短機関銃を使って敵を倒した後はすぐに草原に姿勢を低くして隠れる。
悲鳴を聞いて近づいて来た帝国軍服を着る教国兵をそのまま草原から襲いかかる。
「うごっ?!」
「死になさい」
一撃で頸を刈り取った蓮子に思わず全員がドン引きしてしまう。涼しい顔で敵を倒す彼女、それも暗視装置なしに敵を簡単に倒すことができるのが一番恐ろしいと感じてしまった。
その手には短機関銃が握られ、向かってくる敵を藪と同化して消音魔法と消炎魔法を展開していた。
「すげぇ、魔法の同時展開かよ」
「魔力切れ起こさなきゃ良いけど……」
少なくとも激しい集中力を必要とする魔法の多重展開に舌を巻いている中、蓮子は遠くから教国製小銃や短機関銃を持って走ってくる騎士団を倒していく。
一人はナイフで、一人は至近距離の弾幕で。接近戦での圧倒的戦闘力について来た他のメンバーは半分唖然となりつつも短機関銃や小銃を持って射撃をしていた。
そして教国兵も接近したらやられる事を学び、丘上の藪に立てこもる帝国兵に警戒して姿勢を屈める。しかし……
「ぎゃあっ!!」
背後から接近した蓮子によってナイフを喉に突き刺されていた。七一発入りドラムマガジンを取り付けた短機関銃を右手に持ちながら左手には血の付いたナイフを抱えていた。
「っ!!」
教国兵の誰もが驚く中、蓮子は容赦なく彼等に銃弾を叩き込んでいた。
あえて急所を外すことで応援を呼んでそこで一網打尽にする方法をとって半島付け根部分にいた教国兵を斃していた。
そして死体の山が積み上がった頃、通信設備を持った三沢が機械のツマミを触りながら確認する。
「この先に妨害電波の発信源がありそう」
「分かった……行くわよ」
「「「了解」」」
そう言い、一〇人は草原を銃を片手に走る。正直あまり多くの武装は持っていないのでなるべく弾の無駄使いは避けたかった。だからこそ蓮子はナイフで斃す選択をしていたのだが……
一〇分後、三沢の持つ逆探知装置を頼りに茂みの中に放置されいた機械を発見する。
「これだね」
「ええ、壊しちゃって」
そう言うと厚木が持っていたラドムVIS wz1935を手に持って引き金を引いた。
発射された9mm弾が電波妨害装置を破壊し、蓮子は無線に手を当てた。
「もしもし?こっちは終わったよ」
そう言うと、無線の奥から返答があった。
『あぁ、了解した』
そう言うと無線が切れ、蓮子達は任務完了であると認識してそのまま壊した機械を回収しながら茂達本隊のいるであろう場所まで徒歩で戻り始めていた。
「うわぁ……」
「これは酷い……」
そう言い、遠くから破壊されて黒焦げになったトラックや装甲車を見ながら思わずそう呟く。
西部戦線とは違う。泥だらけのあの戦争ではなく、また違った様相の戦場の姿があった。
教国兵の遺体が転がり、既に茂達が遺体を回収して一箇所に纏めていた。
「上に連絡は?」
「もう終わった。そろそろ近場の懲罰部隊が到着だってさ」
松本から通信を聞いた茂はそのまま装甲車に乗り込むと呟いた。
「じゃあ、軽くメッセージだけ残して去りますか……」
「じゃあ、そこら辺にまとめといたら行くのね?」
「あぁ」
そう言うと一通り一箇所に集めた後。コテージから持ち込んだ荷物などを乗せたトラックがやって来て、そこに同級生達が乗り込む。
「軽く挨拶してから行く。相手は俺がするから余計な事はするなよ」
「了解」
そう言うとプーマを先頭にトラック三台は幌を張ったまま道路を走り出していた。
運転するのは同級生でほぼ毎日触っていたから運転も慣れ始めていた。
少しすると反対側で四〇名程の歩兵用戦闘服を着た帝国軍兵士がおり、車列が通り過ぎていくのを確認した後。そのまま遺体の処理をしていた。
移動中のトラックの中、横田達はやや震えた手で水筒を握って中身を飲んでいた。
「俺達、戦争をしているのか……」
「正確には見えない戦争……かな」
「相手はカルト国家か……」
そう言い、死んでいくのに何故か幸せそうな顔をしていた彼等に思わず身を振るわせる。幼き頃からの洗脳教育とはいえ、明らかに異常な何かを感じていた。足元には弾を抜いた銃が置かれ、暴発などを防いでいた。
「生きにく為の術で人を殺すか……」
「でも、私たちを付け狙う存在がいるのは確定した」
「これから追われる身なのか、追う身になるのか……」
「どっちでもあるよ。何せ三つ巴の戦いだからね……」
そう言うと、茂から説明してもらった現状を思い出しながら、今回の最後の訓練を終えていた。
数日前、教官であったシコルスキーを見送った後。広場に集まったとき、茂が自分たちに命令を出した。
「近々、教国の兵士が再び襲撃に来ると予想される。そこで、最終訓練の内容を変更し、この部隊の撃滅を行う。実践を経験し、己の腕を磨け」
そう言い、いきなりの実践を命令し、全員が驚いた。まさかいきなりさせるのかと思ったが、教国が自分たちを誘拐しようとしているのは把握していた。そしてその後の拷問や魔法裁判の事も……
「敵部隊は半島を包囲する部隊と、直接捕縛にかかる部隊に別れるだろう。そして、無線妨害をすると予測して計画を話す。後は今までの訓練を思い出し、情けを捨てろ。出なければ死ぬと思え。自分が死にたくなければ相手を殺すのだ」
そう言い、茂は地図を広げながら指示を出していた。
「人数は我々の方が少ない。よってこの森でゲリラ戦を仕掛ける。誘引する為に森から立川達の狙撃小隊は光増幅魔法を駆使して夜間射撃を行い、森の中に誘い込め。
前回装甲車を持ち出した事から、向こうも同程度の火力を有した車両を持ってくると予想して櫻木達プーマはそれの相手だ」
「例の
「ああ、あれはどちらかと言うと予備だな。残弾がほぼ無い」
そう言い、訓練で結構使ったかと思い返すと櫻木は納得した。
「そして蓮子達は先に森を出て半島を囲い込む部隊を強襲し、無線機の破壊を任務とする。逆探を持って行け」
「了解っ!」
そう言い、逆探はあまり射撃に自信がないと申し出た三沢が持つ事になった。
「では、奴らが来るまで待機し、作戦を始める」
「「「了解!」」」
そしてこの五日後、教国兵が訓練施設に襲撃をかけるのであった……
「すげぇよな、さすが部隊率いているだけあるわ」
「それはそう」
移動中のトラックに乗りながら彼等は頷き、改めて茂の規格外さに毒されていた。
半島で二ヶ月みっちりのハードスケジュールをこなした彼等はそのまま帝国領土に戻るとそのまま次に行われる任務に向かって車を走らせ始めていた。
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